第19章『終結、過去との決別』

 

窓から差し込む眩しい朝日…

 

その朝日がロディの顔を照らしていく…

 

「う……う〜ん…」

 

その朝日の眩しさにロディはゆっくりと目を覚ました。

 

「…あ、あれ…?」

 

そして…その時初めて自分が置かれている状況に気が付いた。

 

自分のベットに寄り添うようにして眠るルフィミア、マリオス…その反対側のレイ。

 

部屋の机に屈している紫苑と夕華。

 

ベットの横の床にへたり込むように眠るジェント、その膝で寝息を立てているセアラ。

 

壁に寄り掛かりいびきをかいているカイン…そして椅子に座ったまま眠りに落ちていたシスティ…

 

全員がその部屋で眠りについていたのだった。

 

「……ルフィミア…ルフィミア…」

 

そんな状況にどう対処していいか分からず、ロディは取り敢えず一番近くにいたルフィミアを起こそうとした。

 

「う…うん…?」

 

ロディに揺すられねぼけ眼をこすり眼鏡を掛け直し自分を揺すったものを見た。

 

「おはよう、ルフィミア。」

 

「う…あ……ロ…ディ?…ロディー!」

 

「えっ!?」

 

ルフィミアはそれがロディだと分かった瞬間、力いっぱいロディに抱きついた。

 

「ロディ!ロディー!」

 

そして涙を目いっぱいに溜めながらそう繰り返していた…

 

 

「ロディ?…えっ!起きたのかい!?」

 

「レイ、おはよう。」

 

ルフィミアの声があまりにも大きく次々に目を覚ましていった。

 

「ロディ…ほんとにいい迷惑だったわよ。」

 

「ふみぃーロディーちゃーん!」

 

悪態をつくシスティ…抱きついてくるセアラ。

 

「ロディ殿、無事で何よりでござる。」

 

「ったく…世話が焼ける野郎だぜ。」

 

「ははっ…ごめんねジェント、紫苑。」

 

膝をつき頭を下げる紫苑に嬉しそうに文句を言うジェントと反応はそれぞれ異なってはいたが、

 

誰もが笑顔でロディの無事を喜んでいたのだが…マリオスは一人どうしていいか分からず、ぎくしゃくしていた。

 

「マリオス、どうかしたのかい?」

 

「え?」

 

ロディに突然声をかけられ慌てるマリオスだったが、意を決して口を開いた。

 

「そ…その…ご、ごめんなさい!ロディ!」

 

かと思うと突然頭を下げそう言い放った。

 

「???…どうかしたのかい?」

 

「だ…だって……その…私…ロディの事……槍で…」

 

どうやらロディが記憶を取り戻した際に自分の槍でロディを刺した事を謝っている様だったが、

 

「何を言ってるのかと思ったら…マリオスが一生懸命に立ち向かってくれたおかげで記憶が戻ったんだよ?

 

 感謝こそしたとしても怒ってなんかいないよ。」

 

ロディはそんなマリオスに笑顔でそう返した。

 

「……う……うん、ありがとう…」

 

ロディの言葉に涙を浮かべながらも、マリオスもまた笑顔で応えたのだった…

 

 

ロディが目を覚ました事はすぐに城中に知れ渡り、程なくしてロディ達はランドゥ達の元に呼ばれた。

 

ロディ達が向かった謁見の間にはランドゥを始めとしてミロワの4将軍…そしてハバリアの長ラグナまでもがいた。

 

「目を覚ましたばかりですまなかったな…ロディ君、体の方は大丈夫なのかい?」

 

「はい、おかげさまで…どうもご迷惑をかけました。」

 

そう言いながら深く礼をするロディをラグナは不思議そうな目で何度も眺めていた。

 

「お前が…ロディか…ふ〜む…」

 

「どうかしたですか、ラグナちゃん?」

 

「服の匂いではいまいち掴めんかったが…お前は不思議な匂いがする。

 

 人間に似ているが…人間ではないような匂いがする。」

 

ロディの周囲を見回しながら首を傾げるラグナ。

 

「そうでしょうね…僕は作られた人間ですから。」

 

そんなラグナに自分の正体を隠そうともせずロディは正直に話した。

 

「???……さっぱり分からん…まぁいいか、そんなに重要な事とも思えんしな。」

 

