> タイトルがあの小説のパクリっぽい

最強の策士に挑め人間兵器


 何ていうか屈辱。
 神たる自分が、全く勝てない相手が存在するなんて。
 しかも相手は、見た感じ穏やかな女性。敵ではないと思ったのがそもそもの間違いだった。
 その女性―――クレアは恐らく正攻法では勝てないだろう。しかも力任せに倒そうとすれば邪魔な隠密が現れる。あまり手荒な手段に出られない。
 しかも悔しい事に、あのアルベルがクレアには気を許しているのだ。自分の前ではずっと警戒ばかりしているというのに。
 とにかくクレアをどうにかしてぎゃふんと言わせたい。そうでもしないとプライドが許さない。
 ちなみに、人はどんな目に遭ってもぎゃふんなどと言わないとか、そんなツッコミをするのは却下。



 と言う訳で、フェイトは今領主屋敷に来ていた。いつもクレアが居る場所。しかしフェイト達が滞在している時は殆ど居ない。理由は簡単、アルベルと外で会っているのだ。
 悔しいところだが、今は好都合。フェイトは誰にも見つからないようにこっそり入り、いつも会議室にいる女性兵士を特製ボムで眠らせ入る。
 そして隠し持っていた剣や絵の具などを手に取った。



 のどかな一時をアルベルとともに過ごしていたクレアは、領主屋敷から突如聞こえた叫びにはっと顔を上げた。
「何かしら・・・?」
 間違いなく、それは悲鳴だった。クレアはアルベルを起こさないように領主屋敷に戻った。
 それを見てにやりと笑った影に気付かず。



「これは・・・!」
 流石にクレアも驚愕した。いつも自分達が居る会議室が荒らされていた。盗賊か何かの仕業かと思ったが、すぐにその考えを打ち消した。カーテンが無残に引き裂かれ、壁には真っ赤な絵の具?で書かれた落書き。
 死ね、殺す、祟ってやるetc・・・ひたすらネガティブな単語の羅列。赤い為に血文字に見えなくも無い。
 稚拙な嫌がらせとしか思えないが、されたらされたで始末が悪い事この上ない。
「はあ・・・」
 クレアはため息を吐いた。しかし次の瞬間。
「きゃああああああ!!!!!」
 またしても悲鳴。今度は厨房から。クレアは厨房へ急ぐ。
「何があったの?」
「く、クレア様・・・あれ」
 女性が指差したのは大きな鍋。微妙に変形している。恐らく何かが詰まっているのだろう。
 クレアは蓋を開けた。その時後ろからかすかに怯えたような声が聞こえたのは聞き間違いではないだろう。
「・・・・・・・・・・・これは・・・」
 クレアは絶句した。鍋にひたすら虫が敷き詰められていたのだ。しかも良く見れば毒を持っている虫ばかり。そんなのがぎっしりと詰まっていて、2〜3匹程飛び出している。これでは虫が嫌いでなくとも引く。
「はあ・・・犯人は余程暇だったのか、嫌がらせに命を掛けているのか・・・判断に迷いますね。」
「そういう問題なんですか、クレア様・・・?」
 厨房担当の女性がポツリと呟く。
「ふええぇぇぇぇええええ!!!!!」
 今度は2階から悲鳴。この声は間違いなくファリン。
「今度は何かしらね?」
 言葉だけは呑気そうに、でも真剣な眼差しで階段を駆け上る。
「何があった・・・・・・」
「クレア様ぁ〜〜〜〜!!!!!」
 ファリンが泣きながらクレアに飛びつく。意外と腹黒い彼女が泣くとは、一体何が・・・・・・
「・・・・・・これ。」
 唖然としてクレアが指差したのは、昨日までに必死で処理してまとめた筈の数々の書類。それが見るも無残にバラバラになって散らかっていた。
「誰だか知りませんが酷いですよぉ〜〜折角死ぬ気でまとめた書類をこんなにしちゃってぇ〜〜」
 この書類整理はファリンにも手伝ってもらった。あの地獄を思い出すと、目の前の光景に絶望さえ感じる。てゆーかあんたはそういう事で泣くのか。
「痛あっ!!!!!」
 今度はタイネーブの声。それはクレア達の後ろから聞こえた。
「タイネーブ、どうしたの?」
 部屋のドア近くにタイネーブが手を覆って顔を顰めている。
「クレア様・・・それが、そこのドアのノブがいきなりビリッとして・・・」
「ドア?さっき私達が触った時は何とも無かったけど・・・」
 そこまで言ってクレアは気付いた。この一連の嫌がらせ。その犯人も。そして、その人物がまだ近くにいる事も。
「・・・犯人は私が捕まえてきます。あなた達は片付けをお願い。」
「え?・・・分かりましたぁ〜」
 一瞬片づけが面倒だな〜と思ったファリンも、突然感じたクレアの殺気に、黙ってその場を引いた。
 後にファリンは証言する。
「あんな怖いクレア様、初めて見ました。」



