第3巻

挿絵 みきこさん♪




「初めての世界&お絵描きバトル」


 猫ときの子。人が見ればいかにも珍妙でたよりなさげな二人の
旅人パーティーは、小さな湖のほとりで暖をとっていた
 ここはキャットタウンから半日ほど歩いたところにある
ビビアラ湖。限りなく透き通ったその水は夜空の星々を忠実に
再現し、二人を宇宙空間で漂っているような不思議な感覚に包む。
 姫は焚火の光に顔をオレンジ色に染めながら、どこかボ〜っと
した表情でつぶやきはじめた。
 「・・・こんな綺麗な場所があるなんて姫知らなかったにゃ・・
  姫の回りはいつもゴミと臭い匂いがいっぱいだったにゃ。
  でもここは綺麗にゃ〜・・・心が落ち着くにゃ〜・・・。」
キャットタウンの裏路地と同じ世界に存在しているとは到底思えない
空間に、姫は目をて細めうっとりしている。
 そんな姫の様子を黙って見ていた我らが主人公ここあがふいに
話しかけた。
 「ナッツ入りチョコ食べる?(・3・)/」
ロマンチックな雰囲気ぶち壊しである。

 

 「・・・い、今はいらにゃいにゃ。(まったく、こいつの頭の
  中はお菓子のことしかにゃいのか?)」
そのとうりだ姫よ。あとはほんのわずか松茸になるという歪曲した
夢があるだけだ。
 ここあの情緒のかけらも無い言葉で幻想世界から連れ戻された
姫が、今後の旅の方針について尋ねてきた。
 「ところでここあ、これからどうするにゃ?行くあては
  あるにょか?姫は松茸になる方法なんてこれっぽっちも
  わからにゃいにゃ。」
ここあが少ない脳ミソをフル回転させて答える。
 「ん”〜どうするかなぁ?キャットタウンに行けば松茸になれる
  って聞いたのにぃ〜ここあ虫め(・ε・)」
忘れてしまった読者に説明しておかねばなるまい。ここあ虫とは
ここあが旅の途中に出会ったエルビーという生き物で、新種の
虫を発見してしまったと思い込んだここあが勝手に「ここあ虫」と
名付けたのである。ここあはここあ虫に言われてキャットタウンへ
来たわけだが、そこで得たのは松茸になれる方法ではなく、
絵描きになりたいという夢をもった旅の友であった。
 「とりあえず朝になったら次の街へ行ってみようよ。そすれば
  珍しいお菓子に出会えるかも!(>w<)/」
お菓子じゃないだろここあよ。それを聞いた姫が再びトロ〜ンと
した表情でつぶやいた。
 「次の街か〜どんな街かにゃ〜姫もっといろんなモノを見て
  見たいにゃ・・・ここあは・・・・!!!!」
姫がここあに話を振ろうとして振り向くと
 「(πεπ)zzzZZZZZZZ・・・」
 「寝てるよおい!早っ!!」
うむ、寝る子は育つ。育ってどうする。とにかく二人は朝日とともに
次の街を目指すため、眠りについたのであった。