そんな驚愕の事実さえもラグナの前ではただの笑い話になってしまうのだから大したものだった…

 

 

「ところでランドゥ伯…本日は一体?それにラグナ様までもここにいるという事は…」

 

「うむ…パーシルが動こうとしているらしいのだ。」

 

「まさか…」

 

「そうだ。今度の戦いで全てを終わらせるつもりらしい…

 

 すでにそれに伴いライナールの軍も動き始めパーシルに集まりつつあるらしい…」

 

「そこで我等ミロワ軍とラグナ様率いるハバリア軍の総力を決しそれを打ち破るのです!」

 

ミロワ軍の軍師を務めるカルツがそう告げた。

 

「そこでレイ達には別働隊となって動いてもらう。

 

 お前達には二手に分かれてもらいパーシル、ライナールに潜入。

 

 そして我々が両軍をひきつけている間に城を落としてもらう。」

 

「そう!俺達が外で頑張り、お前達が中で頑張るんだ!!」

 

「以前と同じ作戦か…成功するのか?」

 

「終わらせなければならん…これ以上戦乱を長引かせるわけにはいかんのだ!」

 

「………」

 

ランドゥの言葉をレイ達は黙って受け止めていた。

 

「我々の出立は二日後の朝だ。お前達は今日一日体を休め、翌朝にはそれぞれの目的の場所に向かってもらう。」

 

「分かりました、失礼します。」

 

一礼し、レイ達は部屋を後にしたのだった…

 

 

謁見室を後にしたロディ達は中庭に集まっていた。

 

「これで…全てが終わるのか…」

 

「ふみぃ…ロディちゃん、何でそんなに悲しそうな顔するのですか?」

 

悲しそうな顔でそう呟いたロディにセアラがそう問い掛けた。

 

「セアラ、ロディは心配なのよ…セシリアさんと戦うのが…」

 

「…そう…だね。」

 

システィの答えに静かに頷く。

 

「それを言ったら僕もそうさ。ライナールには兄さん…それにリカルドもいる…」

 

ロディの頷きにレイもそう続いた。

 

「でも…戦うしかないのよね…この戦乱を終わらせる為には…」

 

「あぁ…僕たちは戦うしかないんだ。」

 

「ボウズ…それで、メンバー分けはどうするんだ?」

 

「ロディ、僕はライナールに行くよ。

 

 …リカルドは…僕が止めてみせる!」

 

「あ、あたしもレイについて行くよ。」

 

「私はパーシルに行きます。お父様を止めたい…」

 

全員が口々にそう言いロディは少し悩んだが…

 

「…分かった…ライナールにはレイ、システィ、ジェント、セアラ、カインが、

 

 残りの僕とルフィミア、マリオス、紫苑と夕華がパーシルに向かうことにする。」

 

「へへ…そうと決まれば今日はパーッと騒ごうぜ、この戦いの前祝としてよ!」

 

「それ賛成!今日ぐらい羽伸ばしたいー!!」

 

「いいね、行こうよ!」

 

「うん!!」

 

こうしてロディ達は町へと駆り出し束の間の休息を楽しむのだった。

 

…まるで…明日に迫ろうとしている現実から逃げるかのように…

 

 

楽しき宴のときは過ぎ、ロディは自室へと戻ってきた。

 

「みんなずいぶん飲んでたけど…大丈夫かな?」

 

ふと先程の宴会風景を思い出してしまう。

 

いつものように楽しそうに人に絡むカイン…それと一緒になって暴れるセアラ。

 

その二人とはうって変わって上品に酒をたしなむレイにシスティ。

 

絡み上戸の夕華にそれに困った様子の紫苑。

 

「みんな楽しそうに飲んでたからな〜…」

 

その先は口に出したくは無かった…

 

『明日で全ての決着がつく』

 

誰もが口にしなかった事実…

 

自分だって考えたくも無い。

 

「僕は…お姉ちゃんと戦うかもしれ…」

 

『コンコン…』

 

そう呟き漏らしたとき、不意にドアをノックする音が聞こえた。

 

「あの…ロディ、まだ起きていますか?」

 

「…その声はルフィミア?どうかしたのかい。」

 

「えと…少し…お話したいことがあって…」

 

「はなし?とりあえず、鍵は開いてるから入ってきてもいいよ。」

 

「はい…失礼しますね。」

 

