ノンフィクション近影

恋は 大輪の深紅の薔薇だ

近づけば太い幹の棘にあたる
闇と明るさを同時に抱き 薔薇は深く微妙な香りを放つ
棘の痛さを知りながら 人はなぜあんなにも近づきたがるのか
その紅さゆえに忘れられなくなるのだ
血の滴りと痛みとが 心に染み込みまといつく
幹をさかのぼれば必ず棘に行きあたる
棘の痛さにたじろぎ 人は一瞬立ち止まる
芳香と光と闇と あの花びらの意匠に どうして逆らえるものか

薔薇にいたる道は険しく 苦痛のうめきを発するしかない
近づけば、はらはらと花びらはこぼれ
人はその甘さゆえに
苦い苦渋と血の滴りを 痛みとなって見つめ続けるしかない

恋は 大輪の深紅の薔薇だ
人は容易に近づくことも そこから逃れることも知らない




(4月20日)        
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