誰もが寝静まった真夜中…

 

ミロワの東に位置する商業都市『ローレイ』…

 

この街も誰もが寝静まり静かの夜を過ごしているはずだったが…

 

「オラオラ!無駄な抵抗すんな、命までは奪いやしないからよ!」

 

街のある一角だけはひどく騒がしかった。

 

ローレイでも有数の豪商『フェイト=カークス』の屋敷がその騒ぎの現場だった。

 

「だ、旦那様ぁー!」

 

屋敷の主人フェイトの部屋の扉を勢いよく開け屋敷の執事が駆け込んで来た。

 

「どうした!?騒々しい!」

 

「そ…それがこの屋敷を盗賊団が…」

 

バンッ!

 

執事がそこまで口にした瞬間何者かが部屋に入りこんできた。

 

「なっ!何者だっ!」

 

「シルバーウルフ…そう言えば分かるだろ。」

 

部屋に入って来た数人の男たちの中からひときわ大きな男が前に出てきてそう答えた。

 

「シ、シルバーウルフ!まさか…パーシルで暴れ回っていた盗賊団か!

 

 パーシル正規軍すらも出し抜いたというあの盗賊団…」

 

「へぇ…中々有名になったもんだな俺達も。」

 

「だが…何故このミロワにお前達が。」

 

「ふん…この街にはお前みたいに裏でいけ好かない事をやっている奴が多いと聞いてな…

 

 世直しがてらにこの国に来てみたのさ。」

 

「世直しだと…盗賊の分際で何を言うか!」

 

「あんたが裏でやってる事に比べたらかなりマシな方だな。」

 

「くっ…だが、お前達夜中とは言えこんな事をしても大丈夫だとでも思ったか。

 

 万が一に備えてこんな状況になった時には使用人の一人が警備軍のもとに知らせに行く様になっているんだぞ!

 

 後数分もすればこの屋敷に警備軍が…」

 

「安心しな。そんな事にはならないからよ。」

 

「何だとっ!」

 

「始めにこの屋敷全体を俺の部下達が取り囲んでネコの子1匹通さない様にした。

 

 それに…警備軍ごときに俺の一味が負けるとも思ってないからな。」

 

「くっ…」

 

「さて…本題に入ろう。さっきも言った通り俺達はお前の命を奪いに来た訳じゃない。

 

 用があるのはお前が裏で儲けた表社会には出せない金だ。

 

 それさえ引き渡せば俺達はここから出て行ってやろう。…どうだ?」

 

「く…く…くはははは!」

 

「…何がおかしい?」

 

「お前達のその愚かな行動がだ!私が何の用意もせずにこの仕事をしていると思ってるのか!?」

 

フェイトがそう言うと部屋のカーテンの後ろから人影が2つ出てきた。

 

「…なるほど…用心棒って訳か。」

 

「そうだ、こんな時の為に用意していた私の切り札だよ。

 

 彼等はこれでも一騎当千の猛者でね…そこらのチンピラとは一味違うぞ。」

 

「お、頭。どうします、こいつら…中々手強そうですよ?」

 

「…お前達は手を出すな。ここは俺が片付ける。

 

 そこの世間を知らないバカどもに少し教育してやらんとな。」

 

「何!?」「我等を…侮辱するか!」

 

そんな盗賊団の頭の自信振りに用心棒達は感情をあらわにした。

 

「どうせなら二人一辺に来やがれ。時間が勿体無いからな。」

 

「構わん!そいつを打ちのめしてやれ!」

 

「言われなくとも…」「そうしてやる!」

 

二人はよほど頭に来たのか物凄い速さで間合いを詰めて行く。

 

「やれやれ…めんどくさいが…仕方ないか…」

 

「死ね!」「身の程知らずの大馬鹿やろう!」

 

二人が同時に剣撃を繰り出した刹那…

 

ゴォゥ!

