第4章『目覚めた力と月夜のサムライ』

 

 

ラーナの箱庭を抜けてから丸2日が過ぎようとした頃、ロディ達はついにパーシルの城下へと辿り着いた。

 

「ロディ、ようやく着いたよパーシルに。」

 

「ここが…パーシル…」

 

「どう?何か感じる?」

 

「う〜ん…そう言われても…ちょっとね…」

 

ロディがそう渋るのもしょうがなかった。

 

何しろ現在の時刻は日も落ちてしまった月夜。

 

そんな夜の光景を見たとしても何かを思いだしようがなかったのだ。

 

「そうだよね…それじゃあ今日の所は宿屋に行こっか。」

 

「そうだね…そうする…っ!?」

 

そこまで言葉を出した時ロディは何かを感じ取り言葉を止めてしまう。

 

「どっ、どうしたのロディ?」

 

「…分からない。けど、今…確かに誰かが僕を呼ぶ声が聞こえたんだ。」

 

「ロディを?…その声どっちの方から聞こえたの?」

 

「…たしか…こっちの方から…」

 

ロディはそう言うとある1点の方向を指差した。

 

「それじゃあ、向こうに何があるか行ってみようか?」

 

「あぁ…何か記憶の手掛りがあるかもしれないしね。」

 

そうと決めるとロディ達はロディが聞いた声のほうへ向かい出した。

 

 

…10分後ロディ達の前に姿を見せたもの…それは……

 

「パーシル城…」

 

そう…このグランディア大陸最大の領地を持つ国の拠点『パーシル王都』だった。

 

「ねえ、ロディ。本当にこっちからだったの?何かの間違えじゃ…」

 

「しっ!……また、僕を呼んでる…間違えない、この城の中からだよ。」

 

そんなマリオスの問い掛けを遮りロディはそうはっきりと答えた。

 

「…でも…どうやって中に入るの?」

 

マリオスがそう言うのも仕方なかった。

 

何故なら城の門は堅く閉じられ、その正面に衛兵が二人立っており侵入は困難な状況だったのだ。

 

「正面から入るのは無理っぽいね。何か別の手段を考えないとね…」

 

「他の方法って…?」

 

「正面の入り口が駄目なら、他の入り口とか…何処かにないかな?」

 

「そう言われても……」

 

考えが詰まってしまい2人の間に沈黙が訪れる……

 

「あっ…!?」

 

暫くしてその沈黙をマリオスが破った。

 

「何か良い考え思いついた?」

 

「ほら、こういうお城ってさ正面の入り口の他にさ色々入り口って作られてるんじゃないかな?

 

 お城の使用人の勝手口とか、裏口に非常用の出口とか…。」

 

「勝手口か…よし、それを探してみようか。」

 

その言葉でロディ達の城の周りの探索が始まった。

 

城の周りは沢山の木々で囲まれており道らしき道はなかった。

 

だがそれでも城壁をたどり木々を掻き分け進んでみると…

 

「ロディ。あれ…あれがそうじゃないかな?」

 

ぽつんと一点だけ木も草もなく城壁に扉がついている部分を見つけた。

 

「ホントだ…よし、行ってみよう。」

 

ロディ達がそこに辿り着いてみるとその部分は人の手が加えられ整備されており、

 

その一点から道が伸びており、どうやら城の裏手に続いている様だった。

 

「それじゃ…開けてみるよ…」

 

マリオスが頷くのを確認したロディは静かにノブに手をかけドアを開けてみた。

 

するとすんなりとドアは開き真っ暗な台所のような部屋が見えた。

 

「……誰も…いないね…」

 

「あぁ…よし、行ってみようか?」

 

「…うん。」

 

そして…ロディ達は静まり返ったパーシル城に足を踏み入れたのだった…

 

 

パーシル城に足を踏み入れたロディ達だが、そのあまりの静けさに妙な違和感すら感じた。

 

「すごい…静かね…」

 

「……この城…どこかで…?」

 

マリオスのそんな呟きに全く反応を見せず、ロディは一人城内を懐かしむような目で眺めていた。

 

「ロディ?」

 

「僕は…この城を知っている…何故か分からないけど…そんな感じがする…」

 

「えっ…?それって…」

 

「待って!…誰か来る…」

 

ロディにそう言われ口を紡ぎ耳を澄ますと確かにこちらに向かってくる足音が聞こえた。

 

「ロ、ロディ…どうするの?」

 

「こっちだ!」

 

