リガウ島に到着したグレイ一行は、財宝を求め浅い穴の中へ…
「って、ちょっと待ったあああああっ!!!」
脇目も振らず一直線に浅い穴から突撃しようとしたグレイに、ミリアムが制止の声を上げた。その声に反応してわらわらとモンスターが集まってくる。ガラハドが慌てて剣を振りミリアムを守るが、彼女は全く気づいていない。
「何だ。」
一方いきなり邪魔をされたグレイはやや不機嫌気味にミリアムに応える。早くしろ、という無言の重圧に負けずミリアムは反論する。
「何だじゃないよ!!あたい達、財宝を取りに来たんじゃないの!?」
「ああ。」
「だったら何で、浅い穴に躊躇いもなく突っ込もうとすんのよ!?財宝の穴は花畑に囲まれた深い穴だって聞かなかったの!!?」
ミリアムが大声を上げるたびにモンスターの数は増える。そしてガラハドは確実に死に向かっていた。
「ミリアム、頼むから静かに話してくれ…」
ガラハドが懇願するように声を漏らすが、ミリアムはやはり聞いてない。
「早く財宝の穴に行くよ…ってグレイ!!あたいの話聞いてたの!?」
「あれだけ大声で喋っていて、聞いてない訳がないだろう。」
ミリアムが騒いでいる間にグレイが一人でのこのこ穴に入ろうとしているところを、またもミリアムが止めに入る。後ろで、肩で息をしているガラハドに気づく様子はやはり無い。
「恐竜の穴に入ってどうすんの!!財宝なんてそっちには」
「あるぞ。」
ミリアムの声を遮り断言するグレイ。捲くし立てていたミリアムの声が止まり、聞こえる音は恐竜の怒りの声と瀕死のガラハドの息遣いのみ。
真っ直ぐにミリアムを見つめ、グレイは答える。
「恐竜の卵は高値で売れると聞いた。金になれば卵も立派な財宝だ。」
「ちなみにお金にならない宝は?」
「そんなものに価値はない。」
言い切っちゃったよこの人…とミリアムは呆れ肩を落とす。しかし彼女は持ち前の脳天気さであっさり立ち直る。
「ま、いっか。収入があれば。」
冒険者とて好きに暴れていれば良いわけではない。生きるためには金が必要だ。財宝探しも生計を立てるのに必要。シビアな世界に生きていれば、そんな考え方も当然だ。
だからといって、生きるために何でもやっていいわけではない。
「話は、終わったか…?」
「満身創痍だな、ガラハゲ。」
「禿言うな!!」
「怒ると余計毛が抜けるよ。」
「誰のせいだ!!?」
二人を庇ってこうなったというのに、何故こんな扱いを受けなければならないのか。ガラハド58歳の春だった。
「私はそんなに年ではない!!!」
「いきなり何を言っているのか分からんが、とりあえず傷を治せ。」
「あ、ああ…済まない。」
グレイに手渡された傷薬を受け取り、ガラハドは応急処置を行った。さっきまでの怒りは何処へやら、素直に礼を言うのがガラハドらしい。
が、次のグレイの一言でガラハドは硬直する。
「応急処置をしたら先に進むぞ。ガラハド、いざとなったら恐竜は頼むぞ。」
日常の駄弁のように死の宣告をするな、とガラハドは硬直したまま心の中で叫んだ。
静かにガラハドの手から薬が地面にこぼれ落ちた。
恐竜達をくぐり抜け、ようやく恐竜の卵を手に入れた。しかし問題はこの先。これまでは比較的安全にここまできたが、卵泥棒のグレイ達を見逃してはくれないだろう。
「ここからどうするか。ガラハドが思っていたより打たれ弱かったせいで、傷薬がもう殆ど残っていない。」
と、あからさまに顔面蒼白のガラハドに目を遣ってため息をつくグレイに、当然ながら禿もといガラハドは怒る。
「私一人で恐竜を相手に出来るか!!大体お前まで私を盾にするな!!!」
「為せば成る。強敵相手に何か一発逆転の奇跡を起こせば、サルーインもお前を認めてくれるかもしれないぞ。」
「聖騎士たる私が邪神に認められてどうする!!」
「じゃあデスか、お前が信仰しているのは。」
「ミルザだミ・ル・ザ!!!」
「御伽話の元人間か。まあ何がどうあれ、奇跡なんて胡散臭いものはお前みたいな奴の専売特許だろう。」