 クレアはすぐに1階に降りて、犯人に呼びかける。
「出てらっしゃい、フェイトさん。まだこのあたりにいる事は分かっているんですよ。」
 それに答える声は無く、無言でフェイトが玄関先から現れる。
「良く分かりましたね。」
 慌てるでもなくフェイトはクレアと真正面から相対する。
「気配を読みましたから。今度は玄関に何か仕掛ける気でしたか?」
「仕掛けるなんて、物騒な。ただ立て付けを無理やり悪くして出るのが面倒にしようとしただけですよ。」
「陰険ですね。」
 ストレートなクレアの暴言にも余裕の表情を崩さない。その代わりに別の問いを出す。
「どうして僕だと分かったんですか?あなたにとっての心当たりなら、マリアも居るでしょう?」
クレアは間髪入れず答える。
「マリアさんが私に何かしようというのなら、こんな回りくどい事はしません。それに、さっきまでの騒動は全てリアルタイムで行われました。彼女は自分で手を汚すタイプではないでしょう。・・・それに関してはフェイトさん、あなたも同類の筈ですが、敵を斬った時の感触を心地よく感じる気違いなら話は別です。」
 クレアの答えにフェイトはお見事、と拍手した。
「その通りですね。まあ、それくらい察してくれないと、僕のライバルに値しませんから。」
「あら、いつあなたが私のライバルになったんですか?変態なんて眼中にありませんが。」
 クレアもフェイトも笑顔のまま言葉の暴力合戦に入る。
 その時、間が悪いのかどうか厨房の兵士が例の鍋を持って現れた。
「え?クレア様・・・・・・これは一体・・・?」
 クレアとフェイトが睨み合っているのを不思議に思い、その場に立ち尽くしてしまった。クレアはその鍋を掴み取ると思いっきりフェイトに向かって投げつけた。それをフェイトは剣で払い、鍋はフェイトの横を抜けて落ちる。転がった鍋から虫が大量に飛び出る。
 女性兵士がひぃ、と小さく叫ぶが、フェイトとクレアは微動だにしない。
「クレアさん、意外と平気みたいですね。全部毒虫なんでしょ?これ。」
「何処で調べていつ集めたかは分かりませんが、その通りです。ですがフェイトさん、そんなもの嫌がらせにもなりませんよ。」
 眉を顰めるフェイトの目の前でクレアは手をかざし高らかに叫ぶ。
「イラプション!!!!!」
 巨大な炎の塊が真っ直ぐに虫達・・・というよりフェイトを目指して向かっていく。多くの虫達が焼かれ、しかし中心にいるフェイトは動こうともしない。それどころか燃え盛る炎の中で相変わらず笑顔で立っている。
「・・・・・・施術も効かないのですか、異世界の変態さんは。」
 悔しそうにクレアが舌打ちする。それにフェイトはあっさりと首を振る。
「いや、そんな事は無いですよ。現に今までだってバーニィレースで有り金すったのがソフィアにバレた時、容赦なくサンダーストラック食らいましたから。痛かったなぁ・・・あれは。」
 でもそのお陰でこういうものを持ち歩くようになったんですが、とフェイトはトライエンブレムをひらひらさせる。
「それよりクレアさんの方こそ良いんですか?屋敷が燃えてますが。」
「そんなの心配要りませんよ。」
 そう言うとまたクレアは先程のように手をかざした。
「ディープフリーズ!!!!」
 強烈な冷気が屋敷を覆う。燃え盛る火炎が瞬く間に凍りつく。
「・・・・・・あなたも大概何でもありですね。」