そうことわりルフィミアがゆっくりとドアを開け入ってきた。

 

なぜか手にはワインとグラスを二つ抱えてはいたが…

 

「ルフィミア…そのワインは…?」

 

「これ、パーシルのお酒なんですけど…わたしが好きな銘柄で…

 

 よかったらロディと一緒にどうかなって…」

 

「どうかなって…ルフィミアさっきもお酒飲んでなかったのに…

 

 お酒嫌いじゃなかったの?」

 

「嫌いではないんです…ただあまり強くは無いから…

 

 たしなむ程度にしか飲めないんです。」

 

「そっか…それじゃあ頂くよ。」

 

「はい。」

 

そう言うとルフィミアは嬉しそうにコルクを抜きグラスにワインを注ぎ始めた。

 

「はい、お口に合えばいいんですけど…」

 

「ありがと。」

 

ルフィミアから受け取ったワインはほのかな葡萄のにおいが漂う綺麗な深紅のワイン…

 

「ロディ、乾杯…しませんか。」

 

「うん、いいね。それじゃあ…」

 

『乾杯!』

 

チーンと鳴るグラスの中のワインを二人は、そっと飲み干した…

 

「うん…このワインおいしいよ。」

 

「ほんとですか?」

 

「とっても飲みやすいし…僕も好きだなこんなお酒。」

 

「よかった…まだありますから、どうぞ。」

 

そう言いながらルフィミアは再びロディのグラスにワインを注ぎだす。

 

「ありがとうルフィミア…ところで、話があるっていってたけど…どうかしたの?」

 

「……その…明日の事なんです…」

 

「あぁ…やっぱり…」

 

「私…あの時はお父様を止めたいと言ったのですが…何だか怖くて…」

 

「怖い?」

 

「はい…お父様は私の言葉を聞いてくれるのか…

 

 本当にお父様を止められるのか…考えれば考えるほど怖くて…」

 

言葉を漏らすルフィミアの体は小さく…まるで拾ってきた子猫のように震えていた。

 

「ルフィミア……」

 

「それに…もし失敗すれば再び多くの人が犠牲に…そうなったら私…わた…!?」

 

そんなルフィミアを気が付けば抱きしめていた…

 

そうしておかないとルフィミアがどこかに行ってしまいそうだったから…

 

「大丈夫だよ…不安なのは僕も一緒だから…」

 

「ロ…ディ…」

 

「僕だって怖いよ…お姉ちゃんと戦うかもしれないって思ったら…

 

 だけど僕らがやらないといけないんだ…でないと…この戦いはずっと続く事になるから…」

 

震えるルフィミアの髪をそっと撫で下ろしそう優しく呟きかける。

 

「ロディ…私は…あなたを失いたくないの…」

 

「大丈夫…僕は死んだりしないよ。」

 

「違う!…私は…わたし…ロディの事がす…」

 

そう言いかけたルフィミアの口をそっと指で抑えロディが言葉を遮った。

 

「ごめん…その先は今は聞きたくないんだ…」

 

「ロディ…やっぱり…私なんかでは…」

 

「それは違う。僕は確かに感情を持った人形だよ。

 

 でも…僕がルフィミアを思ってるこの感情が『好き』だっていう事なのか分からないんだ。」

 

「…ロディ…」

 

「だからさ、この戦いが終わるまで待ってて欲しいんだ。

 

 そうして自分の事を見つめ直す時間が持てたら…その先の答えを聞かせてもらうよ。」

 

「はい…待ってます…ずっと、いつまでも…」

 

そう応えルフィミアもロディの体をギュと抱き返す。

 

この瞬間が永遠に続けば…と心に願いながら…

 

 

夜が明け…日が昇り早朝の城門…

 

それぞれの目的地に向かうため、ロディ達がそこにいた。

 

「それじゃあロディ、パーシルで逢おう。」

 

「うん、レイも気を付けて…」

 

「よし…それじゃあ、行くわよ!!」

 

システィのそんな掛け声と共に5人を乗せた飛竜は空へと駆け出していった。

 

「……みんな…また、生きて逢えるよね。」

 

「そうでござるな…必ず逢えるでござるよ。」

 

夕華の呟きに紫苑がそう力強く応えた。

 

「それじゃ僕達も行こう。この戦乱…終わらせるために!」

 

「えぇ!」

 

