◇◇◇  色づく風景(後編) ◇◇◇

 

ドリーム小説…本当は何か俺に用があるんだろう?」
「え?……あ…うん………」
バツが悪そうに、は足下に置いてある荷物に視線を移した。
食材?…買い物の帰りにでも俺の家に寄ったのか?
、その荷物は何だ?」
「えっ、いや…その…あのね、実は葉月くんを驚かそうと思って…」
こんな時間にここにいることでもう、十分驚いてる。
「本当は、明日の料理の仕込みに来たんだ…そしたら鍵をなくしてて…」
明日?明日、何かあるのか?
「だって、明日は恋人になって初めての特別の日だから、いつもと違うお祝いをしたかったの」
「…特別の日?…お祝い?」
「もう!葉月くんってば、忘れてるの?」
俺、が言っている意味が全然分からない。
はしゃがみ込んで、荷物の一つから何かを探してる。
「本当は日付が変わってから言いたのにな〜でも…」
……何が特別で、何がお祝いなんだ?
 
明日って10月16日だよな…
 
 
あっ!
 
 
「少し早いけど、お誕生日、おめでとう!これ、プレゼント!」
「…ネコ、の形のマグカップ?」
「手作り…なの。形悪いから作り直そうと思ったんだけど…時間がなくって」
…おまえにはおまえの世界が…時間があるはずなのに、俺のために…
いや、俺のせいでおまえの自由を奪ってる…
「買ってこようと思ったんだけど、なかなか気に入ったのがなくって」
…手作り…の手作りのプレゼント。
嬉しい…でも…それよりも…
ごめん、…俺、悪いと分かっていても、俺の我儘な望みだと思っていても…
会えない時間も、俺のことを考えてくれていた気持ちがすごく嬉しいんだ。
「ごめん、…俺…」
言葉が出てこない変わりに俺は、をギュッと抱きしめた。
他人のことなんかどうでもよかった俺が、おまえだけには願ってしまう。
俺の事だけ考えて欲しい…と。
「葉月くん、なんで謝るの?えっ、あっ、やっぱり気に入らない?」
おろおろとしているを抱きしめている腕に力がはいる。
、……ー…」
嬉しくて、幸せで、愛おしくて……
「葉月くん、ここ玄関先だよ…人が見るよ」
「かまわない…」
「だめだよ〜、ねっ、離して、お願い」
…俺は渋々を離した。
本当は冷たいおまえを温かくなるまで抱きしめて…
冷たい?
…おまえいつから俺を待っていたんだ?」
「えっ?ん……葉月くんが帰ってくるちょっと前だよ」
…嘘だな、こんなに冷え切ってるくせに。
「少し躰を温めてから、送るから家に上がれよ」
「いいよ、葉月くん疲れているんでしょ。」
「おまえの顔、見たら疲れなんか何処かへいった」
少しだけでいいんだ、ほんの少しで。
もう少しだけこの幸せ感をおまえの傍で感じてたいんだ。
せめて、躰が温まるまでいい…
その後……送るから。
「ん…でも…」
「あぁ門限か?だったら俺がおばさんに…」
「いいの、いいの!今日は門限はないの!あっ…」
俺の言葉を遮っての口から出てきた言葉の意味は?
それによく見ると、買い物袋の他に小さいボストンバック?
?」
「…あのね…さっきも言ったけど、日付変わってからお祝いの言葉を言いたかったの」
「?」
「えっと……その…恋人同士になって初めての葉月くんのお誕生日でしょう…」
「!」
の言葉の意味を、都合のいいように解釈してしまいそうになる、俺。
たぶん間違ってないとは思う…
でも俺は、の口から聞きたい。
「誕生日だから、何?」
「…葉月くん、もう…分かってるクセに…いじわる」
「おまえの口から、聞きたいんだ」
「ここで(玄関先で)?」
「ここで。今、聞きたい」
「……えぇーと、あの…わたしもその……」
真っ赤になって、うつむく
そして小さい声で、俺の解釈が間違っていない言葉をくれた。
「…プレ、プレゼント…だったりするんだけど…もらってくれる…かな?…」
俺は今すぐ抱きしめて、にキスをしたかった。
いつもと違う、深いキスを…
躰を熱くするような口づけをしたかった。
しかしここではさすがに、まずい。
「今年の誕生日はきっと俺…忘れない…」
これから始まる俺の誕生日祝い…
時間はたっぷりある。
も俺も躰を温めるだけの時間が…
俺は、が持ってきた食材を持ち上げて家の鍵を開けた。
「今日は少し冷えるね」
「あぁ…、そのマグカップにコーヒー、入れてくれるか?」
「もちろん!そう思って葉月くんの好きな豆、持ってきたの。」
そして、付き合う前によく言った言葉をにかけ、家に招いた。
「何のおかまいも出来ませんが…」
「はい、はい……もう勝手知ったる葉月くん宅なんだけど」
そう言いながら、はクスクスと笑って俺の家に上がった……
 
*****
 
いつもならまだ寝ている俺が、今日は早々と目が覚めた。
確認したかった、これは夢ではないって事…
…愛しい人をこの腕に抱けた事実を…
目を開けると、俺の瞳に映る鮮やかな色。
それは、おまえという色彩…
夢じゃなかった…
今はまだ俺の隣で眠っている…
嬉しくて、溢れだしてくる幸福感…
ただ…涙の後が、俺の胸を少し痛めた…
そっと、おまえを起さないように抱きしめ直す。
そして俺はまた、眠りに落ちていく…
眠り姫は王子様のキスで目が覚めた…
居眠り王子の俺を起すには、もうキスだけじゃ足りない…
わかってる?
俺の…俺だけのお姫様…
 
 
 〜終〜
 
 
 


 
あとがき
様、ココまで読んで下さってありがとうございます。
うお〜!やっと、お誕生日小説がアップできた!
口下手の葉月くんはいろいろ心の中では思っているんだろうな〜、とか
「いい子」をするためには、いろんなものを閉ざしてきたりしてきたのかな、とか
考えていたらこんな話が出来ました。
次からの話は「欲しいものは欲しい」と言えるような葉月くんにしたいと
思っていますが、どうなる事やら。
お誕生日の夜の話は、また別口で書きたいと思います。(というか制作中)
で、遅くなりましたが、葉月くんお誕生日おめでとう!
もしよかったら、感想など聞かせて下さると嬉しいです。

               

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