 

そんな風の吹く音と共に二人は叩き伏せられていた。

 

「ふん…準備運動にもなりやしなかったか…」

 

そう言う男の手には男の身長ほどもあろうかと思われる長槍が握られていた。

 

「フェイトさんよ…もう一度だけ言うぜ。例の金がある場所に案内するんだ。」

 

「は…はい…」

 

自分の切り札を全て打ち破られたフェイトは男のその言葉に従うしかなかった……

 

その後…予定通りの物を手に入れた盗賊団はそれ以上何もせずにいずこかに消え去ったという…

 

ロディ達がミロワに来てから1週間が過ぎようとしていたある夜の出来事だった……

 

 

第7章『追え!正義の盗賊団シルバーウルフ』

 

 

ローレイの街の盗賊騒ぎの翌日…

 

ロディ達はランドゥに謁見の間に呼び出された。

 

「おぉ…来たか、レイ。」

 

「はい…それで、僕達に何かご用でしょうか?」

 

「うむ…その事なのだが…少々困った事になってな。」

 

「困った事?…一体何が起きたんですか?」

 

「レイよ、盗賊団シルバーウルフを知っておるか?」

 

「シルバーウルフと言うと…あの、パーシル国で名を知らない人はいないって言うあの盗賊団ですか?」

 

「そうだ。実はその盗賊団は今このミロワに潜伏しているらしいのだ。」

 

「ミロワに!?どうしてこの国に…」

 

「理由は分からん…だが、昨夜ローレイの街が襲撃を受けたのだ。」

 

「そんなっ!…それで街に被害は?」

 

「…それが…誰一人として死人は出ておらん。」

 

「えっ…?」

 

「軽症をおった者が二人…あとはローレイの商人の財産の一部を奪っただけなのだ。」

 

「…盗賊が…誰も殺さずお金だけを…」

 

「シルバーウルフと言えばパーシルに居た時も何度か話を聞きましたが、

 

 その度に死人が出たという事は聞いた事がないです。」

 

二人の会話にルフィミアがそう助言した。

 

「パーシルでも誰も殺されてなかったの?」

 

「はい…正規軍も撃退に出たりしましたが、誰一人として戦死者はいませんでした。」

 

「お金を奪っても命は奪わない…か。」

 

「パーシルの中には彼等を救世主の様に思っている人達もいたみたいですよ。」

 

「救世主?…盗賊が?」

 

「はい…彼等は悪徳な商人などから金品を奪っては貧しい人達に分けていたそうですから。」

 

「…珍しい盗賊団だね。」

 

「そうなのだが、その度に街を恐怖に脅えさせる訳にはいかんのだ。

 

 そこで…盗賊団の行方をおぬし達に追って欲しいのだ。」

 

「僕達に?」

 

「うむ…本来なら我が軍を動かしたいのだが…何やらパーシルの動きが不穏な様子でな…

 

 うかつに軍を動かす事が出来ない状態にあるのだ。」

 

「なるほど…そこで僕らに依頼を?」

 

「そうだ。おぬし達は奴等の本拠地を探すだけで良いのだ。

 

 本拠地さえ分かれば一軍を差し向け掃討するようにしておる。」

 

「僕は構いませんが…みんなは?」

 

「僕も良いよ、僕等しか動けるような状態じゃないし。」

 

「私も良いですよ。この国にはいろいろお世話になっていますから。」

 

「私も行きます。その盗賊団には私も興味がありますし…」

 

「という事なんで…この仕事、引き受けますよ。」

 

「そうか…それでは…」

 

「お待ち下さい、ランドゥ伯!」

 

ランドゥの言葉を割り何者かが部屋にそう怒鳴りながら入って来た。

 

 

「ランドゥ伯、その仕事…少し考え直してはくれませんか?」

 

そう言いながら部屋に入って来た二人の男達ははランドゥの前に歩み出てくる。

 

「カルツ…それに、ウィラーまで…考え直せとはどう言う事だ?」

 

「どうもこうも…言葉通りですよ。」

 

