
第5巻
挿絵 みきこさん♪
「探し物はなんですか?」
きのこ王国にたたずむ小さな病院。若い新婚カップルは
初めての出産を迎えていた。
「ん”〜ん”〜〜〜・・・・はぁはぁ・・・」
「頑張れ!もうすこしだぞ!頑張れ!!」
新しい生命をこの世に送り出そうと必死に戦う新妻に、
夫と思われる男性が手を握り応援する。
「ほらほら頭が出てきたわよ!もうちょっとの辛抱よ!」
数多くの出産に立ち会ったであろうベテラン助産婦の額にも
汗がにじむ。
「はぁはぁ・・・ん”〜〜ん”〜〜〜〜〜!」
同じ速さで流れているはずの時間は、まるでタイムマシンにでも
乗っているかのように過ぎていく。
「おぎゃー!おぎゃーー!あんぎゃー!!」
どれくらい経っただろう、小さな病院の小さな廊下に
力強い生命の第一声が響き渡った。
「ほ〜ら!元気な女の子だよ、おめでとさん!」
「よくやった!本当によくやったな!ご苦労さん!」
助産婦が手馴れた手つきで赤ん坊の身体を拭く。
夫は大仕事を終えた新妻に感謝と労いの言葉を送る。
新妻は満面の笑顔を浮かべてそれに応えた。
分娩室から一般病棟へと移った新婚カップルは、生まれた
ばかりの小さな命を幸せいっぱいの表情で見つめあっている。
すると、夫は急に何かを思い出したように袋から何かを
取り出した。
「あら、あなたったらもう用意してたの?男の子だったら
どうするつもりだったの?」
それを見た新妻がクスクスと笑いながら尋ねた。
「男だったら二人目の時まで取っておけばいいかなってさ」
新妻は顔を少し赤くさせながら夫の手から
それを受け取ると、限りなく優しい表情でつぶやきながら
赤ちゃんの頭にかぶせる。
「この子が元気で健やかに育ちますように・・・」

それはてっぺんに可愛らしいぽんぽんが付いたきのこの
形をした帽子。きのこ王国の住人が誰でもかぶっているものだ。
王国ではこの帽子に我が子の健やかな成長を願い、子は
その帽子と共に生きてゆく。そんな風習がある。
(ちなみにぽんぽんがついているのは女性用だけである。)
舞台は再びバイヤード。辺りの人々は皆足を止め、様子の
おかしい二人の旅人に見入っていた。
「どこ〜?どこ〜?ぽんぽんどこいっちったのぉ?(T□T)」
一人の少女が泣き叫びながら町中を駆け回っている。
その後ろを困惑の表情を浮かべながらついていく猫娘。
ここあと姫である。
ここあは辺りの目も気にせず、道の隅に置かれているゴミ箱、
売り物のリンゴ、店先に置かれた看板、目に入るありとあらゆる
物をひっくり返しては調べ、またひっくり返して調べという
事を延々くり返していた。
見かねた姫がここあに問い掛けた。
「ちょ、ちょっと待つにゃここあ!いったいどうしたにゃ!?」
ここあが目を真っ赤に腫らしながら答える。
「どうしたもこうしたもねぃよぅ〜ぽんぽんが無いんだよぅ〜
うぇ〜んうぇ〜ん!(T△T)」
そう言うとここあは再び辺りの物もひっくり返し始めた。
「あわわ!こ、ここあ待つにゃ〜!ぽんぽんくらい無くったって
死にはしないにゃ!また新しいの付ければいいにゃ!
だから落ち着くにゃ〜〜!!」
何気ない姫の言葉にここあが叫ぶ。
「ばか猫ー!ぽんぽんくらいとは何かー!あれはここあが
赤ちゃんの時からずっと付けてた大切なぽんぽん
なんだよぅ!おとん&おかんがくれた大切なモノなんだよぅ!
