第12章『黒の牙と空の騎士』

 

男を破り教会を無事に脱出したロディ達だったが…

 

「そこまでだ。大人しく捕まって貰おうか。」

 

外に出た瞬間大勢の神殿騎士に囲まれていた。

 

「そんな!?…何故こんなにも対応が早いんだ…」

 

「ふ…貴様達がもぐりこんでいたことは始めから分かっていた。

 

 お前達はわれわれの手の上で踊っていたんだよ。」

 

「くっ…だけど…ここを抜けさせてもらう!」

 

そう言いレイが剣を抜くとそれに続く様に他の全員も構え出した。

 

「ほぅ、面白い。この神殿騎士筆頭頭ウィーグランの剣から逃げられると思うなよ。」

 

「フン…吠えるな。」

 

「ふっ…かかれっ!!」

 

ウィーグランのその叫びと共に神殿騎士たちは一斉に襲いかかってきた…

 

 

「行くよ、ジェント。」「言われるまでもない!」

 

ロディとジェントは神殿騎士の団体に飛び込み辺り構わず斬りかかってゆく。

 

二人の早き剣に追いつけずどんどんとその数を減らされていった。

 

「行きます…メガ・ウォーター!」『ドォゥッ!』

 

ルフィミアが水の呪文を放った瞬間、

 

「今だっ!ギガ・ボルト!」

 

レイが続けざまに雷の雨を降らせた。

 

「ぐあっ!」「うがっ…」

 

避けることも出来ず電撃により神殿騎士たちがその場に屈していった。

 

「ふぅ…これなら…」

 

『ガシッ!!』

 

そう溜息をつきレイが気を抜いた瞬間何かが足にしがみついてきた。

 

「今だ、やれぇーー!」

 

その叫びと共に2人の神殿騎士がレイへと飛びかかる。

 

「くっ…!?」

 

足には先程倒れた男、そして正面も塞がれた。

 

「レイ!!」

 

「……っ!?」

 

レイはただ何もせず呆然と立っているだけだったが…

 

「何を迷ってる!ためらわず斬れっ!!」

 

「えっ……くっ!」

 

ジェントのそんな怒声に気押され正面の二人を斬り捨てた。

 

「でやっ!」『ザスッ…』

 

そして足を掴んでいた男をも斬った。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

「レイ。」

 

『ガッ!』

 

息を切らせ動揺していたレイの胸倉をジェントが掴み上げた。

 

「レイ!…貴様、何をためらっていた!」

 

「………」

 

「あそこで斬らなければお前が死んでいたんだぞ!!」

 

「…なんで…」

 

「何?」

 

「あの人は…もう動けなかった…なのに、なんでそんな人を斬らなくちゃいけないんだ…」

 

「ふざけるなっ!これは殺し合いだ。…戦う気がないのなら始めからついて来るんじゃない!!」

 

「………」

 

そんなジェントの叱責にレイは言葉を失ってしまった。

 

「…ちっ…勝手にしろ!」

 

そう言い放つとジェントは再び戦いのさなかに戻っていった。

 

 

数分後…ロディ達は圧倒的な数の差に押され追い詰められていた。

 

「ハァ…ハァ…ジェ、ジェント…大丈夫?」

 

「くっ…あぁ…まだ、いける…」

 

「ロディ…私も…まだ…」

 

「私だって…頑張れます。」

 

「う〜…セアラも…」

 

そう強気に振舞う全員だったがその息は途切れ途切れで誰もが疲労の表情だった。

 

「………」

 

ただ一人レイだけはそんな全員の後ろで立ち尽くしているだけだった。

 

「ふん…よくここまで戦ったものだな…だが、ここまでのようだな。」

 

そう言いながらも1歩…また1歩と間合いを詰めてくる。

 

「僕に…もっと力があれば…」

 

「やれぇーーー!」

 

『シィギャーー!』

 

ウィーグランのそんな指示と共にけたたましい声が鳴り響いた。

 

「!?」

 

「な、なんだ!?」

 

その場にいた全員が戸惑っていた次の瞬間、上空から1匹のドラゴンが降下してきた。

 

「ド、ドラゴンだと!?」

 

『ゴォォォッ!!』

 

そして地上に接近するや否や炎を撒き散らし再び上空に逃げてゆく。

 