そう言うとロディはマリオスの手を掴み近くにあった下り階段へと逃げ込んだ…

 

 

出口は近いと思っていたが意外に遠く、階段を下りきるのに3分近く掛かったが、

 

ロディ達はやけに広い地下へと下り立った。

 

「ここ…何だか不気味ね。すごく気味が悪い…」

 

「ここも…何だか憶えてるような気がする…」

 

「本当に?…それじゃ、ロディはやっぱりパーシルの出身なのかな?」

 

「かもしれないね…」

 

新しい出口を求めさ迷っているロディ達の耳に不意に何かが聞こえたような気がした。

 

「!?…今、何かが聞こえたような…」

 

「えっ…?」

 

「今…人の声が聞こえたんだ。」

 

「そんな…こんな不気味な地下に人がいる筈…」

 

「…闇に埋もりし…絶大なる魔よ…」

 

「ほら、マリオスにも聞こえただろ?」

 

「うん…でも…こんな所で一体…誰が…」

 

「…よし…行って確かめてみよう。」

 

そう言うとロディは声のした方へと向かいだした。

 

「ちょ…もぅ…仕方ないな…」

 

そんなロディの行動を止められずマリオスもロディの後に付いて歩いていった…

 

 

「……この部屋みたいだね。」

 

そう言いロディは先程声がしたと思われるドアの前に立った。

 

「……聖なる魔力に集い…我に応えよ…」

 

すると再び部屋の中からそんな声が聞こえてきた。

 

「…何か…凄く不気味…」

 

「よ、よし…ちょっと中の様子を見てみるよ…」

 

そう言うとロディはドアノブに手をかけ静かにドアを開けてみた……

 

すると部屋の中は妙な瘴気に包まれており、

 

床には魔方陣が描かれており、中央の祭壇を囲む様にいくつもの蝋燭が立てられていた。

 

そしてその祭壇の周りには数人の神官が立っていた。

 

何よりロディ達の目を引いたものは祭壇に横たわる一人の少女だった。

 

「なっ…こ、これは…」

 

「…降魔の儀……」

 

「こうまのぎ…何だいそれ?」

 

「…暗黒神への生贄の儀式よ。…生贄となる人の魔力を捧げる儀式なんだけど…でも…なんでこんな…」

 

「生贄…大変だ!早くあの子を助けないと…」

 

「待って、ロディ!」

 

そう言い部屋に飛びこもうとしたロディをマリオスが制した。

 

「マリオス…だけど早くしないとあの子が…」

 

「気持ちは分かるわ。けど…うかつに飛びこむのは危険過ぎるわ。」

 

「だけど…」

 

「ロディ、ここはチャンスを待ちましょう。でないと…私達まで危ないわ。」

 

「……そうだね…ここはチャンスを待つしかないね…」

 

ロディがそう言い納得しドアから手を離したとき…

 

「残念だな、そんなチャンスは二度と来ないぜ。」

 

「!?」「えっ…!?」

 

そんな声がし鈍い痛みと共に2人の意識は遠ざかっていた……

 

 

「…い…おき…おい…ろ…いい加減に起きやがれ!!」

 

そんな男の怒鳴り声と共に顔に激しい痛みを覚えロディは静かに目を開けた。

 

「うっ…ここは…?」

 

「へっ…ようやくお目覚めか。」

 

ロディが目を覚ました時、そこは先程までの廊下ではなく石造りの部屋にいた。

 

目の前には屈強そうな男が一人ロディの前に立っているだけだった。

 

「くっ…これは?」

 

そしてその時始めて自分の手足が壁に拘束されている事に気が付いた。

 

「ロ…ロディ…」

 

「マリオス!!」

 

同時にマリオスは手足をそれぞれ縄で縛られ床に横たわっているのが分かった。

 

「へへへ…お前等、このパーシルに侵入するとは…

 

 無謀と言うか…よっぽど間抜けな奴等なんだな。」

 

「お前…何者だ?」

 

「俺か、ふん…冥土の土産に教えてやるよ。

 

 俺様はパーシル4将軍の一人、バルク様だ!頭に叩き込んでおくんだな。」

 

「僕達をどうするつもりなんだ。」

 

「へっ、知れたことよ。捕らえた捕虜にする事と言えば尋問に決まってるだろ。」

 

「尋…問?」

 

「そうだ。…お前等、このパーシルで何してやがったんだ?」

 

「何って…別に何も…」

 

「そうか、正直に答える気はないみたいだな。」

 

