リサと栄吉と舞耶で漫才交渉をしている間、余った2人は暇を持て余している。それは交渉時の待機中の人間は皆そうだが、特にこの組み合わせになると余っている2人は羨ましそうにリサ達を眺めている。
「舞耶で〜す!」
「ギンコで〜す!」
「ホォォォウ!!そしてボクがスーパーウルトラスペシャルゴールド…」
「長いっちゅーねん!!」
リサのハリセンが栄吉に炸裂する。突っ込みは今日も絶好調のようだ。
「最初はギンコと呼ばれると怒っていたものだが…すっかり馴染んでいるな。」
「リサの長所は何でもすぐに受け入れられるところ…だと思う。」
「というか栄吉の名前が以前と変わってないか?」
「多分勢いで言っているから、喋るたびに内容が変わるんだよ。」
ノリノリの漫才は続く。明るく騒ぐ3人に比べて、待機中の2人の暗い事。元々無口で無愛想な2人が一緒に居ると、それだけで空気が重くなる。舞耶が加わればまた別の空気が醸し出されるのだが、それでも決して明るくはならない。
「何だか暗いな。俺達も本当なら、青春真っ盛りの18歳なんだがな…」
「僕はまだ17だよ。」
「言葉のあやだ。」
最初に口を開く達哉も暗ければ、答える淳も暗い。本人達は至って普通にしているつもりなのだが、その普通が極めて暗い。他3人が明るいから余計に目立つ。
「これじゃ青春の謳歌なんて無理だな。」
「え、達哉って青春を謳歌する気あったの?ていうか青春って言葉の意味分かる?」
「淳、お前俺を何だと思ってる?」
「モテるのに告白されても付き合わない、運動できるのに部活もやらない、そもそも人と話をしようともしないってリサから聞いてるから、てっきり青春なんてドブにでも捨てたんだと思ってた。」
「お前には言われたくない台詞だな。そもそも過去の心の傷から他人と深く付き合わないように無意識に拒絶していたとか、そういう発想はしないのか?」
「昔は明るかったからね、達哉。僕としてはてっきり、事故で頭でも打って他人と人格が入れ替わったのかなと。」
「ありえない発想はお前の得意技だからな。そんな漫画みたいな発想より、もう少し現実的な考え方をしろ。」
「分かった。じゃあ、過去のトラウマで対人恐怖症に陥ったから虚勢を張っていたんだね。」
「10年間父親に騙され続けて鬱入ってた挙句ジョーカー様をやっていた奴に言われると、無茶苦茶腹が立つな。つかその言い方、凄く棘があるぞ。」
「君の言い方も棘がありすぎるよ。お互い、あの事件から随分歪んだものだね。」
それぞれ言葉を切ると、達哉は伝説の日本刀を、淳は伝説の花を手に取り、同時に向き合う。殺気こそ無いものの喧嘩直前のピリピリした空気が二人の間に漂う。
「淳、昔のお前は本当に純粋で優しかったな。今の腹黒いお前とは違いすぎる。」
「10年経って昔のままだったら、その方が気持ち悪いじゃないか。そういう君こそ、10年前の活発で明るかった君の影も形も見当たらないよ。」
戦闘体勢に入っている二人の間に火花が散る。互いに様子を見るようにじりじりと距離を詰めたり離れたり。接近用の武器である剣を持つ達哉と、飛び道具(?)である花を持つ淳とでは得意な間合いが違う。離れたり近づいたりを繰り返し、やがてある時同時に止まる。そして、達哉が一歩前に足を踏み出し、淳が花を放とうとする。その時。
「おお――――っ!!!!」
途端に上がる歓声。思わず二人とも動きを止め、周囲を見回す。すると今度はブーイングが殺到した。
「何だよ、さっさと続けろ!!」
「殺し合え――!!!」
「白けさせんじゃねーよ!!」
いつの間にか彼らを中心にギャラリーが殺到していた。全て悪魔。既に硬直している二人よりもギャラリーの悪魔たちの方が殺気立っている。
だからといって冷めてしまった二人が今更殺し合い(?)を再開できるわけも無く途方に暮れていると、ギャラリーの人垣を掻き分け呑気に舞耶が現れた。
「あらら、止めちゃったの?まあ喧嘩は良くないわよね。けど、二人の喧嘩なんて滅多に見ないから楽しみだったのに。」
「舞耶ちゃん、呑気な事言わないでよ!情人に何かあったらどうすんの!!」
「ギンコ、お前それってタッちゃんが淳に負けることを前提にしてねぇか?」
「激氣!!アンタ、情人が淳に負けるなんて思ってんの!?」
ぎゃーぎゃー喚きながらリサが思いっきり栄吉の顔に拳を叩き込む。それでひっくり返りはしなかったが、無駄に白い頬の化粧が取れて真っ赤になっている。
「殴るな暴力女!!」
「何ですってぇぇぇ―――――!!!!」
「ほらほら、喧嘩しないの。」
