兄弟喧嘩
勇者たちが魔王ミルドラースを倒してから一年・・・。
平和なグランバニアの城には大事件が起ころうとしていた。
始まりは本当に些細なことだった。
これがこんな大事件に発展するとは誰もおもってはいなかった。
「ちょっとぉ!!あんたなに私の道具壊しちゃってるのよ!!これ吹雪の杖って言って結構貴重なんだから!!弁償してよ弁償!!」
「あ、ごめん。ピピンと剣の訓練で剣の代わりに使ってたら折れちゃったんだよ・・・。許してくれない。」
エイプルの怒声とフィフスの平謝りしている声が聞こえてきた。
エイプルの巨大な声はいつもは静かな城に響き渡った。
「これには吹雪を起こす効果があるのよ!!あんたもこの杖の効果をくらって見なさい!マヒャドォ!!」
南国の温暖な気候の城の中に吹雪が巻き起こった。
その吹雪がやんだあとにはフィフスの氷の像がたっていた。
その氷が音を立てて崩れ、再びフィフスが動き始めた。
「ひどいじゃないか!杖を折ったぐらいでよりよってマヒャドなんか使うなんて。他の人も巻き込んでたかも知れないんだぞ。」
「ふん、ちゃんとあんたを狙ってやったんだから外れようがないわよ。それよりちゃんと弁償してよね。」
フィフスの中にこのままでは収まらない怒りが湧いてきた。
フィフスは静かに呪文の詠唱を始めた。
「おかえしだ!ライデイン!!」
城の中に雷光が広がった。
その後にすざましい轟音がした。
リュカ王はそのときちょうど何もすることがないので玉座でうたた寝をしていた。
その音にさっと気づき、すぐに立ち上がると近衛兵たちに向かって叫んだ。
「一体、何が起こったんだ?今すぐ調べてくるんだ!」
近衛兵たちは慌てて巨大な門から飛んで出て行った。
リュカ王は念のために近くの壁にかけてあったドラゴンの顔がかたどった杖を取り出した。
ビアンカ王妃は部屋でゆっくり休んでいた。
その音にビックリして立ち上がりバルコニーに走っていって下の中庭を覗いてみた。
覗いてみると何人かの兵が慌てて走っていく姿が見えた。
「何があったのかしら・・・。」
ビアンカ王妃は知らず知らずのうちに一人でつぶやき下の階にいるリュカ王のほうへ向かっていった。
フィフスはエイプルの呪文からさっと見をかわし次の攻撃に備えた。
いかずち系の呪文以外はろくに使えないフィフスは、呪文を唱えるたびに天井に穴が開いてしまうので呪文を控えていた。
しかし、常に剣を持ち歩いているわけではないので剣も持たない素手の状態で戦い続けていた。
エイプルは容赦無用の呪文の連打でフィフスにダメージを与えようとしていたが、城の家来までを巻き込まないように呪文のパワーの制御を行ないながら戦っていた。
しかし、フィフスと比べればはるかに優勢だった。
「えーい。イオラ!!」
フィフスは伏せてかわし、目標を逸れた爆風は鉢に当たり吹き飛び、近くの壁がえぐれた。
「よけないでよ!!さっさと食らわないと城がどんどん壊れるじゃない!!」
「エイプルが呪文を使わなければ壊れなかったんだがね!!もうおかげで城がボロボロだよ!!」
「何もかもあんたが悪いんだがね!!覚悟ォ!!イオナズン!!」
リュカ王は再び鳴り響いた音にただ事ではないと思い、近衛兵の来るのを待つ前に駆けつけようとした。
「ちょっと!一体何が起こっているの。」
ビアンカ王妃が後ろの階段を駆け下りてきながら叫んだ。
リュカ王は足をとめ、
「分からないが私は今から現場に向かう、ここで待っていてくれ。」
「そんなことはできないわ。私も様子を見ることにする。私だって普通の兵士よりは役に立つはずよ。」
リュカ王はビアンカ王妃をじっと見詰めて。
「わかった、でも危なかったらすぐに下がって避難してくれ。」
ビアンカ王妃はすぐにうなずくと二人で中にはに駆け出した。
その瞬間。
「うわっ。」
リュカ王はなにものかと派手に衝突した。
「ああ!王様!申し訳ありません。それで下の事件ですが、どうやら・・・。」
リュカ王とぶつかった兵士はここまで言うと黙ってしまった。
「ん?どうしたんだ?なにがあったんだ。」
「それが・・・兄弟喧嘩のようです。」
「・・・は?」
「フィフス様とエイプル様が喧嘩を始めてしまわれて、呪文なんかも使っているものですから私たちも止めに入ることすらできないのですよ。」
リュカ王は口が開いたまま塞がらなくなった。
十秒後はっとして、
「すぐ行かなくては!」
と走り出した。
「ああ!もう!いいかげんにしろ!」
フィフスは一気に走りこんで間合いを詰めエイプルの足を払った。
エイプルはバランスを崩し床に倒れこんだ。
「これでも食らえ!」
フィフスは思いっきり腕を振りかぶり殴りかかった。
エイプルは手をフィフスにむけ慌てて叫んだ。
「イオラ!!」
体のすぐ近くで炸裂した火の玉はフィフスの体を持ち上げ何メートルもの距離を飛ばした。
フィフスは壁に叩きつけられる寸前で壁に向かって足を出し衝撃を和らげた後無事に床に着地した。
「二人ともやめなさい。」
うしろから落ち着いた声がした。
「お父さん!」
二人は同時に叫んだ。
「一体どうしたんだ。こんなに城をめちゃくちゃにして。」
「お父さん!聞いて!フィフスったらあたしの大事な杖折っちゃったんだよ。」
「そのことについてはちゃんと謝ったじゃないか。なのにエイプルが呪文を使ってきたんだよ。」
「あんたのやったことに比べりゃまだましよ。」
「どこが!こんなに城を壊したのもほとんどエイプルのせいじゃないか。」
2人の口論を見ていたリュカ王はため息をつき。
「とりあえず、これまでのことは水に流して仲直りしなさい。」
2人はにらみ合い、そして握手した。
「ライデイン。」
ボソッと小さい声でフィフスはつぶやいた。
その瞬間城に叫び声が響いた。
「ギャアアアア。」
「フィフス!!喧嘩は止めなさいって言っただろ。」
「今までの分のお返しだよ。」
フィフスはそう言うと、とっとこ走っていった。
「待てー!」
それを黒焦げになったエイプルが追いかけていった。
「こらー!いいかげんにしろ!」
リュカ王も慌てて追いかけた。