「…あの…ランドゥ様、こちらの方々は…」

 

そんなやり取りに気圧されてか少し控えめにレイがそう尋ねた。

 

「ん…?おぉ、すまんな。彼等とは初対面だったな。

 

 紹介しよう、この国の軍師を務めておる4将軍の一人カルツ。

 

 それに、同じく4将軍の一人ウィラーじゃ。」

 

「……そう言う事だ。」「………」

 

「は…はぁ、よろしくお願いします。」

 

「…俺は貴様達と馴れ合う気はない。」

 

「…右に同じだ…それよりランドゥ様、考え直してください。」

 

レイの挨拶を素っ気無く流すと、再びカルツ達はランドゥにそう進言する。

 

「待てカルツよ。一体、この考えの何処が気に入らんと言うのだ。」

 

「この作戦に得体の知れない人間を起用する事です。」

 

「レイ達の事か?」

 

「はい…そのような事をするぐらいならば、ウィラーを起用する方が得策です。」

 

「そうですよ。このような者達ではこの任務がどのような結果になるか分かったものではありません。」

 

ウィラー達は見下すような目でレイ達を見つめる。

 

「こんな無能そうな女子供にこの任務をこなせる訳がありませんよ。」

 

「なっ、何だって!?」

 

「本当の事を言われ頭に来たのか、無能な客将の分際で。」

 

「この、取り消せ!レイは無能者なんかじゃない!少なくともあんた達よりも立派な人間だ!」

 

「ロ、ロディ。押さえて。」

 

「ふん…身の程知らずにも程があるな、我が軍一の騎士ウィラーに向かってそんな口を利くとはな。」

 

「身の程知らずはどっちだよ!こっちの実力も知らないくせに!」

 

「何だと?こいつ…このウィラーに向かってその様な口をきくとは…!」

 

「いい加減にせんか!」

 

正に一触即発の二人を制す様にランドゥの怒鳴り声が響く。

 

「………」「………」

 

「まったく…カルツ、お主も黙っておらずに二人を止めるぐらいせぬか。」

 

「…申し訳ありません…」

 

「ウィラー、そなたの言い分は分かった。

 

 要するにこの者達の実力が分からぬから任せるのが不安だと言うんじゃな?」

 

「…そう…ですね。そうなりますね。」

 

「分かった…ならば今からウィラー、それにロディ…おぬし達に決闘をする事を申し渡す。」

 

「け、決闘!?」

 

「そうじゃ、それならばお互いの実力が分かるじゃろう。

 

 お互い…依存はないな?」

 

「私は無いです。この身の程知らずの子供には丁度いい機会でしょう。」

 

「僕も無い。さっきの言葉を取り消させてやるチャンスですから。」

 

「よし…ならば場所を移すとするか…」

 

そう言うランドゥの後に付いて行きロディ達は部屋を後にした。

 

 

ランドゥに連れられやって来た場所は兵士達が良く利用する城内の庭園の一部にある訓練場だった。

 

「ここならば何に阻まれる訳でもないから存分に出来よう。」

 

ランドゥはそう言いながら訓練場の一角に置かれている模擬刀を無造作に2本掴んだ。

 

「ウィラーそなたはこれを使うが良い、ロディおぬしはこっちじゃ。」

 

そう言い先ほど無造作に掴んだ模擬刀を二人に手渡した。

 

「はは、ありがとうございます。」

 

「はい、分かりました。」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいランドゥ伯。」

 

そんな3人の間にレイが割り込んでいった。

 

「彼等は僕の力量を疑ってきたのです。ならば僕が剣を取るべきでは?」

 

「確かにそうだが、このままではたき付けた本人達が納得しまい。

 

 それに誰か一人の力量さえ分かれば自ずと全員の実力が見えるであろう。

 

 レイ…ここは押さえるのじゃ。」

 

「…しかし…」

 

「大丈夫だよ、レイ。この程度の相手に僕は負けやしないよ。」

 

