夜通しで各地をうろつき回ってきた一行は、リーダーにして元凶のジャックの家に転がり込み、疲弊しつつも原因であるジャックを(主にアリシアが)タコ殴りにしてから雑談をしていた。そんな時の事。
「そういえばガレスは自宅に戻らんでいいのか?ローレックと同居しているのであろう?」
「問題ありません。」
「そうだったんだ。けど、よりにもよって何でローレック?彼、極度に弱気で未だに仕事一つもこなしてないんでしょ?」
「成り行きだ。」
「まあ、人には向き不向きもあるからな。しかし何故、あのような男が試験に受かったのか…」
大体本人に失礼なことを語っていると、それまでボコボコにされていたジャックが跳ね起きる。
「そうだよ、アイツ!何でアイツがテアトルに合格してんの?団長だって落ちたのにさ!!」
不満っぽく口を尖らせつつジャックが文句をつける。ちなみに彼は同様の文句をコンラッドにも吐いている。失礼千番である。
「…シーザー、何であなたがそういう事言うの?確か彼の1回目の試験担当、あなたでしょ?」
「1回目?あー、あの時の…あれって一体、どういう試験だったのかさっぱり分からなかったんだけど。」
ジャックの呟きを綺麗さっぱり無視して、アリシアはシーザーを軽く睨む。するとシーザーは何だか罰が悪そうに顎に手を置く。
「うむ…実はあの時、私が何を言っても特別反応を返さなかったのだ。終わりと言った辺りで漸くぎこちなく動き出してな。あの時はてっきり緊張していたのかと思っていたのだが、どうやら後から知ったところでは緊張のあまり気絶していたとか。」
「それを隊長に気付かせないのは、ある意味才能かもしれんな。」
一応ローレックと同居していて彼の人となりをある程度把握しているガレスが大きくため息をつく。
「それ、副長も似たような事言ってたわ。武器持ったまま固まっていて、副長が切りつけても逃げもしなかったからとりあえず通したけど、やっぱり気絶していたらしいわね。」
「何だよ、そんなんで受かっていいのかよ!!」
またもジャックが不満の声を上げるが、またも完全無視される。そもそも一応隊長の地位なのだが、誰からもそういう扱いをされない。
「一番の謎は、あのエルウェンさんの目を誤魔化したってことよね。他の誰を誤魔化せても、絶対あのエルウェンさんを誤魔化すなんて無理だもの。」
「それは噂になっていた。あの大隊長を欺いた手法をアルドーが知りたがっていたぞ。」
「私もジェラルドも、あの大隊長さえも欺くとは、あれで意外に策士なのかも知れぬ。」
既に欺く、誤魔化すと決め付ける結構酷い仲間達の談話を聞きながら、のけ者にされているジャックはこっそり思う。
団長が不合格だった理由が、何となく分かった…あの人は真面目だからテアトル向きじゃなかったんだろうな、と。テアトルの他の人間も真面目な人は居るのだが、多分何かが違う。具体的に要素が出てこないが、きっと何かが違うのだろう。
次の日、予定していた探索は何処へやら、ジャックたちはローレックの行動を観察する事にした。結局どうやってテアトルに合格したのかさっぱり見当もつかず、どうしても手口が気になってしまったためだった。何故かローレックと同居しているガレスなら知っていても良さそうなものだが、彼自身が寡黙なため、その辺りの話は一切しないらしい。
「…あなたのように、必要以上に喋らない人が合格したのも、ある意味不思議よね。」
ローレック(&ガレス)の自宅をこっそり張りながらアリシアが不満そうに呟く。
「必要なだけ話せばそれでいい。」
「しかしお前があまりにも話さないからアルドーがつまらなそうにしているぞ。」
「あ、ローレックが出てきた。」
ジャックの一声で3人とも視線がそちらに飛ぶ。彼にばれないようにこっそり後をつける。但し鎧をつけていると音でバレる可能性があるので全員軽装で歩いている。シーザーとアリシアはまだしも、普段から顔を隠しているガレスはこのまま街を歩いていてもガレスと分からないんじゃないかと思ったりもする。
ストーカーキング・ジャックの所有するデータにより、ローレックの一日の行動は把握している。まずはテアトルに向かう筈なのである程度離れていても問題無い…はずだったが。
「あら?テアトルに向かわないじゃない。」
「城…の方か?」
「あれ?おかしいな〜〜。」
「そんな事を言っている場合ではない。追うぞ。」
予定外の事態に慌てつつもさっさと思考を切り換えて後を追う4人だった。
テアトルの入り口をそのまま素通りしてローレックはやはり城の方に向かう。そう見切りをつけてさくさく進むが、ローレックはいざ城の前に来ると中には入らずオラシオン教団本部に向かう。不意をつかれたジャックたちは慌てて立ち止まり方向転換する。固まって動いているのに行動が乱れなかったのは流石というべきか。
「あれ?城じゃないの?」
「…城に向かうとして、一体彼が城に何の用事があったのかしらね。」
「再就職を考えているのかもな。」
ガレスの呟いた言葉に、何だか洒落にならない極めて現実的な話を聞いた気がして思わず冷や汗を掻く。
「いや、別にそうと決まったわけじゃ…テアトルに限界を感じて城の兵士になろうとしているのかもしれないしさ。」
