まるちぶーど!!


3話「そして繰り返される・・・・」

 

「さてと・・・・・・。ここが今日から俺が通う学校か・・・・」

祐一は校門の前に立つと、学校を見上げる。

登校途中の生徒達が、祐一のことを訝しげに見ていくが、別段気にせずに通りすぎていく。

普通、校門前で校舎を見上げて立っていれば、誰だって怪しがるのだが、みんな通りすぎていく。

その理由の一つを祐一はつぶやく。

「でかい・・・・・。」

それだけ言うと、祐一は、手に持っているこの学校の見取り図を見ながら、職員室に向かう。

ちなみに、学校の場所は、今日早く家を出てきたため大丈夫だった。

 

 

私立水無月学園。

全校生徒数が2000人を越える、県下唯一の中高一貫の私立学園。

大学進学校の中では、全国有数のエリート校であることで有名。

『子供は伸び伸びと過ごした方が良い』という理事長の方針に従って、比較的自由な校風であることでも知られている。

部活動の数も30を越え、生徒の自主性を尊重すべく、全ての部活動は生徒会が管理している。

また、行事も年間を通してかなりある。

 

 

(たしかにこんな感じで書いてあったのは覚えているが・・・・まさかここまでとはな・・・・。)

祐一は、冊子の中身を頭の中で復唱しながら、廊下を歩いていた。

祐一にとって、前の(名雪達の)学校もそれなりに大きく感じたのだが、ここはそれ以上だった。

よって、ここの校舎を見上げる人も少なくはない。しかも、生徒人数が多いため変わった生徒もいる。

つまり、先ほどの行動はさほど珍しくはないのである。

「まあ、こんな時期でも楽に入れたんだからいいか・・・・・・。」

そう言うと、歩く足を速めた。

考え事をしていたため、いつの間にか予鈴がなっていたのである。

 

 

祐一はこの学校で、静かで平穏な高校生活を目指していた。

名雪達との生活は嫌ではない。むしろ幸せである。

蘇った記憶を受け止めた自分が、心の底から望んだこと・・・・・・・。

奇跡が起こした8人の幸せ。そして、自分の幸せ・・・・。

しかし、その幸せも毎日与えてもらい続ければ,重荷にもなる。

勘違いしないように言っておくが、良い意味での重荷である。

しかし、『重荷』には変わりはない。

しかもその幸せは、祐一自身がみんなに与える以上に、つまりのところ約8倍になってかえってくる。

さすがに祐一も、静かな生活を望みたくもなる。

しかし、彼女たちの前でそれを望むことは躊躇われた。

なんだかんだ言って、祐一もその生活が好きなのだから・・・・・。

そんな彼女たちが好きなのだから・・・・・。

だからこそこのしばしの期間、誰にも気兼ねせず静かな生活を望みたかった・・・・・。

 

数十分後、祐一は、数日前に『桜』に会ったことを後悔することとなる・・・・・・・。

 

 

 

<祐一が校舎の前に立っている頃のある教室・・・・>

「さ〜く〜ら♪」

「みーちゃん・・・・どうしたの?」

いつもより機嫌の良い私に、親友のみーちゃんが話しかけてきた。

「機嫌がいいみたいだけど・・・・・・、なにかあったの?」

「なっ、なんでもないよ〜。」

私、そんなに顔にでてたのかな〜?

