ゲラ=ハの海賊日誌





 平和なマルディアス。
 サンゴ海を支配する海賊達が集うパイレーツコーストの酒場で、一組の男女が睨み合っていた。
 男女と言うと誤解が生じかねないが、そこにいるのは大量の髭をむさ苦しく生やしたキノコ帽子のおっさんと、髪を纏めてくくって姉御的雰囲気を持つロリ少女である。見た目の年齢差が大きく、並んで歩いていると親子か人さらいに見えてしまう。実際一緒に旅をしていた頃は何度となく街の警備員に逮捕されそうになった。
 そして、彼らの睨み合いを眺め、ため息をつくのはゲッコ族の青年。トカゲの年齢など人間には分かりようもないが、本人がそう言い張っているので信じるしかない。彼のあまりの落ち着きぶりと渋い声で、実はナイスミドルという噂もあるが、真相は定かではない。
 とにかく、長時間酒場に居座って睨み合ってばかりの迷惑な客はこのまま放っておいても動かないだろうと、トカゲの青年ゲラ=ハは声を掛けた。
「あの、いい加減にしませんか?このまま睨み合いをしても、話が進むとは思えませんが。」
 ゲラ=ハの言葉に両者はそれまで険しい表情で交わしていた視線を勢いよく外し、互いに顔を背けた。
 子供の喧嘩だな、と呆れつつゲラ=ハは肩を落とし言葉を続ける。
「どっちがキャプテンになるかと言って常に平行線では、話し合いの余地がありません。どちらかが譲歩すれば良いだけの話です。」
 というか、正直キャプテンがどっちかなんて、ゲラ=ハにとってはどちらでも良い。誰がキャプテンになろうとも、自分が信頼し従うのはホークと決めているし、ホークが居るならキャプテンはシルバーでも気にしない。そしてどちらが頭になっても面倒なのに変わりは無い。しかし、年齢に反し大人げないホークは自分がキャプテンである事を頑なに主張し譲らない。相手のシルバーもシルバーで自分が親分であると断言する。
 要するに、どっちも子供なのだ。しかしそれを口にすると双方ともに烈火の如く怒り出すのは目に見えているので心の中でだけ留めておく。
 今度は互いに目を逸らしたまま固まってしまった二人を眺め、ゲラ=ハは大仰にため息をついた。
 以前共に旅をしていた時はここまで面倒な事にはならなかった。この子供みたいな二人を上手くあしらう人間が居たからだ。
 元仲間であるグレイは、ホークをキャプテンと呼びつつ適当にあしらい、シルバーにも同じように対処していたため、結果的にグレイの掌で踊らされているようであった。一見そういう事が得意なようには思えないが、世間慣れしている彼にとってあの程度は朝飯前なのかもしれない。思えばあの頃は平和だった。尤も、あの頃と今とでは状況は違うのだから、彼が今ここにいて平和になると言えば、そういうわけでもない。
 そもそも何故こんな下らない論争で長時間一カ所に居座っているのか。それはつい数時間前の事。
 ホークはこれまでの冒険で稼いできた資金を元に、自分の海賊団を新たに作る気だった。メンバーは未だ2人、シルバーを含めても3人だが、それ以前に船がないという致命的な問題もある。また船を造るにも金は掛かるし、金も圧倒的に足りてない。だからゲラ=ハとしては金稼ぎに向かった方が良いのでは、と思うのだが二人が動かず先に進めない。かといってシルバーと別れると、ただでさえ少ない人手が更に減ってしまう。どちらも海賊に戻るという目的がある以上利害は一致しているし、何より二人は性格的に良く似ている。子供同士。
 こういう時、一体どうすればいいのやら。ゲラ=ハは必死に考えた。考えに考え、やがて非常に苦しい方法を思いついた。本来グレイが取っていた手段であり、今の彼らには通用しないと分かっているが、他に思いつかない。
「…キャプテンはキャプテン、シルバーさんは親分で良いのでは?」
 繰り返すが、こんなものは全く解決にならない。第一、頭が二人居る海賊なんてまともに機能するわけがない。特にこの二人では。
 ゲラ=ハの発言によって流れる奇妙な沈黙。やはり駄目かと肩を落としかけたその時、
「まぁ、それで良いか。」
「だね。そんな簡単な事で良いんじゃん。」
 納得している。
「おーし、そうと決まったらさっさとお宝発掘して稼がねぇとな!!ゲラ=ハ、行くぞ!!」
「早く行こう!!時間は一杯あるけど、無限じゃないんだからね!!」
 二人揃って納得して席を立つ。今度はゲラ=ハが硬直する番だったが、伊達にあのホークと付き合っていない。すぐに立ち直り二人についていく。
 この先確実にまた揉めるだろうなと深い深いため息をつきながら、ゲラ=ハは彼らの後を追った。




