『ザーーーーーーーーー……』

 

雨…その日はこの大陸に珍しく大雨が降っていた……

 

「おいっ!…いたか?」

 

「いや…どこにも…」

 

「くそっ…何処に逃げやがったんだよ。」

 

そんな雨が降り行く中…ここパーシル城内はあわただしい雰囲気に包まれていた。

 

そんな慌ただしい城内を二つの人影が駆けて行く……

 

その二つの人影はしきりに周囲を気にしながら雨の中へと姿を消していった…

 

まるで…何かから逃げ出すかのように……

 

 

Creation Memory

〜青き欲望より生まれ 赤き希望を持つもの〜

 

 

序章『創造…偽りの前奏曲(プレリュード)』

 

「はぁ…はぁ…お、お姉ちゃん…」

 

「んっ?…どうかしたの?」

 

「ど、何処に行くつもりなの?」

 

「…安全な場所よ……」

 

「安全な……場所?でもっ…僕は……」

 

「…そうね…ここなら人も来ないし…大丈夫よね。」

 

そう言うと女性は足を止め、男の子の方に向き返った。

 

「いい…ロディ…あなたは私が助けてあげる…だから、じっとしてて…」

 

「ロ…ディ…?」

 

「そぅ…あなたの事よ……ロディ=シェルウィザード……それがあなたの名前…」

 

「僕の…名前?ロディ=シェルウィザード……名前……」

 

「そうよ…ロディ、じっとしててよ…」

 

そう言い女性はロディから手を離すと何やら詠唱を始めた…

 

「…風の精霊達よ…この者をかの地へと導け…テレポート・マジック!!」

 

その瞬間ロディの足元に光の魔方陣が浮かび上がった。

 

「ふぅ…何とかなったわね…これで後、数分であなたは安全な場所へと飛ぶ事になるわ。」

 

「お…お姉ちゃん…」

 

突然そう言われ未知なる事への恐怖からかその場に座り込んでしまった。

 

「大丈夫よ、ロディ。私もすぐに後を追うから…信じて待っていて…ね?」

 

「でっ…でも…」

 

「……そうだ。ロディ、これ…持ってなさい。」

 

そう言い女性はポケットからペンダントを取り出しロディの手に握らせた。

 

「これ…なに?」

 

「あなたを守ってくれるお守りよ、大事に持ってなさい。」

 

「…うん。ありがとう、お姉ちゃん。」

 

ロディはそれがよほど嬉しかったのか満面の笑顔でそう答える。

 

「……ロディ。」

 

そんなロディの笑顔に応えるかのように女性はロディをぎゅっと抱きしめた。

 

「お…お姉…ちゃん?」

 

「ロディ…私のロディ…。待っててね、必ず…必ず迎えに行く…から…」

 

 

「おやおや……こんな所にいたのか…。」

 

「誰!?」

 

声のした方に振り返って見ると神官風の男が一人たっていた。

 

「く…く…く…捜したぞロディ?…それに、セリシア将軍…」

 

「ギザ……ロフ……」

 

「将軍ともあろうお方がこんな事を…覚悟は出来ているのでしょうね?」

 

「黙れギザロフ!!…お前に…ロディを渡したりはしない!」

 

「…それは困りますね…それは大切な実験材料…みすみす逃す訳にはいかんよ。」

 

「実験材料…だと?ふざけるなっ!!…ロディは…私の大切な弟だ…人間なんだ…」

 

「どうしても返さない……そう言う事か?」

 

「当然よ…あなたなんかに…渡しはしない。」

 

「そうですか…ならば、力づくで返してもらうとしましょう…」

 

そうギザロフが呟いた瞬間二人を囲むように無数の魔物が姿を見せた。

 

「くっ…いつの間に?」

 

セリシアが2対の剣を構えると同時に、ロディがセリシアの服の裾をぎゅっと掴んだ。

 

「ロディ?」

 

「お…お姉ちゃん…怖いよ…」

 

「…大丈夫よ、ロディ。魔法が発動すれば、あなただけでもここから脱出できる…

 

 それに…あなたは私が守ってあげるから…」

 

セリシアはそう慰めそっと裾を掴んでいた手を外した。

 

「さぁ、来るならきなさい。この剣聖セリシアの力…とくと見せてあげるわよ!」

 

「くくく…さぁ、やれ!!」

 

ギザロフのその合図で無数の魔物達は一斉にセリシアへと向かっていった。

 

「ハァァァ〜!!」

 

それを迎え撃つためセリシアはその大群の中にひとり突撃を開始した…

 

数の上では圧倒的に差があったが、セリシアの圧倒的な力の前に一匹…また一匹と魔物は倒されていった…

 

その魔物達が全滅するのに10分とかからなかった…

 

それほどまでにセリシアの力は強大だった………

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

「ふふふ…さすがは剣聖…凄まじい力だ…」

 

「ロディは…お前に渡しはしない……」

 

「ふふっ…何処までその強がりが持つのかな?」

 

そう言いギザロフが右手を空に掲げると地面に倒れていた魔物達は再び起きあがってきた。

 

「何っ!?」

 

「将軍…私の力を甘く見てもらっては困るな…」

 

「くっ……」

 

「さぁ…もう一度頑張ってください…そいつを守るためにな…」

 

そんなギザロフの皮肉に対しセリシアはふと笑みを浮かべていた。

 

「どうしました将軍?…気でもおかしくなったのですか?」

 

「……そうじゃないわ。……時間よ。」

 

セリシアがそう呟いた瞬間、ロディの足元に魔方陣が浮かび上がり光り輝きだした。

 

「なっ!?これは…テレポートマジック!馬鹿な…この呪文は人間が扱える代物じゃないはず!」

 

「どうやら…成功したみたいね…リスクの高いばくちだったけど…」

 

「お…お姉ちゃん。」

 

「ロディ…これで一旦お別れね…」

 

「くっ…我が手に戻らないのならば……ムンッ!!」

 

『ゴォッ!!』

 

ギザロフが放った魔力がロディの魔方陣に直撃し魔方陣は一変して異様な輝きを放ちだした。

 

「そっ…そんな事をしたら、魔方陣が!?」

 

セリシアが魔方陣を解除しようとした刹那…

 

魔方陣は発動を始め暗雲が巻き起こりロディの肉体は上空へと向かい始めた。

 

「お…………お姉ちゃーーーーん!」

 

「ロ……ロディーーーー!!」

 

セリシアの声もむなしくロディは虚空の彼方に消えていった…

 

「ふん…実験材料の一匹ぐらいどうって事はない……さて…セリシア将軍?」

 

「くっ……」

 

「将軍…覚悟は出来ているのでしょうね?」

 

「ギザロフ…あなただけは…あなただけは許さない!!」

 

セリシアは再び2対の剣を抜き構えそう言い放った。

 

「ほぉ…私に歯向かうと言うのか……その傷付いた体で?…愚かな。」

 

「黙れ…黙れ黙れ…黙れ〜!!!」

 

 

雨が降り続く中…二人の死闘は続いた…

 

そしてこの時もう一つの物語も静かに幕をあけた……

 

 

 

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