船の上から行く手を見つめる一人の女性がいた。
頭にはきっちりと布を巻いている。使い古された布は所々黄ばんで擦り切れている。
舳先に立ち、腕を組み、まっすぐ前を見据えている。細い体は風に吹き飛ばされそうだ。
航海の途中何度も強い風にぶつかった。かろうじて転覆は免れていたが、進むに連れて風の精霊力が強くなる、と精霊使いは言っていた。
先には陸地が見えた。
4人の冒険者は小舟の上から砂浜に下りた。
「ありがとう。これからどうするんだ」
左手を布で縛った男が船乗りに礼を言う。
「聖王国にでも寄って稼いでから戻るよ。でも、本当に帰ってちまって良いんだな。大陸から来る船なんて無いぞ。後で文句言われても知らないからな」
「ああ、大丈夫だ。帰りの手段はある」
「なら良いんだ。見えないところで人殺し呼ばわりされてちゃかなわないからな。でも十分気を付けるんだぜ。教えたことを忘れずにな」
船乗りはそう言い残すと小舟に乗って、逃げるようにして中型の帆船に戻った。その帆船もしばらくして動き始め、西の方に去っていった。
冒険者たちは船が見えなくなるまで見送った後、陸地の方に向き直った。