とりあえず、ごまかさないと。

みーちゃんって、勘するどいんだもん。

「ほんとに〜?」

う〜、まだ疑ってるよ〜。

話変えないと・・・。

「まあ、桜の場合いつも機嫌がいいけどね♪」

「そうかな〜?」

そう言って、頭をなでてくれる。

こうされると、あの人を思い出す・・・・・・。

そんなとき、急にみーちゃんが話を変えてきた。

「そういえば、桜。転校生がこのクラスに来るんだって知ってた?」

「えっ!!」

思わず大きな声出しちゃったよ。

恥ずかしいよ〜・・・。

みーちゃんも驚いてるし・・・・・。

「・・・・桜、どうかしたの?」

「う、ううん。なっ、なんでもないよ?」

ふ〜、落ち着かなきゃ。みーちゃん、いきなり核心つくから驚いたよ。

「んで、転校生のことなんだけどさ。桜、おじさんから何も聞いてないの?」

おじさん・・・・・つまり私のお父さん。この学園の理事長さん。

「聞いてるけど・・・・・・・・・、気になるの?」

声のトーンが落ちているのが自分でも分かる。

そう言うと、みーちゃんは、「あははは」って笑って、

「この時期に転校生ってのは珍しいしね。それに噂だと男の子が来るらしいじゃない?それも結構カッコいい男の子って話だし・・・・・・」

「話しだし?」

そう言うと、私に小さい声でささやく。

「それに、ここって女子の割合の方が多いじゃない?だから、みんな期待してるんだよ。」

そう言って周りを見てみると、他の女の子達も転校生のことを話している。

「・・・・・・・・みーちゃんも?」

「えっ?」

みーちゃんは予想外の私の返答に驚いた。

「みーちゃんも期待してるの?」

もう一度聞き直すと、みーちゃんはくすくすと笑った。

私、変なこと言ったかな〜?

「興味はあるけどね♪でも、私は桜の方が好きよ。」

そう言うと、私に抱きついてくる。

「う〜〜・・・苦しいよ、みーちゃん。」

そんなことをしていたら予鈴がなった。

あと5分・・・・・・・・。

 

 

 

「それじゃあ、教室に案内するからついてきなさい。」

恰幅のよい男の先生に連れられて職員室を出る。どうやら、担任らしい。

どことなく、感じが石橋に似ている。

教室へ続く廊下を歩いていくと、担任が話しかけてくる。

「相沢。この学校はどうだ?」

「・・・・大きいですね。それに生徒の数も多いです。」

俺は感じたままに話した。

「そうか。まあ次第に慣れていくだろう。ああ、それと、学校の中を案内した方がいいか?」

「よろしければ、お願いします。」

その申し出を素直に受けることにした。

こんなに大きいと、さすがに迷うからな・・・・。

「それじゃあ、クラス委員にでも頼んでおくから、放課後にでも教えてもらってくれ。」

「はい。ありがとうございます。」

「しかし、普通は始業式に転校してくるんだがな・・・・。」

「まあ、そうでしょうね・・・・。」

担任の言葉通り、今日は新学期2日目。

入学式(始業式)は手続きやらなんかが間に合わなくて、結局2日目からとなったのだ。

そんなことを話していると、目的地に到着した。

目的地には『3−C』と札がかかっていた。

どうやら、ここが俺の教室らしい。

「ちょっと、ここで待っててくれ。」

そう言うと、担任は教室に入る。

「みんな席に着け〜。・・・・・・今日は最初に、1日遅れの転校生を紹介するぞ。」

「「「「「うお〜〜〜〜〜!!!」」」」」

どこでも一緒だな・・・・、この反応は。

「ちなみに男だ。」

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

・・・・・・・・・・・一緒だな。

「相沢。はいってきなさい」

「はい。」

そう言って、俺は教室に入る。

 

 

 

教室に転校生が入って来るなり、みんなそれぞれの評価を口にする。

「いい感じの奴だな・・・。」

「あっ、結構かっこいい〜♪」

「運動できそうだな・・・。」

「この学校の男子にはいないタイプよね〜。」

とこんな感じである。一方・・・・・、

「へ〜、思ってたよりはカッコいいわね・・・・・。桜はどう思う?・・・って、桜?」

「・・・・・・・・・・。」

美咲が、後ろの席の桜に、感想を聞こうと聞いてみたようだが、桜の方は転校生をボー、っと見ていた。

「やっぱり、そうだったんだ・・・。」

「桜?」

親友が気になったが、転校生が自己紹介に入るようなので、ほかっておくことにした。

「あ〜〜、それじゃあ、自己紹介してくれ。」

祐一に視線が集まってるのが分かる。

さすがに何回転校しても慣れないようで、祐一はそれなりに緊張していた。

「相沢祐一です。北の方から転校してきました。受験で忙しいとは思いますが、よろしくお願いします。」

そう言い、ぺこっとお辞儀する。

「みんなもよろしく頼むぞ。それじゃあ、相沢の席は・・・・・・・あの窓際の一番後ろの席に座ってくれ。」

「はい。」

そう言うと、祐一は席に向かう。

(ふ〜・・・。はじめのあいさつって、なぜだか疲れるんだよな・・・・。)

そんなどうでもいいことを考えていると、目的の席に着く。

そのころには、みんなの視線も前に戻る。

祐一は席に座ろうとして、ふと思った。

(やっぱり周りぐらい、先に挨拶しないといけないよな・・・。)

