第10章『信念…勇気の強さ』
ジェントと言う新しい仲間を加え、無事にロディ達は黒の森を抜けた。
「ふう…これで黒の森も無事に抜けたね。
でも…肝心の手掛かりがないんじゃどうしようもないな…」
「う〜ん…そう言えばジェント。君は何かしらないのかい?」
「…なんのことだ?」
「シルバー・ウルフの事…」
「シルバー・ウルフ?…お前達が追っている人間の盗賊の事か?」
「うん、街で教えてもらった情報だとこっちの方に逃げてきたんだけど…」
「………そう言えば…それらしい奴なら数日前にこの森を通ったな。」
「ホントに?」
「そいつ等かどうかは知らんが…あの時もお前達と同じように矢を放ち追い返そうとした…が、
その瞬間そいつ等の中の1人が飛び出しことごとくこちらの矢をはじき返しやがった。」
「なっ!…たった1人が?」
「あぁ…そうこうしてる内に他の奴等に逃げられてしまった。」
「そんな無茶苦茶な…本当にただの盗賊なのか?」
「知らん…だが…気は抜けない事だけは確かだ。」
そんなジェントが語る真実に一同は呆気に取られてしまう。
「それで…奴等はどっちに行ったんだい?」
「たしか…この森を西にまっすぐ抜けていった…そこからは分からない。」
「西…ですか?」
「と言う事は…ミロワの南…か…まてよ、たしかそこには…」
「何かあるのかい、レイ?」
「うん…ミロワの南には今は使われてない古い砦があるんだ。」
「古い…砦。集団で身を隠すには最適な場所だな。」
「よし…そこに行ってみよう。」
「うん。」
まだ見ぬ新たな恐怖を胸に感じながらもロディ達は唯一の手掛かりとなった問題の砦へと足を進めることにした…
あれから1時間弱…ロディ達はその問題の砦の前に立っていた。
「ここが…その砦…?」
「…なるほど…確かに当たりみたいだな。」
そんなジェントの言葉に反応し入り口の方を見てみると確かに見張りらしき者が二人立っていた。
「それで、レイ。ここからどうするの?」
「出来るだけ戦闘は避けたいね…数の上では圧倒的に不利だからね。」
「それならあの入り口は使えんな…なら、裏口でも探した方がいいか。」
「そうだね…それじゃあ、僕とジェントで左から…ロディ達は右から回り込んで見て。」
「分かった、それじゃあまたね。」
「うん、気を付けてね。」
それだけ言うとそれぞれが二手に別れ行動を開始した。
……『ガササ…』その背後の影に気付く事もなく…
右手の方から砦に回りこんでいたロディ達はその森の深さに苦戦し思った様に進めずにいた。
「ふう…随分深い森だね。」
「えぇ…それに何だか不気味ですし。」
「確かにね…黒の森といいこの森といい…もうちょっとラーナの箱庭を見習って欲しいよ。」
「黒の森はあれだけど…ラーナの箱庭はあらかじめ人の手が加わった森だからね。」
「そうですね。でも、ここまで深い森ですと…はぐれてしまいそうですね。」
「言われてみるとそうだね…それじゃあ皆で手でも繋ごうか?」
「えっ!?」「え、え〜と…」
ロディの突然のそんな言葉に二人は驚き顔を見合わせた。
ロディが下心なく言っているのはよく分かったが驚きながらも口から出た言葉は…
