たこのまくら的お勧めの本

過去3ヶ月分

『理由』  宮部みゆき著
      新潮社 新潮文庫
 朝日新聞社から版元を変えての再度の文庫化。ただし、あとがきと解説以外は内容に違いはないので、ご注意を。
 
 東京郊外に建てられた高層マンション。ある嵐の夜、その20階の一室で一家四人の殺害事件が起こる。しかし彼らは本来そこに住んでいるはずの家族ではなかった。では彼らは一体何者なのか。何故そこに住んでおり、何故殺されたのか?
 
 全編ほとんどが、事件解決後に関係者のインタビューを書き起こしたもの、といった体裁をとっている。そのため事件解決までの臨場感は少ないが、落ちついた文章から重厚感を感じる。裁判所扱いの競売物件や占有屋など、社会問題として非常に勉強になるのだが、やはり事件に関係したそれぞれの家族の描かれ方が興味深い。新聞やニュース等で語られる事件には被害者と加害者しかいないが、こういったドキュメンタリー的手法で語られる事件の裏側には、そこに関わることになった人々とその理由、また、被害者と加害者の人生における背景とそれぞれの立場に至る理由、といったものが描かれていて、その丁寧な描き方が氏らしいところ。
 
 しかし、ある二組の家族についての語りはインタビュー形式ではなく、関係者の視点から描かれる。これがまた感情移入してしまうんだな。特に難題を押しつけられることになった宝井家の長男には。…やはり宮部氏は子供を書かせると上手い。
 

<デルフィニア戦記>第3部『動乱の序章』全5巻  茅田砂胡著
                           中央公論社 中公文庫
 タウ山脈の領土問題を巡り、タンガとの間に戦端が開かれる。国王自らが参戦し、これを撃退したデルフィニアだったが、それも束の間、今度はパラストが国境近くの領主に甘言を用いてデルフィニアに反旗を翻させる。この討伐にでかけるデルフィニア国王ウォル・グリークはまんまと罠にはまり敵国パラストに捕らえられてしまう。ウォルの命運は如何に。一方、王妃リィにはタンガ、パラスト両国から暗殺を依頼された刺客が迫る!
 
 ついに牙を剥く隣国タンガとパラスト。戦争が描かれる中でもそれぞれのキャラクターは、きちんと役割が与えられてしっかり動き回っている。そしてデルフィニアに咲く恋の花。どこもかしこも。なんだか読者サービスし過ぎのような気もしないでもないが…。最後に名前だけは挙がっていた遥か北国スケニアも本格的にストーリーに絡んでくるので、伏線の処理もきちんと成されていて安心して読める。
 
 また、異邦人リィの正体についても「次元の違う話だから」と放置せずに度々エピソードが出てくるので、もしかしたら何かしらの決着をきちんと考えているのかもしれない。そんなところがただのキャラ萌え小説ではなくて、いろんな人に人気がある証拠なんだろう。

 
 

<デルフィニア戦記>第2部『異郷の煌姫』全3巻   茅田砂胡著
                          中央公論社 中公文庫  
 見事王座を奪還し、デルフィニア国王として起ったウォル・グリーク。内乱から2年が経とうとしている頃、デルフィニアの繁栄を良しとしない隣国パラスト、タンガで陰謀が進行していた。それは、内乱においてウォルの親友として働き、圧倒的な力を見せつけたデルフィニア王女リィをデルフィニア王から引き離す策だった。両国の策謀に対してデルフィニア王が採るべき道は…?
 