「ぐぅぅ…小賢しい!」

 

「ま、また来ます!!」

 

『グォォォォッ…シャッ!!』

 

今度は先程と同じような炎と共に鋭利な刃物も同時に飛んできた。

 

突然の出来事に対処できず神殿騎士たちは次々に倒れて行く。

 

「くっ…この剣技…まさか…」

 

「そう…ウィンディア竜騎士、システィ=ウィンディア見参!!」

 

「ド…ドラゴンナイツだと。しかし…お前達は確かにあの時我らが…」

 

「そう…あの時ウィンディアはお前達に滅ぼされた…

 

 でも、わたしだけはフリードと共に逃がされていたのさ…あんた達を倒すためにね!」

 

「ふん…ならばお前を殺し根絶やしにしてくれるわ!!」

 

『シャシャシャシャシャ!!』

 

システィに凄まじい数の矢が放たれるが…

 

「フリード!」「キシャーー!」

 

矢が届くよりも早く上空に飛びそれをかわした。

 

「おのれ…こしゃくなっ!」

 

「あれが…ドラゴン…ナイツ…」

 

突然のそんな出来事にロディ達はその光景をじっと見つめていたのだった…

 

 

「てやぁっー!」

 

システィのその特殊な剣技は相手の反撃を許さず神殿騎士たちを切り裂いてゆく。

 

「おのれ…魔法部隊!やれーーー!!」

 

「ライトニング・ボルト!」「ウインド。」「バースト!」

 

「甘いよっ!」

 

再び上空に逃げその呪文をかわす…が、

 

「そうでもないぞ…今だ!射てーー!!」

 

「!?」

 

『シャシャシャ!!』

 

回避行動を取った直後のため動きが鈍り何本かの矢がフリードの翼を貫いた。

 

「フリード!」

 

「グ…グォォォ…」

 

『ドガァァッ!』

 

翼をやられたフリードはバランスを崩し地上へと落下してしまった。

 

「フリード!…大丈夫…?」

 

「グゥ…グォォ…」

 

「ふふふ…竜騎士も竜から降りれば惨めなものだな。」

 

「…そうでもないわよ…なんなら受けてみる?

 

 滅び失われたはずのウィンディア飛翔剣を。」

 

「ふん…残念だが遠慮させてもらうよ。」

 

『ギリリリ…』

 

ウィーグランのそんな声と共に再び弓兵隊が矢をシスティに向ける。

 

「くっ…」

 

システィは強がって剣を握り締めたものの先程打ちつけた左手がずきずきと痛む。

 

「ロディ。このままじゃあの人…」

 

「あぁ…助けないと!」

 

「…射てーー!!」

 

ロディ達が動き出すよりも早く弓兵隊の矢は放たれていた…

 

 

「くっ…ダメ…手に力が…」

 

剣を握るが力は入らず矢を弾く事も出来そうにもない。

 

「ゴメン…フリード……」

 

全てを悟り力を抜き目を閉じようとした次の瞬間、

 

『カキィン!キィン、カン!』

 

システィの目の前で自分に向けられた矢が全て弾き落とされた。

 

「これ以上…僕の前で無駄に命を散らせはしない!!」

 

システィを助けたのは他でもないレイだった。

 

「大丈夫ですかシスティさん。」

 

レイに遅れロディ達もシスティの元に駆け寄ってきた。

 

「あ…あんた達は?」

 

「僕はミロワのロディ。助けてくれてありがとうございました、システィさん。」

 

「いや…あたしもそこの人に助けてもらったし…お互い様さ。

 

 それと、さん付けは止めてよ。…そんながらじゃないんだ。」

 

「…分かりました。ルフィミア、飛竜の治療を。」

 

「は、はい。」

 

ロディに言われルフィミアは飛竜にゆっくりと近付いていった。

 

「グルルル…」

 

「じっとしててね…すぐ終わるから…ヒーリング。」『ボゥ……』

 

「それにしても…さすがだねレイ。あの間合いを一瞬で詰めるなんて…」

 

「そんな事ないよ…」

 

「………」

 

システィは痛みも忘れレイの顔をじっと見ていた。

 

「…?あぁ、自己紹介がまだだったね、僕はレイ=クラウディア…よろしく、システィ。」

 

「……レイ……」

 

「システィ?…どうしたの、僕の顔に何かついてる?」

 