 顔を引き攣らせながらフェイトは面白くなさそうに言う。
 そこに、また乱入者が現れた。上にいた部下達が今の騒ぎに駆けつけたのだ。
「クレア様、先程の火や氷は一体・・・?」
 そこにいるあんた達の上司の仕業ですよ、とフェイトが言う前に、クレアは素早く告げた。
「フェイトさんがいきなり炎を出して・・・錯乱してしまったみたいね。暫く拘束してシランドの地下にでも監禁しておきましょうか。」
「なっ・・・・・・!」
 今度はフェイトが絶句する番だった。この火やら氷やらは全てクレアがやった事ではないか。
「あ、あんなのどうやって僕が!?僕は施術なんて使えませんよ!!」
「ああ、そういえばフェイトさんって剣に属性とかつけれますよねぇ〜」
「!!!」
 ファリンの証言に黙ってしまうフェイト。確かにアレを使えばそれくらいの事はわけない・・・と思う。試した事は無いが。
「って、さっき鍋持って来た人が見てた筈・・・」
 しかしフェイトが指した女性はそこには居なかった。追い討ちをかけるようにクレアが言う。
「彼女なら、虫が飛び出た時に厨房に逃げ込んでそのままですよ。」
「・・・・・・・・・・・・・!!!」
 証言するものがいなくなった。
 敗北感を感じ始めたフェイトに、クレアが止めの一言。
「クリムゾンブレイドの名において、フェイト・ラインゴッドを指名手配し、逮捕します。」
 戸惑いながらもフェイトを捕まえに来た兵士達の手を避け、すかさず外に逃げる。だが、クレアは予め外に施術部隊を待機させていた。いつの間に。
「げっ・・・」
「フェイト様、事情は分かりませんがクレア様の命令です。大人しく捕まってください!」
「出来るか――――――!!!!!」
 フェイトは絶叫し、ヴァーティカルエアレイドで施術士達を吹き飛ばし包囲網を抜ける。だが、そこに待ち構えていたのはフェイトの仲間達。
「フェイト・・・・・・」
 ソフィアが悲しげな顔をする。
「ソフィア・・・僕は」
「最低だよフェイト!クレアさんを襲うなんて・・・・・・」
 ソフィアの口から出たのは全く身に覚えの無い話。
「はぁ!?何を言って・・・」
「フェイトの馬鹿――――――――!!!!!!!!!!!」
 問答無用でパフィ特製ボムをありったけ投げつけられたフェイトはあっさり気絶し、暫くの間シランドに拘束される事になった。
 ちなみに、あそこでフェイトの仲間達が現れたのはクレアが部下にこっそり命じて嘘八百を吹き込んだのだ。



 しかしその直後、駆けつけて来たアルベルの右手に絡み付いているマリアを目撃した瞬間、クレアとマリアの破壊戦争が始まった。
 

7000リクの「腹黒フェイトVS腹黒クレアの嫌がらせ対決」です。
実はこの話2本目です。最初に書いたのは全然嫌がらせしてなかったので全部書き直して・・・でもいずれそっちの方もUPするかも。
どの道あまりクレアは嫌がらせしてませんが。しかも全体的に何かが違う。イラプションとか。
ちなみに今回フェイトがこんな事したのは精神的ダメージを狙っての事のようです。そういう意味では、片付けに疲労困憊した分だけ成功と言えるかも知れません。
しかし何でシーハーツには牢が無いんだ?仕方ないから地下の部屋なるものを勝手に作ってしまったではないか!!


このページは GeoCitiesです 無料ホームページをどうぞ