そして…ロディ達もまたパーシルに向け出発しだしたのだった…

 

 

翌日、いよいよ戦いの火蓋は切って落とされた。

 

ミロワ軍はランドゥ率いる天魔騎士団、またラグナ率いる獣人部隊。

 

この両者が一丸となり、ライナール・パーシル連合軍と対峙していた。

 

それに対抗すべくパーシル軍将軍ラムダ・ファーラ率いる率いる魔の風。

 

そして、ライナール国将軍クロス・リーン率いる黒の牙…

 

本来の数の差で言えば圧倒的な物量の差でパーシル連合軍に分があったのだが、

 

パーシル連合軍はこの間の戦争の時に受けたロディの暴走による壊滅的打撃からか本城を守備する兵達を引き連れて参戦していた。

 

それでも数の上ではミロワ連合軍に分があり両軍共に引けぬ戦いとなっていた。

 

 

その頃…ライナール城上空…

 

「どうやら戦いが始まったみたいだね。」

 

「確かにな…見た感じ中には大した数もいねえみたいだな。」

 

「みたいだね…よし、行こうかシスティ!」

 

「オッケー!行くよ、フリード突撃よ!!」

 

『シャアァッ!』

 

その合図と共にライナール城へと降下を開始したのだった…

 

 

「敵襲っ!敵襲だーー!!」

 

突如現れたレイ達に驚き、そうライナール兵達が叫びあげるが、

 

だが突然の奇襲…そして兵不足もありレイ達の足止めすらも出来なかった。

 

「おい…一体どこへ行くつもりだ。」

 

「無駄に血を流すことは出来ない…このまま一気にリカルドの所に行く!!」

 

「よぉ〜し、れっつごぉ〜!」

 

レイ達はわき目も振らず王の間にいるであろうリカルドを目指し走り始めた。

 

もう…ライナールの兵達ではそれ突撃を止めることはできずにいたのだった…

 

 

しばらく城内を駆け回っていると、レイ達の前に広いフロア…そしてその先に王室へと続く階段が目に入った。

 

「意外に早く着いたな…」

 

「そうだね…ランドゥ伯達がライナール軍を抑えててくれてたから抵抗が少なかったからね…」

 

「レイ…この先に…」

 

「あぁ…リカルドがいるはずだ。」

 

レイのそんな言葉に全員の顔に緊張の色が見えた。

 

「…よし…これでおわ…」

 

「やはり来たか…レイ。」

 

「!!?」

 

そう呼びかけようとした時、レイの名前を呼ぶ声がした。

 

辺りを見回してみると二人組みの男が階段をゆっくりと下りてくるのが分かった…

 

「予想はしていたが…まさか本当にお前がここに来るとはな…」

 

「サ…サイレス兄さん…レナス兄さん…」

 

目の前に現れた二人組みにレイはそう驚き呟いた。

 

「に…兄さんだと…?それじゃあこいつらは…」

 

「そう…僕の兄さんなんだ…」

 

「腹違いの…だがな。」

 

ジェントとのやり取りを見てかサイレスがそう答えた。

 

「兄さん…」

 

「レイ…何しにのこのこ戻ってきた?殺されに戻ってきたのか。」

 

サイレスがそう尋ねるがレイは何も答えなかった。

 

「レイよ…何とか言ったらどうなんだ?お前がここに戻ってきたところで…」

 

「レイ!!私はお前を殺したくはない、逃げてくれ!!」

 

「レナス…兄さん?」

 

「レナス!貴様…まだそんな事を!」

 

「しかし…兄上…」

 

二人は意見の食い違いから口論を始めたが…

 

「あんた達…それでもレイの兄なの!!」

 

『!?』

 

そんな二人を見てたまりかねたのかシスティがそう怒鳴り散らした。

 

「…誰だお前は…?」

 

「ウィンディア竜騎士団、システィ=ウィンディア!」

 

「ウィンディア…?お前…あのウィンディアの王家の者か。

 

 誇り高いと噂されるウィンディアの民が…他国の者に力を貸すとはな。落ちたものだな…」

 

システィの答えにサイレスがそう返すが…

 

「あたしには…関係ないね、王家だろうがウィンディアの竜騎士の誇りだからってね…

 

 レイを信じる…だからこそあたしはこいつらと戦うんだって決めたんだよ!!」

 

システィははっきりとそう答えるのだった…

 

「レイを信じる?…ふん、ならば共に死ね!」

 

『ゴォゥッ!!』

 

サイレスはそう言い放つと同時に火球を繰り出してきた。

 

「くっ!」

 

『パキィッ!』

 

それを打ち落とそうと構えたシスティだったがそれよりも早くレイがそれを弾き落とした。

 

「レイ!…貴様…どこまでこの兄をする事を邪魔立てするか!!」

 

「……兄さん…これ以上罪を重ねないでよ…」

 

「罪…だと?笑わせるな!お前の方こそ生きている事自体が罪なんだよ!