「えっ…?いや…なんでも…」

 

レイにそう指摘され腕をぶんぶんと振り否定するシスティの腕から一筋の血が流れた。

 

「システィ、君も怪我してるじゃないか。」

 

「えっ…こ、このぐらい…なんとも…」

 

「ダメだよ、ほら…」

 

「あっ…」

 

そう言いレイはシスティの腕を取った。

 

「…ヒーリング…」

 

嫌がるシスティをおしきりレイは治療を始めた。

 

「……暖かいな…」

 

そんな光景にシスティの口からはそんな呟きが漏れ出していた…

 

 

「ふん…ただ寄せ集まっただけで何が出来るんだ?

 

 どちらにしろもう終わりなんだよ。」

 

「ルフィミア、飛竜の治療は…」

 

「大丈夫です、もう終わりました。」

 

「ロディ…こちらも終わったよ。」

 

「よし…僕に一つだけ打開策があるんだ。」

 

「打開策だと?」

 

「うん…あのね…」

 

ロディは全員を集めると耳打ちをした。

 

「…なるほど…それなら何とかなりそうだな。」

 

「分かった、頑張るよ。」

 

「お喋りは終わったか?もう終わりにしようじゃないか。」

 

ウィーグランが神殿騎士たちを従えながらじりじりと間を詰めてきた。

 

「……行くよっ!アロー・ストラッシュ!!」

 

「精霊さん、力を貸して。アシッド・ボム!」

 

「くらえ!エアスラッシュ!」

 

それぞれの放った技がぶつかり合い神殿騎士たちの中央で炸裂する!

 

「グォォ…小癪なっ!」

 

「フリード!」『キシャー!』

 

その刹那フリードは宙へと舞い上空から炎を撒き散らす。

 

「私も…ホーリー・バースト。」

 

フリードの炎に乗じルフィミアの白き炎が辺りを包む。

 

「このままでは…散れ!まとまるんじゃない!」

 

まとまっていると狙い撃ちにされるためそれを避けるために散らばるが…

 

「今だっ!」

 

その隙をつきロディ達は陣形の薄くなった所を崩しそれを突破する。

 

「なっ…に、にがすな。やつらを…」

 

『シャゲーー!!』

 

ロディ達を追おうと体勢を立て直そうとするがフリードの炎に阻まれ上手く動けずにいた。

 

その間にもロディ達は教会から逃げ出して行く。

 

「陣形など気にするな!追えるものはすぐに追撃しろーー!」

 

辺りはすっかり炎に包まれたため身動きを取れずにいたがそれでも十数人の騎士達が追撃に出たのだった。

 

 

「はぁ…はぁ…追撃は…振り切ったのかな?」

 

教会を脱出し走り続ける事数十分…

 

ロディ達は息を落ちつかせながら立ち止まった。

 

「…だ、大丈夫…なのかな?」

 

「…そうでもないみたいだぞ…」

 

「ふみ!?…この音…馬の蹄…」

 

セアラがそう呟いたと思ったらロディ達にも聞こえるくらいの蹄の音がしてきた。

 

「くっ…やっぱりそう簡単には見逃してはくれないみたいだね。」

 

臨戦体制を取り待ち構えて数秒…ロディ達の回りは騎兵たちに囲まれてしまった。

 

「我等から逃げられると思うな!これでおしまいにしてやるよ!」

 

「くっ…このままじゃ…」

 

「突撃ーー!!」

 

ロディ達に向かい騎兵達が馬を走らせたその時、

 

「おっと…そこまでにしてもらおうか。」

 

突然そんな声がした。

 

「なにっ!?」

 

突然の出来事に驚き声のした方に振り向くと、

 

そこには一人の男を筆頭に20人ばかりの黒き鎧に身を包んだ騎兵達がいた。

 

「そこにいるのは俺の大事な親友なんだ。お前達にくれてやるほど安い存在じゃないんでな。」

 

「え……」

 

月明りに照らされ明らかになったその男の顔はどこか見た事がある趣の…

 

「リカルド…リカルドなのかい?」

 

「覚えててくれたかレイ。」

 

リカルドと呼ばれた男はどこか嬉しそうに微笑みかけた。

 

「リカルド……まさかっ、ライナールのリカルド王…」

 

「まぁな…」

 