 商業の街バイヤード。ここはマシュドリームでも有数の商業都市で、
この街で手に入らない物はないと言われている。大小様々な店が
軒をつらね、客を呼び込む店主達の威勢のいい声が響きわたる。
 その街の中でも特に大きな商店街を、キョロキョロしながら歩く
田舎者丸だしの二人がいた。ここあと姫である。
 「うわぁ〜すんごいね〜いろんなお店がいっぱいだ(・0・)」
 「う、うん姫ちっと恐いにゃ・・・」
自分の住んでいた町とはあまりにも違う光景に、姫はここあに
ピッタリと寄り添うようにして歩いている。
 「ここなら松茸になっちゃうよ薬とか売ってるかも!(>ε<)」
だといいがな。
 しばらく辺りの店を覗きながら歩いていると突然姫が声を上げた。
 「あ!!!ここあ、あれ見るにゃ!ほらあそこ!!」
そう言うと、姫はさっきまでの脅えっぷりはどこえいったのやら、
ここあをおいて走り出した。
 「お?なになに?うんめぇもんでも見つけちった?(・3・)」
まだまだ色気より食い気のここあが姫の後を追う。
 向かった先には一軒の店が建っていた。ショーウィンドウには
様々な種類の筆や絵の具、キャンバスなどが所狭しと飾られている。
どうやら画材店のようだ。
 「うわぁ〜綺麗な紙にゃ〜真っ白にゃ〜。姫の知らない色の絵の具
  がいっぱいあるにゃー!」
 姫はショーウィンドウにピタリと張り付いて、まるでクリスマス間近の
おもちゃ屋に集まる子供のように感嘆の声をもらした。
 「なんだーお菓子屋さんじゃねぃのか〜(~ε~ )」
お菓子星人ここあは心底がっかりしているようすだ。
 「いいにゃ〜姫もあんな道具で絵を描いてみたいにゃ〜・・・」
ロストチルドレンの姫にとって、白い紙に絵の具で絵を描くことなど
夢のまた夢である。
 「ここあもいろんなお菓子でお菓子の家を建てたいなぁ(・3・)」
「も」じゃないだろう「も」じゃ。
 どれくら時間が経っただろう。相変わらず姫はショーウィンドウに
へばりついている。そんな姫の様子を見ていたここあが口を開いた。
 「姫姫〜そんなに欲しいなら買ってくれば?(・3・)」
  「え!?で、でも・・・姫お金持ってないにゃ・・・」
ここあの思いがけない提案に姫が口ごもる。
 「お金ならここあ持ってるよ。でもあんま高いやつにしないでね、
  お菓子買えなくなっちゃうから(・3・)/」
 「い、いいのかにゃ!?ここあ買ってくれるのかにゃ!?」
姫の瞳がしだいにキラキラと輝きだす。ここあは言葉を続けた。
 「いいに決まってるじゃん。ここあと姫は一緒に旅するお友達だよ、
  だからここあの持ってるものは姫もの。姫の持ってるものは
  ここあの物だよ(・3・)/」
ジャイアン理論が飛び出さなくて良かったな姫よ。
 「ありがとにゃー!感謝にゃー!」
 「うん、そのかわりと言っちゃなんですが、うんめぃもの見つけたら
  頂戴ね(>x<)」
 「なんだってあげるにゃ!パンの耳だろうが飲みかけのジュース
  だろうがあげちゃうにゃーー!」
君のうんめぃもんはそんなものか姫。そう言いいながら姫は勢い良く
店の中へと消えていった。



 目の前をランチに出かける人々が通り過ぎてゆく。姫の買い物を店の
前で体育座りをしながら待っているここあのお腹がキュ〜と鳴った。
 「お腹すいたなぁ〜姫おせぃなぁ〜(・3・)」
 ここあはラムネを口の中でゆっくりと転がしながらつぶやいた。
ラムネは噛むより舐めた方が長持ちする。
(ここあ知恵袋。たいした知恵じゃねぃ!Σ(+ε+;))
 と、店のドアがゆっくりと開き、中から買い物を終えたであろう姫が
現れた。待ち焦がれていた様子のここあはすかさず話し掛ける。
 「んもぉ〜遅いよ姫。ここあ背中とお腹が
  ドッキングだよう(>w<)」
 「ご、ごめんにゃ。んじゃお昼ごはんたべるかにゃ。」
 姫はここあの言葉に申し訳なさそうに答えた。
が、どこか様子がおかしい。
夢にまで見た白い紙と絵の具を手に入れて浮かれている
であろうはずの姫の表情は明らかに暗く、そもそも手には何一つ
持ってはいなかった。
それに気づいたここあが問い掛けた。
 「姫なんで手ぶらなのん?何も買わなかったの?(?3?)」
 「あ・・・えと・・・んとんと・・・」
姫の様子は明らかに変だった。買い物をしたのに何も持って
いないのもそうだが、ここあの問いかけにも口ごもっている。
 「そうそう!姫やっぱ買わないにゃ。姫はお金の大切さ
  知ってるにゃ。
  旅を続けるのにはお金かかるにゃ。だから節約するにゃ!」
 姫はさらに言葉を続ける。
 「そんなことよりここあ。姫もおなかぺこぺこにゃー。とっとと
  お昼ごはんにしようにゃ。何食べるかにゃ?お魚?お肉?
  やっぱりお菓子がいいかにゃ?姫は食べれればなんでも
  いいにゃ。」
 「う、うん。んじゃどっかお店に入ろうかぁ(・3・;)」
 マシンガンのようにまくし立てる姫に少し圧倒されながら、
ここあは姫の意見に賛同してお昼ごはんを食べることにした。

