燃えろ料理人







 十賢者の家事を取り仕切るサディケルは今日もファンシティへ来ていた。そこはサディケルの行き付けの場所で、本人の仕事と趣味を兼ねている。
 その彼が最も行く場所はクッキングマスター。本当はバーニィレースの方が好きなのだが、高級食材が手に入るので、良く挑戦している。


 いつものように受付に来ると、どうやら先客らしい一行が受付にぞろぞろいた。サディケルは彼らの事を、良く知っていた。
 光の勇者一行である。
 エルリアタワーで会って以来、自分達と一緒にネーデに飛んできてしまったらしいが、要は敵である。
 それが、2週間も前に愛の場とかいう所で確認してから全く音沙汰が無くなってしまっていたため、それまで彼らの足取りは掴めていなかったのだが・・・・・・
「・・・何でこんな所にいるんだろ?食材集めかな?」
 そこまで考えて、まさかと首を振った。いくら何でも、世界を守ろうとする人間が、こんな所でそんな事をしている筈が無い、と。それならそれで何でここにいるのか分からないが、自分だって十賢者のくせにこんな所で食材集めなどしているのだから問題は無いだろうと、微妙に自分の人生を諦めた目で、勇者一行を眺めていた。
(何にしても、受付にいるって事は料理勝負するって事だよね?)
 そう思うと、俄然燃えてきた。一応こう見えても十賢者の台所を仕切っているサディケルである。らしくないが、料理人としての血が騒いだのである。
(あいつらがどの程度の腕なのか、見てみるのもいいよね♪)
 勇者一行が中に入ったのを確認すると、サディケルは彼らに気付かれないように観客席に向かった。



挑戦者は、青髪の少女のようだ。確か、ネーデ人なのに何故かエクスペルにいた、謎の少女である。
「ふ〜ん・・・あいつか。まあ、他に出来そうなのいないしね。」
失礼な事を呟きながらサディケルはじっと舞台を見つめていた。
青髪の少女は仲間たちに笑顔で手を振っている。それに仲間達も応えるが、何だかその中の一人(金髪の青年にくっついているポニーテールの少女)と、青髪の少女の間で火花が散っているようにも思える。サディケルは彼らからかなり離れた所にいたが、それでも高性能のセンサーが不穏な気配を感じ取ってしまっていた。こういう時このアンテナが不便に感じたりもする。
ともあれ、少々何かあったようだが(紋章術とレーザーが飛んだだけである)予定通り料理対決は始まった。

その少女、家庭料理愛戦士レナの実力はかなりのものだった。料理そのものは家庭料理のような素朴なものが多いが、味は相当なものらしい。いちいちヤーマを唸らせるその実力に、サディケルの料理人としてのプライドが刺激される。
そしてヤーマの弟子を皆破った時、サディケルは我慢できなくなった。
「うぬぬ・・・わしの弟子を全て倒すとは・・・・・久々にわしが腕を振るう時が来たようじゃ・・・・・・」
「その勝負、待ったぁ〜〜〜〜〜!!!!」
 飛び入り料理魔パフィのようにヤーマの声を遮ったのは、勇者達にとって何処かで聞いた気もしないではないかもしれない、要は聞き覚えの無い少年の声だった。
 その直後、レナの前に現れたのはやはり、勇者達にとって何処かで見たような気もしないでもないかもしれない、要は見覚えの無い少年だった。
「お、おぬしは・・・・・・」
 呑気な勇者達とは逆に、驚愕しうろたえるヤーマ。流石にネーデ人な所為か、十賢者であるサディケルの姿くらいは記憶に残っているようだ・・・と思ったが。
「謎の超絶破壊料理少年!!!」
「謎言うな!!!!!大体何で誰もボクの顔見て分かんないんだよ!?」
 本来正体がばれないように少年の姿をしている為、むしろ分からない方が理に適っているのだが、変装も何もしてないのにばれないというのもそれはそれで虚しいものがあるらしい。
 一度エルリアタワーで会った筈の勇者一行も、
「・・・誰だっけ?誰かの知り合い?」
「知らな〜い。あたしは見た事無いよ。」
「ボクも知らないよ。あいつの勘違いじゃない?」
「そうですわね。少なくともレオン以外にあんな生意気な子供は知りませんわ。」
「なっ、何だよそれ!!化粧の濃いおばさんに言われたくないよ!!」
「言ってくれますわね!!この私に喧嘩を売ろうというのでしたら、喜んで買ってあげますわよ!!!」
「だ――――!!!レオンもセリーヌさんもやめろって!!!!!」
 危うく戦闘に入るところだった猫耳の少年と奇抜な服の女を金髪の青年が止めに入る。何だか苦労してるようだが、何処となく冷徹さを秘めている気がしてならない。怒ると一番怖いタイプだ、とサディケルは推測した。
「っていうか、そんな事はどうでも良いんだ(ホントは全然良くないけど)。え〜〜と、家庭内暴力駄目先生!!!!!!」
「ますます訳の分からない呼び名にしないで!!!!」
 違ったらしい。どうせサディケルはそんな変な呼び名いちいち覚えていないのでどうでも良いのだが。
「・・・まあ良いや。とにかく料理勝負だ!!!」
「え、え〜と・・・わ、分かったわ。その勝負、受けましょう!」
 戸惑いつつもノリ良く受けた。結局はレナもお笑いなのか?