「それじゃあ…こいつ等は…『黒の牙』!!」

 

「ふっ……やれ。」

 

リカルドのそんな静かな命令と共に黒き鎧に身を包んだ男達は次々と神殿騎士達を蹴散らしてゆく。

 

『黒の牙』…

 

それはこの大陸の中でも特に屈強な兵士達の集まりで、大陸最強と勇名高かった。

 

そんな黒の牙の猛攻に神殿騎士達が全滅するのはあっというまだった…

 

「ふん…所詮はこの程度だったか…」

 

「リカルド…久しぶりだね。」

 

「…まぁな…お前が国を飛び出して以来か。」

 

「そうだね…でも、なんで君がここに?」

 

「今日は教会の呼び出しでな…」

 

「そうだったんだ…でも、助かったよ。ありがとう。」

 

「ふっ…今日はたまたま助けただけだ。

 

 もし戦場で敵同士として会えば…例えお前でも…俺の手で殺すぞ。」

 

「リ…リカルド。」

 

「おっと…俺はまだ用事が済んでないんだ、もう行くぞ。

 

 …レイ、戦場で会わない事を祈ってるぞ。」

 

それだけ言い残すとリカルドは再び黒の牙を引き連れ去っていった…

 

 

その日は追手の目をくらませると言う意味もかねてレミントンの近くの森の中で野宿をする事にした。

 

「…そう言えばシスティ、君はこれからどうするつもりなんだい?」

 

「あたしは…必ずレミントンだけは潰す!

 

 …あいつらだけは生かしてはおけない!」

 

「…システィ…何故そんなにレミントンにこだわるんだい?」

 

「…あいつらは…私の故郷、ウィンディアを滅ぼしたんだ。」

 

「レ、レミントンが!?そんな…教会は全ての国に平等の中立的立場なのに…」

 

「だけどこれは事実なんだ。レミントンが今やこの大陸で多くの支持を得ている事は知ってるだろう?」

 

「えぇ…確かに殆どの国がレミントンを支持しているはずです。」

 

「そう…ウィンディアは無信教国家だったんだ。

 

 そんなある日、レミントンの奴等がやってきてレミントンの教えをウィンディアでも広めたいと言ってきた。」

 

「…それで…どうなったんだい?」

 

「ウィンディア国王はそれに反対し拒否したんだ。…でもあいつ等は何度もやって来た。

 

 そんな事を繰り返している内にレミントンは痺れを切らし思い通りにならないウィンディアを攻撃しだしたんだ。」

 

「そ、そんな…ウィンディアは他の国と違い標高の高い山の上にある国のはず…

 

 ウィンディアがそんなに簡単に他国の侵入を許すなんて…」

 

「そうさ…だからあいつ等は宣教師に成りすまし神殿騎士達を送りこんできたのさ…

 

 内部から攻撃されたウィンディアが攻め落とされるのは時間の問題だったよ…」

 

「そ…そんな事を…この大陸にいる人は知らずにいるというのか…」

 

「あぁ…だから私はこの剣に、フリードに誓った!…必ずレミントンを打ち滅ぼすと!!」

 

システィは二対の剣を強く握り締めそう叫んだ。

 

「…システィ…それなら僕達と一緒に来ないかい?」

 

「えっ…」

 

「僕達は教会とは因縁はないけどその後ろにいる魔人達を倒さなければいけないんだ。

 

 だから…あいつ等とも戦う事になると思うから…」

 

「…ほんとに良いのかい?」

 

「もちろん、歓迎するよ。」

 

ロディはそう言い笑顔を浮かべながら手を差し出してきた。

 

「…それじゃあ…ウィンディア竜騎士システィ=ウィンディアよ。改めてよろしくね。」

 

システィは嬉しそうな笑顔でその手を握り返したのだった…

 

 

「そろそろ寝ようか?…僕らは交代で見張りを…」

 

「…!?まて、何かいるぞ。」

 

「え…?」

 

『……ザザザザザ!』

 

ジェントがそう言った次の瞬間草むらから人影が飛び出してきた。

 

「レミントンの奴等かっ!」

 

ジェントは瞬時に剣を抜きその影と対峙する。

 

「まっ、待って!ジェント。」

 

「ロディ?」

 

「その剣…見覚えがあるんだ…たしか…風間紫苑…さんですよね?」

 