「う…うぅん。だ、大丈夫よ。」
「そ、そうですよ。子供じゃありませんからそう簡単にははぐれたりしませんから…」
「そう?それならいいんだけど…」
そう呟き前方に振り返った瞬間…
『ジャッ!』
「!!」
突然影が飛び出しかと思うと二人を抱え森の中に消えた。
「でも…やっぱり繋いでたほうが安全じゃ…」
そんな言葉と共に二人の方に振り返ったロディの目にはその姿は見えなかった。
「マ、マリオス!ルフィミア!」
必死に辺りを見まわすが二人の姿を見つける事は出来なかった。
「へっへっへっへっ…」
「なっ、いつの間に!」
そんなげひた声と共にロディの回りに数人の男達が現れた。
「小僧…俺達に何か用か?」
「僕達はミロワからお前達を止める様に依頼されてここに来たんだ。」
「ふ…こんなガキが俺達を?笑わせるなよ!」
「…僕達は無用な争いはしたくはない。あんた達の親玉の所に案内してくれないか?」
「ガキ…そんなセリフは俺達を倒してから言いやがれ!!」
そんな怒号と共に数人がロディに襲いかかるが…
『ドォゥッ!』
ロディの一薙ぎで弾き飛ばされてしまった。
「なら質問を変える…二人を何処にやった?」
「あいつらなら…今ごろお頭の所だろうよ。」
「そう…それで、そこには案内してくれるのかい?」
「…それはできないなぁ。」
「そうか…それじゃ、力づくでも案内してもらう!!」
剣を鞘に納めたままロディは盗賊達の中に飛び込んでいった……
一方その頃左手の方から回りこんだレイ達は…
「…そう言えばさジェント、君の剣技ってかわってるよね?」
「?……なんの事だ。」
「ほら…あの、魔法を剣に宿らせるやつさ。」
「あれか…あれは俺独自のものだ。他の誰がやっても真似できんぞ。」
「ふぅ〜ん…でもあれはすごい発想だよね。
剣と魔法のダメージを同時に与えるなんて…」
「………」
「でもさ、あれってどうやって…」
「だまれ、まだ気付かないのか。」
レイの言葉を途中で遮りつつもジェントは剣を抜き構えた。
「な、何を…?」
「気付け…囲まれてるぞ。」
「な、なんだって!」
ジェントのそんな言葉に驚きつつもレイも剣を抜いた。
そして二人は言葉もなく背中合わせに構えるのだった。
『…ッザザザ!』
そんな草を掻き分ける音と共に3、4人の盗賊が飛び出すと同時にダガーを繰り出す。
「ふん…」「はぁっ!」
が…あえなく二人にはじき落とされ同時に強烈な一撃を叩き込まれる。
当たり所が悪かったのか盗賊達は地面に落ちた後ピクリとも動かなかった。
「……ふぅ…これで終わりかな。」
「手応えがない…つまらん。」
「まぁ、彼等は盗賊の下っ端ってところだったんだろうね。」
「違いな…!!」
そこまで言いかけたジェントだったが不意に何かを感じ剣を構えなおした。
「どうしたの、ジェント?」
「まだだ…まだ近くにいるぞ。今度はさっきのやつらとは一味違うみたいだぞ。」
「くっ…盗賊団の幹部でもいたのかな?」
「分からん…だが油断するなよ。」
その言葉と共に辺りが再び静寂に包まれた……
『ガササ!!』
一際大きな音と共に森から人影が飛び出したかと思うと腰から抜いた剣の抜刀の一撃!