 これまでデルフィニア国内だけの話であったものが、今後隣国を含めた次の舞台へと進む中継ぎの章、といった趣。とはいえ、第三部への重要な布石であり、展開もスピーディで飽きることはない。とかくキャラクターの多彩さが話題となる<デルフィニア戦記>だが、話の展開も十分面白い。これからの展開に期待大。
 

『新宿鮫VII 灰夜』   大沢在昌著
             光文社 光文社文庫
 <新宿鮫>と恐れられる新宿署の鮫島警部。彼はキャリアであるにもかかわらず、未だ所轄署の一警部であるにすぎない。彼の出世を阻んでいるのは警察学校を出たての頃に起こした公安刑事とのいざこざであり、そしてもう一つ重要な原因が、彼が持つ警察機構全体あるいは国をも巻き込みかねない程の「情報」である。この「情報」は、鮫島の同期である宮本の遺書として存在しているが、本作ではその遺書が鮫島に渡るに至った経過が詳しく書かれている。
 
 宮本の七回忌に出席するために九州の一地方(と思われる)へ向かった鮫島。ところがその晩、彼は何者かに拉致、監禁されてしまう。翌朝には解放されるのだが、そこには法事の席で出会った宮本の友人、古山の助けがあったことを知る。しかし今度は古山の命が危うくなり、鮫島は彼を救出するため、捜査権の届かない地で孤軍奮闘を開始する…。
 
 毎度ながら鮫島の正義感と信念の強さには感服する。警察官というのは皆こうあって欲しいものだ。そして今回、宮本の遺書に対する言及がこれまでよりも成されているわけだが、やはりその内容までは明らかにはされない。おそらくこれからも、その内容については明らかにされないのではないかと思うのだが、それはそれでいいのではないかと思ってしまう。それでも十分に物語の鍵として機能しているのだから。

 
 

『黒祠の島』   小野不由美著
         祥伝社 祥伝社文庫
 探偵業を営む式部は行方不明となった友人、葛木志保を探してある島へとやってきた。その島の大半は山が占めており、人の住む場所は港周辺のごくわずかな地域のみ。そして本土の人間に言わせると、島民はよそ者を受け入れない排他的な人々であり、島独特の信仰を持っているという…。
 
 「黒祠」というのは簡単に言えば国に認められていない宗教。国の神社仏閣の統廃合政策からもれたその地域に独特な信仰を指す。確かに地域には様々な信仰があって、実際この前TVで観たのだが、香川県かどこかに自分の亡くなった母親のために建てたお寺というのもあった。そういう信仰は別段あまり問題ないようにも見えるのだが(勝手にお寺を建てて良いのかどうかは疑問)、「黒祠」という字を当てるとなんだかイヤーな雰囲気が出てくる。
 
 外部の人間に対しては上辺のみの対応しか示さない島民のおかげで捜査も進まないなか、ようやっと掴んだ情報は葛木志保が殺されていたという事実。しかも死体の状況は酷いもので、全裸で樹に逆さに縛り上げられていた上に頭部は燃やされて人物の特定が不可能だった…。何故志保はこのような惨い殺され方をしなければならなかったのか?そして島に伝わる「黒祠」はこの事件に関係するのか?…『屍鬼』にも通じる舞台設定と物語後半の「罪」と「罰」の問いかけ。もっと書き込めば『屍鬼』のような大作になっていたかもしれないが、これでも十分面白い。完全な解決にはなっていないところもミソ。
 

『トニーたけざきのガンダム漫画』   トニーたけざき作
                   角川書店 ガンダムエース掲載
 「機動戦士ガンダム」のパロディ漫画。熱心なファンの方には、もしかすると「許せない」という方もいるかもしれないが、これが非常に面白い。なんといっても絵が安彦良和氏にそっくり(安彦氏は同じ「ガンダムエース」誌上で『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を連載中)。本人が描いているんじゃないかと思うくらい。そしてネタも最高。量産型MS“サク”やガンダムの強さの秘密である“ダム”なんて、もはやファンの間でも市民権を得ているのではないか?シャアが随分と間抜けな姿をさらしているが、まあそれだけ人気がある証拠なんだろう。ご愛敬ということで。絵も上手いしネタも良い、ということで今後も期待大。あ、もちろんガンダムファンでないと内容が理解できないと思うので、まずは「機動戦士ガンダム」を観よう。

 

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