 

 貴様さえいなければ…俺がクラウディア家を相続していたというのに…貴様さえいなければ!!」

 

「まだそんな事を…僕にはその意志は無いと言っているのに!」

 

「黙れっ!!妾の子供の分際で父グレックにクラウディア欲しさに取り入った悪魔がっ!

 

 貴様のせいで父上は貴様にクラウディアを託すと言葉を残した…貴様さえいなければっ!!」

 

「!?」

 

「妾の…子供?」

 

サイレスの意外な告白にシスティ達は驚きを隠せなかった。

 

「おや…その事を仲間には話していなかったのか?

 

 なら教えてやろう…そいつは父上をかどわかしたメイドとの間に生まれた悪魔よ!

 

 母上の死に付けこみ父上を惑わし取り入った愚かな女の子供なのさ。」

 

「……黙れ……」

 

「馬鹿な女よ…名家であるクラウディアの父上に取り入った事が暴かれ分家の長老どもに裁かれ国を追われ…

 

 それでも貴様を気遣うばかりにライナールに戻った所を捕らえられ殺された愚かな女さ。」

 

「…黙れ…」

 

「そこまでしてクラウディアの家が欲しかったのか?

 

 まったく…貴様達は間違いなく忌まわしき悪魔ども…」

 

「黙れと言ってるんだ!!」

 

「レイ…」

 

「僕の父が誰かで母が誰か何て関係ない…僕は僕の信じるままに生きてきた。

 

 母上も自分を信じるままに生きた…そんな母上を笑う資格はあなたにはないっ!!」

 

「ふん…貴様はまだ自分の存在を認める気は無いというのか…

 

 お前の存在そのものが罪になっているという事を!」

 

「こいつの存在が罪…?なら、お前の存在は何だと言うんだ?」

 

サイレスの言葉にたまりかねたジェントがそう言葉を漏らした。

 

「貴様…ダークエルフごときがこの俺に意見をするとは…」

 

「もう一度聞く…お前が存在する意味はあるのか?」

 

「何だと…」

 

「愚かなのは貴様の方だろう。お前の方こそが必要の無い人間だと何故気付かない。」

 

「誰に向かって物を言ってるんだ!俺はクラウディア家に生まれし長男サイレス=クラウディアだぞ!!」

 

「だからどうした…それがそんなにも偉い事なのか?

 

 ただ一番初めに生まれたと言う事がそんなにも偉い事なのかよ!?」

 

「ジェント…」

 

「お前のその腐った感情こそが事の原因だと何故認めようとしない!」

 

「ふん…出来損ないの代表格であるダークエルフが…人間様に意見するんじゃない!」

 

「あぁ…確かに俺は出来損ないのダークエルフだ…その事実だけは一生変わりはしない…

 

 だがな、少なくとも貴様よりは真っ当に生きてきた事だけは確かさ。

 

 俺の父も母も俺を産んだ事を誇りに思ってくれていた…俺の事を必要としてくれた…

 

 お前のように腐った思いなど持ったことはない!!」

 

「ふふ…苦し紛れにしか聞こえないなその言葉…」

 

「なに…おまえはまだ…」

 

そう言い掛けた時、ジェントの言葉を言葉を遮るようにレイが歩み出た。

 

「それ以上の暴言…止めてもらう…まだ僕の仲間を悪く言うのなら…僕だって…黙ってはいられない!」

 

レイはそう言い放つと同時に剣を抜き構える。

 

「レイ…何のつもりだ?」

 

「そこをどいて欲しい…僕はリカルドを止めに来たんだ。

 

 その邪魔をするというのなら、例え兄さんと言えども…斬るっ!」

 

「斬る…?お前が…俺をか?笑わせるなっ!」

 