そう思い、横の席の女の子に、座りながら声をかける。

「よろしく。」

できるだけ愛想良く話しかける。

「はい。よろしくお願いしますね、祐一さん♪」

「ああ、よろしくな、桜。」

そう言って、席に座ろうとした。そのとき、

 

「「「「「えっ????????」」」」」

 

教室中(桜、祐一以外)の生徒が一斉に振り返り、声も見事に重なる。

「何だ???」

当事者の祐一はただ驚いていた。

「おい、転校生。おまえ水無月さんと知り合いなのか?」

前の席の男が冷静に祐一に尋ねる。他の生徒はそれを見守っている。

「水無月さん?・・・・・・・・誰のことだ?」

お約束のボケをかます、祐一。(実際には本当に分かっていなかったのだが・・・。)

「隣の席の水無月桜さんのことだ。」

それに対し前の男も冷静に突っ込む。

どうも祐一の周りには、似たような人物が集まるらしい・・・・・。

ちなみに、他の男共はすでに目が嫉妬の視線に変わりつつある。

「横の席?」

そう言って、横を見ると大きなリボンを頭につけた,可愛らしい少女が祐一を見ていた。

そして祐一は、前に視線を戻す。

「桜がどうかしたの・・・・・・・・・・・桜!?」

やっと状況を把握したのか、思いっきり立ち上がり、隣で祐一を見ていた桜を見返す。

そして、お約束の一言。

「なっ、なんで桜がここにいるんだ!?」

「祐一さん、気づくの遅いですよ〜。」

そう言いながらも、顔は満面の笑顔だ。

普段この笑顔を見せられれば、大抵の男は落ちるだろう・・・・。

現に、4人程の男がすでに落ちている。

「わっ、悪い・・・・って、そうじゃなくて・・・・。」

「はい?」

やっと、落ち着いてきたのか、祐一は言葉に落ち着きを取り戻していく。

「桜、この学校の生徒だったのか?」

「はい。そういえば、お互い年は聞いてなかったですね。この前、案内したときも学校はしなかったですし・・・・。」

まだこの時には、みんなの頭の中では『案内=数人=知り合い程度』という、方程式が成り立っていた。

「ああ。あのときは助かったよ。ありがとな。」

そう言うと、桜は頬を赤く染めながら、

「いえ、ちょうど暇もつぶせましたし、その・・・・・楽しかったですから・・・。」

少し俯きながらポツポツと喋る。

「そっか。それはよかった。」

柔らかな雰囲気が二人をつつむ。

そのころ、他のみなさんは、頭をフル稼働させていた。

『暇をつぶせた=一人=転校生の案内=二人っきり=楽しかった=・・・』

アインシュタインも真っ青な勢いで、みんなの頭の中で恋愛方程式が解かれていく。

そして結論。

『友達以上!?』

そして、この答えから導き出された行動は・・・・・。

「うっ!・・・・何かものすごく痛い視線を感じるんだが・・・・・。」

そう言って、辺りを見回すと、クラスの男達による嫉妬の視線が、祐一に突き刺さっていた。

「え〜と・・・・・・。」

祐一がどうにかしようか考えていたときに、担任とは違う教師が入ってくる。

どうやら、いつのまにかSHRは終わっていたらしい。

やはり担任は、石橋二号だったらしい・・・・。

一方の桜は、祐一に再会したのがよほどうれしかったのか、さきほどからニコニコしている。

「授業を始めるぞー。」

その声で男共は我に返ったようで、視線を前に戻す。

「まっ、がんばりな・・・・。」

そう言って、前の席の男も何事もなかったかのように席に着く。

「平穏な生活が・・・・・。」

祐一の願いは、わずか登校1日目でKOされた。

 

 

 

