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「え?……あ…うん………」 バツが悪そうに、は足下に置いてある荷物に視線を移した。 食材?…買い物の帰りにでも俺の家に寄ったのか? 「、その荷物は何だ?」 「えっ、いや…その…あのね、実は葉月くんを驚かそうと思って…」 こんな時間にここにいることでもう、十分驚いてる。 「本当は、明日の料理の仕込みに来たんだ…そしたら鍵をなくしてて…」 明日?明日、何かあるのか? 「だって、明日は恋人になって初めての特別の日だから、いつもと違うお祝いをしたかったの」 「…特別の日?…お祝い?」 「もう!葉月くんってば、忘れてるの?」 俺、が言っている意味が全然分からない。 はしゃがみ込んで、荷物の一つから何かを探してる。 「本当は日付が変わってから言いたのにな〜でも…」 ……何が特別で、何がお祝いなんだ? 明日って10月16日だよな… あっ! 「少し早いけど、お誕生日、おめでとう!これ、プレゼント!」 「…ネコ、の形のマグカップ?」 「手作り…なの。形悪いから作り直そうと思ったんだけど…時間がなくって」 …おまえにはおまえの世界が…時間があるはずなのに、俺のために… いや、俺のせいでおまえの自由を奪ってる… 「買ってこようと思ったんだけど、なかなか気に入ったのがなくって」 …手作り…の手作りのプレゼント。 嬉しい…でも…それよりも… ごめん、…俺、悪いと分かっていても、俺の我儘な望みだと思っていても… 会えない時間も、俺のことを考えてくれていた気持ちがすごく嬉しいんだ。 「ごめん、…俺…」 言葉が出てこない変わりに俺は、をギュッと抱きしめた。 他人のことなんかどうでもよかった俺が、おまえだけには願ってしまう。 俺の事だけ考えて欲しい…と。 「葉月くん、なんで謝るの?えっ、あっ、やっぱり気に入らない?」 おろおろとしているを抱きしめている腕に力がはいる。 「…、……ー…」 嬉しくて、幸せで、愛おしくて…… 「葉月くん、ここ玄関先だよ…人が見るよ」 「かまわない…」 「だめだよ〜、ねっ、離して、お願い」 …俺は渋々を離した。 本当は冷たいおまえを温かくなるまで抱きしめて… 冷たい? 「…おまえいつから俺を待っていたんだ?」 「えっ?ん……葉月くんが帰ってくるちょっと前だよ」 …嘘だな、こんなに冷え切ってるくせに。 「少し躰を温めてから、送るから家に上がれよ」 「いいよ、葉月くん疲れているんでしょ。」 「おまえの顔、見たら疲れなんか何処かへいった」 少しだけでいいんだ、ほんの少しで。 もう少しだけこの幸せ感をおまえの傍で感じてたいんだ。 せめて、躰が温まるまでいい… その後……送るから。 「ん…でも…」 「あぁ門限か?だったら俺がおばさんに…」 「いいの、いいの!今日は門限はないの!あっ…」 俺の言葉を遮っての口から出てきた言葉の意味は? それによく見ると、買い物袋の他に小さいボストンバック? 「?」 「…あのね…さっきも言ったけど、日付変わってからお祝いの言葉を言いたかったの」 「?」 「えっと……その…恋人同士になって初めての葉月くんのお誕生日でしょう…」 「!」 の言葉の意味を、都合のいいように解釈してしまいそうになる、俺。 たぶん間違ってないとは思う… でも俺は、の口から聞きたい。 「誕生日だから、何?」 「…葉月くん、もう…分かってるクセに…いじわる」 「おまえの口から、聞きたいんだ」 「ここで(玄関先で)?」 「ここで。今、聞きたい」 「……えぇーと、あの…わたしもその……」 真っ赤になって、うつむく。 そして小さい声で、俺の解釈が間違っていない言葉をくれた。 「…プレ、プレゼント…だったりするんだけど…もらってくれる…かな?…」 俺は今すぐ抱きしめて、にキスをしたかった。 いつもと違う、深いキスを… 躰を熱くするような口づけをしたかった。 しかしここではさすがに、まずい。 「今年の誕生日はきっと俺…忘れない…」 これから始まる俺の誕生日祝い… 時間はたっぷりある。 も俺も躰を温めるだけの時間が… 俺は、が持ってきた食材を持ち上げて家の鍵を開けた。 「今日は少し冷えるね」 「あぁ…、そのマグカップにコーヒー、入れてくれるか?」 「もちろん!そう思って葉月くんの好きな豆、持ってきたの。」 そして、付き合う前によく言った言葉をにかけ、家に招いた。 「何のおかまいも出来ませんが…」 「はい、はい……もう勝手知ったる葉月くん宅なんだけど」 そう言いながら、はクスクスと笑って俺の家に上がった…… ***** いつもならまだ寝ている俺が、今日は早々と目が覚めた。 確認したかった、これは夢ではないって事… …愛しい人をこの腕に抱けた事実を… 目を開けると、俺の瞳に映る鮮やかな色。 それは、おまえという色彩… 夢じゃなかった… 今はまだ俺の隣で眠っている… 嬉しくて、溢れだしてくる幸福感… ただ…涙の後が、俺の胸を少し痛めた… そっと、おまえを起さないように抱きしめ直す。 そして俺はまた、眠りに落ちていく… 眠り姫は王子様のキスで目が覚めた… 居眠り王子の俺を起すには、もうキスだけじゃ足りない… わかってる? 俺の…俺だけのお姫様… 〜終〜 あとがき 様、ココまで読んで下さってありがとうございます。 うお〜!やっと、お誕生日小説がアップできた! 口下手の葉月くんはいろいろ心の中では思っているんだろうな〜、とか 「いい子」をするためには、いろんなものを閉ざしてきたりしてきたのかな、とか 考えていたらこんな話が出来ました。 次からの話は「欲しいものは欲しい」と言えるような葉月くんにしたいと 思っていますが、どうなる事やら。 お誕生日の夜の話は、また別口で書きたいと思います。(というか制作中) で、遅くなりましたが、葉月くんお誕生日おめでとう! もしよかったら、感想など聞かせて下さると嬉しいです。 |
