彼らの幸せ




 セイファートリングを破壊してから、キールとメルディはセレスティアのメルディの家で仲睦まじく暮らしていた。リングを破壊したときの衝撃で、立ち位置の関係で二人はセレスティア側へ吹っ飛ばされてしまったようだ。リッドとファラはセレスティアでは見つからなかったので、きっとインフェリアへ飛ばされてしまったのだろう、という事になった。
「キールー!勉強はかどってるか!?メルディ夜食持って来たよー!!」
「夜食・・・?まさかまた、やたら濃い味付けの料理じゃないだろうな?僕の舌はセレスティア人とは違うんだ!!たまには普通の料理を作れないのか!?」
「まだ言うかー。セレスティア料理、普通よ。キールは味にうるさすぎよぅ。ファラが料理は食べるのにー・・・」
「だ、だからお前の料理がどうこうじゃなくて、セレスティア料理自体が受け付けないんだ!!インフェリア人とセレスティア人を一緒にするな!!!」
「リッドは食べてたよ。メルディが料理、美味いって言ってくれたよぅ。」
「あいつを真っ当なインフェリア人と思うな!!」
「ぶー、折角メルディ頑張って作ったのに・・・仕方ないからクイッキーと食べるよ。」
「ま、待て!食べないとは言ってない・・・」
「本当か?メルディが料理、食べてくれるか!?」
「あ、ああ・・・」
「ワイール!ありがとなキール!!!たっくさん作ったから、腹いっぱい食べてな!!!」
「な、何!?たくさんって・・・まさか5人分とかじゃないだろうな!!おいメルディ!!僕はリッドじゃあるまいし、そんなに食べられないぞ!!!!」
 ・・・一応、仲睦まじいようだ。