「くっ!」
『ガキィン!』
「ちっ…」
先手の一撃を防がれ不利と感じたのか人影は後方に飛び体勢を立て直す。
「………」「………」
ジェントと影…二人の間に沈黙が…
「?…ちょっと待って。ロディ…ロディだろ?」
「え、その声…レイ?」
そんな驚きの声と共に徐々にその人影がはっきりとしてくると…確かにそこにいたのはロディ本人だった。
「やっぱり…どうりでなんか見た事ある太刀筋だと思ったよ。」
「そ…それじゃあ…僕が斬りかかったのって…」
「俺だ。」
驚くロディの背後からジェントがそう声をかけた。
「ジェ、ジェント。ご、ごめんね。怪我は…ないよね?」
「当然だ。…それより、何故お前が俺達に斬りかかってきたんだ?」
「いや…実は……」
ロディは二人に事の顛末を話し始めた…
「…なるほど。それで残りの盗賊を追ってたら俺達と遭遇した…そう言う訳か?」
「そうなんだ。早くしないと二人が…」
「それで、ロディ。その盗賊は…」
「こっちに行ったのは分かったんだけど…そこにレイ達が…」
「裏口の手掛かりはなしか…」
「…こうなったら時間が惜しい。表口から強行突破しよう。」
「うん…二人とも無事だといいんだけど…」
こうして少しでも時間を削るために3人は再び表口へと引き返した。
ロディ達は表口に戻るや否や入り口前にいた見張りの前に出た。
「なんだ、お前等は…」
「…正義の味方だよ。」
『ドグッ!!』
刹那、見張りの一人を殴り倒し戦闘不能にし同時にもう一人の見張りも叩き伏せた。
「…何だかロディ…別人だね。」
「…時間を取られれば取られるほど二人が危ないんだ…
こんな奴等に時間はかけられないよ。」
「それなら早く行くぞ、まだここは入り口なんだからな。」
「うん…行こう。」
そして3人は足早に砦の中に入っていった……
一方…盗賊に捕まったマリオス達はというと…
手をロープで縛られ、何やら広い部屋に連れてこられていた。
「おかしら、こいつらが砦の回りをうろついていた奴等の仲間です。」
「よくやった…」
手下にそう言われおかしらと呼ばれた男が二人の方に向き直った…
「………」
「な…なに?」
男は二人の顔をじっと見た後深く溜息をついた。
「おい…お前こんなガキ捕まえてきてどうするつもりだったんだ!?」
「う…す、すんません…」
「ったくよ〜…こんなガキ捕まえてきても何の役にも立たないだろうが。」
「ガ…ガキって……」
「………」
二人は捕まった事よりも子供呼ばわりされた事に大きくショックを感じた。
「ちっ…こんな小娘捕まえたところで何の役にも…」
「……盗賊なんかに…盗賊なんかにそんな事言われたくないわ!」
あまりにも子供呼ばわりする男の言葉にきれマリオスは思いっきりそう叫んだ。
「盗賊…だと?」
マリオスのその言葉に反応し男はマリオスに歩み寄ってきた。
「何よ、盗賊を盗賊と言って何が悪いの。」
「俺達は盗賊なんかじゃねぇ!俺達は誇り高い義賊だ!!」
「義賊…?」
「そうよ!悪徳商人や汚い高利貸し…そんな奴等から金を奪い、
貧しい奴等に恵み与える…それが俺達シルバー・ウルフよ!!」
「………」
二人はそんな男の主張を黙って聞いていた。
「へへ…どうよ、感心しすぎて声も出ないか?」
「……いいえ、その逆です。」
ルフィミアはきびすを返し男にそう言い放った。
「な、なんだと!」
「いくらあなたがそんな言葉で取り繕っても…
あなた達がやってる事は盗賊のそれと変わりはありません!」
「な……お、俺達が盗んでいるのは元々奴等が罪無き人間から奪ったもの、
それを回収し配って歩く事の何処が盗賊と同じなんだ!!」
「…人から…物を奪うというところです。」
「…っ!?」
「お願いです…もうこんな事はやめて下さい。そんな事しても誰も喜んではくれないんです!」
「…クローディア……」
ルフィミアのそんな叫びに男はそんな事を呟き漏らしていた…
「え…?」
「……おい…こいつら地下にぶち込んどけ…」
「へい…おい、立ちなお嬢ちゃん達。」
「…………ない…から…」
「ん?何か言ったか?」
「もう…これ以上ロディに迷惑はかけられないから!」
そんな叫びと共にマリオスの手には光の槍が姿を見せた。
「なっ!?」
そして瞬時に自分の手を縛っていたロープを断ち切るのと同時に槍の一閃で盗賊を弾き飛ばした。
「ぐっ…貴様!」
驚き戸惑う頭領をよそにマリオスはルフィミアを拘束していたロープをも断ちきった。
「大丈夫、ルフィミア?」
「えぇ…ありがとう、マリオス。」
