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<5章>
〜ナレーション〜(ピロ担当) 朝の光が窓から差し込み、光に導かれ、外の小鳥たちが騒ぎ出した頃。 洋風の部屋のソファーで一匹の黒い猫が寝ていた。 かちゃ ドアが開かれ、女の子が入って来た。 女の子は、長い髪と雪のように白い肌を持ち、清楚な雰囲気を持っている。 しかし、一つだけおかしなところがある。だが、それはこれからの展開で わかることになるだろう。 それでは、今回は優兎の視点からどうぞ!! ************* かちゃ その扉の開く音で目が覚めた。 とりあえず、寝ぼけた目で音のした方から中に入って来る女の子を見た。 寝起きはそんなによくない方なので、頭が全然まわっていない。 ただぼーっと見ていると、その女の子は俺に気づいたのか、 こっちに向かって来る。 「あ、優兎くん起きたんだね〜。おはよう〜。」 ・・・・うん?小さい子だなあ。この子だれだっけ? 「あれ?寝ぼけてるの?おーい!!」 そう言って、俺の目の前で手を振る女の子。 ・・・・髪が長くて、肌が真っ白だあ。きれいな女の人だな。 どこかのお嬢様かな? 少しずつ戻ってくる意識と視界。 「優兎くんが、返事してくれないよ〜。わたし嫌われちゃったのかなぁ。」 少しだけ涙目になる女の子。 あれ?なんか頭の上につけてるな。何かのアクセサリー? え?っていうか猫耳? 優兎がずっと無視を続けたため、女の子は 「優兎くん!!」 そう言って、気づかせようとして、俺に向かって手を伸ばした。 ・・・!! なぜか俺は危険を感じて、その伸ばされた手を鋭い爪でひっかいた。 「痛!!」 女の子は手を引っ込めると、どんどん目が潤んで・・・・ そして・・・・。 「うっ、うっ、うええええええええええええ〜〜〜ん!!」 「な!?」 女の子は、大きな声で泣きはじめた。 だが、その泣き声は普通ではなかった。女の子の泣き出した瞬間、 なんと泣き声が衝撃波となり、優兎はそれをまともにくらい、 壁に叩きつけられた。 「ぐ、にゃ!?・・・」 優兎は、壁にめりこんだ。 部屋にあったものは、ほとんど女の子を基点に吹き飛ばされ、 窓も”ぱりーん”と盛大な音を立てて割れた。 「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」 ちょ、ちょっとこれは、洒落になんないんじゃ。 「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」 泣き止む気配は、まったくないし、音の重圧でつぶされそうだ。 みし、みし 優兎の体がさらに壁にめり込む どうしたらいい? みし、みし どうしたら? みし、みし そうだ!雀の攻撃をはじいたあの力を使えば!! ”そうです!!優兎くん!!よく気がつきましたね” 心の中に声が響く。 ”つ、月村さん!!” ”あの子は、泣き出したら止まりません。 あの子の力を抑えてから泣き止ませるしかありません。” ”そ、そうなんですか? っていうか、できれば月村さんがやってくれると助かるんですけど・・・。” みし、みし その間にも壁にめり込む ”ふふふ、それじゃ意味がないんですよ。これは、君の最初の修行です。 力を上手に使って、あの子の力を退けて、あの子を泣き止ませる。面白いでしょう?” ”な!?面白くないですよ!! それに、力を使うってことはわかったけど、どう使ったらいいかわかんないし” ”簡単です。力を使うにはイメージするんですよ。” ”い、イメージ?” ”そう!君の力をどう使いたいかをイメージするんです! 優兎くんは、昨日、自分を守る目的で力を盾にするというイメージを 無意識にしためにそのイメージが具体化したんです。” ”お、俺のイメージが具体化する?” ”そうです!イメージすれば具体化する。 そして、君の力は『風』。風からできることをイメージして具体化させるんです。” ”風。風からイメージできること・・・。” ”ちなみにあの子の力は『音』、空気を震わせて伝える力。 そして、風は空気の流れから発生するもの。” ”そ、そうか!!わかった!!俺やってみます” 俺は、風が自分のめり込んでいる壁の方向と逆に流れるイメージをした。 すると、音の力は弱まった。 しかし、まだこの場を支配しているのは、音の力の方が強い。 壁から離れ、床に着くことはできたが、あの子に近づくことは難しい。 く、まだ足りないか。 それなら・・・・ さらに、風がもっと強く流れるイメージをする。風が強風に変わる。 すると、次の瞬間、女の子の華奢な体は、その強風に耐えられずに逆の壁 の方に飛ばされる。 少女は驚きで泣き止んだ 。 「え?きゃぁぁぁぁぁぁぁ」 「や、やばい!!そ、そうだ!イメージ!!」 まず、風をやませるイメージをした。しかし、これだけでは慣性の法則により 勢いは止まらない。 「も、もうだめ〜!!」 く、それなら!! 無我夢中でイメージした。もうこれこそ直感とか言いようがない。 イメージは、具体化する。さらになぜか優兎の体がその時に人の姿に戻る。 女の子は、壁に激突する寸前に止まった。 なんと、とっさに優兎は、直感的に女の子の飛ぶ方向に風のクッションを 作り出したのだった。 そして、女の子を床にゆっくりと下ろす。女の子は、何があったのか分からず、そのまま床に崩れる。 「はぁ、はぁ、はぁ、なんとかなったな・・・」 そうつぶやいて女の子に近づく。 力を使ったせいか、体がものすごく重い。体がなぜか人間に戻っているが、 今はそんなことより、あの子を落ち着かせないと。 「ねえ。大丈夫?けがはない?」 優兎は、しゃがんで女の子に声をかけた。 「・・・・」 女の子は無言で震えていた。ただ無表情に優兎を見ている。 「もう大丈夫だよ。」 そう優兎が言うと、女の子は緊張の糸が切れたのか。 「う、う、う、・・・」 目がどんどん潤み、そのまま優兎に抱きついた。 優兎はそれを受け止める。 「うぇぇぇぇん!!恐かったよ〜」 今度は、さっきとは違い、『音』の力はない。ただ安心して泣いていた。 「よし、よし。飛ばされて恐かったね。それから俺がひっかいちゃって、 痛かったんだよね。本当にごめんね。」 そう言って俺は頭をなでてやる。 「う、う、う、大丈夫。優兎くんもわたしのせいで痛い思いさせてごめんね。」 「うん。おれも大丈夫!!」 「う、う、う。そっか。よかった」 そう言うと、疲れたのか女の子は優兎の胸によりかかって寝てしまった。 ふぅ、なんとか無事に終ったみたいだなぁ。なんだか、俺も疲れたなぁ。 そう思いながら俺のまぶたは重くなっていった。 ********** 2人とも寝てしまった頃、部屋のドアが開き、人が入って来た。 「仲良く眠っていますね。」 月村は、そう声をかけて2人をベッドに寝かせ、しばらく2人を我が子を見守るような温かい目でみつめた。 そして、ふと荒れ果てた部屋を見る。 「はははは、派手にやってくれましたね。 まぁ、これで彼も成長してくれましたし、安いものです。それにこんなこともできるしね。」 パチッ 月村が指を鳴らすと部屋が、完全に元通りになった。 (優兎がめり込んでいた猫型の跡だけは残して) 「ふふふ、それではお2人とも、ごくろうさま、あんなにいっぺんに魔力使って疲れたでしょう。 鈴も恐い思いをしたみたいですし、ゆっくりやすんでくださいね。 くわしいことはまた後で話しましょう」 そう言うと、月村は部屋を出て行った。 |