猫はいかが? 小説TOPに戻る  / 第2章へ→

<序章>
その日は、誰もが心地よく感じるすがすがしい朝であった。
小鳥がさえずり、空は青く澄みきっている。
そんな朝のある町の道路を白い猫が、歩いていた。その猫には鈴がついていた。
どうやら飼い猫のようだ。
その猫は、急に立ち止まって気持ち良さそうにぐーっと伸びた。
そして、十分に体を伸ばした猫が再び歩き出そうとした時・・・。
「にゃ〜〜〜!!!!!」
この町が壊れてしまうのではないかと思うくらいのすさまじい猫絶叫が響き渡ったのである。
白い猫は、一瞬驚いて動けなかったが、好奇心旺盛なこの猫は、その絶叫のあった方向に向かって走り出した。

<一章>
「にゃ〜〜」一匹の猫が、ベッドの上で伸びをして起きた。
その猫は、寝起きなのかその後30秒ほど止まっていた。
急に猫は、何かを思いついたようにキョロキョロ自分のいる部屋を見渡す・・・。
何か変だ・・・。
猫は思った。
何が変と言われても困るが、いつもの部屋の風景ではなかったのだ。
そして、何が起こったのか考えようと腕を組もうとした猫だったが・・・。
そもそも猫にはそんなこと無理なわけで、前足のバランスを崩し、 土下座しているような格好になる。
??
猫はその時、自分の足を見た。それはもう猫としては立派な肉球がついていたし、 鋭い爪もあった。
普通の猫ならここではなんとも感じないだろう。
しかし、その猫は動きが完全に止まった。
少し時間が経過し、猫はゆっくりした動作で部屋にある鏡を見た。
そこに映るのは、黒色の毛の猫だった。
猫は右手をあげた。すると鏡に映る猫左手をあげた。
猫が首をまわしたら、やっぱり鏡の猫も首をまわす。
招き猫のポーズをしてみた。やっぱり鏡の猫も招き猫のポーズ。
これってやっぱり俺なのか・・・。
もちろんその本人が望んだわけではない。予想外のことである。
とんでもない予想外のことに遭遇した動物がとる行動と言えば・・・。
「にゃ〜〜〜〜!!!」
猫は、思いっきり声を振り絞って絶叫をあげた。
こうして、まことに信じがたいことだが青空 優兎(あおぞら ゆうと)は、猫になってしまった。

       ※※※※※※※※※※

俺が、またそのまま固まっていると・・。
ドンドンドン・・・・。
ドアが、激しく叩かれた。
「お兄ちゃん!!なーに今の?」
---ゲッ!!雀!!
青空 雀(あおぞら すずめ)は、俺の妹である。雀は父親の影響で3歳の時に空手を始め、今も続けている。
その実力はかなりのもので去年の全国大会で1位にになるという功績も残している。
ドンドンドン・・。
「お兄ちゃんいないの!!」
----とにかく隠れないとやばいぞ。こんな姿でみつかったら・・・。 間違いなく殺される!!
雀はこの世で一番猫が嫌いなのである。いや、嫌いというより恨んでいるとこ ろがある。
雀が幼い頃、親が目を離したスキにその時に家で飼っていた猫が雀を何回も殴ったのだ。
雀も幼いながら抵抗しようとしたが、やはり子供の力で猫に対抗することができなかった。
そんな日が何日も続いたものだから、それがトラウマになり、今でも猫が嫌いなのだ。
猫をみるだけで殺気を放つ雀の姿は、想像するだけでも怖い・・・。
もしみつかったらマジで殺される可能性がある。
ドンドンドン・・・
「もう!!開けるよ!!」
---仕方ないあそこしかない!!
俺は、すばやい動きで天井に張り付いた。
ガチャッ
部屋のドアが開き、雀が入ってきた。そして、ベッドの布団をめくった。
「あれ?お兄ちゃんいないじゃない。どこに行ったのかなー」
---クッ、これ結構つらいぞ・・・。早くここから出て行ってくれ雀!!
「おかしいなー。さっき変な声が聞こえたのに・・・」
「は!もしかして泥棒!!これは、緊急事態だ!!泥棒出てこい!!」
そう言って、俺の部屋を探索し始めた。
---おい!!マジかこいつ。ってか、あほか!!早くこの部屋から出てけよ!!
「ここか!!」
雀は、ベッドの下に顔を突っ込んだ。
これは俺にとってまたとないチャンスであった。
雀の今の状態ではベッドの上にある窓が見えない。つまり、今窓から外に逃げ ればこの状況から抜け出すことが出来るのだ。
---よーし!!行くぞ!!
そう意気込んでから、俺は天井裏から飛び降りた。
グルン!
俺の部屋の景色が一回転半ひねり!
ストッ
そして軽やかに着地した。この間わずか0.5秒。
---おお!さすが猫!!高いところから落ちたのに全然痛くない!! よし、後は窓を目指してダッシュするだ・・・・け・・。うん?
ふと俺がベッドの下に目を向けるとさっきまでそこにいたはずの雀の姿が消えたいた。
---あれ?あいつどこに行った?
バタン!!ガチャ!!
突然後ろでドアが閉じられた。
ビクッ
驚いてすばやく後ろを振り向くと・・・。やっぱり雀がいた。
0.5秒間でこの動きをするとはもはや人間じゃない気がするのは俺だけか。
雀は、それはもう獲物をみつけたトラのような目を俺に向けて立っている。
「フフフ、猫鍋猫鍋・・・。」
なんか恐いことを言いながら俺に向かってゆっくりと近づいてきた。
---ヒ、ヒーーーー!!く、食われる!!
年が5年もはなれている妹にビビってしまってプライドがボロボロの俺だが、 今は猫になっている。ここは逃げるしかない。
俺は、雀に背を向けて窓に向かって走り出した。
「あ!待て〜〜」
俺はすばやくベッドにのり、そこから空いている窓の外に向かってジャンプし、庭に着地。
もう大丈夫だろうと思って、今出てきた窓を見ると雀が窓から外に飛び出そうとしていた。
---うっ!あいつしつこい!!
とにかく雀から逃げるため、俺は家の門から道路に飛び出した。その時・・。
ドカッ
「キャッ!!」
「いて!!」
俺は、何かにぶつかってしまった。