「違う!…僕等は本当に何も…」

 

「しかたねえな〜、こいつが答えないならこっちの女に聞くか?」

 

そう言いバルクはロディから視線を外し、マリオスの方を覗きこんだ。

 

「わ…私も…何も…」

 

「そうか…仕方ないな…なら、体に聞くとするか!」

 

そう言いバルクはマリオスの服に手をかけそれを引き裂こうとした。

 

「い、嫌っ!?」

 

突然のバルクの行動に驚いたマリオスは全身を使い必死にその手を振りほどいた。

 

「うるせえ!ガタガタ騒ぐんじゃねぇ!!」

 

『バキィッ!』

 

「あぅ…」

 

もがき逃げようと抵抗するマリオスに馬乗ったバルクはマリオスを殴りつけた。

 

「やめろ!!マリオスに手を出すな!!」

 

何とか体を自由にさせる為必死に力をこめたが拘束具はびくともしなかった。

 

「へへへ…無駄だ、そいつは決して力任せには壊れないようになってるんだよ。

 

 まっ、お前が魔法でも使えるってなら話は別だがな…」

 

「くっ、くそ!!」

 

そんなバルクの言葉の無視しロディは必死に抵抗しつづけた。

 

「くくく…魔法の使えない出来損ないのお前じゃ、いくらやっても無駄なんだよ。」

 

「ロ…ロディ…」

 

「おっと、お前も人の心配なんかしてんじゃねえよ。

 

 せいぜいあいつに自分の無残な姿でも見せてやるんだな。」

 

そう言うとバルクは再びマリオスの服に手をかけそれを脱がしに掛かった。

 

「いっ…嫌っ!…ロディ…ロディー!!」

 

そう叫び必死にバルクに抵抗するマリオスだったが、バルクにとってはその抵抗は皆無に等しいものだった…

 

 

「や…やめろ……やめろ…やめろ…やめろーーー!!」

 

ロディがそんな悲痛の叫びを上げた瞬間ロディの中で何かがはじけた。

 

それと同時に部屋中に眩いばかりの光が溢れ出した。

 

「なっ…何だ!?」

 

驚きロディの方に振り返って見ると、凄まじい魔力の放出と共にロディの足かせと手かせが消し飛んだ。

 

そして…その光の中心にロディは静かにたたずんでいた。

 

「そ、そんな馬鹿な!?こっ…こいつは魔法が使えなかったはずじゃ…」

 

凄まじい魔力を纏ったロディにバルクは確かな恐怖を感じた。

 

「………」

 

ロディは1歩…また1歩とゆっくりとバルクの方へと近付いていった。

 

「ひっ!…わっ、悪かった!た…頼む、許してくれ!!」

 

そんなロディに気圧されバルクは地面に頭を付け土下座をし始めた。

 

「………」

 

当のロディはそんなバルクを無視しマリオスに歩み寄ると体の自由を奪っていた縄を解いた。

 

「ロ…ロディ…なの?」

 

マリオスが心配そうに呼びかけてみたがロディはその言葉にも全く反応を示さなかった。

 

「くっ……死ねやー!!」

 

突如バルクは起きあがると手元にあった愛用の斧を取りロディに猛然と切りかかってきた。

 

「ロ、ロディ危ない!!」

 

『ガキィッ!!』

 

だが…そんなバルクの全力攻撃をロディは左手一本で受け止めていた。

 

「な…ば、化け物か!?」

 

「………」

 

ロディはバルクを睨みつけながらゆっくりと右手をバルクの方へと向けた。

 

「ひっ…ひぃぃぃぃーー!!」

 

バルクが恐怖を感じ、逃げ出そうとした刹那、

 

「…消えろっ!!」

 

『カッ!!』

 

ロディの手から光が弾け飛び瞬く間も無くバルクは光に消し飛ばされた。

 

「光…魔法…?」

 

「……あ…あれ?ぼ、僕は…何を…?」

 

気が付くと先程までのロディではなくいつも通りのロディがそこに立っていた。

 

「ロディ?…元に戻ったのね。」

 

「マリオス……!?そう言えばバルクは?あいつは何処に…」

 

「憶えて…ないの?あなたが倒したのよ、光の魔法で。」

 

「僕が!?……そう言えば…何となく体が…」

 

「でも良かった、元に戻って。さっきのロディ、凄く恐かったから…」

 

「そうなの?う〜ん…よく憶えてないな…」

 

