MARS


THE STORY



 辞令  

  シュトラール軍情報部第5軍団司令官シュタイン・バウアー中将

  

 1、概要

  「地球独立運動」と称する傭兵軍の反乱は貴官も耳にしていることであろう。 
  この、反乱鎮圧に向けて派兵している友軍のサポートに、第11宇宙艦隊第38後方支援艦隊が派遣され
 現在火星の衛星フォボス軌道上に駐留している。機動宇宙工場を旗艦とする、機動反物質生成サイロ、機動
 宇宙ステーションなどを伴った、長期滞在をになう大規模な艦隊だ。

  この艦隊に派遣されている我が情報部員の定時報告に見逃せない点があった。
 太陽系の現状については、別途詳細を見てもらう。よって、ここでは大まかなことを記述する。
 火星のもう一つの衛星ダイモスには、傭兵軍を援助している兵器メーカーおよび小国家などが投資し、彼ら
 が別の恒星系で雇った傭兵が運用して
いる超巨大スティルス宇宙輸送船が駐留している。タイプは「アルテ
 ミス級」。そう、あの「動く兵器工場」がいるのだ。

  この戦争は、旧兵器の消費と、新型兵器の発生に役立つとして、あえてアルテミス級を黙認している。
 いつものことと思ってくれればけっこう。

  問題は、通常ならば馴れ合いで済むはずのこの種の戦争が、今回は主に兵器メーカー「B社」の行動が、
 最悪の場合、本格的な軍事行動を持って、早期に終了せねばならないかもしれないということになりつつ
 ある点である。

 
 2、情報
  
 先に触れた同胞の報告を記す。詳細データは別途を参照されたし。

 現在、B社は、我が軍と同じく、宇宙用兵器のテストを火星上で行っているが、その行動に異変が起きた
 とのこと。

 1、あきらかにテストではない規模の兵器の運用数
 2、組織的な行動が確認される。
 3、アルテミス級に来るブローケットランナーの数が増えた。
 
 この報告を受け、偵察艦の使用を許可したところ、重大な情報をキャッチした。
 1、火星上の、特に大規模な磁気を伴う砂嵐の中に、未確認物体がいる模様。
 2、それは、単一ではなく、複数確認される。また、これは主にサーモセンサーで感知しやすい。
 3、無線傍受から、彼らはこれに重大な関心を示している模様。
 4、それにともない、高名な科学者を何人か呼び寄せ、かつ、既に幾人かが火星に到着している模様。
 
 この物体および、科学者名の詳細などはまだ不明。アルテミス級に潜入している同胞の報告待ちである。
 補足すると、火星上に展開している敵兵力は、地球上の物をB社がライセンス生産、もしくは新造したもの
 であり、人員は他の恒星系から雇った傭兵で構成されている。

 よって、差別をはかるために、火星上の敵を、以後「B軍」と呼称する。
 
 3、命令

 この情報を国防議会にかけたところ、将官らは非常に興味を示し、予算が極秘に下りることが可決した。
 しかるに、命ずる。
 貴官は、自分の軍団を率いて、特に新設の装甲戦闘服などの新型兵器を主力とした師団を使用し、
 現場に赴き、物体の調査と、科学者の保護に努めよ。

 本作戦にB社の妨害があった場合、容赦無く殲滅することを許可する。
 
 以上、貴官の命運を祈る。  
 
 
                                        
                     シュトラール軍情報部最高司令官ミハイル・シュトワイヤー元帥
 


                         *
 


  アンヌ主席秘書官が読み終わったようだ。 
 「というわけだ」
 「なるほど…。面白そうなミッションですね。ところで閣下、軍団を全て動かすおつもりですか?」
 「いいや、とりあえず第6師団だけ」
  とたんに、主席秘書官の切れ長の瞳が細まり、唇が孤を描いた。
 「ミュラー准将が大喜びしますわね。装甲戦闘服の訓練が生かせると」
 「そういうこと。と、いうわけでミュラー准将と、司令部のメンツを30分後に召集してくれ。その間に
  他の資料を読んでおく」

 「かしこまりました」

 






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