キ〜ン、コ〜ン、カ〜ン、コ〜〜ン・・・・・・。

四時間目の終了のチャイムがなる。

「今日はここまで。」

教師の声が聞こえ、昼休みになる。

「やっと、昼か・・・・・・。」

俺はぐったりしていた。なんせ、授業の間は嫉妬と好奇の視線にさらされ、休み時間になると女子による質問攻めと、

ハードな時間を過ごしたからな・・・・。

「相沢。おまえ、昼飯はどうするんだ?」

前の席の男、並木雫(なみき しずく)が話しかけてきた。

「ああ。一応食堂に行こうと思うんだが・・・・・・案内頼めるか?」

一人で行くと、かなりの確率で迷いそうだからな・・・・・。

「ああ、分かった。それじゃあ、行こうぜ。」

俺が雫の後を付いていこうと立ち上がると、隣の席の桜が俺の服の袖を引っ張る。

「ん?何か用か?」

「祐一さん、学食に行くんですか?」

弁当を開きかけながら聞いてくる。

「ああ。弁当は持ってきてないし、食堂の場所も知っておきたいからな。」

そう言うと、桜はしばらく何かを考え、開きかけていた弁当の包みを再び包む。

「それじゃあ、御一緒しても良いですか?」

「ああ。いいけど・・・・・・・・、そっちの子はいいのか?」

そう言って、桜の隣で弁当を開きかけている少女に視線を向ける。

「もちろん、みーちゃんも行くよね?」

満面な笑みを「みーちゃん」と呼ばれている少女へ向ける。

「いいわよ。私も相沢君に、色々聞きたいこともあるしね。」

結果4人で行くことになった。

教室から出ていくときに、背中が痛かったが気にしないようにした。

 

 

 

食堂への道ながら、俺は午前中にあったことを思い出していた・・・・・・・。

ちなみに、他の3人は雑談をしている。

雫とは、1時間目の授業中(サボれる先生だったらしい)に仲良くなり、色々教えてもらった。

雫は人懐っこい感じで気さくに話しかけてきたため、すぐに親友になった。

その雫の情報より、学園の事が分かり、また俺の疑問点についても解決した。

まず、桜が思っていたよりも人気があること。

桜はそれなりに人気があると俺も考えていたが、真実はそれ以上だった・・・。

それ以上というのは、学園(中等部含む)の4割の男子は桜のファンクラブに入っているんだそうだ。

明眸皓歯(めいぼうこうし)、羞月閉花(しゅうげつへいか)、解語之花(かいごのはな)等、桜を讃えているらしい。

ちなみに、熱狂的なファンクラブの一部から、学園に降りし天使等、別称がつけられているらしい。

また、下駄箱にラブレターが入ってない日はないそうな・・・・。俺はそれを聞いて、やっと朝の視線の意味を理解した。

また、桜の親がこの学園の理事長だというのにも驚いた。まあ、佐祐理さんに感じが似ていたから、ただの女の子では

ないと思っていたのだが・・・・。

あと、もうすぐ体育祭と校内模試があるらしい。この学園では、春に体育祭があるんだそうだ。

そういわれれば、そんなことも冊子に書いてあった気がした。

そんなことを考えていると、前を歩いていた3人がある部屋の前で足を止めた。

「どうした?」

前の3人に聞くと、桜が振り向いて答えた。大きなリボンが左右に揺れる。

「ここが、学食だよ♪」

そう言われて、3人の間を抜けて扉の中を見てみる。

俺はその瞬間絶句した。

「・・・・・・・・・・。」

広かった・・・・・。生徒人数からして、それなりに大きいとは思っていたが・・・・・・。こんなに広いとは・・・・・。

ホテルの宴会場なみに広い食堂。一流のレストランみたいに、綺麗に並べられた半端ではない数の机。

ここは、学校か?

「なんかお父さんが言うには、『授業中にがんばって勉強してるんだから、それ以外の時間くらいハメをはずさないとな。』なんだって。」

なんとなく、この学校の進学率の良さが分かったような気がする・・・・・。

それはいいとして・・・・・、

「桜。人の心を読むな・・・。」

「え?」

桜はそう言うと、ちょこんと首を傾げる。

これだけの仕草でもかなり可愛いが、さらに、揺れるリボンがそれを引き立てる。

「だから・・・・。」

もう一度言い直そうとすると、両肩を誰かにたたかれる。

「ん?・・・なんだ二人して。」

振り返ると、二人がいた。

雫と桜が「みーちゃん」と呼んでた少女の二人だ。

「「相沢(君)・・・・。口にでてたぞ(わよ)・・・・。」」

「まじで?」

「「まじ。」」

見事に呼吸をあわせて言う。

俺はため息を吐くしかなかった・・・。

「はあ〜・・・。」

「そんなことより相沢、早く昼飯食おうぜ。」

そう雫が言うと、さっさと自販機に歩いて行く。

どうやら、食券を買うらしい・・・。

「そうね。私たちも行きましょ。」

「うん♪」

「ああ。」

さすがにいつまでも、入り口で立っているわけにもいかない。

それに扉を通る人の視線が痛いし、なにより腹が減っていたので、

俺はその言葉に従って、桜達について行くことにした。

 

 

 