「それも再就職よね。」
一応足りない頭でフォローしたつもりのジャックだったが、全くフォローになってないとアリシアに即返される。
「あ、城に引き返したよ。」
ジャックの言葉にまたも慌てて立ち止まる。確かにローレックは一旦立ち止まり、手元の何かを確認して城に向かう。
とりあえずこっそり入って陰から様子を窺う。ローレックは本当に就職相談所に来て、受け付けの人と色々話をしていた。駄目だとか人生だとか何だか重苦しい単語が聞こえている。声色はいつもの弱気な声だったが、それが尚更怖い。
「…ガレス、ここで同居人であるあんたが何もしないのはむしろやばくない?つーかあの人世を儚んで死んだりしそうだよ。」
「勝手な憶測で決め付けるな。」
「だったらそのセリフを目を逸らさずに言ってみなよ。」
目どころか顔そのものを背けるガレスにジャックは言い返すと、ガレスは本格的に沈黙してしまった。きっとそういうのに関わりたくないのだろうが、酷い同居人だ。
「あ、動いたわよ。」
アリシアの言葉に、一同はまたぞろぞろとローレックの後をつけていった。周りの怪訝な視線にも全く気付かず。
その後の行動は悉くジャックのストーキングメモとは異なっていた。城を出た後はオラシオン教団のユージン、ヴァレス魔術学院の数名、奈落に住む人々など様々な場所を巡っていた。しかも、何処へ行っても大したネタは無く、肝心の「テアトルに合格した手口」を知ることは出来なかった。
「…おかしいわ。もしかしたら彼、私達がつけてる事に気付いてるのかも。」
「そんな素振りは全く無かったが。」
「そもそも後をつけていて手口が判明するとは思えない。」
「………。」
ガレスの一言に一同は沈黙する。そもそも何故後をつける事にしたのか。そこから思い出さなければならない。
「…確か、ローレックは意外と腹黒なのかもしれないとかいう話だったわよね。」
「うむ。それで、一日中張っていれば化けの皮が剥がれるかもしれないとアリシア殿が提案した。」
「それで分かるくらいなら、とっくにガレスが気付いてるんじゃない?」
「だろうな。」
ジャックの突っ込みにガレスが同意する。そして2人の冷たい視線は、発案者のアリシアに向かう。
「な、何よ…あなた達だって反対しなかったじゃない。」
「まあ、そうなんだけど。ていうか何で今日はいつもと違う事してたんだろ?」
「毎日毎日同じ行動しかしない方が気持ち悪いわよ。」
「それって結構問題発げ…」
問題発言、と言おうとしたジャックの鼻先に、アリシアの剣の切っ先が突きつけられる。にっこりと彼女のファンなら卒倒するほどの綺麗な笑顔も、その時のジャックには悪魔に見えたとか。
結局一日を無駄にした、と肩を落としつつ全員揃って…ジャックの家に。
「って、何でうちに来るんだよ!?」
「どうせ明日も一緒に行動するんでしょ?なら同じ部屋に寝泊りした方が楽だわ。」
「うむ、一応理に適っているな。」
「あんたらオレん家の食い物食い荒らすだろ!!せめて金払えよ金!!」
「その代わりオレ達はお前の仕事を手伝っている。」
「うぐっ…」
ジャックが反論できなくなると、途端に元気よくジャックの食料を荒らしに掛かる3人。しかもいつの間にか自分で食料を持ち込んでいるらしく、ジャックが買った覚えの無い酒まであった。それだけならまだしも、真顔でアリシアに渡された領収書を見て、ジャックは目が飛び出るほど驚いた。
「ちょっと待て!!何であんたらの酒代をオレが支払う事になってるんだよ!?」
「お前に協力している間は自分で仕事を得られんからな。収入が減っているのだから、それくらい黙って受け取れ。」
「あんた今すげえ非常識なこと言ってるって分かってる!?そこまで言うならオレの仕事の報酬あんたらにも分けるから!ていうかこの金額は異常だろ!?」
半狂乱になりながらジャックが握っている領収書の金額…十万ダゴルだった。
結局、ローレックの件については、何も知ることは出来なかった。
一方、一日中ジャックたちに後をつけられていたと全く気付かなかったローレックは、とあるくじ引き屋の主人と雑談をしていた。
「くじ引きの当落発表と賞金、配ってきましたよ。それにしてもシーラさんの一件があってから皆不安になっているんですね。ここまでしないと買わない人が増えるなんて。」
最近は色々おかしな事になっているなぁ、と呟くローレックに、店主はただ頷くばかりだった。
*********************************************** 色々キャラおかしくさせて今更ですがごめんなさい。特にアリシア好きな人ごめんなさい。
この話、殆ど突発的に思いついたネタだったので上手く纏まっていませんが、ラジアータはこれくらいの笑い話が普通にある世界だと勝手に思い込んでます。
ちなみにこの話のローレックの行動、一旦城に引き返したのは単に忘れていただけです。城の受付の人との会話内容は大体「人生楽しようとしても、上手くいかないものだ」という感じのものです。そしてローレックがテアトルに入った理由のオチはありません(爆)
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