話が噛み合っているようで噛み合ってない。何より価値観が互いをすり抜けている。このまま放って置いても平行線な事は目に見えていたので、ミリアムは二人を杖で思い切り殴った。非力なミリアムでも不意打ちした上に頭だったので大の男達が頭を抱えて蹲る。
「変な言い合いしてる場合じゃないよ!!早く帰らないと3人纏めて食べられちゃうよ!!」
「…それは勘弁願いたいな。」
「全くの正論だが…お前に言われたくはなかったぞ。」
理不尽だとばかりに文句を垂れるガラハドの言葉など、既にミリアムは聞いてなかった。
「で、誰が卵持つの?あたいじゃ、ちょっと大きくて持てないよ。」
ミリアムの言葉を聞いたグレイはじーっとガラハドを見つめるが、その視線に何か嫌なものを感じ即座に拒否する。
「私はもう限界だ!!体力など殆ど残っていない!!!!」
必死に力説するガラハドに、グレイは無言で卵を抱え上げる。どうやら自分で持つ事にしたらしい。一瞬安堵のため息をつくが、それはやはり一瞬でしかなかった。
「それでは、恐竜はお前に任せたぞ。」
「何っ!!!?」
ここまでで散々恐竜に殺されかけて限界のガラハドにとって、それは死刑宣告も同然だった。驚愕するガラハドに、グレイは淡々と説明する。
「俺は卵を持っていて戦えない。下手な事をして割れたら価値が無くなるからな。」
「ま、そうだよね。あたいが恐竜と戦っても一秒保たないだろうし。出来るだけ援護するからさ、頑張ってよ。」
無責任にカラカラ笑うミリアムにすら感謝したい気分になった。それくらい今のガラハドは極限状態だった。彼のプライドか剣を杖代わりにはしていないが、ふらついた足元から無理しているのは明白だった。
「それとも、お前が卵を持つか?その代わり、落としたらお前の頭に残っている髪を全て引き抜くぞ。」
切るではなく引き抜くというのがまたえげつない。
「…やはり卵はお前が持て。」
「そうか。」
こんな時にまで命より髪を優先してしまう自分に自己嫌悪しながらガラハドは大きくため息をついた。一体今日一日で何回ため息をついたのだろうか。
怒り狂う恐竜達から命辛々逃れジェルトンに着く頃には、ガラハドは真っ白に燃え尽きていた。
「ふ、ふふ…完全に燃え尽きたぞ、神よ…」
それだけ呟きがっくり頭を垂れるガラハドは、そのまま意識を手放した。ミリアムが慌てて宿屋に運び込む間、グレイはガラハドに見向きもせず店に直行し店主と値段の交渉をしていた。
やがて運び込まれたガラハドも何とか回復し落ち着いた頃、大金を抱えたグレイが戻ってきた。彼の姿を視界に入れた途端、ガラハドは怒りの形相でグレイに詰め寄った。
「グレイ!!前々からお前の行動はとんでもない事ばかりだが、流石に今回ばかりはきっぱり言わせてもらうぞ!!そもそも…」
説教を始めようとしたガラハドの顔面に、グレイが手にしていた金袋を突き出した。金の感触を顔で受けつつ手にすると、ずっしりとした重み。
「卵を売った金だ。今回はお前が一番活躍したからな、お前の取り分を一番多くしておいた。」
見ると、グレイはもう一つの袋をミリアムに渡していた。自分の手元にも更に一袋あるが、量はガラハドのものが圧倒的に多い。
金袋の重みを感じながら、ガラハドはこんな事でも納得してしまい怒りが収まっている自分に気づいた。
まあ、良いかと袋の中身を確認すると…
「…グレイ、中に入っている石は何だ?」
「石だ。」
「まさかこれで重みをごまかして…」
「ごまかしてはいない。ただ、重みがあった方がありがたみがあると思ってな。」
「余計な事をするな!!!」
肉体疲労以上に精神疲労を強く感じたガラハ毛46歳の冥府空だった。
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ガラハド扱い悪くてごめんなさい。しかし彼が今回禿げているのは彼らを相手にしているからだと思ってます。
グレイが守銭奴ですが、これはロマサガ大事典のオブシ団の影響かもしれません。というわけで勝手にグレイは守銭奴だと思ってます。
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