「本気だよ…僕は。」

 

「何一つ俺に勝てるものが無い貴様がか…思い上がりも程々にするんだな。」

 

「思い上がりなんかじゃない…僕は…昔の僕じゃないんだ!」

 

「ふふ…いいだろう、俺も自分の新しい力を試したいと思っていたんだ…お前で試してやることにしよう。」

 

そう言うとサイレスは自分の懐から小さな紅い玉を取り出した。

 

「なっ!?兄上…それは…」

 

「見せてやろう…魔人ヴォルケスより授かりしこの力を!!」

 

「兄上!それは使わないという約束のはず!!」

 

レナスが止めるのも聞こうともせず、その紅い玉を飲み込んだ…

 

瞬間、サイレスの体から凄まじいまでの魔力が溢れ出し光に包まれてしまった。

 

「くっ…一体何が起こって…!?」

 

光が止みレイ達が目にしたもの…それはサイレスの代わりに立っていた異形の魔人だった…

 

「ブファ〜…すばらしい…これが魔人ブレイザーの力か。」

 

「あ…あに…うえ………くっ……だぁぁっ!!」

 

変貌したサイレスを見てレナスは自身の剣を握り締め斬りかかった…

 

『がっ!!』

 

だが…その刃はサイレスの体に傷一つ付けることはできなかった。

 

「…レナス…何のつもりだ?」

 

「うるさい!貴様など…貴様など、兄上などではないわ!!」

 

『ドゴォッ!!』

 

「ぐぼぉっ!」

 

刹那サイレスの拳がレナスを捉え後方の壁へと叩きつけた。

 

「レナス…お前までもが俺を……ぐっ…これも、レイ!貴様がいたからこそレナスはぁっ!!」

 

「よくも…よくもレナス兄さんを!お前だけは許しはしない!!」

 

向かってくるレナスに対し、レイも負けじと立ち向かったのだった…

 

 

『ガキィン!!』

 

サイレスの鋭き爪とレイの剣が激しくぶつかり合う。

 

「くっ…」「ぐぅっ!……ふぁぁっ!」

 

単純な力においてはサイレスの方に分があるらしく、レイは次第に押されてゆくが…

 

「レイ!」「助太刀するぜっ!!」

 

ジェントとカインがそれを見かねてサイレスに強烈な一撃をぶつけるが…サイレスは全くひるまなかった。

 

「なっ…にぃ!」「なにも…感じないのか?」

 

「二人ともどいて〜!アストラル・ソード!!」

 

システィの放った飛翔剣は確かにサイレスを捉え切り裂く…だが、サイレスは全く動じなかった。

 

「効かんな〜…そんな脆弱な攻撃は…」

 

「くっ!!」

 

そんなサイレスから不気味な何かを感じ取ったのか、レイは後ろに飛び退き間合いを取った。

 

「こいつ…戦いを楽しんでやがる。」

 

「これがあいつの言っていた魔人の力ってやつなのか?」

 

「このままじゃ埒があかない…みんな、一気にカタをつけるよ!!」

 

そんなレイの言葉に全員が無言で頷く。

 

「くらいな…音の刃をっ!サイコ・クラック!!」

 

『ピィィィィッ!』

 

システィの飛翔剣が回転するのと同時に周囲の空気が揺れサイレスを切り刻みだす。

 

「ふん…イグニード・ソード!」「おらおらぁ〜!スパイラル・チャージ!!」

 

それに続くようにジェント、カインも斬りつけてゆく。

 

「くらうです!ねこ・はっけしょう〜!!」

 

セアラの放った気弾がサイレスを飲み込んだ時にはレイは既に深く構え…

 

「これで…これで終わりだ!ライトニング・バスター!!」

 

セアラが飛び退いた瞬間、レイの一撃は確かな手ごたえと共にサイレスを切り裂いた…が、

 

『パキィッ…』

 

その斬撃と共にレイの剣は音を立てて折れてしまったのだった…

 

 

『ズズンッ…』

 

そんな音と共にサイレスが床へと倒れこんだ。

 

「やった…のか?」

 

そう言いながらレイが振り返った瞬間、

 

「もう終わりか…つまらん…」

 

サイレスがそう呟きながら起き上がってきた。

 

「そ…そんな、あれだけの攻撃を食らってもまだ!?」

 