「むっ…どうしてそれがしの名を…」

 

その人影が近付いてくるにつれ姿が明らかになってくるとそこには以前出会った袴姿の男の人がいた。

 

「やっぱり…紫苑さんだ。僕のこと覚えていますか?」

 

「…そなたは…ロディ…ロディ殿でござるか。」

 

「えへへ…覚えていてくれたんだ。」

 

『ズサササササ!!』

 

二人がそんなやり取りをしていると回りに無数の人影が降り立った。

 

「し、しまったでござる。」

 

「紫苑…ようやく追い詰めたわ…」

 

無数の人影の中から一人の女性が歩み出てきた。

 

「紫苑…この人達は…?」

 

「拙者に向けられた神からの追手でござるよ。」

 

「紫苑…今度こそ終わりにしましょう。」

 

「ま、待つでござる夕華!ロディ殿達は無関係…」

 

「問答無用!」

 

『バァッ!』

 

紫苑の言葉に耳を貸そうとせず夕華の命令に従い回りの人影たちはロディ達に向かってきた。

 

「紫苑!僕等も加勢するよ!」

 

「ロディ殿!?…すまないでござる…」

 

「行くよ!レイ、ジェント!!」

 

「分かった。」「…仕方がないか…」

 

「アローストラッシュ!」「スラムスラッシュ。」「くらえ…イグニードソード!」

 

「拙者も…割殺神命打!」

 

だが力の差は歴然だった…しのび達が全滅したのは一瞬の事だった。

 

「くっ…」

 

危険を感じた夕華はその場から逃げ去っていった。

 

「夕華、待つでござるよ!」

 

そんな夕華を追い紫苑も森の中を駆け出した。

 

「僕等も追うよ!」

 

そんな二人をロディ達も追いかけ始めた。

 

「…そう言えば紫苑、どうしてあの人に追われてるんだい?」

 

夕華を追い掛ける最中、ロディがそんな疑問をぶつけてきた。

 

「…拙者の国…神の国の主君…加賀宗孝殿の敵討ちのためでござるよ。」

 

「敵討ち…?なんでそんな事で同じ国の人間に…」

 

「2ヶ月前…宗孝殿が異形の魔人に殺されたのでござる…」

 

「異形の魔人!?」

 

「その為拙者は宗孝殿の無念を晴らすために国を抜け申した…

 

 しかし…拙者の国では国抜けは重罪…それで拙者は追われる身になったのでござるよ。」

 

「そうだったのか…それにしても…そんな所でもあいつ等は…」

 

「ロディ殿…もしかしてそやつの事を知っているのでござるか?」

 

「自信はないけど…多分僕達が追ってるやつらだと思う。」

 

「ロディ殿!お願いでござる、拙者もロディ達と一緒に戦わせてはくれないでござるか。」

 

「うん…僕からもお願いするよ。味方は多い方が心強いから。」

 

「かたじけないでござる…」

 

 

ロディ達がそんな事をしていたその頃…

 

「…よし…これで終わり…」

 

夕華は辺り一帯に足止めの為の罠を張り巡らせていた。

 

「…まだ…あいつ等は追って来てない……あら?」

 

ロディ達の姿を確認しようと辺りを見まわした時、自分の目の前に1匹の野ウサギがいるのを見つけた。

 

『…ミィ…』

 

野ウサギは飛び跳ねながら夕華に近付いていった。

 

「……か…」

 

『キィ?』

 

「かわい〜。」

 

そんなしぐさに堪らなくなり夕華は野ウサギを抱きしめた。

 

『ミッ…』

 

「ふわふわ…もこもこ…」

 

夕華はそんな事を言いながら野ウサギの体に顔をすりつける。

 

『ミィ!』

 

そんなしぐさに驚いたのか野ウサギは夕華の手から抜け出し森の中に逃げようとした。

 

「うさぎさん……って、そっちに行ったらダメ!!」

 

ウサギの逃げた方向…その方向には先程夕華がしかけた罠が…

 

「って…きゃあああ!!」

 

あせった夕華はその前にしかけていた自分の罠をうっかり忘れ逆さ吊りになってしまった。

 

「こっちか!?」

 

その瞬間運悪くロディ達が追いついてきた。

 

「…あれ…なんで宙にぶら下がってるの?」

 