「…ルフィミア…私達だけだけど頑張ろう。
この人は…このままにはしておけないから…」
「はい…ロディにも迷惑をかけてしまいましたから。」
そう言いルフィミアも自分愛用のロッドを取りだし構えた。
「…嬢ちゃん達よ…俺をなめるなよ。」
男はそれだけ冷たく言い放つと部屋の傍らにあった長槍を握り締めた。
「行くよ…ルフィミア…」「…えぇ…」
二人は静かに男と対峙するのだった……
その頃、砦に侵入したロディ達は…
「う〜ん…侵入したはいいけど…二人は何処にいると思う?」
「そうだね…ここの親玉の所なら2階のどこか…それとも地下牢に入れられてるかだね。」
「ここって…そんな物まであるの?」
「あると思うよ。何しろここは古いって言っても元は砦だったんだし…」
「上か…下か…ジェントはどっちだと思う?」
「さぁな…そこの奴に聞いてみればいいだろ。」
「ちぃっ!」
そんな舌打ち声と共に柱の影から男が飛びかかって来た。
「…遅い…」
『ドゴッ!』
しかしジェントはその男の一撃を難なく避け剣の柄で当身をおみまいした。
「ジェ…ジェント…よく分かったね、こいつがそこにいるって。」
「エルフは人間よりも聴覚に優れてるからね。」
「…ふん、そんな事はどうでもいいが…
おいお前。起きろ…気絶しない程度に手加減したんだからな。」
「ぐっ…」
「案内してもらおうか…お前達が連れ去った女の所に。」
そう言いジェントは男に抜き身の剣をつきつけた。
「う……わ、分かった…」
その行為にどうする事もできず男はロディ達を案内し始めたのだった…
男に案内されロディ達は一路地下へと足を進めていた。
「こ…ここだ。」
そう言い男はドアの前を指差した。
「そうか…なら、まずお前から入ってもらおうか。
閉じ込められたら元も子もないからな。」
「うっ…わ、分かった…」
男は残念そうな顔をしながらゆっくりとドアを開け中に入った行った。
「くっ!」『ダッ!』
瞬間、男は全力でジェントの手を振り切り部屋の中に逃げ込んだ。
「なっ!?待ちやがれ!!」
ロディ達はそれを慌てて追いかけ始めた。
…しばらく走ったかと思うと前を走っていた男は不意にその場に立ち止まってしまった。
「はぁ…はぁ…どうした、もう逃げないのかい?」
レイにそう尋ねられた男はゆっくりレイ達の方に振り返ると冷たい笑みを浮かべていた。
「…もう逃げる必要はない…野郎共っ!!」
男のそんな叫びと共に部屋に隠れていた盗賊達がロディ達を取り囲んでいた。
「くっ、しまった!!」
「ジェント…今回は何も感じなかったのかい?」
「…いや…俺としたことが走るのに夢中になってしまっていた…」
「あ…そう…」
「へへへ…やれぇ〜!!」
そんな男の合図と共にロディ達を囲んでいた盗賊達が一辺に襲いかかってくる。
「はぁっ!」
『ヒュヒュヒュヒュッ!!』
ロディ達に無数のダガーが飛んで来るが…
「エルフの矢のスピードに比べればこんな物っ!!」
ロディによって全て弾き返され…
「くらえっ、ウインド!」
「がはっ!」「ぐふっ…」
「てやっ!」
「がぁぁ…」
ジェントの呪文…レイの剣の前に次々に倒れて行き…
数分と経たない内にロディ達を囲んでいた盗賊達は全滅していた。
「あ…う、嘘だろ…」
「さて…もう終わりか?」
「ひ…ひぃぃぃ〜……」
ジェントのそんな脅しに負けた男は部屋の更に奥に逃げていった。
「ちぃ…また追いかけっこか。」
「早く追おう、彼にはまだ案内してもらわないと行けないんだから。」
レイのそんな言葉に賛同した一同は男を追いかけ部屋の奥へと入っていった…
「ハァ…ハァ…ハァ…」
ロディ達が男の後を追いかけていると部屋の奥に男がいるのを発見した。
「あそこか…」
ロディ達は男の側に近寄っていくが…
「く、くるなっ!来たらこいつを殺すぞ!」
男は一人ではなく自分の小脇に獣人の女の子を連れていた。
「ふみっ…」
男にナイフをつきつけられ女の子はただ怯え戸惑っていた。
「おいおい…やけになんなって。」
「うるさいっ!…近付くなよ…近付くとこいつが死ぬ事になるぞ。」
「こいつ…ここまで外道だったのか。」
「へへ…外道だろうと勝てばいいんだよ。」
「………」
「分かったら剣を置いて手を上に上げろ。」
「……あいにくだが…俺はお前のような奴が一番嫌いなんだよ!!」
そう言い放ちジェントは地面を蹴ると真っ直ぐ男に向かっていった。
「く…くっそ〜!!」
ジェントのそんな行為に驚きナイフを握る手に力をこめつきたてようとした刹那!
