これを逃す手は無い




 イセリア人間牧場の攻略の際、ゼロスはやや不満そうな顔をしていた。彼にしてみれば女性(しいな)が一人減った上に、メンバーの空きに野郎(クラトス)が入ったのが気に入らないようだ。裏切り者だという話なのによくもそう容易く信じられるものだ、と。
 しかもそれを決めたのは、裏切られた本人のロイドである。その上他のメンバーも文句を一切口にしない。リーガルやプレセアはともかく、シルヴァラントから来たメンバーは皆彼に裏切られたのではなかったか。真っ当な感覚を持つ(と自負している)身としては納得行かない。
「ロイド、ちょっと話があるんだが。」
「ん?」
 とにかく決定したロイドを引っ張りメンバーから離れた場所に引きずり込む。聞かれても問題はないはずなのだが、一応気分である。
「なあロイド、何であいつと一緒に行く事にしたんだ?いざとなった時また裏切られるかもしれねーのによ。」
「ドワーフの誓い、第18番。騙すより騙されろ、だ!」
「・・・お気楽だねぇ・・・」
 まともな返答を返さないロイドに、ゼロスは頭を掻く仕草をする。困惑するゼロスだが、その後でロイドがくいっと親指でクラトスを指差す。
「あいつ、いい装備してると思わねーか?」
「ん?そういやそうだな。あのミスマッチな白い服と紺の服とで誤魔化されていたが。」
「誤魔化されんなよ・・・とにかく、あいつの装備、根こそぎ奪えたらこの先楽になると思わねぇ?」
 笑顔のロイドに、ゼロスも意味を理解したようでニヤリと笑った。
「な〜るほど。どうせ裏切り者なんだから、アイテム強奪くらいしても罪にはならないよな。さっすがロイド君、珍しく冴えてるぅ〜〜」
 元気よくロイドの背を叩きながら不穏な事を口走るゼロス。問答無用で犯罪です。
「いやいや、それ程でも・・・」
 あまり誉めてないはずなのだが、ロイドは素直にいやいやと照れる。
 ロイドとゼロスの目が、怪しげに光った。




 そんな姑息な相談をする声が、天使であり聴覚に優れているクラトスに聞こえないわけがない筈なのだが、彼はロイド達の企みには気付いていなかった。
「さあ、とっとと白状してもらおうか!!4000年前の古代大戦で、当時存在していた王朝は・・・」
 何故なら、歩く古代生物(4028歳)のクラトスをリフィルが放っておくわけがなく、ロイド達が話をしていた時には既に、遺跡モードのリフィルにとっ捕まっていたからだ。
「今はそんな話をしている場合では・・・」
「そんな話だと!?古代に失われた数々の文明や文化を知ることは、考古学的に重大な意味を持つものだ!それを知るならば当時を生きていた者に聞くのが手っ取り早い!その情報を持っている貴様を易々自由にすると思うか!!さあ吐け!!!」
「・・・・・・。」
 四大天使のプライドからか泣き言は一切口にしなかったが、クラトスの顔にはしっかりと「帰りたい」と書いてあった。何処へなのかは敢えて何も言わずにおこう。とりあえず背に哀愁を漂わせていた。
 とにかく妙なものに捕まった所為で、ロイド達の企みを聞きとめる事は出来なかった。こそこそ離れていったので多少は気になっていたのだが、後にちゃんと把握しておかなかった事を後悔する。