「こ…これは…」

 

「あぁ!!…し、紫苑。く、来るなァッ!…あんたにこんな姿…見られたく…」

 

「…紫苑…どうする?」

 

「…ロディ殿…拙者に任せて欲しいでござる。」

 

「……うん、分かったよ。」

 

「かたじけない…」

 

ロディに一言そう断り紫苑は夕華に近付いていった……

 

 

『…クッ…』

 

シオンは刀のつばをぐっと指で押した。

 

「えっ…紫苑…」

 

『シャッ!!』

 

そして目にも止まらない早さで夕華の足を縛り付けていたロープを断ち切った。

 

「いたっ!」

 

「……夕華…もう止めるでござるよ。」

 

「くっ!…ふざけるな!!」

 

『ヒュッ…』

 

紫苑のそんな言葉に怒りを感じた夕華は腰の短刀を握り紫苑に斬りかかる。

 

『ガキィン!!』

 

紫苑は素早くそれに対応しその一撃を受けとめる。

 

「まだまだ〜!!」

 

夕華は一気にたたみ掛けるように連続して斬りかかるが、紫苑はそれらを全て紙一重でかわしてゆく。

 

「夕華!もう…やめるでござる。こんな事をしてもなんにもならんでござろうが?」

 

「紫苑…もう全部今更なんだよ…」

 

「夕華…?」

 

「紫苑の馬鹿!…なんで…なんで国を捨てたのよ…

 

 なんであたしを見捨ててどこかに行っちゃったのよ!!」

 

「夕華…拙者は…」

 

「あんたはいつもそう…一人で全部抱え込んで…

 

 回りのことなんか考えないで…あたしの気持ちなんか考えてないんだから!!」

 

「すまない…しかし、拙者は…どうしてもこの手で奴を…」

 

「あんたの性格ぐらい分かってる。…けど…残されたあたしはどうなるのよ!」

 

「拙者は…自分事に夕華を巻き込ませるわけには…」

 

「そんな…そんな事だから…わたしが…わたしがーー!!」

 

『ズバスッ!!』

 

夕華の悲痛な叫びと共に夕華の短刀は紫苑の腹部に深深と刺さっていた。

 

「えっ…!?紫苑…」

 

『ギュッ……』

 

そして紫苑は夕華を正面から抱きしめた。

 

「夕…華…すまなかったで…ござる…拙者の…身勝手で…夕華に…迷惑を……」

 

「紫苑……あたし…あたし…」

 

そこまで言うと紫苑は地面に力なく倒れこんでしまった。

 

「紫苑ッ!ルフィミア!早く紫苑を!!」

 

「は、はい。」

 

「僕も手伝うよ。」「わ、私も…」

 

ルフィミアに続きレイ、マリオスも紫苑に駆け寄り回復呪文をかけ始めた。

 

「わ…私は…」

 

「夕華さん…どうして紫苑と戦おうとするんですか!」

 

「えっ…」

 

「夕華さんは…紫苑の事を信頼してるんでしょ?」

 

「……う…え、えぇ…」

 

「それなら…なんで自分に嘘をつくんです!なんで自分の気持ちに正直になろうとしないんですか!!」

 

「わ…私は…忍び…だから…闇に生きる者…だから…任務は絶対…」

 

「忍びだからとか…任務だとかそんな事関係ないじゃないですか!!

 

 …その前に…あなたは一人の人間なんですしょ!!」

 

「うっ…あ…あぁ……わたし…は…」

 

ロディにそう責められ夕華は言葉に詰まってしまう。

 

「夕華さん…今からでも遅くはないんです…僕達に…紫苑に協力してくれませんか?」

 

「で…でも…私は…」

 

「夕華…拙者からも…お願いするでござる…」

 

そんな光景を見かねてか紫苑も痛む体をおしてそう語りかけた。

 

「………あ〜あ…これで私も…裏切り者か…」

 

「えっ…?」

 

「私…もう嘘をつかない。私は…紫苑と一緒に戦うよ。」

 

「夕華…かたじけない…」

 

 

…こうして新たに3人の仲間を加えロディ達はミロワへと帰還したのだった。

 

しかし…歴史の表舞台では後に大陸最大だと言われる戦争が幕を開けようとしていることをまだ誰も知る人はいなかった…

 

 

 

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