 例えるなら庶民食堂だろうか、お世辞にも高級レストランとは
言えないが雰囲気はいい。店内にはリズミカルな料理の音と
注文を復唱するウェイターの声が響き渡っている。
二人は窓際の席に座り少し遅めの昼食をとっていた。
 姫の前には色とりどりの野菜が盛り込まれたサラダと
メインディッシュの肉料理、それと焼きたてのパンが二つ
置かれている。一方ここあはというと、いきなりデザートの
チョコパフェをほおばっていた。いや、訂正しよう。
ここあんの前にはデザートしか見当たらない。こやつの胃袋の
仕組みを誰か解明してはもらえないだろうか・・・。
 「うんめぇうんめぇ〜ここあ今幸せの絶頂期かも〜(^3^)」
 そんな事で幸せになれるなら本当に幸せなのかもね。
 ここあは口のまわりをクリームやらチョコチップでえらい事に
しながらデザートをかき込むが、姫の料理が一向に減って
いない事に気づくとスプーンを止めた。
 「あれ?姫どしたの?食べねぃの???(・3・)」
 ここあが不思議がるのもうなずける。路地裏で生活していた
姫にとって今目の前にある料理はおそらく初めて見るものだろう。
なによりここあとの旅においてこれが最初のまともな食事
だったからだ。お腹が減っていないわけがない。
 ここあの問いかけに姫が慌てて答える。
 「あ、いや・・・その・・・姫ちっとお腹の調子
  わるいにゃ。あはは」
 その笑い声もどこか乾いている。ここあはしばらく沈黙した後、
話だした。
 「聞いて聞いて〜ここあね、実はいまだに時々おねしょ
  しちまうんの。あとね、この間はおとんのご飯こっそり
  かすめ取ったのがばれて怒られたでしょ。それから学校の
  作文で松茸になりてぃって書いたら廊下に
  立たされちった!(>w<)」
 「え?え?」
ここあの突然の告白に姫は困惑している。だがここあはさらに続ける。
 「あとあと、みんなで埋めたタイムカプセルこっそり
  掘り返したでしょ〜。んで山根君の、未来の自分への
  メッセージ読んじった!ドラフト1位指名されましたか?って
  書いてあったぷぷぅ(>ε<)」
 それを聞いていた姫がたずねる。
 「な、なんで急にそんなこと言うにゃ??どうかしたにょか?」
ここあは少しほっぺたを膨らませて答えた。
 「だって姫なんか隠し事してるも〜ん。だからここあが先に
  自分の秘密を言っちゃえば姫も教えて
  くれるかな〜って(・3・)」
最後のは山根君の秘密だここあ。哀れ山根君。まさかこんな
ところでドラフト1位指名の夢を暴露されてるとは夢にも思って
ないだろう。
 「ここあ・・・」
ここあの言葉を聞いた姫は、少し考えたあとゆっくり語りはじめた。
 「姫、さっきのお店で画用紙と色えんぴつ買おうとしたにゃ。
  それ使っていっぱい絵を描こうと思ったにゃ・・・。
  でもお金払おうとしたらお店の人に、お前みたいな薄汚い
  捨て猫に売る物なんか無いって言われたにゃ。
  んで姫お金ちゃんと持ってるよって言ったら、捨て猫に絵なんか
  描けるわけないって・・・。お金も盗んだんだろうって
  言われたにゃ・・・。」
 世の中には見かけで人を判断するつまらない人が多くいる。
あの店の店主も>そういうタイプの人間だったのだろ。
 それを聞いたここあは突然立ち上がると、めずらしく顔を紅潮
させて怒りだした。
 「んまぁ〜なんてお馬鹿なおやじなんでしょ!ここあ姫の絵が
  素敵なこと知ってるもん!見たことないからそんな事
  言うんだよ〜!文句言ってくるくる!!(−3ー)=3 ぶぅ〜!」
 そう言ってここあは店を出ようとした。まだテーブルには
デザートが残っている。ここあが食べ物を残すなんてまずない。
本気で怒っているようだった。
  姫が慌ててここあを静止しようとする。
 「あわぁ!ま、待つにゃ!姫は別に気にしてないにゃ。
  もぉいいにゃ。」
 「何がいいのさ姫!ここあそういうの嫌だもん。ほら、
  姫もゆくよ!ガツンと言っちゃえガツンとー!!」
 そう言ってここあは姫の腕を掴むと、食堂を飛び出してさっきの
画材店の方へ向かって走りだした。
 「にゃー!これどっかで体験したにゃーー!2回目にゃーーー!
  あ〜〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜・・・・・・」



