管理者の憂鬱


 6人分の腹の響きが、彼らを思いっきり滅入らせていた。
 彼らは、腹が減っている。
 テーマパークに相応しくない不景気な6人組は、どんよりとした空気を引きずりながら広場を歩いている。
「何が悪いかって、まずはクリフだよな〜。街に来るたびに酒場に入り浸って、高級酒を呷り、酒場のガラの悪い連中と揉め事起こして騒ぎになるわ、器物破損で弁償させられるわ・・・」
 クリフは反論しない。全てが事実だから。
「後、ソフィアもパーティの金持ち出して猫に餌やったり猫グッズなんかに大金費やして・・・」
「だって欲しいんだもん・・・」
 小さくソフィアは呟くが真っ向から反論はしない。自分の非は認めているから。
「マリアは出来もしない料理に大金つぎ込んで修行とか言うけど、一度だって成功した例は無いし。」
「出来もしないって決め付けないでよ!!!」
「まずいデザートと辛いケーキとかたいステーキばかり作っておいて良く言うよ。」
 流石のマリアも黙る。彼女なりに罪悪感というものは存在していたようだ。
「スフレは店のお菓子を片っ端から買い漁るし。」
「だってエリクールのお菓子って見た事無いのが多いんだもん・・・」
 申し訳無さそうに項垂れるスフレ。と反省しているように見えるが彼女の口の端にはお菓子の食べカスが残っている。
「これじゃ僕がバーニィレースに興じる金も無いじゃないか!!」
「「「「それはどうでもいい。」」」」
 4人に即突っ込まれフェイトは口を尖らせる。一応フェイトの場合、例の鍛冶クリエイターと契約するという目的がある。ガストが居る今、役に立つのかどうか、時間を掛ける価値があるかは微妙だが。
「全く、こうなったら僕自らがそこら辺の一般FD人を一人一人鉄パイプで説得して金品を・・・」
「止めろ!!!」
 危ない事を言うフェイトを、パーティの良心クリフが勇敢にも止める。だが、そんなので聞くような人間だったらそもそも苦労自体しない。
「良いじゃないか。大体、金が無ければ旅も出来ないんだよ?なら自分の手を汚してでもやらなきゃ・・・」
「言う事は正論だ。だが、そういう事は『良い口実見つけてラッキー』てなぐらいに緩んだ顔で言うべき台詞じゃないぞ。」
 クリフの言うままの笑顔だったフェイトの顔が、悔しさに歪む。こっそり舌打ちしているが、全員にバレバレである。
 しかし、ここでフェイトに賛同するとんでもない輩が居た。
「そうね、流石に普通はまずいけど、FD人相手なら問題無いわね。」
 平然と、とんでもない事を口にしたのは裏リーダー、マリアである。そんな問題発言に、クリフは即座に怒鳴りつける。
「ちょっと待て!!FD人相手なら何しても良いってのか!?それは流石に問題だろ!」
「大丈夫だよ、あいつらはデータの僕達の人権なんて認めちゃいないんだからさ。大体僕達はFD人じゃないんだからさ、僕達がFD人の人権無視して襲って金品強奪しても罪にはならないよ。」
「ふざけんな!!!」
 クリフの反論は真っ当なものなのだが、フェイトもマリアも聞く耳持たない。
「最初にエクスキューショナーけしかけてこちらに一方的な虐殺を行ったのは向こうだもの。今更彼らに人権を語る権利なんか無いわ。」
「全くその通りだよ。クリフは甘すぎるな。」
「生憎と俺はまだ人としての尊厳と誇りを忘れたくはないんでね。」
 説得を半分以上諦めたクリフは、黄昏ながらせめてもの抵抗とばかりに皮肉ってみる。
「ふーん・・・まあ、クリフがそうならそれでもいいけど。じゃあ僕はそこら辺のFD人を片っ端からカツアゲしてくるから。」
「じゃあ私は店を一軒一軒回って強盗してくるわ。」
「ほ、本当にやるんですか・・・?」
 クリフが止めるのを諦めてしまった為、真っ当な思考回路のソフィアがおずおずと尋ねる。多少怯えが入っている彼女に、凶悪双子は笑顔で答える。
「「勿論、本気で。」」
 迷いの無い爽やかな笑顔に、ソフィアは一瞬めげそうになる。が、ここで負けたら目の前の邪悪兄弟が犯罪者になってしまう。犯罪者と一緒に旅するのは嫌だった。
「止めましょうよ・・・一応FD人だって人なんですから・・・」
「まあ、FD『人』っていうからには人なんでしょうね。」
「そういう問題じゃなくて・・・」
「でも、人の姿をしただけの生き物、だったら問題無いさ。所詮この世は弱肉強食だからね。強い僕達に、弱いFD人が蹂躙されるのは自然の摂理だよ。なぁ、アルベル?」
 それまでずっと黙っていたアルベルに、フェイトは自分の力説の同意を求める。だが、アルベルからの反応は無い。
「アルベル?」
 マリアが首を傾げて、僅かに俯いたアルベルの顔を覗き込む。そして握った拳を振り上げアルベルの頭に落とす。
「立ったまま寝てんじゃないわよ!!!」
「うおっ!!?」
 寝てたらしい。立ったままとは、変なところで器用な奴だ。クリエイションでは目も当てられないほど不器用なのに。
 マリアの一撃で何とか目を覚ましたアルベルは、妙に殺気立っている双子を見て呟いた。怒鳴らないのはまだ半分くらい寝ぼけているからだろう。
「・・・カツアゲか強盗にでも行くのか?」
 ものの見事に状況把握が出来すぎてて、本当は起きていたんじゃないかと思った。試しにソフィアが尋ねてみる。
「あの、さっきまでの話、聞いてましたか?」
「聞いてねえよ。だから訊いてるんだろうが、阿呆。」
「・・・・・・・・・」
 きっと半分寝ながら聞いていたんだ。きっとそうだ。決してこの凶悪青髪兄弟と思考が似ているわけではないのだ。そう勝手に結論付けてソフィアは黙る。
 一方、自分達の思ってた事をすんなり理解した(ように彼らには見えた)アルベルに、例の双子は目を輝かせる。
「やっぱりアルベルだ!話を聞いてなくても僕達の思うところをすぐに理解してくれるなんて!!」
「流石アルベルね!平和主義のマッチョとは違うわ!!」
 さり気なくクリフ批判をしているマリアの弁は無視して、アルベルは更に尋ねる。
「で、何でそんな事をするんだ?憂さ晴らしか?」
「勿論それもあるけど、一番はやっぱり路銀稼ぎだね。皆が無駄遣いばかりしてくれるから、ボイドの為にバーニィレースをやる金も無くなって・・・」
「それはどうでもいいのよ。」
 バーニィレースに拘るフェイトのこめかみに銃を突きつけ、代わってマリアが説明する。
「まぁとにかく、今本気で金無いのよ。このままじゃ社長を蜂の巣にする前に路頭に迷うわ。」
「成る程な。」
 アルベルが納得したように頷くと、フェイトがマリアの銃から離れて、颯爽と鉄パイプを振り回し始めた。いきなり笑顔で鉄パイプを振るって通行人を次々と血祭りに上げて金品強奪するフェイトを眺め、他人の振りして逃げようとする仲間達の襟首を掴みつつ、マリアもフェイトに続こうとした時、アルベルの独り言にも近い呟きが耳に入った。
「金が無いんだったら、スフィア社の開発者とかいう奴らに何とかしてもらえば良いんじゃねえのか?」
「・・・・・・・・・」
 マリアは目を見開いてアルベルを見つめた。何でアルベルがそんなにこの世界の仕組みを理解しているんだ、という疑問もあるが、寧ろ「何故気付かなかったんだ」という驚きの方が大きい。
 そしてマリアは無言で、血祭に興じるフェイトを蹴り飛ばして止め、全員でスフィア社へ向かった。



