鏡の迷宮 小説TOPに戻る

<鏡の迷宮3>

 気がつくと、さっきと同じ場所で倒れていた。床は冷たく、私はこの冷たさから離れるため、ゆっくりと立ち上がる。
 立ち上がってみると、なんだか違和感を感じた。目線がいつもより低い気がする。
 ふと、正面にある鏡を見てみると、鏡に映った私は消えていた。しかし、代わりに映っていたのは私ではなかった。白のワンピースを着て、ネコのリュックサックを背負ったみねこだった。見間違えかと思って、一度目をつぶって深呼吸をしてゆっくりと目を開けてみた。それでも、やはり映っているのはみねこだった。
 深呼吸したので冷静に頭が働いている。どう考えてみても、私がみねこになっているのだ。
 軽い眩暈(めまい)がして、後ろにバランスを崩した。
「キャッ」
 と、無意識に出した声が自分のものだと気がつくまで少し時間がかかった。
 正直、気味が悪かった。寒気がした。はっきりとある意識は私のものなのに、体や声がみねこのもの。私であるのに、私でない感覚。確かあの鏡の中の私は、これをゲームだと言っていたか。
 思い出したように、私は先程背負ったリュックサックを下ろしてみた。少しだけこれで戻るのではと期待していたが、戻ることはない。ため息を一度ついてから、ふとリュックサックの中を見てみる。
 いつもみねこが持っているおかし、水筒、鏡、猫のキャラクター手帳。みねこの笑った顔が頭をよぎる。
 しかし、次の瞬間、頭の中のみねこの顔が急に恐ろしいものに変わった。あってはならないものがあったからだ。それは、ちょうどみねこでも扱うことができそうな『果物ナイフ』。刃は、みねこのお気に入りの「カエルのケロちゃん」のハンカチで巻かれていたが、いったいみねこはこれをどうするつもりだったのだろうか。あまり考えたくなかったので、すぐにそれをリュックサックの中に戻した。
 私は正直、進みたくないが、この迷宮を進むしか道はないようなのでゆっくりと進んでいく。薄暗くて進みにくい通路が長く続いていた。ここが閉鎖されたのは最近だろうか。しっかりとみねこの姿が映し出されその一つ一つからみねこの視線を感じる。その視線が怖くて怖くてたまらなかった。先程の果物ナイフがどうしても頭をよぎったからだ。自然に小走りになる。しかし、どこに逃げてもその視線は追ってくる。焦りと、慣れないみねこの体で走ったせいで何度も転倒する。
 もうどこを走っているのかわからなくなって来た頃、鏡ではなく、赤色の扉が見えた。
 出口かな。
 私はそう思って、駆け足で近寄り、扉を押す。半分開けたときに明かりがもれる。
 やった。外に出られる。
 そう思って一気に扉を全部押して扉の外へと飛び出した。

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