〜宝石〜
10の月10番目の日
朝から魔術師の所を訪れる。
前に会った導師とは違い、情熱的に話す導師だった。ただ、融通が効かなさそうなと
ころが有る。途中で質問を挟もうとしても、挟むタイミングがつかめない感じだった。
依頼の内容は、届け物だ。何でも貴重な魔法の宝石を隣町のある金貸しの家まで運ん
で欲しいとのこと。
この宝石に関する研究をするのに借金をしていたのだが、この度、その研究が終わっ
たので、この魔法の宝石を渡すことで借金を返すことにしたのだとか。
この宝石には自由に精霊を閉じこめておくことが出来るのだという。
壊れやすいので十分に注意してくれとのこと。精霊が閉じこめられているときに宝石
が壊れると中の精霊は激しい苦痛と共に精霊界に帰ってしまうのだそうだ。この宝石は
落としたりすると、案外割れてしまいやすいとのこと。
精霊使いのいる冒険者を選んだのも、精霊使いならそんなひどいことはしないだろう
と思ったからだという。普通、精霊使いはそんな品物自体を許せないと思う気がするの
だが。
宝石の使い方、つまり、精霊の閉じ込め方、開放の方法、は別便で金貸しまで伝える
ということだった。我々がこの宝石を持ち逃げするのを警戒しているのだ。当然だった。
報酬は、前金で半分、一人頭700ガメルが渡された。残りの半分は受取証を持って
戻ってきたときに払う、とのことだった。
話を聞いたので、早速、出発することにした。
10の月11番目の日
昨日は、街道沿いの宿に泊まったが、今日はちょうど良い宿場がなかったため野宿に
なる。目的の町まではあと2日である。何となく、誰かに見られているような、嫌な感
じがしている。
賢者の話によるとこの宝石は一般に知られている精霊封じの魔石とは違うところがあ
るという。一般に知られている、といっても私は知らなかったのだが、石は白い石なの
だそうだが、この石は黒い色で角度によって緑がかって見えたり赤みがかって見えたり
する。
封じることの出来る精霊も一般に知られている石では、そばに出現した下位精霊1つ
だけを強制的に封じるだけなのに対して、導師の話の様子では、いくつかの精霊を自由
に封じることが出来るようだ。導師はあまり詳しくは語らなかったので詳細は分からな
いが。
まあ、貴重な物であることには間違いがない。それに、使い方が分からないことには
持っていても意味がない。導師が物と使い方を別に届けさせているのは良い考えだ。