「そっか…あっ、早くここを出ないと。さっきの騒ぎ…城中に知られたと思うから。」

 

「そうだね…よし、行こう!」

 

「あっ、ちょ…ちょっと待って。服…直させて。」

 

「あ…う、うん。」

 

そう言いロディはそっぽを向きマリオスは急いで先程乱された服を正しだした。

 

「えと…ロディ、もういいよ。」

 

「よし、それじゃ…早くここから出よう。」

 

「うん。」

 

そしてロディ達はドアを破ると急いで部屋を後にした……

 

 

ロディ達は急いで元来た道に戻ると目もくれず外に出ようとしたが、

 

「ちょっと待って、マリオス。」

 

ロディはある部屋の前で立ち止まった。

 

「ロディ?」

 

「あの子…助けてあげないと。」

 

ロディが立ち止まったのは先程儀式が行われていた部屋の前だったのだ。

 

「…そうだね、あのままじゃ可哀相だもんね。」

 

そう考えた二人は先程のドアを開け部屋の中へと入った。

 

 

部屋の中に入ってみると先程の神官達はおらず祭壇には同じように少女が横たわっていた。

 

「…誰も…いないね。」

 

「多分、あの騒ぎで外に出たんじゃないかな?」

 

「何にしろ今のうちだね。」

 

そう言いロディ達は祭壇へと近付いていった…

 

「君…大丈夫かい?」

 

「……誰?」

 

ロディが呼びかけると少女は静かに目を開けロディの方を向いた。

 

「良かった…今、助けるから。」

 

そう言うとロディは少女の手足を押さえつけていた縄を剣で断ち切った。

 

体が自由になり起き上がった少女はじっとロディを見つめていた。

 

「ん?どうしたの、どこか痛むのかい?」

 

「…なぜ…私を助けたのですか。」

 

「…え?」

 

「私が生贄にならなければ…他の人が犠牲になってしまうのですよ?

 

 なぜ…儀式の邪魔をするんですか?」

 

「き…君は…望んで生贄になったって言うのかい?」

 

「そうです。…私が犠牲になれば、他に誰も悲しむ事なんてないんですから…」

 

「そ、そんなっ…何でそんなに簡単に生きる事を諦められるって言うのよ。」

 

「これが…私の運命だからです…」

 

少女は憂いを帯びた表情でそう悲しく呟いた。

 

「う…運命って…」

 

「これは…私が生まれた時から決められていた運命なのです。

 

 だから…私にはその運命に流される以外…道はないのです…」

 

「そ、それじゃあ…あなたは生まれてきて…ここで生贄になって死ぬ運命だったって言うの?」

 

「そうです…私はここで死ぬ運命だったんです…」

 

「そ…そんな…そんな事、絶対間違ってるよ!」

 

そんな少女の言葉にロディは激しくそう叫んでいた。

 

「死ぬ為に生まれてくるなんておかしいじゃないか!

 

 何もしないで、ただ運命に流されて平気なのかよ!」

 

「…いいんです…私にはそんな事をする勇気も…力もないから…

 

 それに…もうすぐ彼等が戻ってきます…もう…何もかもが遅いから…」

 

「今からでも遅くはない!…だから…ここは僕達と一緒にここを出よう。

 

 …自由に生きてみればいいじゃないか。…君の人生なんだからさ。」

 

「……できるでしょうか…私に…」

 

「僕が言っても説得力ないかもしれないけど…僕を信じて欲しい。」

 

そんなロディの力強い言葉に暫く彼女は口を閉じていたが、その口から意外な言葉が出てきた。

 

「…そう…ですね…私の人生…もう少し…信じてみても良いかもしれませんね。」

 

「そうだよ、それじゃ一緒に行こう!…えっと…」

 

「あっ……私…ルフィミア…ルフィミア=クリステンセン…」

 

「僕は、ロディ。ロディ=シェルウィザードさ。」

 

「私は…マリオス=シルフィース。よろしくね、ルフィミア。」

 

「よし…それじゃ、ここから早く脱出しよう。」

 

「あの…ロディ…?」

 

部屋を出ようとしたロディをルフィミアがそう呼びとめる。

 

「どうしたの、ルフィミア?」

 

「…信じて…いいのですね…あなたを…」

 

「…うん。さっ、早くしないとあいつ等が戻ってきちゃうよ。」

 

そう答えるロディの笑顔はルフィミアの疑問を打ち消してしまうほど純粋なものだった。

 

