禁じられた言葉
アレクラストの深い森の中、柔らかそうな皮の鎧を着た二人組が歩いている
「もうそろそろ入り口があるはずなのだが」
「お前の見つけたという文献が間違っていたのじゃないのか。
世界を書き変える鍵の言葉など在るとは思えんぞ」
「そんなはずはない。あの本は由緒正しい貴族の書庫から探し出した物だ。
しかも”魔を生む”ガザイル、リムナスガジル=アネミスの署名入りだった。」
「そうか、でも、私には疑わしく思える」
「まあ、本当に鍵の言葉なんてもの、あるかどうかは疑問だがな。
でも、もし、それが、悪人の手に渡ってみろ。大変なことではないか」
「お前の口からそんな言葉が聞けるとは思わなかったぞ」
「まあ、他に価値あるお宝も眠ってると踏んでいるのだがな。」
「そんなことだろうと思った」
・・・
「さっさと開錠の呪文を唱えればよいものを」
「ふう、この先何があるか分からないんだ。気力は取っておきたい。
その腰の剣の出番も近いんじゃないか」
「こんな物、出来れば使いたくないと思っている」
「嘘付け、剣を持つ手が武者震いしているようだが。おっ。魔剣じゃないか。
前に持っていたのと別の物だろ。さすがお坊ちゃまは違う」
「良くある対魔法生物用の魔剣だ。家に何本かある内の一つを持ってきた。
それから、私のことをお坊ちゃんと呼ぶのはよせ」
「わ、わかった。こっちに剣を向けるな」
「先に行くぞ」
・・・
「なあ、例の鍵の言葉だけどな。俺、本当にあるように思えてきた」
「確かに、これだけ念入りに警備があるというのは不自然だ」
「理屈からも合ってるんだろ」
「まあな。マナライ様は世界はマナという単一元素を言葉で紡いで
世界が出来ているとおっしゃっている」
「だったら言葉で世界を編み直すこともできるって言う訳だ」
「理屈ではそうなるな」
「めったに人前に姿を見せない偏屈なじじいだが言ってることは正しいもんな」
「、、、何を失礼なことを、、先に行くぞ」
・・・
「、、はあ、はあ、もう持たねえ、、、部屋の奥にあるあの箱に何も無かったら、
今日は手ぶらで帰るしかねえ」
「そうだな、二人とも気力は限界だし、持ってきた魔晶石も使い切った」
「魔法の鍵が掛かってたらお手上げだぜ、何せ気力はもう無いんだからな。
やっぱり司祭の仲間が必要だったか」
「そんなことを今言っても仕方が無かろう。それよりさっさと箱を開けるぞ」
「分かったよ。えーと、どうやら罠はないようだな。鍵はっと、、、
、、、ああ〜、やっぱり魔法の鍵が〜」
「では仕方がない、とっておきの魔晶石を使おう」
「、、、あんた、さっき魔晶石は使い切ったって言わなかったっけ」
「どんな時も最後の用心はしておくものだ、、、よし、開いたぞ」
「、、、まあいっか。中にはやっぱり本が一冊入っているようだな。」
「うむ。題名は、世界を変える鍵の言葉〜創世魔術の奥義。内容は、、」
「おい、おい。簡単に中身読むなよ。見るからに危険な本じゃないか」
「概要を示した部分があったもんでな。それによると、、なるほどやっぱりそうか」
「な、何が書いてあるんだ」
「鍵の言葉が存在することは分かっているがその言葉は分かっていない、そうだ」
「それじゃ意味無いじゃないか」
「この世界が創られたとき、神は言葉を編み込んだ。
特に重要な言葉、例えば、世界をほどいてしまうような言葉は、言葉の神に託され、
そして、言葉の神はその責任の重さからほとんど言葉を話さなくなったそうだ。」
「言葉の神が言葉を話さないとはね。その神っていうのはラーダじゃないのか」
「いや、ラーダではないらしい。ターキーいやタルキィーと書いてあるぞ」
「知らない名前だな。といっても俺の知識は少ないがな」
「私も知らなかった。まあ、その神の司祭がいない限り、
世界は安泰だって事でおまえも良かったな」
「良いわけあるか。お宝は見つからなかったんだぞ」