地下の遺跡の本気なアイツ


 入るなり変なアナウンスの流れた試練の遺跡、ふざけた出だしの割に強いモンスター達を倒して進んできたフェイト達は、今目の前に信じられないものを目にした。いや、信じたくないものと言った方が正しいか。
「ふははははははは!!本編では発揮する事のできなかった我が力、存分に思い知るが良い!!!!」
 死後も出番を与えられて狂喜乱舞しているヒゲオヤジもといヴォックスに対し、フェイト達はこの上なく脱力しきっていた。無理も無い、ずっと前に倒した上にバンデーンに無様に殺された阿呆がちゃっかり復活していて、事もあろうに本気とか言い出すのだから。過去の産物が本気を出したところで無駄だろう、と口には出さないものの顔にはっきりと書いてある。
「本気って何だか馬鹿っぽいよな。」
「せめて超人とかなら良かったのに。」
「いや、それもどうかと思うぞ。」
「頭の悪さを露呈しているようなものですよね。」
「てゆーか馬鹿じゃん?」
「皆さん、あまり本当の事を言うべきではありませんよ。」
 好き放題語るフェイト達の容赦無い言葉に、自称本気ヴォックスはテンペストの上でいじけている。
「うむ、本気と名乗る事で生まれ変わったという事か。敵ながらあっぱれじゃ!!」
「アドレーさんも、的の外れた褒め方をしないでください。つけ上がりますよ。」
 一人豪快に笑うアドレーにもミラージュは容赦しない。
 ちなみに目の前のオヤジの元仲間であったアルベルは頭を抱えて俯いている。流石に認めていた人間がこんな間抜けな形で復活するのはかなりの精神的ダメージらしい。
「ところで、ごく基本的な事なんですが。」
 先生に質問する生徒よろしく手を挙げるフェイト。それに冷静に応えるのは教師役の嵌るミラージュ。
「何でしょうか、フェイトさん。」
「はい、目の前で本気とかほざいている元ヴォックス氏享年65歳。彼は一体どうやって復活したのでしょうか?」
「誰が65歳だ!!」
 耳ざとくフェイトの言葉を聞きつけ顔を上げて怒鳴るヴォックス。
「何故、元がつくのでしょうか?」
「勿論、自称本気ヴォックスという事は、ただのヴォックスではないという事でしょうから。」
「まあ、馬鹿度は増してるな。」
 ヴォックスの雄叫びを無視して尋ねるミラージュに、フェイトとクリフが答える。完璧な答えに花丸を差し上げたい。
「で、何であのヒゲは復活しているのでしょうか?」
「そうですね、月並みな答えで申し訳ありませんが、やはり後ろの謎の少女の仕業かと。」
「謎っつーか、あれは戦おと・・・」
「クリフ、問題発言は控えて下さい。いくら声が同じでも、あなたは大剣を持った男とは別人なのですから。」
「いやミラージュ、その発言の方が問題だろ。」
 ヴォックスの存在を完全に無視する形で会話を続ける一行に、いい加減ヴォックスのあまり強くない忍耐は限界である。
「ええい貴様ら訂正しろ!!!このナイスミドルに対して老人扱いとは何事だ!!!!」
 怒り狂うヴォックスの発言に、今度はロジャーが指差して笑う。
「ナイスミドルって言葉の意味分かってて言ってるんかよ。一度死んでますますバカチンになったみてぇだな。」
「何をこのタヌキ小僧・・・!!!」
「ロジャー、止めておきなさい。人は本当の事を言われると一番傷つくものなのよ。」
「おう、分かったじゃんよマリアお姉さま!!!」
「ぐぬぬぬぬ・・・」
 完全にフェイト一行に翻弄されている。初めから無いに等しかった威厳も一滴残らず消え去ったヴォックスを、それまで傍観に徹して正座して玉露を啜っていたレナスが後ろから巨大な槍で殴りつける。鈍い音が大きく響いたが、レナスは平然としている。
「早く戦え。」
 それどころか一度殴ったヴォックスに近づき飛び蹴りまでする。飛び蹴りなのは届かないからで、もし頭身が高ければ踏みつけていた事だろう。哀れなのは巻き込まれるテンペスト。
「あの竜可哀想だよね。あんなヒゲオヤジの騎竜になったばかりに・・・」
 ほろりとフェイトが涙を流し、白いハンカチでそれを拭き取る。
「運命とは、かくも残酷なものね。」
 マリアも目を伏せテンペストの運命を嘆く。
「き・さ・ま・ら――-!!!」
「何よテンペストのおまけ。」
「誰がおまけだ!!!」
「そうだ貴様ら、さっきから失礼な事を言いやがって。」
 そこで初めてアルベルがまともに口を開く。それまで何をしていたか聞くのは野暮だろうか。ヴォックスはヴォックスで、アルベルが庇ってくれる事に驚きつつも多少期待しているようだが・・・アルベルはびしっとヴォックスを指差し本気の目で断言する。
「あんなテンペストにとって邪魔にしかならないものをおまけ呼ばわりするな。おまけはおまけとしての価値があるんだぞ。」
 アルベルの発言に、フェイトは多大なショックを受けがくっと項垂れる。
「そうだな、無価値どころか存在そのものが悪のアレにおまけ程度の価値を与えていた自分が恥ずかしいよ。」
「ぬがああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
 遂にヴォックスが切れた。テンペストに命じて炎のブレスをフェイト達に放つ。全員辛うじて炎を避け、体勢を立て直した後フェイトが文句をつける。
「うわああっ!!何するんだ阿呆オヤジ!!!」
「いい加減に真面目に戦え!!!!!」
「いきなり本気とか言い出す馬鹿相手に真面目にやってられるか!!!!」
 フェイトの言う事も尤もである。
「怒ってても竜に攻撃を命じるのね。他力本願は止めなさい。」
 馬鹿にするようなマリアの口調に、ヴォックスはますます真っ赤になる。
「私前から思ってたんだけど、竜の一匹くらいメンバーに居ても良いんじゃない?ああいうのが居れば役立つ事多いわよ。」
「それは名案だけど、どうせならアルベルに何とかしてもらえば?あいついずれ疾風団長になるんだろ?」
「勝手に決めるな。」
 即座に否定するアルベルだが、口とは裏腹に意外と満更でもないようだ。言葉に刺々しさが全く無い。
 が、そんな彼らに余計な口を挟む者が居た。いや誰かは言うまでも無い。
「はっ、父殺しの小僧が焔の継承に再び挑むというのか!?最早貴様を庇うものは誰も居ないぞ!!!!」