「おっしゃ手始めにジャングルのお宝を手に入れるぜ!!!」
「キャプテン、そこは既に調べ尽くしました。」
 グレイ達と行動を共にしていた頃に、ジャングル内を探索して宝という宝を発掘した事はホークは知っているはずだが。
「…そんじゃリガウ島の財宝とやらを」
「グレイさんが既に回収済みだと聞きましたが。恐竜の卵であれば私は遠慮します。」
「…それならフロンティアへ」
「壊滅的被害を受けたフロンティアは今それどころではないでしょう。そしてそこも、めぼしい所は制覇しました。」
 思えば、財宝を求めて旅をするグレイと行動を共にしていて、彼の持つ情報の元、様々な財宝を手に入れてきた。恐らくゲラ=ハ達の知る範囲の財宝は既に発掘済みだろう。まずは情報収集すべきだ。
「なっさけないなぁ。」
 他人事のように呟くシルバーも、今はゲラ=ハは無視した。言っても仕方ないと分かっているから。




 暫くして(ゲラ=ハが)何とか手に入れた情報を元にホーク達はドライランドの奥地の財宝を取りに行った。砂が鬱陶しいだの乾燥しすぎだのうるさいシルバーや、うっかり流砂に呑み込まれそうになったホークの面倒を見ながら、やっと近くまで辿り着き一安心したその時、目の前に妙な生き物が現れた。
 形状からして人間のようだが、もさもさした髪が乱れ顔を隠していた。髪の隙間から見える目は鋭く、油断無くホーク達を見据えている。本来灰色だったらしい髪は砂塵を被って見る影もない。
 というか、この人物は…
「よーうグレイ!!久しぶりだな。」
「久しぶりだね。しっかし随分な格好してるね。まるで未開の蛮人みたいだよ。」
 シルバーの言い方はかなり問題あるが、ゲラ=ハにしても他に形容の仕方が思いつかない。それほどまでに凄い事になっていたのだ。
「お前達か。久しぶりだな。お前達もここの財宝を取りに来たのか?」
 グレイの言葉にゲラ=ハは項垂れた。彼の口振りからして目的は同じなのだろう。とすれば、反対方向から現れたグレイはきっと…
「この先の財宝は、やはり…」
 ほぼ確信とも言える不安を中途半端に確かめるゲラ=ハに対し、グレイは相変わらず涼しい顔で答える。
「一足遅かったな。財宝を探して旅をしていれば、こういう事もある。」
 彼なりに励まそうとしているのか、それとも挑発しているのかいまいち分からないグレイの言葉に、精神的にお子様のホークとシルバーは怒り心頭。
「ちょっと待てやグレイ!お前、俺達の狙っていた財宝を持ち逃げしようってのか!?」
「あんたちょっと大人気ないんじゃないの!?早い者勝ちーなんて子供じゃあるまいし!!」
 どっちがだ。
 精神的に辛いというのはこういう状況か。ゲラ=ハは何とか二人を説得しようとするが、お子様的思考回路で怒っている二人は聞く耳持たない。
 どうしようか迷っている間に、グレイからとんでもない一言。
「そんなに財宝が欲しければ、力ずくで奪って見せろ。出来ればの話だがな。」
 財宝らしき宝石(ディステニィストーンに非ず)わざわざ挑発してくれたグレイに乾杯…ではなくて。
「あなたはこの二人を殺したいのですか?それとも殺されたいのですか?」
「殺されたい人間なんて居たら、お目に掛かりたいものだ。」
 真顔で答えるグレイに、ゲラ=ハはより一層強い頭痛を感じた。
「良く言ったグレイ!お前のことは忘れねえぜ!!」
「あたしの剣の錆になりな!!」
 完全に頭に血が上っている二人は、最早冷静に判断する力すら無くしてしまっているようだ。止める間もなくグレイに向かって特攻する二人。しかしグレイは冷ややかな目で口元だけで笑うと、空に向かって高く飛び上がった。ジャンプしても逃げられないだろう、と思いきや…
「キュイイイイ!!!」
 何処からともなく飛んできた翼竜の足に捕まり、グレイはそのまま飛んでいった。
「あああ―――――――――――っ!!!!!!」
 去り行くグレイを見送りながら悔しげに地団太を踏む二人と、飛んでいったグレイを見比べて、ゲラ=ハはただ真っ白になっていた。




 人間と友達になると、大変な事ばかりです  byゲラ=ハ


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かなりアホな話です。精神的に子供過ぎてどうしようもないです。
ホーク、シルバー好きな人ごめんなさい。
ゲラ=ハはお目付け役だと勝手に思ってます。
グレイが翼竜で飛んでいったのは、OPでそれっぽいのがいたような気がしたからです。

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