「アロー・ストラッシュ!!」
『ゴォゥッ!』
ロディが放った衝撃波は女の子に当たるかどうかのところで男のナイフだけを断ち切った。
「なっ!?」
「だりゃっ!」
驚いたのもつかの間次の瞬間には男はジェントに蹴り飛ばされ壁に叩きつけられていた。
「ふぅ…間に合ってよかったよ。」
「ふん…余計なことを…」
「いや…ロディもだけどさすがだねジェント。いい踏み込みだったよ。」
「…俺はただ、あいつみたいに異種族を人間扱いしない奴が嫌いなだけだ…
あいつにはそれ相応の報いをお見舞いした…それだけだ…」
「ふみぃ……」
獣人の女の子は耳をぴくぴくさせながらそんなジェントをじっと見ていた。
「…お前…立てるか?怪我はしてない様だが…」
「ふみ…」
ジェントにそう言われ女の子は立ち上がって見せた。
「立てるみたいだな…それなら問題ないか。」
「…ねぇ…この猫…人間に似てない?」
「えっ?」「なっ…」
ロディのそんな呟きに二人は酷く驚いた。
「えっ?やっぱり猫なの?」
「ロディ…この子が本当に猫に見える?」
「え?…だって猫の尻尾に…耳だってあるし…」
「ロディ…獣人って知ってる?」
「獣人……あっ!この子、獣人なんだ。へぇ…はじめて見たよ。
見れば見るほど猫に似てるけど…これが獣人なんだ。」
「ふみぃ〜!セアラ猫じゃないもん!!」
「しゃ、しゃべった!?」
そんな女の子の主張にロディは驚き戸惑うことしか出来なかった。
「ロディ…ほんとにわかんなかったんだ…」
「え〜と…セアラ…だっけ?君はどうしてここに…」
「あのですね、セアラは悪い人達に捕まってしまったのです。」
「いや…それは分かってるんだけど…何で捕まったんだい?」
「それは…じつはセアラ、森の外が見たくなって森を抜け出したんです。」
「森の外…それって獣人の国『ハバリア』の事だよね?」
「そうです。それで…外の世界を見て回っていたら…変な人達がやってきて…
『こいつは良い見世物になる』ってセアラに襲いかかってきたんです。
セアラ…一生懸命戦ったんですけど…セアラ…」
「ふん…やはり人間なんてその程度の…」
「ついつい、ちょうちょに気を取られて追い掛け回してたらその人達に捕まってしまったんです。」
「ち…ちょうちょ…ね…」
「でも…シルバーウルフがこんな事…聞いてた話とちょっとギャップが…」
「何を言ってるんだ。所詮は盗賊団だろう?それぐらいやって当然だろう。」
「それは違いますよ。」
「えっ…どういう事だい?」
セアラのそんな発言にビックリして顔を見合わせた。
「えっとですね…しるばーうるふはセアラを助けてくれたんです。」
「シルバーウルフが…君を?」
「はいです。セアラを捕まえた人達はここの人達ではない人達です。
セアラはちょっと前にここに連れてこられたんです。」
「ちょっと前…それってローレイから来たって事?」
「それは知らないけど…ここのおかしらさんは
セアラは今度ハバリアの近くに行ったら帰してやるぞって言ってました。」
「そんな事が…それじゃあこの子…どうしようか?」
「う〜ん…一緒に連れていくには危険だし…」
「大丈夫です!セアラもちゃんと戦えます。」
「た、戦うって…」
「セアラは獣人の中でも『猫闘技』をつかったら一番なんですよ。」
「ね…猫闘技……ま、一緒に居た方が安全かな…」
「そのと〜りです。セアラ一緒に行くです。」
「そっか…僕はロディ。ロディ=シェルウィザード、よろしくね。」