 そんなある日、ペイルティにバンエルティア号が出現したという話を聞いた。二つの世界が分離して以来ずっと影も形も無かった、あの巨大な船が、姿を現した。姿が見えずインフェリアへ落ちたのだろうと言われていたその船がこのセレスティアへ来ているという事は・・・
「チャット来てるって事だな!?やったねクイッキー、またチャットに会えるよ!!」
「クイッキー!!!」
 メルディに応えるようにクイッキーもぴょんぴょん跳ねる。しかし恐らく、チャットはクイッキーを見た途端泣き叫ぶに違いない。そしてチャットが一人で来るとは思えない。きっとインフェリアに落ちたであろうリッドとファラも来てるだろう。会えば騒がしくなるな、とキールは深くため息を吐く。けれど同時に、懐かしくもあり嬉しくもある。
「キール!早くペイルティ行こう!!メルディ早くチャット達に会いたいよ!!!」
 チャット以外に誰かが来ているという話は聞いていない。だがメルディもキールと同じ事を考えたようだ。既に複数形になっている。
「行こうって・・・もう準備万端じゃないか。」
 メルディは知らせを聞くなりバタバタ準備を始め、今ではとっくに旅に出る準備は出来ていた。
「ペイルティちょっと遠いからな。長旅には準備必要よ。」
「飛行艇で行けないのが面倒だな・・・」
 以前使っていた飛行艇は、セレスティア中の復興支援に駆り出された挙句に現在故障中。無理をさせすぎた所為だが、未だに直っていない。どこかに出かけるなら少しずつ回復してきた船やら鉄道やらの交通機関を使って行かなければならない。
「我慢するよー。チャット達暫くペイルティに居るって聞いてるよ。だからメルディ達が会いに行かないと駄目よ。」
「そうだな・・・」
 二つの世界の分離は突然の事で、その時セレスティアにも大勢のインフェリア人が居た。彼らはセレスティアに永住するつもりではないのだから、いずれは帰らなければならない。バンエルティア号が二つの世界を行き来できるのなら、それで帰る事も出来るし、またその技術を使って連絡船を作ることも出来る。多分バンエルティア号は暫く、それらの目処をつけるまで動けなくなるだろう。それにキール自身、バンエルティア号の技術には非常に興味があり是非ともその件に関わりたいと思っていた。
「確かに、何をするにも一度行かないとな。それに一旦インフェリアに帰っておきたいし。」
 セレスティアの薄暗い環境にも慣れてはきたが、それでもインフェリア人である以上、あの空気が懐かしい。自分には無縁だと思っていたが、望郷の念というものは誰にでもあるのだなと自ら感心していると、ふとメルディが自分を不安そうに見つめているのに気づく。
「メルディ?」
「キールは・・・インフェリアに帰りたいか?」
 さっきまでの浮かれようは何処へやら、神妙な顔つきになるメルディにキールは眉を顰める。いつも明るい彼女がこんな顔をする事は滅多に無く、また本当に悲しい時にだけ見せる顔である事を知っていた。
「キール、セレスティア嫌いか?メルディが事嫌いか?」
 一瞬メルディの言いたい事が分からず困惑するが、メルディの悲しげに揺れる瞳をじっと見ていて漸く気付く。分かればごく単純な事。
「お前な・・・何を勘違いしているかは分かるが、僕はまだまだセレスティアで学びたい事がたくさんある。それを放ったままでインフェリアに帰る訳無いだろ。僕はそんな中途半端な奴じゃない。」
「でも、キール・・・インフェリア帰りたい言ってた。」
「ちょっと帰ってみようかと思っただけだ。それに、もし本当にバンエルティア号が来ているなら、インフェリアとセレスティアの連絡は可能だという事だろう?それならいつでも会えるじゃないか。」
 メルディの大きな瞳がますます見開かれる。その瞳に再び明るい光が戻り口の形が歪む。
「そだな。ファラもリッドも、キールもメルディが仲間!!インフェリアとセレスティアも仲間!!これからもっとたくさん会えるか!?」
「当然だ。むしろ交流がある方が双方にとって有益なはずだからな。」
 何でも無い事のように平然と口にするキールだが、正直インフェリアの人間は未だセレスティアの人間を恐れる傾向があった。あれ以来インフェリアには行ってないし、向こうから派遣されてきたインフェリア人は長くここに居る事もあってセレスティアに馴染んできている。だがインフェリアの民はキールの知る限りまだセレスティアに頑ななだ。かつて自分もそうだったとはいえ、昔からの教えに固執し偏見を抱き異文化を跳ね除けるのは愚かとしか言いようが無い。
 キール自身、メルディに会わなければ未だにそんな愚かな人間の一人になっていたかもしれないと思うと、メルディに出会えた事を感謝しなければならない。最初に会ってから随分メルディに辛く当たっていた事も今となっては馬鹿げているとしか思えないが、当時はそれで当然のように振舞っていた。自分こそがメルディに嫌われていてもおかしくないというのに、メルディはむしろキールに嫌われないかと未だに恐れている節がある。それまでの態度が態度だったから当然とは思うが、メルディの場合は過去のトラウマが影響している。メルディは一人でインフェリアへ来てどうにかしようと決意し、親が敵だと言うのに辛そうなところを見せようとしなかっただけの強さを持っているが、同時に酷く弱い。
 今の所セレスティアを長く離れるつもりは無い。孤独を酷く恐れる彼女を放って帰るわけにはいかないし、セレスティアの知識をもっと吸収したいというのもある。一度インフェリアに帰るとか口走ったが、メルディが心配するようにセレスティアにもう来ないという選択肢は彼の中には始めから存在していなかった。だというのに。
「・・・全く、だから厄介なんだ、お前は。」
 浮かれてクィッキーと戯れるメルディには聞こえないように、キールは小声で呟く。
 彼にも、未だにメルディに本心を明かすだけの勇気は無かった。




 アイメンを出発し、二人は船でペイルティへと向かう。船旅はそう長くは無いが、短くも無い。そんな一時を穏やかに過ごす。
「なあ、キールはどれくらいインフェリアに居るか?」
「そうだな・・・一週間くらいラシュアンでのんびりしてこようかと思ってる。久々に晶霊温泉に行ってきたいしな。」
「晶霊温泉か!!いいなーメルディも行きたいよ。」
 セレスティアには無い晶霊温泉はメルディも気に入っている。羨ましそうに呟くメルディに、キールは事も無げに問う。
「なら、お前も来るか?」
 言われると思っていなかった言葉にメルディは一瞬仰天して反応が遅れる。そして繰り返して確認を取る。
「良いのか?」
「良いも何も、温泉にセレスティア人が使ってはならないなんて法律は無いぞ。」
「そうか!!ワイール!!温泉温泉!!楽しみだな、クィッキー!!」
 はしゃぐメルディは気づいていなかったが、このキールの発言に周りの他の客たちは目を丸くし、微笑ましげな目で二人を見ていた。聞きようによってはプロポーズ。その事実に気づいたキールは一人顔を真っ赤にして必死にそっぽを向いていた。







あえてノーコメントではいけませんか。
自分でも何書いてるか分からなくなってしまっているので、あんまり何も言えません。
一応クリア後キールとメルディだけ消息不明なので、多分セレスティアに居るんだろうなーという想像から始まりました。
・・・それだけ。


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