    ※※※※※※※※※※

---う〜んと、確かこのあたりから声がしたのよね〜。
私は、首につけた鈴をリンリンと鳴らせながらさっき聞いた声の方に歩いてきた。
さっきの声は、ただ事ではない。
猫同士がケンカしてもあんなに大きな声は出ないだろう。
つまり、これは何かつまらない毎日を楽しくしてくれる超楽しい出来事に違いない。
そう思うとわくわくしてくる。
ただ、さっきの声だけではやはり大体の位置しかわからない。
ここからは、勘だけが頼りだ。
とにかく私は歩き出した。
藤井・山本・北村・・・。
これは確か私の家の入り口にもある木の板だ。
---うーんと、よくわんないけどきっとこれが手がかりになるに違いないわ。
そう思った私はそれを一つ一つ見ながら移動した。
日下部・桜井・木之本・・・・
青空・・・
と、その時!!
ドカッ
「キャッ!!」
「いて!!」見知らぬ声。
いきなり私のサイドボディーに不意打ちの攻撃!私は横に突き飛ばされた。
そして、
ムギュッ
「あうっ!!」
さらに何かが私を押しつぶした。
「あう〜、重いよ〜、息が出来ない〜」
必死に苦しいことを訴える。
「あ、ごめん!!」
また、見知らぬ声が聞こえたかと思うと、その後すぐにその苦しさからようやく開放された。
そして、ゆっくりと態勢を立て直し、息を吸い込んで・・・
「ちょっと!!いきなりなんなのよ!!君のせいで死にかけたんだからね!」
と、真っ黒な猫に思いっきり怒鳴った。
・・・・・・・
が、このくそ黒猫は無反応。何か別の方を見ている。
私の怒りメーターはもう200を超えていた。
---な、なによこの猫!!自分がぶつかってきといて謝りもしないなんて!!
「ちょっと君!何とか言いな・・・
再び怒鳴ろうとしたその時、いきなり
「猫発見〜♪しかも2匹になってる〜♪逃がさないわよ〜フフフ〜♪」
正体不明の人間の少女がそんなことを言いながら走って来た。
---え?なに?なんでこっちに向かってくるの〜〜?
「に、逃げるぞ!!」
黒猫がそう言って、走り出した。
---え!え!ええ〜、なになになになに〜、一体何がどうなってるの〜?
私はもう何がなんだかわからなくなっていたが、どうやらあの少女から逃げなくては明日をむかえることができないと私の頭脳が判断を下した。
「もういや〜〜〜!!!」
私は、黒猫の後を追って走り出した。
つづく
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