 チーム分けでクラトスはあの怪しげなロイド&ゼロスと共に動く事になった。その組み合わせに一抹の不安を覚えなくはなかったが、コレットも居る為そうそう危険な事はしないだろう、少しくらいは成長しているだろうと甘く見ていた。ぶっちゃけ息子への甘さも含まれている。そのために隙が出来てしまっていた事も、後になって彼は酷く後悔した。
 クラトスの遥か後ろで、小声でゼロスが呟く。
「ターゲットかくに〜ん、油断している今ならOKだぜ〜。」
「ああ、最初に失敗すると警戒されてしまうからな。」
 ぼそぼそ二人が喋っていて、勿論クラトスにも聞こえているのだが、彼はターゲット=ディザイアンだと勘違いしていた。
「つかよ、ターゲットって言うと(ディザイアンと)混同しちまうから、今度からはゴキマントって呼ばねぇ?」
「お、それ良いアイディアだな。それ採用!」
 混同云々の言葉に一瞬クラトスは首を傾げたが、流石に二人の心の中までは読めない。しかしこの時も気にしなかった。ゴキマントの意味が気になったが、特に問い質そうともしなかった。
「いち、にの、さんで行くぜ。準備は良いかい?」
「ああ、いつでもOKだぜ。目標ゴキマント、いち、にの・・・」
 敵に向かっていくのかとクラトスは思う。そして丁度目の前にディザイアンが現れ、二人は速攻で気付いて、あの合図でもってディザイアンに攻撃を仕掛けるのだと判断した。タイミングを合わせて攻撃など、裏切り者の自分にはもう無い事だと思っていたが、と薄く笑う。
「さん!!」
 二人が掛け声を出したと同時にクラトスはディザイアンに素早く斬り付ける。クラトスより後ろにいたロイドとゼロスは同じように攻撃に加わるものと思っていた。が・・・
「いでっ!!」
「ぶげっ!!」
 ゴン、と大きな音が後ろから聞こえた。クラトスの最初の一撃で倒れたディザイアンはそれ以上目を向けられる事がなく、クラトスは訝しげに後ろを振り返る。すると・・・
「いって〜〜ロイド!お前も〜ちょっと飛ぶ方向ってもんを考えろよ!!」
「それはお前もだろゼロス!ていうか降りろ!!お前重いんだよ!!」
「何をっ!?この美しくも逞しい永遠の美青年ゼロス様に向かって・・・」
「重いものを重いと言って何が悪い!!!」
 ロイドとゼロスは、飛んだ直後に目標であるクラトスが前に出てしまったため、同じ場所目掛けて飛び掛った二人は頭から衝突してしまったのだ。はっきり言って無様である。
「二人とも・・・だいじょぶ?」
「お〜ぅ、俺さまは平気だぜ〜〜。心配してくれてありがとう、コレットちゃん。」
「お・り・ろ!!!!!」
 そんな二人(主にロイド)の姿を見て、まだまだだな・・・と息子を見守る父親のような目で微笑ましく見守っていた。ロイド達の企みにはまだ気付かない。




 暫くすると、今度はコレットがちょろちょろとクラトスの周りをうろついていた。様子を窺っているようでもあり、何かに戸惑っているようでもある。
 コレットは正直困っていた。さっきゼロスに紙のメモで例の作戦を知らされたのだ。しかも黙っているだけならまだしも、コレットの特技でクラトスの武器か防具を盗めという事だ。
 確かにクラトスの持っている装備を手に入れられれば、この先の戦いは楽になる。ただでさえ自分は戦いはあまり得意ではなく、前衛のロイドやゼロスはいつも傷だらけ。しかし、だからと言ってそんな事をしていいのだろうかと良心が邪魔をする。
 ちなみにロイドとゼロスは少し離れたところから様子を窺っている。普通に歩いていても転ぶコレットが、クラトス相手にアイテムスティールが成功する筈が無い。クラトスは相変わらず全く警戒していないが、コレットでは警戒していない相手でも成功率は確実に低い。ロイド達もそれくらいは分かっていたようで、コレットがアイテムスティールをかけた瞬間に飛び出て取り押さえるつもりらしい。
「クラトスさん・・・ごめんなさいっ!!」
「!!」
 いきなり自分に向かってきたコレットに、クラトスは流石に度肝を抜かれ反応が遅れる。その隙にロイドとゼロスも飛び出しクラトスを取り押さえに掛かった。
「クラトス、覚悟!!」
「俺さま達のために犠牲になってくれっ!!!」
「何ッ!?」
 今度こそ二人揃ってクラトスを取り押さえる。流石のコレットでも相手が止まっていれば失敗しないだろう。ロイド達がクラトスを抑えている隙にコレットが装備を剥ぎ取る・・・筈だったが、肝心のコレットはこけていた。
「失敗しちゃった・・・」
 舌を出して起き上がるコレットの姿はいつもの通りなのだが、何も今失敗しなくたって・・・とロイド達は無言で絶叫する。
 ゼロスはいち早く立ち直って自らクラトスの持つフランヴェルジュを剥ぎ取ろうとしたが・・・いくら力を込めても取れない。見た目より腕力あるなこのおっさん、と失礼な事を思いながらロイドに援護を頼む。
「ロイド!こいつ思ってたより固いぞ!お前も手伝え!!」
「おう!!!」
「・・・・・・何をだ?」
 元々の低音で更に低く抑えた声が二人の耳を通る。顔など見るまでも無く怒っているだろう。素早く剣を振るったクラトスからさっさと離れ、ロイドとゼロスは身構えた。3人の間に漂う緊張感はボス戦そのもの。コレットが一人流れについていけずにおろおろしていたが、最早3人ともお互いに意識が集中していた。
「こうなったら仕方ねぇ。クラトス!あんたの装備、特にその剣を俺たちが貰う!!」
「大人しく俺さま達に身ぐるみ剥がされろってんだ!!」
 傍若無人、人でなしの言い草だが、クラトスはそんな二人に対し自嘲気味に笑った。既にロイド達を裏切っておいて、今更前のようになれると少しでも期待した自分が愚かだったのだと。  とりあえずアホ神子(ゼロス)は殺しても構わないが、任務でもないのに息子には出来るだけ剣を向けたくない。クラトスは自分から剣を鞘に納めて背を向けた。
「あ、逃げるのかクラトス!!」
「ロイド、お前はここに何をしに来ている?私の装備を剥ぎ取る為か?それとも魔導砲を止める為か?」
「・・・そ、それは・・・」
「己のなすべき事を間違えるな。お前は、もう間違えないのではなかったのか?」
 クラトスの言葉にロイドは歯噛みする。一見かっこよさげだが、ゼロスにはあまり真面目な会話には聞こえなかった。追い剥ぎ犯を逆に捕まえて説得しているようなものなのだから。嬉々として参加した自分がそんな事を思うのも変な話なのだが。