代わりなんてあるかぶわぁかー!(TεT)」
きのこ王国の住人のここあにとってあのぽんぽんは人生を
共にしてきた、いわば身体の一部。無くなる事など
考えられない大切なもの・・・。
「どこさいっただー!ここか!?ここなのか!?(T3☆)」
ここあが通りすがりのおばちゃんのスカートをめくる。
「あらやんだぁ〜この子ったら・・・ッポ」
そんな所にあったら褒めてあげたいね、おばちゃんの方を。
姫はさっきのここあの言葉を聞いてから、なにか物思いに
ふけったような表情を浮かべている。
「大切なモノ・・・ここあは大切なモノ無くしたにゃ・・・。
姫も・・・姫も大切なモノ・・・無い。・・・ママ」
そうつぶやくと、さっきまでここあを止めようとしていた姫は
一緒になってぽんぽんを探し始めた。
「ここあ!姫も探すにゃ!無くしちゃいけない大切なモノ・・・
一緒に探すにゃー!」
かけがえのないモノを失った悲しさは、同じくかけがえの
ないモノを失った者にしかわからないのかもしれない。
キコ・・・キコ・・・キコ・・・
町の片隅にある小さな公園。ブランコの金属音が辺りを
悲しげな雰囲気に包み込んでいる。

「えぐっえぐ・・・しくしく・・・見つからねぃよう(TдT)」
あちこち泥だらけになったここあが顔をくしゃくしゃに
している。
「ここあぽんぽんが無いと生きてゆけねぃよ〜・・・
おとん&おかん・・・先立つ不幸をお許しください(−εー)」
「!!!!!」
突然のビックリ発言に姫が慌てて声を出す。
「わわわ!だ、だめにゃ!死んだらアカン!生きていれば
きっと良い事あるにゃ!た、たとえば・・・んとんと・・・
空から雨じゃなくて飴が降ってくるとか!あははっはははは
姫うまい!将来は吉本かにゃ?」
将来は画家じゃなかったのかい姫?
二人の間に気まずい沈黙が流れた。姫が今度は申し訳無さそうに
語りだした。
「うぅ、ごめんにゃここあ・・・姫が猫じゃなくて犬だったら
匂いで見つけられるかもしれないのに・・・。やっぱり
姫はダメ猫にゃー!うぇ〜んうぇーん!」
激しい被害妄想に陥った姫はわんわん泣き出してしまった。
が、ここあは姫の言葉を聞くと何か思いついたように
はっとして尋ねた。
「姫いまなんて言ったの!?Σ(・3・)」
「え?・・・姫はダメ猫って・・・」
「違うよダメ猫!(おいおい)その前!(>w<)」
「だ、だから・・・姫が犬ならって」
ここあの顔が急に明るくなる。
「それだよそれ!犬だよ!(>Д<)」
姫は意味がわからずきょとんとしている。
「んとね、ここあ本で読んだんだけど、バイヤードのすぐ近くに
犬人族が住んでる集落があるっぽいよ!そこいって
犬っころに探してもらおうよ!(・3<)v」
ここあの提案を聞いた姫は一瞬顔を輝かせたが、すぐに
とまどいの表情になってしまった。
「い、犬人族かにゃ?ひ、姫それは賛成しかねるにゃ・・・」
「えーなんでなんでなんでーーー?(?3?)」
理由は簡単。猫人族と犬人族は昔から仲が悪い。つまらない
事で理由を見つけてはケンカばかりしているのである。
「姫あいつら嫌いにゃ。・・・昔いじめられた事あるにゃ・・・」
それを聞いたここあがつまらなそうな表情を浮かべて答えた。
「なぁんだそんなことか〜だったらついでに復讐しちゃえば
いいじゃん!復讐の悪鬼姫!かっくぃぃ〜(>w<)/」
どこがどうかっこいいのか解らないが、ここあは姫の腕を掴むと
犬人族の集落があるという場所へ駆け出した。
「Let'sばびゅ〜〜〜ん!(>ε<)/」
「あんぎゃーー!またこのパターンかにゃーーー!