「僕の名前はレイ=クラウディア。レイで良いよ。」
「ふん…ジェント…ジェント=バートンだ。」
「ロディちゃんにレイちゃんにジェントちゃんですね。
セアラはセアラ=ルーティスです。よろしくです。」
「うん、よろしくね。」
そう自己紹介を交わした一行だったが、セアラはじっとジェントの顔を見ていた。
「…な、なんだ…」
「ジェントちゃん、さっきは助けてくれてありがとです。」
「なっ…なっ…」
そんな事を笑顔で言ってきたセアラにジェントは面くらい戸惑う。
「か…勘違いするな。俺はただ…目の前に居た気に食わない奴をのしただけで、
別にお前の為って訳じゃなくてだな…」
「ふみぃ…」
戸惑いながらも弁解するジェントの頭に自分の顔を乗せセアラがジェントにじゃれつく。
「…おい、はなれろ…」
「いやです〜…」
必死にセアラをはがそうとするが中々セアラは離れようとはせず、
その光景はさながら犬にじゃれつく猫…と言ったところだった。
「ジェント…すごいのになつかれたね。」
「…だまれ…」
「だけど…早く二人を探さないとね。結局地下じゃなかったみたいだから…」
「そうだね、後は…やっぱり上の階しかないね。」
レイのその言葉に賛同した一同は地下を後にし二人の捜索を再開するのだった…
一方…マリオス達は…
「へへ…どうした、もう終わりかい?」
「くぅ…やっぱり、私達だけじゃ無理…なのかな…」
善戦はしたが力の差は歴然で男の前に膝をついていた。
「…ル、ルフィミア…大丈夫?」
「は、はい…まだ…戦えます…」
「おいおい…もうやめとけ、勝負はついてるだろ。」
「まだ…まだです。あなたに…盗賊行為が間違ってると分かってもらうまでは…諦めません!」
「ルフィミア、援護して!」
そんな叫びと共にマリオスは光の槍を握り締め男に突撃して行く。
「はい、…メガ・ウォーター!」
『グォォォォッ!』
そんなうねりと共にルフィミアの手から発せられたそれは激流となり男に向かっていくが…
「ふん…ブレイク・スマッシュ!!」
男の凄まじい振り下ろしの前に呪文が霧散する。
「そんな!?」
「でやっ!」
『ドガッ!!』
目の前の光景に気を取られたマリオスは払いの一撃で弾き飛ばされた。
「マリオス!」
「…これで分かったろ、もう…止めるんだ。」
「まだ……まだ私は…」
床にへたり込みながらもマリオスは槍を作り出そうとするが…
『ジ…ジジ…』
それは形にならなかった。
「そんな…力が…」
「……気は進まんが…少しばかり眠っててもらうぞ。」
槍を床に刺し男はその腕をゆっくりと振りかぶる。
「…ごめんね…ロディ…」
そんな呟きと共に男の手が振り下ろされた…
……が。
『ゴォォォォッ……ドガッ!!』
突然凄まじい衝撃波が巻き起こり男を吹き飛ばしていた。
「はぁ…はぁ…ま、間に合ったみたいだね。」
「ロ…ロディ…」
そう、先ほどの突然の衝撃波はロディが放ったものだったのだ。
「大丈夫二人とも?…今、治してあげるから…」
レイは二人に駆け寄ると早々とヒーリングを唱えた。
「う…ありがとう、レイ。」
「…体に随分楽になりました。」
「…ふみぃ…この人達誰ですか?」
そんなやり取りをしていた3人に割って入るようにセアラが顔を出した。
「あれ…その子はどうしたんですか?」
「あぁ、この子は地下に捕まってたんで一緒に連れてきたんだ。」
「私、セアラ=ルーティスです。よろしくです。」
