対人強化型暗殺班編
「こちら特殊暗殺班・・・任務完了しました」
「了解。直ちに帰還しなさい・・・・気を付けてね、ミオ・・・」
「はい、お姉様」
敵地での暗殺、及び極秘文書の奪還を終えた三人は一寸先さえわからないような暗闇の中を走りだした・・・。
普通なら考えられない速さではぐれる事も無く暗闇を駆け抜けられるのは、少女達が常人には考えられない生き方をしてきた証である。
音もなく、ただ森をひた走る三人だったが・・・・・・・。
「今回の任務は簡単すぎてやり甲斐が無かったな・・・」
敵の本拠地から離れしばらく経った時、不意にミユウが話し出した。
彼女との任務は何時もこうだ・・・戦う事が楽しくて仕方がないのか毎回のように「つまらなかった」だの、「相手が弱くて話にならない」と、純粋に暴れ足りないらしく任務に文句をつけるのだ・・・。
「・・・必要以上に勝手な行動はしないでって言われたでしょ」
ミオは溜め息混じりに彼女を諭したが、まったく悪びれた様子もなく話を続けるミユウ。
「ねぇ、ミコはどう思う?」
ミユウの態度に半ば呆れたミオは、チラリとミコへ視線を移し彼女に意見を尋ねてみた。
しかし、ミオに話しかけられたミコも・・・。
「私、任務以外の事はどうでもいいですから」
と、無関心に答えるのだった・・・ミユウもミコも苦手なタイプだとミオは思い、深い溜め息をつく・・・。
「だってさー、私とナミは普段は隠密活動ばっかだから、人とか殺さないんだよ。そんなのつまんないじゃん、ミコだって暇な任務よりは暴れられる方が楽しくない?」
「・・・興味無いです」
「あ、そぅ・・・」
走り出すのも忘れて、すっかり立ち止まり話し込む三人だったが・・・微かに殺気と人の気配を感じたミコの顔つきが変わる・・・・・・。
「来る」
その言葉にミオ達の視線が急に鋭くなった。あっという間に静けさを取り戻した暗闇の中で、三人は敵の気配に精神を集中させる・・・。
(敵の数は、2〜3人位・・・)
ミオやミユウと違い、暗がりでの暗殺を得意分野としたミコが瞬時に敵の人数や特性を把握すると、続けてミユウが状況を咄嗟に判断した。
・・・どうすれば確実に戦闘に持ち込み、最小限の犠牲で相手を全滅に追い込めるか・・・と。
最後に三人の中で最も実戦経験が多く、戦闘能力の長けているミオがミユウの判断した状況も踏まえた上で二人に最適な攻撃指示を出すのだ・・・。
しばらくの間、三人の周りに沈黙が続く・・・
身を潜めているだけなのに、無意識の緊張からか額を汗がながれるのがわかる。
(ミユウ、ミコ・・・行くよ)
ミオが小声で囁くように眼で意思を伝えると二人が頷く・・・。
敵の気配が徐々に近づいて真正面で自分達に対し殺気を確実に感じた瞬間、ミオが飛び出した。
「グ・・・ァ・・・・・・」
勝負は一瞬で決まった・・・。
ミコやミユウ達が辛うじて反応出来るか出来ないかの速度でミオの刀は正面に潜んでいた女の心臓を突き貫いていた・・・。
何が起きたのか理解する間もなく少女はミオの肩口に力無く倒れかかり絶命する。
刀から流れ落ちる生暖かい血を感じ、手に伝わる相手の心音が途絶えた瞬間、ミオは素早く刀を引きコト切れた少女の亡骸を突き飛ばし闇に同化していく・・・。
ミオが居なくなり、いきなり同胞が殺されざわめきたつ少女達、その隙をミユウは見逃さずに咄嗟にその場から走りだす。
すると、ミユウの後を二人の少女が続いて追いかけた・・・。
数分後、足を止めたミユウは振り返って楽しそうに追っ手の品定めをしだす。
「ふ〜ん、あんた達がアタシの相手なんだ?・・・二人同時にかかってきてもいいよ」
「本気で来てよ」
ミユウは走り続けていたがピタリと足を止め、二人の少女を小馬鹿にするかのように笑いながら少女達を挑発してみせた。
緊迫した空間の中でジリジリと間合いをつめ、飛びかからんばかりに険しい表情を見せる少女達。
その時、一人が耐えられない緊張からなのか、一瞬目をそらしたのをミユウは見逃さなかった・・・。
ミユウは、屈み込むように体を曲げた低い姿勢で二人の前へ飛び出すと装備した鉤爪を右側の少女へと力任せに振り下ろす・・・。
「ウッ!??」
纏っていた忍装束ごと鋭い爪で身体を切り裂かれ、少女は叫び声をあげる。
左側の脇腹辺りから斜めに身体を斬りつけられバランスを崩した少女ににミユウは更に追い打ちをかけた。
爪を振り下ろした無防備な体制から重心に力強く回転を加え、斬りつけた脇腹の傷口から夥しい血と骨の折れる鈍い音が聞こえた・・・。
空高く蹴り上げられ、枯れ葉のように宙を舞って地面に叩きつけられた少女にミユウは最後の一撃とばかりに頭を踏みつけ、血に染まった細い首に鉤爪を突き刺しとどめの一撃を喰らった少女は完全に死に絶える。
