灼熱砂漠の中に存在するオリーブヴィレッジの宿屋で、世界を救うはずの一行は暑さに負けてひたすらだらけていた。
後はダオスの元に向かうだけだというのに今こんな場所に居るのは、バジリスクの鱗を集めておけば役に立つかもしれないという意見が何処からか出てきたためである。しかしそんな事で暑さにやられて動けないのでは、まさしく無様である。
そんな状態で、何度か召喚術で暑さを和らげる事が出来ないか色々試して失敗して、今に至る。
「そんな簡単に上手くいかないものですね・・・」
「ああ・・・エルフは魔術を日常生活に取り込んではいるが、彼らはこんな極端な気候の地域には居ないしな。」
先ほども砂漠でウンディーネを出したものの、本当に焼け石に水状態になってしまったばかりである。今は宿屋の中にいるので強い日差しを避けることは出来ているが、それでも暑い。
「アーチェ、アイストーネードで何とかならないか?」
クレスが同じくへばってるハーフエルフのアーチェに尋ねてみる。この時クラースが眉を顰めるがクレスは気づいていない。しかし残念ながら色良い返事は返ってこない。
「無理だよぉ〜てゆーかもう体力の限界〜〜。」
「そうか・・・」
ただこの暑さに耐えるしかない、という結論に至ると、どっと疲れが押し寄せてきた気がする。
「ああ、トーティスに帰りたい・・・」
「クレスってば、ホームシックぅ?情けないなぁ・・・でも、あたしも同意見。」
「ユークリッドは程良い気候で過ごしやすいですよね・・・」
ミントまでもが同意し、いよいよもって限界に達しようとしていた。
「せめて氷が大量にあればなぁ・・・」
ポツリとチェスターが呟く。その時突然クラースがポンと手を叩いて詠唱を始める。
「クラースさん?」
訝しげにクレスが名を呼ぶ。失礼ながら体力の無いクラースがついに気が狂ったのかとも思った。
「オリジン!!マクスウェル!!」
通常ならあり得ない二体同時召喚を成し遂げるクラース。クレスやミントは素直に驚くが、アーチェやチェスターは悲しげな視線を向ける。
「そこまで追いつめられていたんだね。出来ないはずの事をするなんてさ。つーか、人間追い詰められると結構何でもやれるもんなんだ。」
「とうとう非常識の仲間入りしてしまったか旦那・・・他シリーズの非常識人間達の中で、オレ達だけは普通だったはずなのに。」
「他シリーズ?何それ。」
「・・・そういや何だろ。急にパッと頭に浮かんだんだが。」
「あんたの方が訳分かんないよ。怪しい電波でも受信してるんじゃないの?やだ〜変〜チャネリング要らず〜!!!」
「何っ!!お前に変呼ばわりされる謂われは無いね!!お前の方がずっと変だろうがバカ女!!!」
「あたしの何処が変なんだよ!!」
何故か勝手に言い争いを始めるアーチェとチェスターに、クレスは止めようとしてアーチェのホウキで弾き飛ばされる。ミントはおろおろしながらもクリティカルを食らったクレスの治療をする。喧嘩していて温度も上がっている気がする。完全に迷惑な二人に、クラースはオリジンをけしかける。
「オリジン、さっき言ったとおりに頼む。」
「了解した。しかし、我はこんな事に使われるために契約したのか・・・」
「主の命には絶対だろう?」
ズバリと言われ、ぶつくさ言いながらクラースの話の通りに力を振るう。すると、見る見るうちに喧嘩している二人が氷に覆われる。
「おおっ!!氷!!!!」
「そんな事言ってる場合じゃありませんよクレスさん!!二人が氷付けになってしまったのですよ!?」
至極常識的な事をミントが口にするが、今のクレスにはそんな事聞こえていない。感無量という目でクラースを見つめるクレスに、二人の心配という単語は存在しない。
「クラースさん!こんな事が出来るなら早くやってくださいよ!!!偉そうに講釈垂れていたわりに役立たないなぁーとか思っちゃってたんですよ!?」
「・・・オリジン。」
