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<鏡の迷宮1>

「みねこを遊園地に連れ行ってくれないとわざと小学校のテストで0点取るもん!」
 そんなことを言って、妹のみねこはずっと前から仕事で忙しいはずの両親に駄々をこねて半ば無理やりに両親の予定を空けさせたのだった。
 まったく、むちゃなことを言ったものだ。普通の家庭ならば、ここで親は説教の一つや二つでもするのかもしれないが、麻生家の両親はみねこにとても甘かった。それにみねこはやると言った事は本当に実行してしまう。私がお父さんの代わりに何か言ってやれば良かったのかも知れないが、さすが、みねこ、ぬかりはない。
「ねえ。お姉ちゃんも遊園地に行きたいよね?」
 急に屈託のない笑顔を私に向けて言って来た。
(かわいいなあ。ちきしょう)
「お父さん。私も遊園地行ってくれないと、全教科オール1取っちゃうかも」
 実は私にも行きたい所はあったのだが、妹のために譲ってあげることにした。
 お父さんは、顔面蒼白。私こと麻生かなめも妹には甘いのだった。

 そういうわけで、両親も私もいつものように妹に振り回される形で遊園地に来ている。
「みねこ、お馬さんに乗る!」
 そう言ってみねこが、指をさしたのはメリーゴーランド。
 みねこが一人で乗るのは危ないと思ったので私は一緒に乗ることにした。
 ゆったりとした音楽とともに白馬が動き出す。
「ねえ。みねこは、今お姫様みたい?」
 白馬に揺られながら、みねこはそんなことを突然聞いてきた。
「お姫様っていうより、猫って感じだわ」
 私はそういうと、みねこの喉を撫でてやる。
「ふにゃ〜〜ゴロゴロ〜」
 みねこは、猫の真似をして見せた。
 私はおかしくてつい笑った。すると、みねこもつられて笑う。
 何となく幸せな時間を過ごした。

 その後もどんどんみねこは、新しい乗り物に乗ろうとはしゃぎ回っていた。両親はさすがにみねこのペースに疲れたのか「休憩所にいるから後で合流な」と、言い残して行ってしまった。
 私もみねこのはしゃぎっぷりに疲れてはいたけれど、さすがにみねこを一人にはさせられない。しょうがないと思いながらもみねこについて行った。でも、相変わらず見ていて飽きない子だと思う。いつも元気で笑顔で悩み事なんて聞いたことがない。その代わりよく私はみねこに話を聞いてもらうことが多かった。ネガティブな私は愚痴が多いのだ。そのたびにみねこはあの笑顔で励ましてくれるのだ。だから、みねこの近くにいるのは心地よかった。心を開けるような友達がいない私にとって、みねこはなくてはならない存在なのだ。
 ゴーン、ゴーン
 突然、ひどく大きな音に驚いてそちらを見た。時計台のからくり時計が開いて中の人形たちが踊り出す。時刻は午後2時ちょうどを指していた。どうやらしばらく物思いにふけっているうちにみねこを見失ってしまったようだ。私はしばらくどうしようか迷っていたが、遊園地のパンフレットを思い出す。ポケットから出して広げて見ると、行ってないアトラクションは残り一つだけ。私は慌ててそのアトラクションへ向かった。

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