・・・ミユウは少女の亡骸を再度蹴り飛ばして呟いた・・・。
「弱くてつまんないなぁ・・・」
そう言って不満そうな顔をするミユウはやる気の無さげに少女の死体を無視し、残された少女に声をかける・・・。
「次はあんたの番だね」
「ッ・・・イヤ・・・」
仲間を一瞬のうちに無惨に殺されたショックと、予想以上のミユウの残酷さで恐怖に怯える少女は刀を構えているものの殺気は完全に消えていた。
そんな少女を見てミユウはクスクスと笑いだす・・・。
「大丈夫よ、さっきの子より楽に殺してあげるからv」
ミユウは笑顔でそう言うと、一歩また一歩と逃げる事の出来ない少女へと歩み寄って行った・・・。
・・・その頃、ミコは敵対する残された少女と戦っていた。
ぱっと見るだけでは敵の少女が刀を構え、ミコは刀も抜かずに逃げ回っているように見える。
しかし、外見は明らかに少女の方が外傷が酷かった・・・。
「・・・死にたくないなら、逃げたほうがイイですよ・・・」
ミコは無表情のまま感情のわからない声で話しかけた。
「逃げたほうがいい」なんて言われた方のプライドが高い程、相手は自分を馬鹿にしていると思うだろう・・・。
少なくともミコと戦っている少女のプライドは高いらしく、逆上してミコに刀を振り上げた・・・。
少女は逆上してミコへ襲いかかった・・・。
刀はそのままミコの額をかすめていく、刀の先端が数ミリ前髪を切り、パラパラと落ちていった・・・更に少女は攻撃を止めずに連続で斬りかかる。
「・・・私は先輩達の様にやさしくないですよ」
少女から繰り出される全ての攻撃を紙一重で避けきった体制からミコが動きだす・・・。
「・・・ッ!?」
少女は突然のミコの動きに反応が出来ず、あっさりと彼女を見失うと・・・その刹那、身体に凄まじい衝撃を受けた。
身体中を電流が駆け抜けたかのように少女は闇を切り裂くような叫び声をあげ、ガクリと膝をつく。背後からミコの手刀が背中を貫いたのだ・・・
素早くミコが手を背中から引き抜き離れると、ダラダラと血の流れる腹部を押さえながらも少女は身体の向きを変えてミコへ攻撃を仕掛けようと体制を立て直した。
片手で刀を構え、鋭い眼光でミコを睨み付ける・・・。
「意外としぶといんですね・・・しょうが無いですケド、死んでもらいます」
瀕死の重傷にもかかわらず、執念でミコを殺そうとする少女に呆れた様に呟くと、またしても少女から悲鳴があがった・・・。
「キャァァァ!!!」
素早く姿をくらましたミコは再度、少女の背後に回り細い首めがけて手刀を浴びせた・・・。
風のようにヒュッと空を切る音と共に滝のように血が吹き出しミコに降り掛かる。しかし、返り血を全身に浴びながらもミコは更に叫び声をあげる少女に襲いかかった。
「・・・だから、逃げてもいいって言ったのに・・・」
独り言のように小さな声でポツリとこぼすと・・・頭部めがけて蹴りつけた・・・骨が折れるような筋が切れるような嫌な音をたて、少女の首はだらしなく身体から垂れ下がると身体は地面に伏していった・・・・・・。
そんな様子をミコはまた、他人事のように眺めて呟いたのだった・・・・・・。
「馬鹿な人・・・・・・」
・・・そして。
「うわ〜、その子の死にかた凄くない?」
さっきまでの地獄のような状況から一点して元に戻った静寂な森にミユウの明るい声が響く。ミユウはガサガサと茂みから現れミコに話しかけた。
「・・・抵抗したからです」
「あはは〜抵抗したからってやりすぎだって!」
無惨に首の曲がった少女の死体を眺めながら言葉とは裏腹に楽しそうにミユウが笑う。
「やりすぎは貴方よよ、ミユウ!」
二人が振り返るとそこにはミオ・・・。
「ここに戻るまでにあった首のちぎれた死体と顔の潰れてた死体は貴方が殺したんでしょ?」
「あっ、それあたし!」
その言葉にミオは首を振って肩を落とす・・・。
(この子には私が何を言っても無駄みたいね・・・それに・・・)
色々考えると忘れていた疲れが現れ、ミオは早く帰りたくなってきた、その時・・・・・・。
「ミオさん・・・早く帰りましょ・・・」
ミコは小さい声で呟いた・・・。
「あっ、賛成!あたしも早く帰りたい!」
ミユウも手を挙げてミオを捲し立てる。
予定外の戦闘から解放された三人の考えは今だけ同じ気持ちだったらしい・・・。
ミオは、今日何度目かの溜め息をつくと、ミユウの我が侭はとりあえず忘れる事にして歩き出す・・・。
「・・・そうね、流石に疲れたわ・・・お姉様も心配するだろうし・・・」
歩き出すミオに続けて二人も後を追って続いて行った・・・・・・。
終。
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