「というわけで、私たちの所持金を増やしなさい。」
「というわけでと言われてもなぁ・・・大体それって遊んでて消えた金を入れろって事だろ?流石にそういうのは卑怯じゃ・・・」
 マリアのフェイズガンが火を吹く。レーザーは開発者のアイレを掠める。
「一部の馬鹿の所為で、私たちにまで迷惑が掛かるなんて冗談じゃないわ。というわけで、さっさと所持金を増やしなさい。」
「いや、でも俺はキャラクターのパラメータ担当だし・・・」
「メニューコマンドの所持金の数字を変えるだけだろ。そのくらい簡単じゃないか。」
 笑顔で鉄パイプを構えるフェイトがマリアに続く。
「自分がデータだって割り切ってないか?」
「うるさいわね。余計な事言わないで、さっさと増やしなさい。」
「さっさとやらないと、機械だらけの無機質な空間に、生々しい血痕が飛び散るよ〜」
 銃を構えるマリアと、鉄パイプを振るうフェイトを、最早誰も止めようとはしなかった。



 所持金が増えている事を確認すると、フェイトは早速バーニィレースへ行こうとしたが、マリアに蜂の巣にされて、結局機械だらけの無機質な空間にフェイトの血痕が飛び散った。
 ついでに、ジェミティに戻るとフェイトが指名手配されていたため、防具で変装してエリクールにこそこそ逃げる事になったのは最早、自業自得としか言いようがないだろう。









一応キリリク36000だったり。
黒フェイト・・・と改めて言われると意外と思いつかないようです。で、ふと思ったのが「通行人をカツアゲ出来ないかなー」と(やばいよこの人)
ゲーム違いますが、ブレスオブファイア(3以降?)の主人公はフィールド上で「剣で切る」ってアクションがあります。あれを街中で通行人にやると、たまにお金を落とすんです。
アレを思い出して、今回の話をちょっと考えてみました。が、フェイトは鉄パイプが標準武器なので、却ってやばくなってしまいましたが(汗)
ちなみにアルベルは流石に完全には仕組みを理解してません。が、「創造主とか言うFD人の開発者とかいう連中は、自分達の存在をある程度思い通りに出来る」とか、その程度です。多分。


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