ミロワを出発してから二時間ほどたった頃、
ロディ達に眼前にローレイの町が見えた。
「あれがローレイ。」
「ミロワ最大の商業都市ローレイ。
このグランディアの他の都市はもちろん、
隣の島国『神』や他の大陸との交易が盛んな都市だよ。」
「へぇ…なるほどね〜。」
そんなレイの答えにロディは関心を示しながら町を見つめていた。
「でも…何か変ですね。」
「何がだいルフィミア?」
「その…昨夜盗賊団の襲撃を受けたと言うのに、
町の活気…それに外壁にも傷一つ付いてないなんて…」
「そう言えば…そうね。」
「本当に…町には傷一つつけてなかったのか…あの盗賊団は…」
そんなことに感心しながらもロディ達はローレイの門の前にある
番所に馬を預け町の中へと入ってみた。
町は賑やかな雰囲気に包まれており平和そのものだった。
「…本当に…この町に盗賊団なんか来たのかな?」
「うん…その事すらも疑ってしまうぐらい平和よね…」
「…と、取り敢えず色々聞きまわってみましょう。
街の人たちに聞いたら何か分かるかもしれませんし…」
「そうだね。よし、それじゃあバラバラに分かれて情報を集めてこようか。」
「うん、それが一番手っ取り早いかもね。」
「それじゃあ…僕とロディは1人でも大丈夫だけど、
ルフィミアとマリオスは何かと危ないかもしれないから一緒に行動してね。」
「うん、分かった。」
「は、はい…」
「それじゃ…1時間後にこの町の中央広場に集合ってことにするよ。」
「中央広場?」
「うん。文字通りこの町の中心ある広場だよ。
もし分からなかったら町に人に聞けば誰でも知ってると思うから。」
「分かったよ。」
「それじゃ、1時間後にまた…」
そう言うとレイは町の中へと消えていった。
「それじゃあ…ルフィミア、私達も行こうか?」
「そうですね…それではロディ、私達も行きますね。」
「うん、くれぐれも気を付けてね。」
そしてルフィミアとマリオスも町の葛藤の中に消えていった。
「…僕も頑張らないとね。」
こうして全員はそれぞれバラバラに町の中に消えていった…
第8章『プライベート・ナイツ』
…「へぇ〜…そうだったんですか。」
「そうなんだよ〜…ヒック…奴等はよ…ぜって〜一般市民からは盗まねえんだと…ヒック。」
レイは情報収集の定番とも言える酒場で話を聞いていた。
「なるほど…それで町には何も異変がなかったのか…」
「ん?どうかしたのか、ボウズ…ヒック。」
「いえ…どうもありがとうございました。」
「いいってことよ。今度は大きくなってから酒を飲みにくるんだぞ〜…」
「そうします。」
男にもう一礼しながらレイは酒場を後にした。
「僕って…そんなに子供に見えるのかな…」
自分はもうお酒を飲める年齢になっているのに先程に男にそう言われたのがショックだったのか、
その場でふと考えこんでしまう。
「…さて…もうちょっと聞き回ってみようかな…」
心なしかショックを受けながらもレイは再び歩きはじめたのだった…
一方…マリオス・ルフィミアの二人は…
「それでね、若い奴等の中には正義の盗賊団シルバーウルフに
入りたいって言う奴もいるわけなんだよ。」
「正義の…盗賊団…ですか?」
「そうなのよ。全くバカな奴等だよ。
いくらむかつく悪徳商人たちからしか盗まないって言っても、
所詮盗賊は盗賊でしかないんだからさ。」
「そうですよね…どうも、ありがとうございました。」
「いいのよ、おばさんで良かったらいつでも話し相手になってあげるわよ。」
「はい、それじゃあ。」
そんな気の良い主婦と別れ、先程聞いた事を思い返してみる。
「正義の盗賊団…か。ねぇ、どう思うルフィミア?」
そう言いながらルフィミアの方に向き直るマリオスだったが…
その場にいるはずのルフィミアの姿はなかった。
「あ、あれ?ル、ルフィミア?」
慌ててあたりを見渡すがその影すら掴めない。
「あっちゃ〜…はぐれちゃった…」
暫くどうして良いか分からずその場に立ち尽くしていたマリオスだったが…
「ル…ルフィミアだったら心配ないよね…
そ、そうよ。中央広場で会えるはずよね…うん。」
そう自分を納得させマリオスは情報収集にいそしむのだった…
その頃…問題のルフィミアはと言うと…
「マリオス〜…ふう…何処行っちゃったのかな?」
ものの見事に迷っていた。
「困りましたね…ひとまず中央広場を目指しましょうか。」
そう決め中央広場に向かい始めた矢先ある光景が目に入って来た。
「あれは…?」
何やら店の人間とお客である子供が言い争っているのが見えた。
「何かあったのかしら?」
困った人を見過ごす事が出来ないルフィミアは取り敢えずそこに行ってみることにした。
「だから何度も言ってるじゃないか!お金はちゃんと払うって!!」
「今度と言う今度は騙されんぞ!このくそガキが!
