奈涸は、久しぶりに会った妹の首筋に目を留めた。 服に隠れるか隠れないかギリギリのところに、ポツリと赤い… 「すすす…涼浬!!」 慌てて声をかける。 霊場に入る準備として武器を見ていた涼浬はそんな兄の言葉にふと顔を上げた。 「兄上?なんでございましょう。」 「そ、その首の痕は…」 焦るのもわかる。 ポツリと赤いその印は、紛れもなく鬱血の痕。 「ああ…これですか?」 首筋をおさえながら、なんでもないことのように呟く。 「虫に食われたのです。」 頬を赤らめるでもなく、淡々とした物言いに奈涸は少なからず安堵した。 「…虫か、そうか…」 自分の考えが外れたことを感謝しつつ、奈涸は霊場へと歩を進めた。 「―――四尺七寸の虫に…」 が…背後から聞こえてきた声にその歩みを止め、妹の方へと振り返った。 そして、妹の視線の先には… 「やから、そういうんちゃうて…」 店に用も無いのに入り浸る、とある男の姿。 奈涸のなかで何かが切れた。 「飛水流奥義…瀧遡刃!!(必殺付き)」 どこからとも無く襲い掛かってきた水流をかろうじてかわし、們天丸は水のきた方向へを視線を向けた。 「にいさん何しよん!!」 技を繰り出したのは、ご想像通り奈涸その人。 「ふふふ…そちらの方に敵がいるんでな。」 目が笑ってない奈涸に、少々うそ寒くなるものを感じながらも、守ってくれそうな人ははるか前方。 「わい…生きて帰れるんかな…?」 そんな呟きも、はるか前方にて交戦中の涼浬にはとどかない―――。 ここで怪我をしたら、涼浬は看病してくれるだろうか? そんなことを考えながら、們天丸は押し寄せてくる水流をどこか遠くを見る目で見つめていた。 |