「セアラね。私はマリオス=シルフィースよ。」
「わ、私…ルフィミア=クリステンセンです…よろしく。」
「うん、よろしくですお姉ちゃん。」
「くっ…中々やってくれるじゃないかよ…」
そんな和やかな雰囲気を壊すかのように瓦礫の中から男が這い出てきた。
「そんなっ!確かに直撃したはずなのに…」
「ふっ…確かに普通なら直撃してただろうがとっさに気付いた俺はこの槍でそれを受け流してやったのさ。」
「そうか…でも、それはこっちにとっても都合がよかったね。」
「そうだね…あなたがここの頭領さんですよね?」
「そうとも。おれがシルバーウルフ頭領…カイン=エルロンよ。」
「それなら話しは早い…カインさん、もう終わりにしてください。」
「…なんだと?」
「シルバーウルフはもう終わりです。もう…盗賊なんて愚かな行為はやめてください。」
「ふん…ボウズまで何言ってやがんだか…」
「どんなに良いことをしたって…悪い事をして得たお金じゃあ誰も幸せなんかになれないんですよ!」
「………」
ロディの必死の言葉にカインはじっと黙っていたが…
「…なぁ、ボウズ。盗賊の頭である俺が今更盗賊をやめて…
過去の罪が許されると思うか?」
そんな事を尋ねてきた。
「…罪は…許されない…けれど、
その罪を償う事はいくらだって出来ると思う。」
「……そうか…ボウズはそう思うんだな…」
「はい。」
そう言い切るロディの目は全く曇りのない澄んだ瞳だった。
「…ボウズ、一つ俺と賭けをしないか?」
「賭け?…どんな賭けですか。」
「俺と勝負しろ。ボウズが勝ったら俺は盗賊をやめる。
俺が勝ったらボウズは俺の仲間になれ。…どうだ?」
カインはそんなとんでもない事を突然言い出してきた。
「なっ!…そんな無茶な賭け誰が…」
「………」
反論しようとしたレイをロディは静かに制した。
「…本当に盗賊をやめてくれるんですか?」
「…あぁ、男に二言は無い!」
「分かった、その勝負受けるよ。」
そう答えるとロディは剣を抜き構えた。
「なっ…何を言ってるのロディ!?この人がそんなに簡単に盗賊をやめると思ってるの?」
「……分からない…だけど、出来るだけ信じてみたいんだ…」
「へへへ…言うじゃないか。」
「…みんなは下がってて…僕を信じて…」
そんなロディの言葉に負け5人は少し二人から距離を置いた…
「………」「………」
二人の間に長い沈黙が訪れる。
「…ロディ…負けないで…」
『ダンッ!』
そんなマリオスの呟きを合図にするかのように二人はほぼ同時にけしかけた!
「でやっ!」「はぁぁっ!」
『ガキンッ!!』
お互いの武器が激しく競り合うが…
「たあっ!」
間髪いれずカインに蹴りこむ。
「ぐぅっ…」
「もらった!」
体勢の崩れたカインに追い撃ち剣を振り下ろす!
…が、
「あまいぜ…」
カインはその倒れ際に槍の柄を返しロディに向けていた。
「なッ…」『ドグッ!』
それを避ける事は敵わず下腹部にまともに受けてしまった。
その隙に体勢を立て直されてしまい、ロディもまたそれに対峙しあう。
(く……この人…強い…だけど、負けられない!)
(このボウズ…あなどれねぇ…)
「この勝負…どうなるのかな?」
「分からない…二人とも…強い。」
手を出すなと言われた以上、レイ達にはその状況を見守る事しか出来なかった。
「はぁ…はぁ…おい、ボウズ!」
「…何ですか?」
「ボウズはよ…何故国の軍なんかに入った?