「ほぅ…立ち会って見てもなお己の力量をわきまえないのか。」

 

「それは僕のセリフだ。今レイに謝っておけばここで許してあげるよ。」

 

「ふざけるなっ!小僧…すぐに後悔させてやるよ。」

 

ロディとウィラーはお互いから目を離そうとせず正に一触即発状態だった。

 

「これ以上待たすのは危険か…よし、お互いに構えよ!」

 

その合図に二人は手にした模擬刀を構える。

 

「よいか、この勝負の後は無駄ないがみあいは無しとする、良いな!」

 

「………」「………」

 

「…沈黙は肯定と受けとめるぞ。……始めっ!」

 

 

合図と共に口火を切ったのはウィラーだった。

 

「この一撃で…終わるっ!!」

 

激しい気迫と共にウィラーの上段からの一撃が放たれる。

 

ロディはその一撃を避け様とはしなかった。

 

「ロディ!」

 

ドゴォッ!

 

そんな音と共にウィラーの剣は地面に深々と刺さっていた。

 

「…遅いよ。」

 

ロディは先ほどの場所から半歩体をずらしただけでその一撃を回避していた。

 

「くっ!」

 

そんなロディの行動に驚いたのか、ウィラーは素早く後ろに引き体勢を立て直す…が。

 

「今度はこっちから行くよ。」

 

その隙をつきロディは一瞬にして間合いを詰め素早い連激を繰り出す。

 

「ぐぅぅぅ!」

 

そんなロディの猛攻に押されウィラーは防戦する一方だった。

 

しかし…

 

がっ!ずだっ!どごっっ!

 

ロディの全ての攻撃を防ぎきれず段々とウィラーの体に傷跡が増えていった。

 

「これでっ!」「なにっ!」

 

怯んだウィラーに放った一撃は攻撃を防ごうとした模擬刀をはじき宙へと舞い上がらせた。

 

「しまった!」

 

剣を失い戸惑うウィラーにロディが静かににじり寄る。

 

「……僕は、丸腰の相手とは戦わない主義だからね…」

 

そう言い何を思ったかウィラーの模擬刀を拾い上げ手渡した。

 

「な、なんだとっ!俺を愚弄するつもりか!!」

 

「違うよ…レイの事を侮辱した事…後悔させてあげるためさ。」

 

そう言い嘲笑するロディの瞳は明らかにいつものロディのものとは異なったものだった。

 

「ロディ…なんだかいつもと…違う。」

 

「まるで…戦いを楽しんでいるみたい…」

 

そんなロディの様子をルフィミア、マリオスの両名は心配そうに見守っていた。

 

「おのれ…おのれ、おのれ〜!!ふざけるなっ!」

 

ロディのそんな行動に腹を立てたのか模擬刀を握り締め立ち上がるとそう怒鳴り散らした。

 

「俺はミロワ1の騎士だ。…こんなガキに…負ける筈が無いんだ!!」

 

突如ウィラーの模擬刀が光に包まれていった。

 

「ウィラー!その技はっ!」

 

「うるさいっ!…俺は…負けられないんだ!」

 

ウィラーがそう叫び放つと剣の光は更に眩いものになっていく。

 

「カルツ将軍!あれは…一体?」

 

「あれこそウィラーの最強剣…ナハト・ガルツ。」

 

「ナハト・ガルツ?」

 

「…己の全魔力を剣に注ぎ繰り出す一撃に四方八方から注がれる魔力…

 

 正に逃げ場無き最強剣!」

 

「そんな…ロディ!逃げるんだ!!」

 

「遅いわっ!!」

 

その一声と共にウィラーがロディに詰め寄っていった。

 

「ロディーー!」

 

そんな様々な声が飛び交う中…ロディは静かに剣を構える。

 

「…悪いな…そんな一撃…触れる訳にはいかないからな…」

 

そして…ゆっくりと呼吸を整え…

 

「アロー・ストラッシュ!!」

 