そう言って何度うちの店の物を盗んで行ったと思ってやがる!」
「だ〜か〜ら!今日はちゃんとお金を持ってきたんだってば!」
「だまれ!今日こそお前を自警団に引き渡してやるからな!
きやがれ、くそガキ!」
そう言い店の親父は男の子を強引に連れていこうとする。
「いてて!離せよ、俺何も悪い事してないじゃないか!」
「うるさい、してからじゃ遅いから連れていくんだろうが!」
「ちょ、ちょっと待ってください。」
男の子を強引に引っ張る親父にルフィミアがそう呼びかけた。
「何だ、あんた!こいつの仲間か?」
「い…いえ…そう言うわけじゃないんですが…少し酷過ぎませんか?
その子の言ってることをちゃんと聞いてあげてください。」
「ふん!あんたが何を知ってるんだよ。
こいつには何度騙された事か…うちの店はこいつ等の食料庫じゃないんだぞ!」
「だから、ちゃんとお金払うって言ってるじゃないか、このくそ親父!」
「ぐぐっ…くそガキが、生意気ばっか抜かしてるんじゃない!」
そう言うと二人はまた言い争いをはじめてしまった。
「…分かりました、その子が迷惑をかけたお金…私が代わりに払います。」
「何?嬢ちゃんが?」
「はい。それで、この子のことを許してもらえますか?」
「…ま、まぁ…払ってくれるって言うんなら…構わないが…」
あまりの事に気抜けしてしまった親父はルフィミアに気押されるまま代金を払ってもらう事にした。
「うむ…それじゃ、確かに貰っておくよ。」
「はい、今度からはちゃんとこの子の言い分も聞いてあげてくださいね。」
「あ、あぁ。分かったよ…」
ルフィミアから代金を受け取り少し呆気に取られたまま親父は店の中へと戻っていった。
「さぁ…今度は君の番ね。」
「………」
「いい?もう人の物は盗っちゃだめよ。」
「…う…うん。」
「よし、良い子ね。それじゃあ、お姉ちゃんもう行くね?」
そう告げルフィミアが去ろうとした時…
「お、お姉ちゃん!」
男の子がルフィミアの元に駆け寄ってきた。
「?…どうしたの?」
「これ…」
そう言いながら先程ルフィミアが店の親父に手渡した分のお金を差し出してきた。
「これ…どうしたの?」
「…今日は…本当にあの店にお金を払いに行っただけだったんだ…
でも…全く信じてくれなくて…つい口喧嘩になっちゃって…」
「そう…だったの。」
「ホントなんだ!…本当に…返したいだけだったんだ…」
そう言う少年の目からは我慢していたものが切れてしまったのか、
ポツリポツリと涙が落ちてきた。
「…大丈夫、お姉ちゃんは信じてあげるからね。」
そう言いルフィミアは男の子を優しく抱きしめる。
「君は過去に悪い事をしたかもしれない…
だけどそれを償おうとしたのよね。…偉いわね。」
「う…うわ〜〜っ!」
ルフィミアにそう諭され男の子はたまらなくなってしまい泣き始めてしまった。
「よしよし…良い子ね…君は…」
ルフィミアはそうして…男の子が泣き止むまで男の子を抱きとめてあげていたのだった…
しばらくして男の子は落ちついたのかポツリポツリと事情を話し始めた。
自分が戦災孤児である事…また同じ孤児達のまとめ役であると言う事…
そして食べる物に困り盗みを働いていた事…
「そうだったの…」
「うん…俺は少しくらいお腹が減ってても我慢できるけど、
あいつ等はそんな事出来なかったから…」
「確かに君のその心構えは良いと思うけど、