 その後何事も無く・・・と言ってもそれからもずっと装備そのものは狙われ続けていたのだが、イセリア人間牧場を開放し、ロイド達は無事仲間たちと合流した。他の良識ある仲間達と合流して、漸く警戒しなくても良くなったとクラトスは安心した。しかし、そんな甘い展開は許されなかった。
「ロックブレイク!!」
 突然地面から無数の突起が飛び出した。言うまでも無くジーニアスの術だが、クラトスは即座に飛んで避けた。このまま羽を出して去ろうとしたが、そのクラトスの更に上まで跳躍したプレセアが無表情で斧を振るった。相手もバランスが取り辛いのかたまたま攻撃は当たらずに済んだが、こちらもバランスを崩して落下してしまう。
「レイ!!」
 クラトスが着地した瞬間にタイミングを合わせたかのように(いや実際合わせたのだろう)、光の雨がクラトスを襲う。幸い光系には耐性があったのでガードで耐え切ると、「残念」と罪悪感の欠片もないリフィルの声。
「流石に固いわね。天使だなんて鼻で笑っちゃうくらい間抜けな存在なだけの事はあるわ。」
「連続的に攻撃仕掛けて戦闘不能にするしかないんじゃないの?味方として登場している今なら弱っちいはずだからさ。」
「そうね。力ずくというのは好みではないけれど、目的のためには多少の犠牲は必要でしょうね。というわけで、覚悟はよろしくて?」
「出来る限り痛くないようにするからさ。」
 笑顔で凶悪なことを口走るハーフエルフ姉弟に、クルシスの四大天使ともあろうものが心底恐怖する。ロイドやゼロスなど比ではない、本当の死の恐怖がそこにあった。
 自分の装備を狙っていたのはロイドとゼロスだけではなかった。いつ示し合わせたかは分からないが、リフィルやジーニアス、プレセアもグルだったのだ。良識ある大人の筈のリーガルは見ない振りをしている。汚い大人だ。
「・・・捕獲、します。対象の生死は問わず。」
 斧を振るってきたプレセアも、再び斧を構えて迫ってくる。無表情なのが余計に怖い。
 逃げなければ殺される。そう確信したクラトスは今度こそ素早く羽根を出して逃げ出した。人間牧場の人々が大勢自分をじろじろ見ているのも構わず。
「あ、逃げた!!」
「お待ちなさい!!せめて装備品を置いていってから逃げなさい!!!!」
 言っている事が完全に悪人の彼らにもめげず、救出した人間達やショコラは自分達の行く先について話を切り出した。
 空を飛んで逃げるクラトスは、ロイドが特にフランヴェルジュを盗ろうとしていた事を思い出し、いずれはこの剣を譲っても良いか・・・と思ってたりしていた。
 救えないレベルの親バカであった。








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クラトス好きな人ごめんなさい。これでもクラトス好きです。
4028歳のじじいだろうが、天使なんてアホ設定があろうが、白い服が超絶的に似合わないと思っていたり紺の服がゴキ〇リに見えたり、どう見てもロイドをストーカーしていたように思えたり、真性の親バカだろうが(誉めてない誉めてない)
つか、あの装備欲しいとか思いませんでした?私は欲しかったです。剣だけは後に手に入るとしても、あの時点で欲しかったです(ゲームバランス崩壊するだろうが)


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