「そう言えば、まだ自己紹介はまだだったわね。」

美咲がそう言うと、食べかけていたお弁当の上に箸を置き、祐一の方を正面から見つめる。

「そう言えばそうだな・・・・。いつのまにか馴染んでいたから、忘れてたぞ。」

祐一も食べていたカレーにスプーンを置き、正面から美咲の視線をとらえる。

ちなみに席順は、2対2の相席で、祐一の横に雫、正面に美咲、右斜め前に桜となっている。

「私の名前は藤波美咲で、桜の親友よ。」

端的に用件だけを伝える。

「俺は相沢祐一だ。朝、自己紹介したけどな。」

そう言って、苦笑する。

「俺のことは、祐一でいいぞ?」

「分かったわ。それじゃ、私も美咲でいいわよ。」

「了解、美咲。」

「よろしく、祐一。」

そう言うと、美咲は顔を綻ばせる。

「みーちゃんってね、料理がスゴく上手なんだよ〜♪♪。」

突然横から桜がそう言って、美咲の自慢話を始める。

「へ〜、もしかしてその弁当も自分で作ったのか?」

祐一は美咲の弁当箱を指で指しながら聞く。

「まあね。」

照れくさかったのか、頬が微かに赤くなっていた。

「みーちゃんの作るのはおいしいから、桜のもみーちゃんに作ってもらってるんだよ♪」

そう言って、自分のお弁当箱を見せる。

「お〜、確かにおいしそうだな・・・・・。美咲、一口もらっても良いか?」

そう言って、桜の弁当箱を指さす。

「別に良いわよ、それくらい。」

「はいっ、祐一さん。」

美咲の返事を聞いて、桜が自分の箸で料理を一品つかみ俺の前に置く。

「おお、ありがとな。どれどれ・・・・。」

祐一が、桜により置かれた料理を口に含む。美咲はその様子を一部始終見ている。

料理の腕に自信があり、毎日桜に食べてもらっているとはいえ、全くの赤の他人・・・・しかも男に食べてもらうということで、

それなりに気になるようだ。

「・・・・どう?」

恐る恐るといった感じで、祐一に尋ねる。

「・・・・・・・うまい。」

呟くように一言漏らす。

「え?」

「うまいぞ〜〜!!」

祐一は大げさに感動していた。いや、実際にそれぐらい感動したのかもしれない。それほどおいしかったのだ。

「大げさすぎるわよ・・・。」

安心したのか、顔は笑っている。

「ね?おいしかったでしょ〜?みーちゃんって、本職さんにも負けないくらいだからね〜♪」

桜はまるで自分のことのように喜んで話す。

「ほんとにおいしいな。俺の知っている中でも、1,2番目くらいのおいしさだぞ?」

祐一は、心の底からそう思っていた。ちなみに祐一の1、2番は相沢祐里子と、水瀬秋子だ。

あの姉妹に対抗できるうまさなのだから、かなりの腕である。

「あっ、ありがとう。」

桜にいつもおいしいと言われてはいるが、異性からおいしいと言われると照れるものだ。

美咲は顔を真っ赤にして俯いた・・・。

「あ〜、みーちゃん照れてる〜。」

美咲の顔をのぞき込んで、桜がからかいながら言う。

「さ〜く〜ら〜。」

そう言って、桜の頭を両手をげんこつにしてはさみ、ぐりぐり(通称、『梅干し』を)する。

「ふぇ〜〜、いたいよ〜〜〜。」

冗談(照れ隠しとも言うが・・・)で手加減されているとはいえ、それなりに痛い。

「う〜ん、微笑ましいな。」

祐一はそれを見ながら、カレーを食べるのを再開していた。

「止めなくていいのか?」

先ほどほどまで黙っていた雫が、祐一に話しかける。

「大丈夫だろう?」

「俺に聞くな。」

そう言うと、雫もカツ丼を食べるのを再開した。

「しかし、おまえ結構冷静だな。」

「そうか?」

確かに、横であんなやりとりがあっても、黙々と飯を食っていたのだから、冷静と言えば冷静だろう。

北川辺りなら、間違いなく話に参加して、美咲の弁当をもらおうと奮闘するだろう。

「まあ、あまり女となれ合うのは好きじゃないからな・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・ホモ?」