人の者まで盗んじゃいけないわね。」
「…お金が出来たらまとめて払おうと思ったんだ…
でも…俺…まだ子供だから…何も出来なくて…」
「…それじゃあ、このお金はどうしたの?」
「それが…分からないんだ。」
「分からない?」
「うん…今朝起きたら俺達の住んでる小屋に白い袋が置いてあって…
中を開けてみたらお金が入ってて…それで…」
「起きたら…白い袋…?」
「それで、きっと誰かがくれたんだって思って…あの店に返しにいったんだ。」
「そう…不思議な事もあるものね?」
「うん。…あっ!早くあいつ等にこれを届けてやんなくちゃ…」
そう言うと先程店で買った紙袋をぎゅっと握り締め立ちあがった。
「そうなんだ。ごめんね、何だか話しこんじゃって。」
「う、うぅん。俺の方こそお姉ちゃんに迷惑かけちゃって…ごめんなさい。」
「いいのよ、ほら…早くみんなの所に帰りなさい。
あなたの帰りを待ってるんでしょ?」
「うん、それじゃあねお姉ちゃん。」
そう言うと少年は元気良く走って行った。
「もう悪い事したらダメだからね〜…」
そんなルフィミアの言葉に手を振って答えた少年はあっという間に見えなくなってしまった。
「…それにしても…不思議な事もあるのね…」
先程の少年の話しに感心しながら再び中央広場へと足を向けるのだった…
「正義の盗賊団…孤児達の家に届いた白い袋…
それって…もしかしたら…」
『ドンッ!』
考え事をしながら歩いていたルフィミアは前方不注意で何かにぶつかってしまった。
「キャッ!」「うおっ。」
ぶつかった者との体重差からかルフィミアは弾き飛ばされてしまった。
「あぁ〜…メ、メガネ…メガネが…」
その拍子に落としてしまったメガネを必死に手探りで探すルフィミア。
「おい、姉ちゃんよ。」
「うぅ〜…どこにいっちゃったの〜?」
そんなルフィミアに何者かが話しかけるが聞こえていない。
「お願いです〜出てきてください〜。」
「おらっ!お前のメガネはこれだろうが!」
「えっ…」
そんな誰かの怒鳴り声と共に目の前にメガネらしきものが差し出された。
「あっ、それです。どうもありがとうございます。」
取り敢えずそうお礼をいいながらメガネをかけ直しながら立ち上がると目の前には数人の男達が立っていた。
「これでお前の状況が分かっただろう?」
「えっ…?」
周りを見回して見ると先程ぶつかっただろうと思われる男と他数人の男達…
「え?え〜と…どう言う事ですか?」
「おい、姉ちゃんよ。人様にぶつかっておきながらあいさつの一つもねえのかよ。」
「え、あ…す、すいませんでした。ちょっと考え事をしていたもので…」
「おい、姉ちゃん!人をなめているのか!!」
「え…え?な、何か私失礼なこといいましたか?」
「人に謝る時の態度ってものがあるだろうが!」
「だ、だから…先程言ったようにちょっと考え事してて…」
何が何だか分からなくなり必死に自分の状況を説明するルフィミアを見て男達の表情は険しいものへと変わっていった。
「おい、お前等。この世間知らずな姉ちゃんに社会のルールってものを教えてやれ。」
「へい。」「おうよ。」
その合図で男達はルフィミアの体を掴み始めた。
「えっ!や、やめてください!」
良く分からないまま酷くなってゆく状況にルフィミアはそう必死に叫びをあげた…
「う〜ん…正義の盗賊団って良い人達なのかな?
