<emu シナリオライター 門司>

『野村今日子。篠瀬ともみ。そして吉川華生』

“雨に歌う譚詩曲”という作品で吉川さんと初めて会いましたが、いやホント、美人で、
素晴らしい人だと思いました。

一目見た瞬間思いました。あ、この人はお嬢様に違いない。何かそういう気がする。
物腰もおしとやかだし、可愛らしいし……。

そう……あの収録を行うまでは……
確かにそう思っていたんです。

始まってみると、絶叫と怒号、凄みをきかせた大阪弁……そうです。
まさかこんな美人が……
あんな言動を……ガクガクブルブル……

信じられない光景でした。

もしも神がいるのなら、私は恨みの言葉の一つや二つでも言ってやりたくなりました。
『天は二物を与えず』なんて嘘だね。
彼女は二物どころか三物、ともすれば四物も持ち合わせているのです!

そんな彼女は、間違いなく天才です。恐るべき才覚と美貌、声を持ち合わせた、
女版リッキーマーティンか!? エリザベス・テイラーか!?
はたまたダイアナ・ロスか!? ひょっとしたらナオミ・キャンベルか!?
(チョイ言い過ぎかもしれんな……)

……『雨』をプレイした人は、そんな単なる一天才であるはずの彼女に、割れんばかりの
拍手と共にこういう声援を送るのです。

『三枚目が素晴らしいですよね。吉川さんって』

吉川さんはきっと、私を恨んでいる事でしょう。なにしろ清純派のイメージを
完膚無きまでたたきのめされ、しかも“空を舞う翼”では『篠瀬ともみ』などという、
これまたエグいキャラを私に宛われたのですから。

何? 生き生きしてるように聴こえる?違います。
あれは、本来の自分とのギャップに苦しむ心の悲鳴なのです。

楽しそう?
何を言いますか。
今も彼女は、覆されてしまった自分の芸風に、枕を涙で濡らしているのです。

可哀想ですね。可哀想でしょう。私もそう思います。

しかし健気な彼女は今日も、心の中で涙を流しながら、マイクに向かってこんな風に叫ぶのです。

「吉川ナメんなよコラ」

そう。嬉し涙を流しながら……。


<精一杯のフォローと共にEND>