舞耶が勝手に喧嘩を始めてしまった栄吉とリサを止めようとするが、悪魔たちの視線はそちらに向いてしまった。彼らとしては血が見れればそれで良いらしい。
「おおっ、あの嬢ちゃん強ぇな!!」
「ぼこぼこにしてやれ!!!!」
リサの人気はなかなか高いようだ。見た目可憐な美少女。実体は猪突猛進で破壊的というある意味強烈なコンボは悪魔たちの興味を存分に得てしまったようだ。
ボコボコにされる栄吉にこっそりゴメン、と謝って舞耶は達哉と淳の元に向かった。彼らは突然の展開から既に立ち直っていて、何だか口論っぽいことを再開している。流石に殴り合いまではいかないようだが、普段リサが嫉妬するくらい仲がいい二人が喧嘩をしているのは非常に珍しい。興味本位で舞耶は二人の会話内容に聞き耳を立てることにした。
「…だから、お前は杓子定規なんだ。新しい事から逃げてばかりで漢になれるか!」
「達哉のは新しいんじゃなくて変わってるだけだよ。常識でやってはならないことをやるのを認めたら、法律なんて存在意義を失うじゃないか。」
「日本人は特に保守的だからな。そんな典型的な思考回路に囚われるのは親友として恥ずかしいぞ淳。常識を敢えて破った先にこそ輝かしい未来が待っているんだ!!」
「何処かの宗教?人を洗脳してテロ活動だけは止めなよ。」
「お前が言うか、ジョーカー様。」
「…達哉も大概、人の心の傷を抉る事言うね。」
何だか雲行きが怪しくなってきた。何だか背後に見えるオーラが真っ黒。気のせいではない、これはやばい。そう確信した舞耶はさっき喧嘩を楽しんで見ていたとは思えないくらい慌てて二人の間に割って入る。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!せっかく会えた親友同士がそんな風に仲違いなんて…」
「は?舞耶姉何を…」
「達哉、もしかして舞耶姉さん、何か誤解してるんじゃないかな?」
「誤解って…え?」
突然空気の変わった二人の様子に舞耶は訝りながら見つめる。さっきまでの嫌な雰囲気など嘘のように消え失せ、いつもの二人に戻っている。
「舞耶姉、せっかく調子出てきたところなのに邪魔しないでくれ。」
「調子…?」
達哉が文句つけてくるが、舞耶にはさっぱり分からない。どういう事なのか淳に問い質してみたところ、何とも間抜けな返答が返ってきた。
「実は僕と達哉で漫才をやってみようって事になったんだ。でも僕たちじゃ舞耶姉さんとか栄吉とかがやってるみたいには出来ないから、喧嘩する二人の路線で行ってみようかと。」
「……。」
舞耶は返答に困っていた。漫才がしたいという二人の意見を笑いはしないが、何故漫才をやりたいのか、そして何故喧嘩という発想になるのか、二人の性質が漫才向きじゃないのは分かるが訳が分からない。いくらポジティブシンキングでも限度がある。
でもとりあえず、喧嘩はあまりよろしくない。
「あの、最初はもっと別路線の方が良いんじゃないかな?達哉クンと淳クンはそっちは似合わないと思うわよ。」
精一杯そう告げると、二人は一応渋々ながら納得したようで、揃って頷いた。
だが、次の戦闘で舞耶は更に肩を落とす羽目になった。
栄吉のマイクを分捕り、達哉が自分の目の前に置いて始める。
「達哉です。10年ぶりに再会した親友が黒くなってました。」
「…。」
「達哉です。憧れのお姉ちゃんの散らかった部屋を見てしまいました。」
「…またそのネタ…?」
「達哉です。慕ってくる女の子が攻撃力高いので、いつも吹っ飛ばされます。」
「情人…わたしそこまでやってないよ…」
「達哉です。再会した太った男の子が骨と皮だけになってました。」
「痩せてるって言ってくれないかねぇ〜」
「達哉です。どうして俺の親友はこんな連中ばかりなんだ。」
「「「「お前が言うな!!!」」」」
その後達哉は4人にボコボコにされたが、しっかり悪魔から好評を頂き、傍には大量のタロットカードが置かれていた。
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久々なのに変なのでごめんなさい。
ちなみにこのネタ、各キャラの交渉時の掛け合いを見ていて何となく思いついたのです。その時私は何故かペルソナ2罰をプレイしていました。
舞耶が達哉たちの喧嘩を最初は笑っていて、後のは止めたのは何かが違うからです。何かというのは、彼らの背後のオーラです(笑)
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