それともやっぱり…」
時間が近付いてきたのでロディが中央広場への道を歩いていると…
「いやっ!離して下さい!」
「うるせぇ!黙ってやがれ!」
そんな声が聞こえてきた。
「ん?…今の声…何処かで聞いた事が…?」
そう思い辺りを見回してみると前方でルフィミアが数人の男達に囲まれているのが見えた。
「な、なんでルフィミアが!」
突然の事に驚きながらもロディは全速力で現場に向かっていた。
…「やめて下さい。離して…」
「うるせぇよ。姉ちゃんにはこれからたっぷりと社会のルールってもんを知ってもらうぜ。」
「いや、嫌ぁ〜!」
「うるせぇな…少し黙らせろ。」
「へい。」
力の限り抵抗するルフィミアだが男達の力には敵わず男達の手がルフィミアの体を駆け巡る。
「やめて!触らないで!」
必死にそう叫ぶが周囲の人達は見て見ぬ振りを続ける。
街の人達はその男達の事は良く知っており出来る事なら関わりたくないのだった。
「いや…やめて…」
叫び疲れたのか段々と声が小さくなってゆくルフィミア。
もう抵抗する事を諦めようとした時、不意に目の前で体を掴んでいた男の力が弱くなってゆくのを感じた。
「ルフィミアから手を離せ!」
そんな声と共に目の前に抜刀をしないままの状態で剣を構えるロディの姿が見えた。
「なんだぁ貴様は?」
「ロディ!」
そんなロディの登場に気を取られ力が緩んだ隙にルフィミアは男達の手から逃れロディの元に駆け寄った。
「ルフィミア!大丈夫かい?」
そんなロディの質問に答え様ともせずルフィミアはロディにすがり付いていた。
「怖かった…すごく…怖かった…マリオスともはぐれるし…私…私…」
今までの不安な気持ちを吐き出すかのようにルフィミアはロディの胸の中でそうすすり泣いていた。
「大丈夫…もう大丈夫だから…ね。」
「…はい。」
ロディは小さく震えるルフィミアの髪を撫で続けながらそう優しく呼びかける。
「おい、兄ちゃんよ。」
そんな事態を面白くなく思ってか男達がにじり寄って来た。
「ルフィミア、後ろに下がってて。」
「…はい…」
ロディにそう言われルフィミアは少し気持ちを落ちつかせながらロディから少し離れた。
「おい兄ちゃんよ。女の前だからってかっこつけてると怪我するぜ。」
「別にそんなつもりはないさ。守りたいから守る、それの何処が悪い。」
「守りたいから守る…だと。笑わせるなっ!」
「そうだぜ…ナイト様気取りもいいがよ、調子に乗ってるんじゃねぇぞ。」
「それの何が悪い!女の子に乱暴しようとしてたお前達に比べたら数倍マシだ!」
「たいしたナイト様だな…おい、やっちまいな。」
「おうよっ!」
ロディの発言に頭に来た男達が一斉にしてロディに襲いかかってきた。
「狙いは…そのいけすかねぇつら…」
「遅いっ!」
ロディの顔面を狙い殴りかかってきた男の拳よりも早くロディの拳が男の顔をとらえる。
「野郎っ!」「ガキが!」
今度は左右から挟みこむ様にして二人同時に殴りかかってくるが…
「………」
「なっ!」「にぃ!」
ロディが素早く後ろに飛び退いたためお互いに殴り合ってしまった。
「さぁ…後はお前1人だぞ。」
そう言いながらロディがリーダーとおぼしき男に詰め寄る。
「なっ…お前、何者だよ!俺の手下どもが手も足も出せないなんて…」
「お前に教える必要なんてないさ。」
「へへ…それも…そうだなっ!」
そう言い放ち男はポケットに手を入れたかと思うと、おもむろにロディへと投げ放った。
「くっ、これは…目潰しか!」
男の投げた物に反応しとっさに目を閉じるが激痛が走る。
「卑怯な手を使う…」
「卑怯でけっこうさ!」
そんな男の声が聞こえたかと思うと首元を締め付ける痛みと共に自分の体が宙に上げられる感覚がした。
「ぐぅっ…」
「ロディ!」
「へへへ…油断したなナイト様。」