  ぷちっ・・・

 このとき、何かが切れる音がいくつかした。単数ではなく複数。その気配を察知したクリフ達は静かに後ずさる。が、歩幅の小さいロジャーだけは逃げるのが遅れ、フェイトに肩を掴まれる。
「あ、ロジャーは残ってて。」
 胡散臭い、無駄に爽やかな笑顔を浮かべるフェイトに、何をさせる気だ悪魔め、と心の中で叫びながらロジャーは足を止める。
「お、OKじゃんよ・・・」
 カチコチになりながら返事をするその声は震えている。哀れタヌキ小僧。
「さて、仲間を侮辱してくれたオヤジには制裁しないとね。」
「覚悟は出来てるわね?」
 笑顔で武器を構える二人の額に、淡く光る紋章が浮かんでいる。遺伝子改造によって得られた力を、たった一人のヒゲオヤジに対して使う気満々である。ここが地下である事も完全に忘れている。
「な、何故貴様らが・・・」
『問答無用―――』

    がすっ どがっ

 今にも紋章を発動しかけていた二人を殴って止めた勇者は・・・元凶のアルベルだった。
 頭に大きなたんこぶを作ったフェイトと、痛みに頭を抑えるマリアはすぐにアルベルに詰め寄る。一応マリアには手加減しているらしい。恐らくマリアが怖いから。
「何で邪魔するんだよアルベル!!侮辱されてるのはお前なんだぞ!!!」
 早速苦情を言うフェイトを再び殴り、アルベルは苛立ちを含んだ声で言い放つ。
「邪魔なのはテメェらだ。あのクソヒゲをぶっ殺すのは俺だろうが!!!!!」
 そう叫ぶアルベルの手には、大量のボムボムボム×100(推定)。足元には歩く爆薬庫のロジャーを控えさせている。
「ちょっと待て。お前爆弾で殺す気なのか?」
 文句を言いたそうにフェイトが尋ねる。しかし恐らく止めるピントはずれているだろう。
「何か問題でもあるのか、阿呆?」
「大有りだ!!!爆弾で殺したら、肉を斬り骨を断つ感触が味わえないじゃないか!!!お前はそういうの大好きだろ!!!」
「テメェと一緒にするなど阿呆!!!!!俺は強敵と戦うのが好きなんだよ!!!!テメェみたいな快楽殺人者とは違う!!!!」
「どっちもどっちだよなぁ・・・」
「クリフ、死にたくなければ黙っていた方が良いですよ。」
 物陰にこっそり隠れているクリフとミラージュのツッコミがすかさず入る。彼らの言った事は結構まともなのだが、彼らに聞こえないようぼそぼそ喋っているので意味は無い。
 ヴォックスはもう、全て忘れて帰りたかった。しかし後ろで暇そうにしている少女の気まぐれで復活し戦わされている自分にそんな事は出来ない。かといって目の前で漫才を繰り返す敵(一部元味方もいるが)相手にどうすればいいのか分からない。一気に殺れれば良いのだが、既にフェイト達に気圧されつつあるヴォックスにはそれをする度胸は無い。小物である。
「だからさ、殺るなら刀で徹底的に斬れよ。そっちの方が殺してるって実感あるぞ。」
「知るか。大体あんなのを斬ったらクリムゾン・ヘイトが穢れる。」
「クリムゾン・ヘイトだと!!?」
 口論の最中アルベルの口から出た単語にヴォックスは目を見開く。魔剣クリムゾン・ヘイトといえばかつて自分が扱っていた伝説の魔剣。尤も、ヴォックスの場合は魔剣にほぼ心を呑まれていたのだが、アルベルは見たところ何ら変わりは無い。あの魔剣を完全に使いこなしているという事か。父のグラオ同様。
「ぐぬぬぬぬ・・・小僧が・・・」
「テメェに小僧呼ばわりされる謂れはねぇよ。黙ってろクソ虫が。」
 かつて自分が見下していた男に、今度は自分が馬鹿にされている。しかも自分が使いこなせなかった魔剣を携えて。
 暗い影を落とすヴォックスに気づいたフェイトが露骨に顔を顰める。
「うわ、こいつますます暗くなってるよ。気味悪いなー。」
「元々陰湿な奴だ。これくらい当然の事と受け取っておけ。」
