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<11章>
悪魔が、月村にとどめを刺そうとした瞬間。
悪魔の背後に高速で突っ込んできた何かがぶつかった。
ぶつかる前には、なぜか音がしなかったので、完全に悪魔の不意をついた形となる。
悪魔はそのまま吹き飛ばされ、月村の結界の壁に叩き付けられた。
「よし!!作戦成功だな。鈴、アシストしてくれてありがとう。」
ぶつかってきたものの正体である優兎は、空中から地上でアシストしてくれていた鈴にお礼を言う。
「うん。大成功!!しっかりと同調できてたし、これもトレーニングのおかげだね。」
そう言って返す鈴。
空中と地上で距離のあるお互いが話をするのは通常では難しいことだが、魔力のある者同士であれば、念を送ることで会話を行うことが可能なのである。
先程の月村と悪魔の会話もお互いの念を送りあって行われていた。
そして、鈴の能力はこれを応用したもので、アタッカーである優兎に念を送り、さらに心を同調させることでその動きをサポートすることができる。
具体的には音を操る能力で、今回は、優兎が動く時に生じる物音を完全に遮断する「サイレント・フィールド」を優兎の周囲に展開していたので、悪魔に気づかれることなく接近できた。
また、優兎もただぶつかっただけではなく、優兎の能力である風を操る力により、自分の移動速度を限界まで上げていた。
さらに、体の周りに竜巻をまとっていたため、悪魔を吹き飛ばすことができたのである。
「二人とも、作戦が成功しましたが、やつは気絶しているだけです。まだ終わってませんよ。」
月村は浮かれる二人に念を送り制止させた。
「そうでした。」
「すいません。マスター」
素直に謝る二人。
「でも、よくやってくれました。直撃をだったのでかなりのダメージを与えたはずです。」
やはり辛いのか、少し顔をゆがませてそう言った。
「月村さんは、大丈夫なんですか?」
「いえ、そろそろ結界を張ることだけに集中したいですね。それでもあまり長くは持ちません。持って、後10分と言ったところでしょうか。」
「後、10分・・・。その時間でけりをつけるしかないんですね。」
「ええ。それを超えたらやつを縛る結界はなくなり、他の地域に行って、魂を集め始めるでしょう。そうなっては、もうとめることができなくなります。」
「わかりました。全力で雀を止めてみせますよ。雀にこれ以上の罪をきせるわけにはいきません。」
「うん。私も全力で優兎のアシストをするよ。」
「すいません。本当は私の役目なのですが、今はこの結界を張るのが精一杯です。無責任かもしれませんが、後はお願いします。鈴、優兎。それでは私は結界の維持に全力を注ぎます。」
そう言って月村は念を送るのを停止した。
それとほぼ同時に、壁に叩きつけられていた雀は意識を取り戻した。
激怒と呼ぶに相応しい形相をしている。
「よくも・・・。よくもこの私をこんな目にあわせたわね!!」
怒りのこもった念が優兎に伝わってくる。
「ち、雀の体にとりついた悪魔が!!絶対倒す!!」
そう言いながら、優兎はまだ、体勢の整っていない悪魔に向かって高速で動き始めた。
「フフフ、後悔させてあげるわ。お兄ちゃん。」
優兎は一瞬、雀の声で兄と呼ばれたことに対して、動揺した。動揺してしまった・・・。
先程と同様に繰り出されようとしていた高速の竜巻は、速度を著しく落とした。
そして、それを悪魔は完全に見切った。
技の性質上、はずしたときには大きな隙ができてしまう。
悪魔はそこを見逃さなかった。
一瞬のうちに具体化させた鋭い爪が優兎の心臓を貫こうとした。
----だめ!!させない!!超絶対音感反応!!
鈴の持つ最大のサポート能力を発揮させた。
その瞬間、優兎の聴覚が研ぎ澄まされる。
人間の反応速度の限界を超え、人間の動きの発する音に体を反応させる能力。
紙一重で、優兎はその攻撃を避けた。
しかし、完全に避けるのは不可能で、肩に爪の一撃をくらった。
すぐに優兎は相手との距離をとる。
「これを避ける!?しぶといわね。今のは素直に死んでおきなさいよ。」
悪魔は、優兎を睨みつける。
--------く、危なかった。
「はぁ、はぁ、優兎くん大丈夫?」
「あ、ありがとう鈴。鈴こそ今の使って大丈夫か?」
「ハハハ、大丈夫・・・じゃないみたい。後はまかせたよ。優兎くん。」
鈴はそう言うとそのまま気を失った。
「鈴・・・。」
超絶対音感反応は、精神力をかなり消耗するので、短時間しか使用できない上に、使用した後、動けなくなる性質がある。
-------鈴、ごめんね。俺が隙をみせたばっかりに・・・。体を張ってくれた鈴のためにもあいつを倒さないとな。
「これで、一騎打ちというわけか。」
----------よっしゃ。雀。すぐ助けてやるからな!!
残り時間後、8分。優兎は改めて、強大で邪悪な力を持つ自分の妹と対峙した。

つづく
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