男はそう言いながら締め付ける力を強くしてゆく。
「がぁっ…このっ!」
ロディは男を蹴りつけるが宙に浮いたままの状態では力が入らず男には効果がなかった。
「効かねえな…おい、やろうどもこいつに借りを返してやんな。」
「へへ…さすがは兄貴だぜ。」
男達が口々にそう言いながら立ち上がりロディの元に近付く。
「ほれ、お前がこいつを持っとけ。」「へい。」
ロディは宙から降ろされたかと思うと今度は後ろから羽交い締めにされる。
「おら、さっきのお返しだぜ!」
「くっ!」
男の重い拳がロディの下腹部に叩き込まれる。
「おらおらおら!」
容赦ない男の拳が続け様にロディに叩きこまれていく。
「ロディ!!」
「…そう言えば姉ちゃんの方も途中だったな…」
そう卑屈な笑みを浮かべながら男がルフィミアにもにじり寄る。
「あ…あぁ…」
ルフィミアはロディを置いて逃げる事も出来ず立ち尽くす。
「ルフィミア、逃げるんだ!僕は大丈夫だから!」
「まだそんな事言ってるのか…よっ!」
「がぁっ!」
そうロディが叫ぶが、ルフィミアには1人殴られ続けるロディを置いて逃げる事は出来なかった。
「いやっ!離して!」
「そう言うなよ。嬢ちゃんの頑張りによっちゃあ、あのボウズを許しても良いんだぜ。」
「…っ!?」
男のそんな言葉に反応を示したルフィミアの体から力が抜けてゆく。
「へへへ…良い子だな。」
「ひぅ…」
「ルフィミア!!」
(…僕は…何も出来ないのか?)
(…出来るさ…)
(…ルフィミアを…助けられるのか?)
(…出来るさ…俺にはその力があるだろう…)
(…力…?)
(思い出せ…力を…そして…目の前の障害を…消せ…)
その瞬間…ロディの意識は遠くなり、体が妙に軽く感じられた…
「これで…おねんねしな!」
そんな言葉と共に渾身の一撃がロディの顔面に向けられるが…
「ごはっ!」
吹き飛んだのはロディの後ろで羽交い締めにしている男だった。
「なっ!なんだ…」
そこまで言いかけた刹那、男の体は10数メートル後方に吹き飛んでいた。
「………」
「ガキがっ!」「調子に乗るなよ!」
二人が同時にロディに襲いかかった瞬間…
「…それはお前達の方だろう…」
そう言いロディが見開いたかと思うと男達は宙を舞っていた。
…正に一瞬の出来事だった。
瞬きをするかしないかの間に男達の手を取りそれを強引に返し投げ飛ばしていた。
「ぐえっ!」「がふっ…」
「…借りを返すぜ…」
ロディがそう冷たく言い放ったかと思うと男達の脇腹にロディの足が叩きこまれ、
鈍い音と共に男達の悲鳴が響いた。
「ひぁ…な、何々だよ!」
その光景に1人ルフィミアの方にいたため難を逃れた男がそう叫んだ。
「…おい。」
「は、はい。何でしょうか?」
「このゴミどもを連れてとっとと失せろ。」
「は…はい?」
「二度は言わない…それともお前もこんな風に…」
「し、失礼しましたっ!」
ロディの圧倒的なプレッシャーに押され、男は他の全員の引きずりながら逃げ出した。
「ふん…所詮は小物…くぅっ…」
(…………)
「くっ…これ以上は…無理か…」
それだけ言うとロディはその場にへたり込んでしまう。
「ロディ!しっかりして、今傷を…」
そう言いながらルフィミアは必死にロディに回復呪文をかけ始める。
その間…ロディはまるで息絶えたかのようにピクりとも動かなかった…
「うっ…あっ…?」
しばらくしてロディが意識を取り戻すとそこには必死に回復呪文を唱え続けるルフィミアがいた。
「ル…ルフィミア…?」
「ロディ…良かった、気が付いたのね。」
「あっ…あぁ、もう大丈夫だから。」
ロディのそんな笑顔を見てかルフィミアの手から力が徐々に収まって行くのが分かった。
「ルフィミア…ずっと、呪文をかけ続けてくれてたんだね。…ありがとう。」
ロディが起き上がりながらそう言うとルフィミアはタガが外れた様にロディに抱きついていた。