そしてそんな笑顔と共に差し出されたロディの手をルフィミアは自然と握り返していた…

 

 

ルフィミアを救出し、ロディ達は全速力で階段を駆け上がっていた。

 

だが…わき目も振らず階段を駆け上がっていた事もありその先に人がいる事を知らず上りきってしまった。

 

「えっ…」

 

「うわっ!!」

 

その事に気が付かなかったロディはその人を避けきれず、正面からぶつかってしまった。

 

「いたた…誰が一体?…あっ……」

 

ロディとぶつかった女性が自分のぶつかった相手を確認しようと顔を上げると、

 

その視線はロディの視線とぶつかり合った。

 

「あっ、ご…ごめんなさい。急いでたので…」

 

「おい、そっちに怪しい奴はいたのか?」

 

「いいや。そっちでもなかったのか…よし、向こう側も探してみるか。」

 

ロディが女性に謝り立ち去ろうとした時、そんな男達の声と同時にこちらに向かってくる足音が聞こえた。

 

「ロ、ロディ。ど…どうしよう、このままじゃ…」

 

「まずいね…あいつ等、出口の方から来てる…こうなったら、城の中を突っ切って行くしか…」

 

「早くここに隠れなさい。」

 

ロディが考え込んでいると先程ぶつかった女性が目の前のドアを開けそう言ってきた。

 

「え……だ、だけど…」

 

「早く。…捕まりたいの?」

 

「……分かりました。」

 

そんな女性の静かなプレッシャーに負け、言われるままロディ達は部屋の中に駆けこんだ。

 

そして、女性がドアを閉めると同時に男達に足音が目前まで迫ってきた。

 

「あっ、これは…将軍。こんな所で何を…?」

 

「…城内の見回りをしていたところよ。所で…妙に騒がしいけど何かあったのか?」

 

「は、はい。それが…どうやら我が城に侵入者が忍び込んだらしく、今城中を探しまわっていたのです。」

 

「そう…そんな事が…」

 

「えぇ。所で、将軍は怪しい者を見ませんでしたか?」

 

「…1階を見て回ったがそんな者は見なかったな…

 

 恐らく上の階から森に飛びこみ逃げるのだろう。上の階をくまなく探しまわれ、必ず見つけ出すのだぞ。」

 

「は!それでは失礼します!」

 

そう話し終えるとドアの向こう側から足音が遠ざかっていくのが分かった。

 

「……もう大丈夫よ。さぁ、出てきなさい。」

 

女性にそう言われロディ達はゆっくりと部屋から出てきた。

 

「さ、早く逃げなさい。…彼等に気が付かれる前にね。」

 

「ですが…将軍、あなたは…」

 

「…ルフィミア様…あなた様にはあなたの考えがあるのでしょう?

 

 でしたら、それを止める権利は私にはありませんから…」

 

「…ありがとう…」

 

「あまりここに長居は出来ないね…お姉さん、助けてくれてありがとう。僕達…もう行きますね。」

 

「あっ…ちょっと、キミ…」

 

「えっ…?」

 

立ち去ろうとしたロディ達を女性が不意に呼び止めてきた。

 

「……いえ。何でもないわ…ごめんなさいね。」

 

「そうですか?それじゃ、…本当にありがとうございました。」

 

女性に再びお礼を言いロディ達は出口を目指し再び走り出す。

 

「………」

 

そんな光景を女性は、一人物悲しそうな表情で眺め続けていた事を知る事も無く……

 

 

「いたぞ!外庭のほうに逃げたぞ!!」

 

ロディ達が外に出ても未だにパーシル兵達の追撃はおさまる事が無かった。

 

「くっ……やっぱりそう簡単には逃がしてくれないみたいだね。」

 

ロディ達も捕まる訳にはいかず、息を切らしながらも必死に逃げ続けていた。

 

「はぁっ…はぁ…私、もう…きゃっ!」

 

息絶え絶えだったルフィミアは足元にあった木の根に気付かず足を取られ転倒してしまった。

 

「ルフィミア!」

 

「あぅぅ…メ…メガネが…えと…どこに…」

 

「はい、これでしょ。」

 

自分の周囲を手探りで探していたルフィミアにマリオスがそう言いメガネを拾い上げ手渡した。

 

「あっ…ありがとう、マリオス。」

 

そう言いルフィミアがメガネを掛け直すのと同時にロディが静かに腰の剣を抜いた。

 

「2人とも…気を付けて、奴等に追いつかれた…」

 