「やかましいわ青二才が!!!!!」
『黙れ箱!!!!!!』
 決死の勢いで怒鳴ったヴォックスだったが、それもフェイトとアルベルの二人に同時に返され更に沈む。
「いい加減落ち込むな沈むな暗くなるないっそ消えろ阿呆!!!!」
 更に追い討ちをかけるようにアルベルが怒鳴る。彼も彼でこの本気ヴォックスとやらには辟易していたらしい。しかしヴォックスも一度死んで随分弱気になったものだとフェイトは思う。それとも後ろで呑気にみかん食っている少女に悲惨な目に遭わされたのだろうか。何となくその予想は当たっているように思えた。何となくだが。
「おいタヌキ。アレを出せ。」
「アレ?つーとアレの事か・・・・・・アレ・・・?」
 突然話しかけられ一旦は何でもないように返すが、何かに気づくとロジャーは青褪める。
「・・・あのな兄ちゃん。まさかアレを使う気なんか?アレはまだ試作品だって・・・」
「うるせぇ、いいから出せ。」
 渋るロジャーを脅しアルベルが再度催促する。アルベルの脅しには逆らえないロジャーは渋々何処からか一つのボムを取り出す。形状的にはピヨピヨボムとかと同じアヒル型。但し「品質保証しません」という不吉なラベル付きで。アルベルはそれを躊躇いも無くヴォックスに投げつけた。
「っておいアルベル・・・」
 フェイトは嫌な予感がして止めようとしたが、その前にヴォックスにボム(?)がぶつかり強い光を放った。
「ぬおおおおおぉぉぉぉおおおおっ!!!!!!」
 あまりにも強い光に思わず目を閉じる。そして響くヴォックスの絶叫。何だか以前にもこんな事があったような・・・と既視感にも似た感想を持ちながら、光が収まった頃に目を開けてみる。しかしそれまで邪魔っけに目の前に居たはずのヴォックスが跡形も無く消えていた。しかしヴォックスを召喚したあの少女は残っている。彼女はじっとアルベルを見つめていた。
「・・・・・・危険だな。」
「いやアルベルが危険なのは今に始まった事じゃないけど・・・ヴォックスは?」
 レナスの言葉をすんなり受け入れてヴォックスの行方を尋ねるフェイト。当然ながら怒りの視線を向けるアルベルを無視して。
 そしてレナスの答えは、非常に簡潔だった。
「さっきの光に呑まれて消えた。」
 非常に簡潔な答えだけを残し、つまんないと告げて少女は去っていった。しかし最早それどころではない。
 何となく、判っていた事だった。あのボムから出た光は普通のものでは無い。それくらいは予想済みだった。
「・・・アルベル、あれ一体何だったんだ?」
 これまた何となく答えが予想できるのだが、あえてそれには気づかない振りをしてフェイトが尋ねる。すると返ってきた答えは。
「お前が以前持ってきた本に載っていた爆弾を作ってみた。」
 ちなみにロジャーは火薬やらの材料調達を主に行っていたらしい。
 フェイトが持ってきた本と言うのは、銀河連邦に伝わる十賢者騒動の英雄達の軌跡を書いた本。フェイトも読んだ事があるが、あの中に敵を消滅させるアイテムとか核爆発を引き起こす爆弾とかがあったような気がしたのだ。
「確か『にゅーくりあぼむ』とかいう爆弾だったな。」
「あれ作るの随分苦労してたじゃんよ。」
 やっぱり。本物の核爆弾とは違う効果だったが、こっちの方が凶悪なんじゃないかと思う。
 しかもこの場合、自分も共犯者になるんだろうか、共犯者になるなら斬りたかったなぁなどとフェイトはぼそぼそ呟いていた。









アルベルとフェイトのヴォックスいじめ・・・?
微妙にずれたような、大きくずれたような。ごめんなさい。途中でかなり曲がってしまったようです。
そもそもあんまり苛めてないし。


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