「ルフィ…ミア…?」
「良かった…本当に良かった。…ロディ…様子がおかしかったし、
ずっと目を覚ましてくれなかったから…不安で…」
泣きじゃくりながらルフィミアはそんな言葉を漏らした。
「大丈夫だよ…さぁ、そろそろレイ達と合流しないと時間に遅れちゃうよ。」
「う…うん…」
ロディにそう言われ流れる涙を拭いながら立ち上がる。
「よし、それじゃあ行こうか。」
「あ…あの、ロディ…」
1人歩き出そうとしたロディをルフィミアがそう呼び止めた。
「ん?どうかしたの、ルフィミア?」
「あ…あの…その…」
「うん、何?」
「…そのね…もう…はぐれない様に…手…つないでもいいですか?」
ルフィミアが顔を真っ赤にさせながらそう尋ねてきた。
「別にいいよ、はい。」
そんなルフィミアの胸中を知ってか知らぬままかロディは変わらずそう手を差し出す。
「あ…ありがとう…」
おずおずと…しかし、差し出された手をルフィミアはきゅっと握りしめた。
「じゃあ、行こうか。」
二人は手をつないだまま中央広場へと向かっていった。
(私の…ナイト様…か…)
ルフィミアのそんな呟きを誰も知る事もなく……
ロディ達が中央広場に辿りつくと、そこには既に待ちくたびれていたレイとマリオスがいた。
「あっ、ルフィミア。もぅ〜心配したのよ。」
「ごめんなさい…少しぼーっとしてたらマリオスを見失っちゃって…」
「でも…なんで、ロディも一緒なの?」
ルフィミアがロディと一緒に現れた事に疑問を抱いたマリオスが率直にそう尋ねてきた。
「え…え〜と…それは…」
「あぁ、僕が街を歩いてたらさ何だか見覚えがある人がいるなって…
それで呼び止めてみたらルフィミアだったってわけさ。」
「えっ…」
「ルフィミア…話し合わせて…」
驚き戸惑うルフィミアにロディがそう小さく囁いた。
「う…うん。そうなの、どうしていいか分からなくてパニックになってたらロディが…」
「そうだったの?まぁ、何にしても無事で良かったわ。」
「うん…ごめんなさい。」
「まっ、これで全員揃ったし…そろそろ情報交換と行こうか。」
「それじゃあ僕の方から話すよ。僕の方は……」
こうしてロディ達は順々に自分が街で聞いた情報を話していった。
…数分後…
「う〜ん…みんな、どう思う?」
「正義の…盗賊団…ですか…」
どうやらルフィミアを除く全員が聞いてきた話は結局はそこに行きついたのだった。
「それに…ルフィミアの話しも気になるね。」
「あぁ、白い袋の主かい?」
「何だか…シルバーウルフとその主が同一人物の様にも思えるしね。」
「確かに…彼等は悪徳な商人から奪い、
貧しき人々にそれを分ける盗賊って聞いてるしね。」
「う〜ん…」
考えがまとまらず、悩んでいると…
「…もしかしたら…良い人達なのかな?」
ロディがそんな事をぼそっと呟いた。
「えっ…」
そんなロディの発言に全員が目を見合わせるがロディは構わず言葉を続けた。
「だってさ、悪徳な商人からしか盗っていかないんでしょ?
それに…街の人達の中には彼等を英雄視する人達だっているしさ…」
「そうだけどさ…」
「だったら、話したら分かってくれるかもしれないよ。」
「…そう…ですよね。」
ロディのそんな前向きな発言にルフィミアがそう小さく同意する。
「だって、相手だって人間なんだ。話しが通じない相手じゃないんだからさ。」
「…うん、そうだね。よし、それじゃあ一度話しをつけに行ってみようよ。」
「で…でも。彼等がどこにいったのか…」
「そう言えば…街の人達の中に盗賊団が南の方に帰って行くのを見たって人が…」
「よし、それじゃあひとまずは南の方を探索してみる事にしようか。」
「うん。」
ロディ達は街の人達の話しから一路南へと進路を向ける。
自分達の進む道が困難な道と知りながらも進み行くのだった……