…国なんて物は何もしてくれない…そんなものの為に働き…ボウズは何を得るんだ。」
「…別に…ミロワの為に働くんじゃない。
僕の友達の…レイの父さんの仇を討つため…
そして、こんな意味の無い戦いが続く世界を終わらせたいだけだ!!」
「ふ…ははははは!言うじゃないか、ボウズ。
ボウズにこの世界を変える事が出来るとでも思ってるのか?」
「そんなのやってみないと分からない!
それを信じたからこそ…今、僕は戦ってるんだ!!」
「なるほど…おもしれぇ。それでこそ本気で戦う価値があるってもんだぜ!」
「僕も…そんな気がします…」
静かに…だが、素早く詰め寄り上段からの一撃。
『ガキィッ!』
だがカインに難なく受け止められる。
「ボウズ…槍にはよ、こんな使い方もあるんだぜ!」
ロディの剣を受け流す様に滑らせ、柄の一撃をロディに放つ。
「甘いです。」
しかしロディはその滑りを利用しその一撃よりも早く自分の肘を叩き込み素早く飛びのく。
「がはっ…や、やるじゃないか…」
「あなたも…さすがですね…」
それだけ言うと二人の間に再び長い沈黙がやって来た。
「ロディ…」
「……この勝負…次に一撃で終わるぞ…」
「えっ…」
ジェントのそんな言葉にロディの勝利を祈っていたルフィミアが見たもの…それは…
お互いにふと笑いをこぼしたかと思うとけしかけていく二人の姿だった。
「これで…ブレイク・スラッシュ!」
「終わりだ!スパイラル・チャージ!!」
ロディの横薙ぎの一撃とカインのひねりを加えた突きの一撃。
その二つが激しくぶつかり合い…
『ザシュ!……』
そんな音だけが部屋中に響き渡った…
「……くはっ!」
全員が息を飲み見守る中そんな声と共にロディは口から血を吐き膝を付く。
「ロディ!」
「…へへへ…ボウズ…お、おまえ…つえぇじゃ…ないか…」
ロディの元に駆け寄ろうとした瞬間カインはそれだけ言うとその場に倒れた。
「ロディ…ロディが勝った!」
「カインさん…何故あなたは…」
さっきの一撃…あの時のカインの一撃には殺気が無かった…
何故そんな事を…だが、ロディがいくら考えてもその答えは出てこなかった。
「……ちゃん…お兄…」
「う……クロー…ディア…なのか?」
「お兄…ちゃん…」
「クローディア!待て、クローディア!」
「クローディア!!」
「きゃっ」
そんな事を叫びながら起き上がったカインの目の前には驚きの表情のルフィミアがいた。
「カインさん、気が付きました?」
「…ここは…お前、俺の治療を…」
「よかった…ルフィミア、ありがと。」
「いえ…こんな事ぐらい…」
「それじゃあ、ロディ。そろそろ行こうか?」
「そうだね…カインさんも気が付いたことだし…」
「セアラ。あなたも一緒に来る?」
「うん!セアラ、ジェントちゃんと一緒に行く!」
「…くっつくな。」
「ははは…それじゃあ、カインさん。僕達は行きますね。」
それだけ言い部屋を後にしようとした時、
「待ちな、ボウズ。」
カインがそう呼びとめてきた。
「…何ですか?」
「…ボウズ俺の事はこのままで良いのか?
捕まえて牢にでもぶち込んでおかないと、約束を破るかもしれないぞ。」
「……それはないと思います。」
「なに…」
「大丈夫です、あなたはそんな事はしない…
それに信じてますよ、カインさん。…あなたを…」
「信じる…この俺をか……ふ…ははははは!
気に入ったぜボウズ、お前の名は?」
「ロディ。ロディ=シェルウィザードです。」
「……また、会えるといいな。」
「えぇ…でも会えますよ、きっと…」
そう言い残すとロディ達はその部屋を後にした。
「…ロディ…シェルウィザード…か。あんな奴…まだこの世界にいたんだな…」
何をするわけでもなくその場に仰向けになりじっと天上を見つめる。
「クローディア……すまねぇ……」
そんなカインの呟きは天井に吸い込まれていくだけだった……