 舞台は再び画材店前。マジ切れ仁王立ちここあと、はぁはぁ息を
きらして地べたにへたれこんでいる姫がいた。
 「こ、ここあ〜姫は大丈夫だからやめるにゃ〜」
 「何言っちゃってんのさ姫!姫がそんなだから
  ナメられるんだよぅ!
  正義は必ず勝つんだよ〜!(>x<)/」
 そう言いうと、やる気まんまんのここあは画材店のドアを
勢いよく蹴り開けた。
蹴るな蹴るな。
 「たのもー!バカちん店長はいるかー!いたら出て
  きやがれー!(>w<)」
 突然の侵入者に、店の中にいた太めでアゴにいかにも悪役そうな
髭を生やした中年男性が驚きの声をあげた。
 「な、なんだ!どうした!?何がおきた!?!?」
 「お前が店長かこんにゃろめ(・3・)」
さっそくここあが啖呵をきる。姫はここあの後ろに隠れて、時折
ちらりらと様子をうかがっている。
 最初は驚きの表情を浮かべていた店主は姫の姿を見つけると、
悟ったような、それでいて呆れたような表情に変わった。
 「なんだ、またお前か。っへ!今度は仲間を連れてきやがったか。
  言っただろ、おめぇみてぇな小汚ねぇやつにうちの商品は
  売れねーんだよ!とっとと帰りやがれ!!!」
それを聞いた姫は視線を床に落とし、諦めの表情を浮かべた。
が、ここあはなおも言い放つ。
 「やいバカ店長。そんなこと言わずに売りやがれー(>w<)/」
 「あん?なんだてめぇは。売ったって役に立たなきゃ
  意味ねーだろが。」
意味が無いかは実際やってみてから判断すべきだ。それからでも
遅くはない。
 「ここあは姫のお友達だい!姫の絵も見たことあるんだそ〜!
  とっても素敵なんだから〜売れ売れ売れ売れー!(・0・)」
ここあは「売れ」の二文字を延々叫び続けている。店主はここあの
言葉を聞くとなにやらいやらしい笑みを浮かべて言った。
 「へぇ〜・・・そんなに上手いのかい。まぁそんなに言うなら
  売ってやってもいいが・・・」
 それを聞いた姫はピクンと耳を立てて期待の表情を浮かべだした。
が、店主はさらに言葉を続ける。
 「ただし!そいつが本当に絵が描けたらの話だ!描けなきゃ
  売らねぇ!」
そういうと店主は店の奥から一人の少年を連れてきた。年の頃なら
ここあと姫と同じくらいか。髪はしっかりとセットされており、
着ている服も姫のものとは比べものにならないほど高そうだ。
襟元には蝶ネクタイをしていて一見賢そうに見えた。
 「こいつは俺の一人息子で将来は立派な画家になる予定だ。
  そいつとうちの息子が絵の勝負をして、そっちが勝ったら
  売ってやってもいいぜ。」
突然の戦線布告に姫が驚く。
 「絵の勝負って・・・ひ、姫そんなの無理にゃ!」
 「へ!なんだい。自信がねーのか。やっぱり絵なんて
  描けねーんだろが!」
 姫は再びうつむいてしまった。今まで他人に自分の絵を見せた
ことのない姫には自信に繋がるものがなにも無かった。
 が、二人のやりとりを聞いていたここあはなんの躊躇もなく言った。
 「のぞむところでぃ!姫が勝つに決まってるもーん(・3・)/」
 「!!望んでねぃしガーン!こ、ここあはいつも突然にゃ・・・」
店主にしてみれば負ける気はさらさら無い。イベントを開くことで
店の宣伝とともに自分の息子の実力を世間に広めるのが目的なのだろ。

 こうしてここあの旅は、松茸になるという目的に一向に
近づけないまま陰謀と策略に満ちたお絵かきバトルへと突入
するのであった。



       4巻でまたおいましょーー!(>w<)/