月面基地の攻防


偵察衛星より入電、『二隻の識別不明の宇宙船が接近中』と。
「放っておけ。狼たちの偵察部隊だ。たかが二隻でここに手出しは出来ぬさ。」
ナガト司令は断言した。
「確かに。このムーンベースは文字通り難攻不落であります。」副官もそう応えた。

月・・・、狼は古来より、月に向かって遠吠えをしたらしい。
夜空に輝く神秘的な魅惑の女神。
「美しい。この星は、戦略目的でなくとも、手に入れてみたくなる。」
近づいてくる船の艦橋に映る人影がそう呟いた。

この二隻の船とは、宇宙狼軍・総旗艦『ジャッカル』と、同型艦『ハイエナ』である。
『ジャッカル』は、建造されたばかりの最新鋭で、その背部に巨大な新兵器・二連装スクリューカノン砲を
もつ。それは、従来の宇宙戦艦がもつ標準的な主砲の二乗の破壊力という。
『ハイエナ』は、同じ設計の船体ではあるが、航空母艦仕様に改造されており、武装もスクリューカノン砲で
はなく、離れたところから支援射撃をするための超長距離用のスナイパーズ・カノン砲となっている。
そして、この二隻の目的は、もちろんただの偵察などではない。

「ウルフタンク、出れるか?」
「はっ、いつでもOKです。」
「90秒後に爆撃を開始する、それと同時に強行揚陸せよ。」

「いいか、月面基地は、この艦の火力をもってしても外部からでは落ちぬ。
諸君ら、降下部隊の活躍にかかっている、いや、我々の命だけではない、我が帝国の命運を開く戦いの
行く末がかかっているのだ。行けい。」

「爆撃、始め!撃てい!」
「よしっ、ウルフタンク出るぞ。降下部隊、出撃。」

艦船のハッチが開き、爆風の合間をぬって、強固な装甲て覆われた小型の万能戦車たちが舞い降りて行く。

『ハイエナ』の背中の装甲が180度に展開し、滑走路状の甲板が準備された。
「第一、第二航空部隊、スクランブル開始。ウルフタンクらを援護する。」パイロットスーツに身を包んだ老練の
飛行隊隊長・カデムが号令する。

「リリカ。こんなところに来てはいけない。君は、この艦隊の総司令だ。」
「気をつけて、レイン。」
「俺は死にはしない。それに、この船と君も必ず守る。」

第二航空部隊隊長・レインボーウルフ中佐も出陣して行った。

1時間ばかり、月は爆風にさらされ続けた。

「グラウト様よりの入電です、ムーンベース制圧せり、と。」
同時に送らてきた映像には、機甲歩兵師団・大佐のロイ・グラウトの勇姿が映し出された。


「月が、狼のやつらの手に落ちたよ。」
「そうらしいなっ。」
「貴様の出番がやってきた。われわれとて、貴様を、ただ好き勝手させてやってるわけではない。
わかるな?なんのために、こんな猛獣のような男を飼ってるのか。
行け、豹牙よ。狼どもを血祭りにあげてこい。」
「わかっているさ。」男は不敵に笑った。

(次回予告) 
雷鳴豹牙の駆る新造宇宙戦艦『ジャグアー』が飛び立つ。
月面基地を占領した狼軍の旗艦『ジャッカル』は、地球の仲間と合流すべく、
アルプス基地に降下を始める。
大気圏内にて宿命の一騎打ちとなるか?
次回、『狼たちの銀河帝国』 第二章 「蒼空の死闘」。

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