祐一は自分の体を両手で覆う。

「ちっが〜〜う!!」

机をひっくり返す勢いで、祐一の言葉に否定する。

祐一もちょっとビックリした。

「・・・・う〜ん、すばらしい突っ込みだったぞ?」

「おまえが、変なことを言うからだ!」

どうやら、自分のことになると壊れるらしい。

「しかしだな・・・・、あんな台詞では誰って勘違いするぞ?」

弁当を取り上げている美咲と、必死でそれを取り返そうとしている桜(まだ、続いていたようだ)を横目で見ながら、

雫に話しかける。

「うっ!・・・・まあ、言い方がマズかったのは認める。」

そう言うと、ジュースを一口飲む。

「なんていうかな・・・・・、騒ぐのは自分のキャラに会わないからな。」

なるほど、と祐一は頷く。確かに行動派ではなさそうだ。

「しかし、それだけ外見が良ければもてるだろう?」

そう言って、雫を見る。

手入れされた髪に、整った顔。ちょっとキツい目に冷静な態度。

身長も祐一よりも少し小さい程度だが、運動神経の良さそうな体型。

同姓から見ても、上級クラスにはいるくらいだろう。

これでモテないはずがない。

「まあな・・・・・。でも今まで誰とも付き合ったことはないぞ。」

「・・・・そんなもんか?」

「そんなもんだ・・・・。」

そう言って、食器を片付けに立ち上がる。祐一もそれに続く。

一方の桜達も、決着はついたらしく弁当箱をかたづけていた。

こうして、戻ってきた二人を加え、4人で教室に帰っていった・・・・・・。

 

 

 

この何気ない昼食時間・・・・。

本人達、4人は何も気が付かなかったようだが、かなり注目を集めていた。

桜については人気があるから仕方ないのだが、実は美咲の方もそれなりに人気があるのだ。

明朗活発な性格と桜に負けない容姿。桜とは正反対な運動神経の良さ。

桜が可愛いとしたら、美咲は美人といった感じである。

しかもこの二人、滅多に学食には来ない(弁当持参のため)ので、珍しかったというのもある。

それに加え、雫と祐一の存在である。

雫は先ほどの会話のとうり、かなりカッコいい。

本人非公式のファンクラブもある(非公式だから本人は知らないが・・・)。

しかも普段あまり群れないそんな彼が、今回は4人でいた。

しかも話題の女子二人とである。

そんな状況をほかっておくほど、みんな馬鹿ではない。

祐一に関しては、外見は雫と同様であるが、転校して初日のため知られていないので、その辺はいいのだが、

『学園の有名人3人をくっつけた人』、ということで注目を集めた。

よって、かなり目立った昼食となっていた。

むろん、本人達は知らないが・・・・・・・・。

ちなみにこの噂が学園中に知れ渡るのに、2時間もかからなかったらしい・・・・。

2時間・・・・・・つまり放課後までには中等部、高等部のほとんどの生徒に知られることとなったわけである・・・・・。

 

こうして相沢祐一は、慌ただしい放課後を迎えることとなる・・・・・・・・。

 


〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜

AP「今回はキャラの性格を統一できたぞ!!」

美咲「ホントにそう思ってる?」(にっこり)

AP「ふっ・・・・・・・ごめんなさい(涙)。」

美咲「よろしい。それにしても、いつになったら向こうの話しにするつもりなの?」

AP「ん?KANONの方か?・・・・予定では、次次回かな?」

美咲「次次回・・・・・・つまり、4話頃って事ね?」

AP「そうともいう。」(←なぜか威張る)

美咲「威張るな!!」(←回し蹴り)

AP「ぐはっ!!・・・・手加減なしなんだね・・・・(涙)。」

美咲「まったく・・・・これ以上作品をややこしくしないでよ?ただでさえ題名が分りにくいんだから・・・。」

AP「うっ!・・・・・確かに分りにくい・・・(汗)。」

美咲「まあ、意味に気づけば良い題名なんだけどね・・・。」

AP「それじゃあ、この題名の意味が分った人、限定5人に特別SS送るかな・・・・。」

美咲「あら♪それ良い案じゃない♪♪」

AP「まあ、たぶん分らないだろうし・・・・・自分のSSでもいいなら送らせてもらおうか・・・・。」

美咲「ってことで、分った人はメールで教えてね♪」

AP「はあ〜・・・・。次回はどうしよう・・・・(汗)」

美咲「とりあえず・・・・・載せて頂いている害獣駆除さん♪ありがとうございますね♪♪」

AP「ありがとうです♪では、呼んで頂いたみなさま!次回も会いましょうね♪♪」


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