鏡の迷宮 小説TOPに戻る

<鏡の迷宮2>

 遊園地のはずれにひっそりとたたずむ建物。看板に大きく「鏡の迷宮」と書かれていた。もう結構古びているようで建物自体がボロボロで廃墟のようになっている。
 正面の入り口に近づいてみるとドアに張り紙がしてあった。
――閉館のお知らせ この「鏡の迷宮」は残念ながら都合により閉館させていただくことになりました。ご愛顧ありがとうございました――
 まさかみねこがこの中にいるとでも言うのだろうか。でも、他に当てもない。試しに張り紙がしてあるドアを押してみるとギィーと音がして開いた。中は薄暗かったが、上から光が入り込んでいて、暗闇と言うほどではない。
 少し悩んだが、考えていても仕方がないと思って私は「鏡の迷宮」へ入り込んだ。中に入った瞬間、何か嫌な感じが私を襲った。鏡の壁に自分がたくさん写りこんでいるのが見えたからだ。
 しかし、嫌な感じがしたのはそれだけが原因ではなかった。鏡をよく見てみるとすべての私がにやりと笑っている。それはおかしな話だった。なんせ、私は笑っていないのだから、鏡に写っている私が笑っているはずはないのだ。嫌に冷たい汗が、背中を濡らし、体中の体温が一気に下がっていくのがわかる。私はその場から動けなくなっていた。さらによく見ると、鏡に写っている私じゃない私の横にはみねこが手を繋いで虚ろな目でこちらを見ていた。
「さあ、かなめ。私と話をしましょう」
 私とまったく同じ声で、鏡の中の私が声を掛けてきた。
「あ、あなたは誰? それにみねこをどうするの?」
 私は震える声で尋ねる。
「私はかなめよ。私とあなたは一心同体。この子がどうなるかは、すべてあなた次第よ」
「私次第……?」
 正直、わけがわからなかった。この鏡の私は何を言っているのか。
「さて、それじゃあ、早速始めましょうか。『この子を一体どうするべきか』。もしもあなたが私に勝つことができれば、この子を助けましょう。しかし、もしも私が勝ったら……」
 静寂、私は唾を飲み込んで次の言葉を待った。
「容赦なく、この子を殺します」
 冷たく、残酷な言葉だった。
 私はしばらくショックを受けていたが、そこは歯を食いしばって、一瞬意識が飛んでしまいそうなのを防ぐ。
「あら? 大丈夫かしら? あなたはこれからもっとひどいショックを受けるというのにね」
 例のにやついた笑いを消さずに鏡の中の私が言う。
「わ、私はそれで具体的に何をしたらいいの?」
 声を震わせながら何とか言う。
「あなたには、今からこの迷路を進んで行ってもらうわ。ただし、一度進み始めたら二度と引き返すことは許さない。いいわね? 一度でも引き返そうとしたらこの子を殺すからね?」
 にやついた顔を崩して脅すようにこちらを見る。
 私はその言葉にゆっくりと頷く。
「じゃあ、これを受け取りなさい。だけど使いどころは間違えないことね」
 そう言うと、鏡の中の私は何かをこちらに向けて投げる。鏡の中からそれが飛び出して来た。
 私は焦りながらも何とかそれを両手でキャッチする。みねこが背負っているネコのリュックサックだった。
「それをまず、背負いなさい。それが、あなたのゲームのスタートよ。それじゃあ、また会いましょう。健闘は祈らないわ」
 私は怪訝に思いながらも、そのリュックを背負った。すると、次の瞬間に意識を失ってしまった。

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