根が素直なのか何なのか失礼な事を堂々と口走ったクレスをも氷付けにさせてクラースは残ったミントに説明する。
「オリジンは根源の精霊だ。全ての存在の根源を操れるのなら、空気中の水分を氷に変えることも出来ると思ってな。」
「呑気に解説してる場合じゃありませんよ!!早く治さないと・・・」
「暫く放っておいても大丈夫だろう。この程度で死ぬような奴らなら、ダオスに立ち向かうのは無理だ。」
「尤もらしい事を言って誤魔化そうとしないで下さい!!!」
全く話を逸らせない仲間思いもとい真面目なミントに、クラースはこっそり舌打ちした。しかしミントの言葉に素直に従う気も無い。
「そういえばマクスウェルはどうした?分子の精霊のアレと協力すればもっと楽になるだろうに。」
「精霊をアレ呼ばわりか・・・まあ良い。マクスウェルは永遠のジジイだからな、疲れたとか言って早々に帰った。」
「だらしのない・・・。」
そう言うオリジンもマクスウェルをジジイ呼ばわりしているし、クラース自身も体力無いからしょっちゅうバテたりする事をミントは知っていた。が、口にしないのは彼女の優しさであり、また他の連中と違うところでもある。
ふと、心配そうにクレスたちを見たミントは、血相を変えてクラースを呼んだ。
「ク、クラースさん!!!あの、クレスさん達が真っ青になってます!!!」
「ん?」
気だるそうにミントの声に振り返ると、氷付けにしたクレス達の顔が段々真っ青になってきている。氷を通しているからそういう風に見えるのかと思ったが、それを差し引いてもかなり真っ青になっている。
「主よ。この人間達の生命力が失われてきている。このままでは死ぬぞ。」
オリジンの言葉にミントはさあっと蒼白になる。しかし犯人のクラースはあっさりと頷く。
「そうか。まあ、一度死ねば馬鹿も治るだろう。」
「クラースさんっ!!」
「冗談だ。イフリート!!」
全然冗談に見えなかったクラースの眼にますます不安を感じたミントであったが、一応イフリートで溶かしてくれたのでほっと一安心する。
解凍したクレス達に治癒術を使うが、すぐには回復しない。結局宿屋で一晩過ごす羽目になってしまっていた。
結局バジリスクの鱗は諦める事になったのだが、それだけでは終わらなかった。
クレスはともかく、氷付けにされてアーチェやチェスターが納得するわけが無い。二人はクラースへの復讐の機会を伺っていたのだが・・・
「あんにゃろ〜〜、TP消費してまでシャドウやプルートなんて呼び出してる〜〜!」
「放っておけば、すぐにTP尽きるんじゃないか?」
「まあそれもそうなんだけど・・・ん?」
二人は離れたところからクレス達の後を追う形になっているため、アーチェの肩を叩いて言葉を止めた人物はチェスターしか居ない。だがチェスターは今目の前に居る。振り返ると、以前モーリア坑道でクラースが騙して契約した魔界の生き物グレムリンレアー。
「あ、お前達だな。あいつが黙らせてこいって言ってた奴。」
「あいつ・・・クラースの旦那の事か?」
「うん。じゃあ黙らせるぞー!」
「へ・・・」
大量のグレムリンレアーが突進してくる。チェスターとアーチェは青褪めながらも叫ぶ間もなく盛大に噛まれまくった。
「・・・あら?アーチェさんとチェスターさんは?」
「・・・気にしない方がいいよ、ミント。」
「うむ、余計な事に首を突っ込まないのは、長生きする秘訣だぞ。」
「・・・・・・。」
首を傾げるミントを横目で見ながら、ここに居ない二人を襲っている惨劇にため息をつきつつも、魔界の王まで召喚中のクラースに逆らえるわけもなく、先行きに不安を感じたクレスだった。
二体同時召喚がどうこう言うのはただのネタなので気にしないように。現にすぐ後シャドウとプルート出してますし。
一応クラースさん最愛だしチェスターも好きですよ。扱い悪いですが・・・
何故かオリジンはクラースにこき使われている印象があります。
このページは です 無料ホームページをどうぞ