「北九州再地図化計画」企画書2
あるゲームソフトを通して見た北九州(仮)
−人権都市・北九州の再認識と同人活動の認知向上を目指して−
知岡盛蔵
◇本企画の背景
本企画の責任者は、大学院に在籍し、日本のアニメや漫画といった大衆文化、特に「同人活動」に興味を持ち、実態調査のような社会学的な立場から研究しています。同人活動とは、自分の好きなアニメや漫画、ゲームなどのキャラクターを基にした、自由な表現活動のことです。そんな中で責任者は、北九州市を拠点に活動する、ある同人サークルに会うことが出来ました。
そのサークルの名前は「熱血家」(ねっけつや)と言って、パソコンゲームソフト『kanon』(株式会社ビジュアルアーツ、KEY)を基に、2次的創作物(ゲームソフト)を制作しています。その活動は活発で、3ヶ月に一本のペースで作品を制作し、同人誌即売会へ参加していると言います。また、寄せられる数多くの反響はもちろん、作品が東京の専門店に置かれるなど、同人界での人気や知名度も高いサークルです。
今回の「北九州再地図化計画」にあたり、責任者の関心が熱血家に向くことは、当然と言えるでしょう。また、事前に聞き込みをする中で、熱血家は単に北九州に拠点を置いているだけでなく、北九州という場所に拘った作品も作っているということも分かりました。これは、「個人的な『認知地図』を複合的に収集する 」「北九州の『生きた』ナビゲーション・システムを作ろう」という、本計画の目的に沿うと考えられます。そこで本企画は、同人活動やそこから生まれる作品を通じて、その目的を達成しようとするものです。
◇企画の目的
本企画の目的は、2つあります。1つは、この「北九州再地図化計画」(以下プロジェクト)の目的である「都市の新たな認識をつくりだす」というものです。同人活動という視点から北九州を見るというのは、かなり新しい試みなのではないかと自負しております。そして、それは北九州を意識した作品を作っている熱血家様から取材させて頂くことで、充分に達成できるものと思います。幸い、熱血家さまは、全面的な協力の意志を表明してくれています。
もう1つは、同人活動の認知向上です。これは、企画者の問題意識であると同時に、本企画に備えた話し合いをする中で、熱血家様もしばしば言及されることでした。つまり、取材する側とされる側が共有している問題意識なのです。同人活動は、その規模に反して、よく知られているとは言えません。むしろ、マイナスイメージが流布されている観があります。これは、同人活動家やファンたちにとって、切実な問題なのです。
そんな同人活動が、「財団法人九州ヒューマンメディア創造センター」という公的な団体が主催する本プロジェクトに名乗りを上げることは、それを変えていく一つのきっかけになると信じています。また、本プロジェクトの成果物は、北九州博覧祭2001のd-museumブースで展示されると同時に、世界中の美術館や図書館へ配送されると言います。資料として、公的な機関に同人作品が保存されるという例はあまり聞かず、これも同人活動全体にとって大きなプラスになると考えています。
◇企画の内容
@同人サークル「熱血家」へのインタビュー
3作目の『血族』は、北九州における部落問題を意識し、それに関する綿密な取材を経て作られたと言います。サークルの代表者が「『人権都市宣言』をしている北九州市の職員にもやって欲しい」と言うほど、熱い思いが込められている作品です。同作は『kanon』というパソコンゲームソフトを基にしていますが、それは制作者側の問題意識を伝える媒体に過ぎないのです。
このような作品を作ったサークル「熱血家」のメンバーに、座談会形式で話を聞き、作品を作った経緯や、込められた思いなどを聞きます。
A北九州市内散策
@で得られた情報を基に、サークルのメンバーが作品を作るにあたって、北九州市内で取材したり意識したと言う場所を、企画者たちも実際に歩いてみます。そして、そこで写真撮影や聞き取りを行い、可能な限り記録を残す予定です。行った地点は、地図に記すことを考えています。
Bリレーレクチャー
熱血家さんのゲームのシナリオ担当の方を東京から招き、同人活動やゲームにかける思いをお話して頂きたいと思っています。予定は、9月30日(日)14時からとなっています。
C同人作品のDVD化
本プロジェクトの成果は、最終的には、DVDにまとめたデジタル地図として世界各国の図書館や美術館、各メディアに配布する予定になっています。そのDVDの中に、熱血家の同人ソフトや、リレーレクチャーを撮影した映像を入れます。
これは、資料の保存という本来の目的だけでなく、同人活動の認知向上にも一役買うと思われます。
◇企画にあたっての予備知識
○パソコンゲームソフト『kanon』(株式会社ビジュアルアーツ、KEY)
一般的に、パソコンゲームソフトには性描写がある、いわゆる「成人向け」が多いという印象が強いようです。しかし、近年その状態は変わりつつあり、性描写を売りにしたものだけでなく、それを極力控えてシナリオを重視したゲームも多くあり、「ビジュアルノベル」というジャンルまで確立しています。
『kanon』はそんなゲームの代表作であり、ファンの絶大な支持を受けています。また、「全年齢対象」用に作り直され、家庭用ゲーム機に移植されているという事実も、同作が性描写を売りにしたものではないことが伺えます。
そのような、名作の誉れ高きkanonを基に、2次的著作物(ゲームソフト)を作っているのが、同人サークル「熱血家」なのです。
○熱血家の作品について
熱血家さんがkanonを基に作品を作り始めたのは、1999年からだそうです。同サークルのホームページから、一部を紹介します。基本的に、各作品毎にkanonに登場するキャラクター1人1人に焦点を当てた形になっています。なお、紹介文は一部、ホームページのものを流用させて頂きました。
@『Ayu・me』(1999年12月22日 発行)
「Kanon」の登場キャラクターの1人・月宮あゆとのハッピーエンド後の世界を描いた「Kanon」形式のビジュアルノベル。
A『西病棟503号室』(2000年4月2日発行)
「Kanon」の登場キャラクターの1人美坂栞(しおり)の闘病を見守る、「Kanon」のアナザーストーリー。「尊厳死」という重いテーマに正面から挑み、栞を題材に死生観の根本を問いただします。
企画者と熱血家さんが接点を持つきっかけとなったソフトでもあります。熱血家様が、企画者が参加している研究会のアンケートに協力してくれた際に、このソフトも同封してくれたのです。
B『血族』(2000年5月5日発行)
差別問題に焦点を絞り、現代社会の病根に鋭く迫ります。同じく「Kanon」の登場キャラクターである、川澄舞と倉田佐祐理の前に立ちはだかる数々の障害と真の友情を大胆な筆致で描きます。
サークルの代表者によると、この作品は北九州の部落問題を意識して作られたそうです。作品を作るにあたっての取材の中で、資料が少ないなどのご苦労があったと言います。 北九州市は「人権都市宣言」をしているにも拘わらず、これは問題であると強く仰っていました。
非常に難しい問題を扱った本作ですが、極めて真摯な態度で作られ、問題に関係する方々からも直接お礼を言われたほど、認められている作品です。サークルの代表者も「北九州の役所の人にやって欲しい」と仰っていました。
本企画の目的の1つである「北九州の再認識」では、この作品に焦点を当てたいと思います。また、同時に目指す「同人活動の認知向上」では、『血族』はもちろん、可能な限り熱血家さんの作品のDVD化を図り、資料として保存され、世界中の美術館や図書館に配布されるようにします。
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