「ふふ…ようやく追いついたぜ。…侵入者の分際で手間を掛けさせやがって…」

 

ロディが構えると同時に10数人のパーシル兵達がロディ達を囲んでいる事が分かった。

 

「囲まれた…」

 

そう呟きながらマリオスも魔槍を取り出すと静かに握り締めた。

 

「よし…こいつ等を捕らえろ!!」

 

そんな命令と共に兵士達は一斉にロディ達へと向かってきた。

 

「くっ…マリオス!ルフィミア!…こいつ等の円陣を崩し何とか突破するよ!」

 

「う…うん、分かったわ。」「は…はい、やってみます。」

 

二人にそう指示をし、ロディは目の前からやってくる2人に斬りかかっていった。

 

「そこよ!ライトニングボルト!!」

 

そのロディの動きに呼応するかのようにマリオスの魔法が兵士達に襲いかかる。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

刹那、ロディの一撃が前方の兵士達を一蹴する。

 

「ごめんなさい…ウォーターネット。」

 

ルフィミアの放った水の網が周りの兵士達の動きを押さえつけた。

 

「今だ!行くよ、二人とも!!」

 

そのスキに開いた血路から抜け出そううとした時…

 

「うおりゃー!」

 

「くっ!!」

 

後ろから駆け付けて来た援軍の兵士がロディへと襲いかかった。

 

何とか応戦するロディだがあまりの数の多さに次第に再び中央へと追いやられてしまう。

 

「そんな!?まだこんなに?」

 

「ロディ!」

 

「駄目だ…このままじゃ…」

 

「今だ!奴らをたたみ掛けろ!!」

 

「くっ…」

 

圧倒的な数の前に誰もが諦めた…瞬間!

 

…柔らかい風が辺りを通り抜けた……

 

 

「…風…?」

 

「ぐぁぁっ!!」「うがっ!」

 

そんな風を感じた時、辺りにいた数人の兵士達が悲鳴を上げ絶命した。

 

「な…何だ!何が起こってるんだ!」

 

「た…隊長!あ…あれを!」

 

そう言い皆が見つめたその先…

 

そこには体をマントで覆いフードを被った男が一人…ゆっくりとこっちに近付いてくるのが見えた。

 

「きっ、貴様!何者だ!」

 

「……あいにく…おぬし達のような者に名乗る名は持ち合わせてはおらんよ…」

 

「ふざけるな!」

 

「…ふざけているのはおぬし達の方でござろう。

 

 たった3人相手にこのような数でたかるとは…剣士の風上にもおけぬ。」

 

「おい、お前。いい加減にしとけよ。お前も殺されたいのか!?」

 

「…やってみればいいでござるよ…それが出来るのならではあるが…」

 

「なめるなっ!!」

 

その言葉に触発され兵士達の標的はその剣士に代わり一斉に襲いかかっていった。

 

「危ないっ!」

 

「……心配…ご無用!!」

 

剣士がそう言い羽織っていたマントを脱ぎ捨て、剣士が構えた刹那…

 

本当に一瞬だった…

 

その一瞬で過半数の兵士が地に倒れていた。

 

「なっ…何だと…」

 

「…去れ。それとも…おぬし達も斬られたいか?」

 

「ひ…ば、化け物だー!」

 

剣士のその一言で兵士達は雲の子を散らす様に散らばり逃げていった。

 

「…また…つまらぬ物を斬ったか…」

 

そう言い剣を収めると剣士は再びマントを全身に羽織った。

 

「あ…ありがとう。おかげで助かりました。」

 

「…いや、礼には及ばぬでござる。…それでは拙者、先を急ぐので…」

 

「あっ…待ってください。」

 

そう言い去って行こうとする剣士をロディが引き止めた。

 

「…まだ拙者に何か?」

 

「あの…僕、ロディ=シェルウィザードっていいます。…あなたは?」

 

「…拙者、神のサムライ…風間 紫苑。それではロディ殿、拙者…急いでいますので…」

 

それだけ言うと紫苑はフードを被り夜の森の中へと消えていった。

 

「…サムライ…か…はじめて見たよ。」

 

「えぇ…私も。でも、おかげで無事に逃げられるね。」

 

「そうだね…さっ、僕等も行こうか。」

 

「うんっ。」

 

こうして…謎の剣士紫苑に助けられ一難を回避したロディ達はパーシルの森を再び歩き始めた。

 

この奇妙な運命も一つの幕開けでしかなかったのだ……

 

 

to be continued〜

  

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