風が…唸りを上げ吹き荒れた…

 

 

風が止んだ時、剣を握り呆然と立ち尽くすロディと遥か後方の壁に叩きつけられたウィラーの姿があった。

 

「そ…そこまでじゃ。もう充分だろう、ロディ。」

 

「…いいえ…まだ終わってない。」

 

ロディはそう呟きながらゆっくりとウィラーへとにじり寄る。

 

…そしてゆっくりと剣を振り上げた。

 

「なっ!やめんかロディ!」

 

「ロディ、もう終わったんだ。君の勝ちだ!」

 

「…戦いは相手に止めを刺すまで続く…」

 

周囲の声に耳を貸そうとせずロディの剣が振り下ろされた瞬間!

 

「だめっ、ロディ!!」

 

そんなマリオスの悲痛な嘆き声が聞こえたと思うとロディの剣はウィラーの目の前で止められていた。

 

そして次の瞬間、ロディが剣を離したと思ったら急に頭を抱え込み苦しみ出した。

 

「くぅっ!?…貴様…じゃまを…するか。」

 

頭を抱え悲痛の表情でロディはそうもらした。

 

「…貴様では役不足だった…だから俺がやってやったんだ…

 

 俺の真似事しか出来ない出来損ないは…引っ込んでろ…!」

 

「ロディ!しっかりして、ロディ!」

 

そんなロディを心配して、ルフィミアは必死にロディの肩を揺らし呼びかけていた。

 

「ぐぅぅっ!…て…めぇ…」

 

一際うめきをあげたかと思うとロディはそのままルフィミアの体に倒れこんでしまった。

 

「ロディ!しっかりして。ねぇ…ロディ!」

 

「うぅ…ル…ルフィ…ミア?あ、あれ…僕は…?」

 

一瞬の間を置きロディはルフィミアの叫び声に起こされる様に意識を取り戻した。

 

「ロディ!体は…何とも無いのかい?」

 

「えっ?…何でそんな事を…?それより…あれは…」

 

ロディは目の前でカルツが呼んだ救護兵に連れられて行くウィラーを見て唖然とした。

 

「あれって…ロディ、君がやったんじゃないか。」

 

「僕が…?…ぼんやりとしか記憶に無いけど…」

 

「マリオスが止めてくれなければ君は彼にとどめを刺していたんだ。」

 

「そんなっ!…僕が…そんな事を…」

 

「そうよ。あの時のロディ…別の人みたいですごく怖かったんだから…」

 

「私も…怖かったです…」

 

「これも…僕の力なのか…?」

 

ロディは恐る恐る自分の手を見つめる…

 

頭ではぼんやりとしか覚えてない記憶…

 

だが、自分の体はその感触をはっきりと憶えていたのだった。

 

「ロディ、もう体の方は大丈夫なのか?」

 

ロディを心配してかランドゥがそうロディに呼びかけた。

 

「は、はい。すいません、無我夢中で…何だか酷い事をしたみたいで…」

 

「いや…今回の事はウィラーにとっても良い教訓になったであろう。そなたが気にする事ではない。」

 

「…ありがとうございます。」

 

「それで…任務の方なのだが、体が無理な様なら後日に回そうと思うが…」

 

「いえ、大丈夫です。1日でも早く解決しなきゃいけませんからね。」

 

心配そうに語りかけてくるランドゥに笑顔を見せた。

 

「そうか…それならば中庭の方に馬を回しておくので早速中庭の方に向かってくれんか。」

 

「はい…行こう、レイ、マリオス、ルフィミア。」

 

そう言いロディは先ほどの模擬戦の際に外していた自分の剣を腰に差し中庭の方へと歩き始めた。

 

「ま…待ってよ、ロディ。」

 

そう言いながら他の全員もロディの後について中庭へと向かい出した。

 

訓練場には先程起こった現状をじっと見つめるランドゥとカルツがいた。

 

「…どう思う…カルツ。」

 