 勝手に始まった料理勝負をあっさりヤーマが受け入れ、レナとサディケルが所定の位置で料理を始める。
 勝負はフルコース。つまり、得意分野だけでも良いという事である。まあ、料理にプライドを持つ二人がそんな事で満足などしないが。
 そんな中、レナがキャベツを頭上に高く放った。そして、何事かと観客が見守る中、包丁を両手に構え・・・
「秘技、7億切り!!!!!!」
 千切りとかけたらしいレナの自称秘技が、宙を舞うキャベツに炸裂した。瞬く間に細かく切り刻まれるキャベツ。歓声を上げる観客達。尤も、レナが一番かっこいい姿を見せたかったクロードは「ただの千切りにあそこまで気合入れる事も無いのに・・・」と呟いていたのだが。
「つーか、何で7億?」
「きっと自分の年齢と掛けてるんだよ。」
「年齢じゃなくて私が元いた時代よ!!!」
 ついにレナは手にしていた包丁(×2)を、好き勝手言っていたお子様二人に投げつける。プリシスもレオンもちゃっかり避けるが、その隙にレナのライトクロスを食らった。
「・・・・・・・・・・・・・・・少しくらい大人しくしていられないのか?」
 クロードは頭を抱えてプリシスとレオンを睨む。が、形だけで実はもうそんな事は諦めきっていた。プリシスはともかくレオンもネーデに来てから(というかクロード達と旅するようになってから)随分弾けてしまっている。もうどうでも良いのだ。
 一方、レナの秘技を見ていたサディケルは珍しく感心していた。そして彼の料理人魂をますます刺激する。
「ふふん、やるね。じゃあ、ボクも・・・・・・」
 サディケルは両手に一杯の果物をレナのように宙に放り、脇に置いていた音叉のようなものをそれらに向けた。
「必殺、フルーツトルネード!!!!!」
 掛け声と同時に音叉(?)から渦状の衝撃波を出し、次々に果物が切り刻まれていく。またも観客席から歓声が上がる。その中でクロードは「これはもう料理対決じゃないだろ」と呟いていた。
 そのサディケルにレナは感服し、
「やるわね、じゃあこれならどう!?秘奥義、灼熱地獄!!!!」
「このっ!!神技、エターナルクラッシュ!!!」
 互いに派手な必殺技が繰り広げられる中、ヤーマは「こんなもんで作られたものを食わなければならんのか・・・」と嘆いていた。
 おおよそ料理勝負に似つかわしくない光景の中、何故か二人の料理は出来上がった。


「出来たわ!!!私の料理は舌平目のワインソース!!!!!」
「ボクの料理は北京ダック!!!!」
 あの過程からどうやってそんなもんが出来たんだよ・・・と観客、特にクロードは思った。つーかフルコースの筈なのに一品とはこれいかに。
 一人と一匹の審査員が食す中、観客も料理人たちも息を飲んで見守っていた。
 そして、審査の終わったヤーマを、レナもサディケルも凝視する。
「うむむ・・・・・今回は・・・」
「「今回は?」」
「引き分けじゃ!!!!!」
 その瞬間、レナとサディケルの拳がヤーマにヒットした。
「引き分けなんて、そんな曖昧な評価が認められるわけないでしょ!!?」
「白黒はっきりつけるのが審査員の仕事だろ!プロをなめるなよ!!!」
 プロではないだろ・・・と、この場に賢者の一人がいれば突っ込んだかもしれないのだが。

 ひとしきりヤーマを殴り飛ばした後、レナはサディケルに手を差し出した。
「でも、あなたも凄かったわ。今度はこんな駄目審査員でなく、ちゃんとした評価の出来る審査員を使って勝負しましょう。」
 ああ、握手か・・・と気付いたサディケルは差し出されたレナの手を握った。
「うん、キミもやるね。驚いたよ。」
 互いに笑い合う二人の後ろで、クロード達が「またやるのかよ・・・・・」と疲れきった目で見ていた事に、二人は気付かなかった。







(後書き)
一応キリ番で「サディレナ」だった筈なんですが・・・ギャグになったのはともかく、これって全然サディレナじゃないですね。むしろサディ+レナ。二人出てりゃ良いってもんじゃないだろとか突っ込まれそうです(汗)
実は最初はほのぼの目指していたのですが、全くネタが出てこなかったのでこうなりました。
・・・・本当に御免なさい、露葵様。


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