3回目おめでとさーーーん!・・・・・・・」
4回目もきっとあるぞ姫。
バイヤードから2時間ほど歩いた所にある森林地帯。
辺りを様々な植物が取り囲み、空気は冷たく肌寒い。
「おかしいなぁ〜このあたりのはずなんだけどぉ(・3・)」
キョロキョロと周辺を探索しながらここあがつぶやいた。
「や、やっぱり帰るにゃ・・・。あいつら野蛮にゃ。
ぽんぽんなら姫が絶対見つけてみせるにゃ!」
犬人族と関わりたくない姫が根拠の無い自信をみせる。
「なに言ってるの〜見つけられないからこんな所に
来てるんじゃないのさぁ。んもぉやっぱり姫は
ダメ猫だねぇ(−3−)=3」
「!!!だ、だめ猫ってゆうにゃ!元はと言えばここあが
ドジだからこんな事になってるんじゃにゃいかー!
このバカきの子ー!!」
「バカきの子ガーン!Σ(+ε+;)もももももう一回いってみれー!
バカって言う方がバカなんだよぅこのばかー!(T□T)/」
「あ!今ここあバカって言ったからここあがバカにゃ!
やーいやーいバカ〜バカ〜」
「むきー!(O>3<)O このこの〜〜!」
まぁなんと言うか・・・どっちもバ○?
と、何の利益も生まないバカ合戦に奮闘している姫の耳が
ピクンと反応して何かを捕らえた。
「!!し〜っ!ここあ静かにするにゃ!・・・」
「なんだよぅ逃げる気かこんやろめ・・・もがもが(+m+)」
姫がばかきの子の口を手で塞ぐ。
ワオーーン・・・・ワオーーン・・・
静かな森に何かの遠吠えが響き渡る。
「・・・出やがったにゃ。」
「およよ?(・3・)」
ここあは辺りを見回す。先ほどまでは無かった無数の光る目が
二人を捕らえていた。数にして数十匹だろうか、光る目は
じりじりと二人との距離を狭めていき、その姿と表した。
野犬だ。
「や、やばいにゃ。囲まれてるにゃ・・・。」
姫の額に脂汗がにじみ、周囲に張り詰めた空気が流れる。
が、
「やぁ犬っころさんこんばんわ。わざわざお出迎えとは
ここあ感激(π3π)うふ」
「な、なにやってるにゃ!危にゃいにゃ!」
状況を理解していないここあの行動に姫が叫び声をあげた。
と同時に野犬の群れがここあめがけて飛びかかってきた!
「おわぁ!!なにすんですかこらー!(TεT)/」
間一髪攻撃をさけたここあが憤怒する。
「ここあ!ここは一旦逃げるにゃ!・・・あわわ!!」
ここあの手を引っ張って振り返った姫だったが時すでに遅し、
前後左右を野犬たちに囲まれてしまっていた。
「あわわわ(+ε+; )( ;*3*)あにゃにゃにゃ」
野犬達はさらに距離をつめると一斉に飛び掛ってきた!
「きゃーーーーー!!!!!!!!!!(T□T)]
とその時
「お前達やめるわう!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・あ、あれ?<(・3・;)>」
ここあはゆっくりと目をあけてみる。
するとそこには一人の少女が腰に手をあてて立っていた。
頭に犬の耳をたらし、お尻にふさふさのシッポを生やしている。
足元には先ほどここあ達に飛び掛ったはずの
野犬達がおすわりをして少女の足に頬擦りをしていた。
「ここあ、あいつ犬人族にゃ!」
姫がここあの耳元で囁く。それを聞いたここあはおどおどしながら
尋ねてみた。
「あ、あの・・・犬人族さんでいらっしゃいますか?(・3・;)」
少女はしばらく沈黙したあとゆっくりと口を開いた。
「お前達・・・何者わうか?」
森の木々が風にざわめいた。
6巻でお会いいたしましょう(>w<)