「…人間業とは思えません…あの、ウィラーが手も足も出ないなんて…」

 

「…あのロディと言う青年の事…それとなく調べておいてくれ。」

 

「…あの青年を…ですか?」

 

「……万が一…このミロワに害をなそうとした時…手遅れになら無いようにな…」

 

そんなランドゥの呟きが風に吸い込まれるだけだった……

 

 

ロディ達が中庭に出るとそこには兵士に連れられた4匹の馬がいた。

 

「お待ちしておりました、どうぞレイ様。この馬をお使い下さい。」

 

「うん、ありがとう。」

 

兵士から手綱を受け取るとレイは手慣れた感じで颯爽と馬に跨った。

 

「さぁ、ロディ様もどうぞ。」

 

「う…うん。」

 

手綱を受け取り馬に近付いたはいいがロディは中々馬に乗ろうとしなかった。

 

「ロディ、どうしたんだい?」

 

「い、いや…初めてなんだ…馬に乗るのって…」

 

「やってみたら結構簡単だよ。優しく馬に飛び乗るんだよ。」

 

「や…優しく…優しくね…」

 

そう何度も繰り返しながらロディはゆっくりした動作で馬に跨った。

 

その間、馬は特に動こうとせず何事も無く乗る事が出来た。

 

「の…乗れた。乗れたよ!」

 

「うん、うまいよロディ。」

 

ロディは初めて馬に乗ったのがよほど嬉しかったのか何度も喜びの声を上げた。

 

「では…マリオス様どうぞ。」

 

「はい…」

 

兵士に言われ馬に近付くとマリオスは馬の頭をそっと撫で始める。

 

「お願い…あなたの背に、私を乗せてください。」

 

マリオスがそう優しく語り掛けると馬は自ら膝をつき屈み込んだ。

 

「ありがとう…素直な子ね。」

 

そう話し掛けマリオスが跨ったと同時に馬は静かに立ち上がった。

 

そんなマリオスの行動にその場にいた全員が目を奪われていた。

 

「凄いね、マリオス。…何だか馬が言葉を理解してるみたいだね。」

 

「はい、そうですよ。」

 

「えっ…?」

 

「この子達も優しく話しかけてあげれば私達の言葉を理解してくれるの、動物って素直な生き物だから。」

 

「ふぅん…そうなんだ…」

 

「え…あっと、ではルフィミア様…どうぞ。」

 

「は…はい。」

 

マリオスの意外な行動に呆気に取られていた兵士はそう言うとルフィミアに手綱を手渡した。

 

ルフィミアが馬に近寄りそっと手を掛けようとした時…

 

「ブルルル。」「きゃっ。」

 

突然馬がそんな声を上げルフィミアは再び馬から離れてしまう。

 

「どうしたの、ルフィミア?」

 

「わ…私…だめなんです…馬が…」

 

「そうなの?」

 

「はい…昔、背中から振り落とされて以来…どうしても怖くて…」

 

「そっか…それなら、一緒に乗ろうか?」

 

「うぅ…でも…」

 

「ほら、二人で乗れば安心できるでしょ?」

 

そう言い微笑みながらロディは自分の手を差し出した。

 

「う…分かり…ました。」

 

ロディの手を取り戸惑いながらもルフィミアは馬に跨った。

 

「ほら、乗れたでしょ。」

 

「え…えぇ。ありがとう、ロディ。」

 

「よし…それじゃあ、そろそろ行こうか。」

 

「そうだね。あっ、ルフィミア。ちゃんと掴まっててよ。」

 

「は、はい。」

 

馬に乗った驚きよりもそんな自分の行動が恥ずかしくなり、

 

ルフィミアは真っ赤になった顔を隠す様にロディの腰に手を回し顔を押し付けた。

 

「よし、出発!」

 

そんなレイの掛け声と共にロディ達は馬を走らせた。

 

まだ見ぬ盗賊団シルバーウルフの行動を阻止するために……

 

 

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