「レイ…お前を見るのも飽きた、消えろ。」

 

不意にサイレスの腕が振り上げられたかと思うと、それは避ける間もなくレイへと襲い掛かってきた。

 

「なっ…」「レイッ!!」

 

誰もが間に合わないと諦めた時、それはレイへと当たる前に止められていた。

 

「レイ!兄上は私が抑える、早くとどめをっ!!」

 

なぜならその前にレナスが後ろからサイレスを羽交い絞めにし動きを封じたからだった。

 

「レナス兄さん!…だけど…」

 

「早くするんだ、レイ!!」

 

「レナス…貴様ぁ…まだ邪魔をするかっ!」

 

サイレスの爪がレナスの体へとつきたてられレナスの体を徐々に貫いてゆく。

 

「ぐぅっ…レイ…早く…私ごと…兄上を…」

 

「………」

 

レイは何かを決心したかのように拳を握り締めると、足元に落ちていたサイレスの剣を抜き構えた。

 

「レ…イ…」

 

「兄さん…これで…終わりなんだよ!!」

 

そんな叫びと共にレイの一撃が二人を貫いた瞬間、レイの体を蒼白い光が包み込んでいったのだった…

 

 

光が止み、視界がはっきりとしてくると、そこにはもうサイレスの姿は無くレナスが倒れこんでいたのだった。

 

「兄さん、レナス兄さん!!」

 

「…うっ……レ…イ…よく…やってくれた…」

 

レイの呼びかけにレナスがそうか細く答えた。

 

「兄さん…いったい何でこんな事に…?」

 

「…兄上も…始めはあんなのではなかった…全ては…あいつが現れてから…兄上は…」

 

「あいつ?」

 

「こんな私達だからこそ…神剣ジャスト・ブリードはわれらを選ばずお前を選んだのだろう…」

 

「神剣…ジャスト・ブリード?これがそうのなの、兄さん?」

 

そう言い先程サイレスを倒すために握り締めていた剣を見せる。

 

「…そう…それこそが…クラウディア家の…後継者の…証となる…」

 

「僕が…クラウディアの?」

 

「私も…兄上も扱えず…形式上だけ振舞っていたのだ…私達には…抜く事すら出来なかったと言うのにな…」

 

「兄さん…」

 

「…レイ…すまなかった…私が…兄上を止めていれば…こんな事にはならず…お前を苦しめる事も…

 

 お前は信じないかもしれないが…私は…お前の事を…っ……レイ…すま…か…」

 

そこまで言いかけた時、レナスは目を閉じその体から温もりが失われていくのが分かった。

 

「兄さん?…レナス兄さーん!!」

 

レイは何度も…何度もレナスを抱きしめる手に力をこめながら呼びかけたが、

 

その呼びかけにレナスが答えることはなかった…

 

 

しばらくそんな沈黙が続いた後、不意にレイが立ち上がった。

 

「……行こう、みんな…」

 

「えっ…レイ…だけど…」

 

「大丈夫…全部が終わってから弱音を吐くよ……今は…前に進もう!」

 

そう言い振り返ったレイは少し涙の後があるもののいつものレイだった。

 

「…あぁ、行こうぜ大将さんのとこによ。」

 

「まったく…世話が焼けるやろうだ。」

 

「リカルドを止めて…戦争を終わらせる!」

 

こうしてレイ達は階段を駆け上がり有無を言わさず王の間への扉を開け放った。

 

広く空間どられた王の間…

 

その一番奥にリカルドが待ち構えていたかのように鎮座していた…

 

「来たか…レイ、待っていたぞ。」

 

リカルドは玉座に座ったまま冷たい表情でそう言った。

 

「リカルド…もう戻れないのかい?」

 

「…あぁ……俺はお前と言う存在を利用しこの地位を手に入れた…

 

 その時からこの結末が用意されていたんだ…引けはしないさ。」

 

「リカルド…」

 

「さぁ……決着をつけるぞ…レイ。

 

 せめてもの情けだ…このラーナ神器が一つ神剣ファラクスで葬ってやろう。」

 

そう言い立ち上がったリカルドは玉座の横に置いてあった自分の背丈ほどもあるような剣を握り締めた。

 

「悦入って語ってるとこ申し訳ないがよ…俺達には…」

 

カインがそう言いながら歩み出ようとした時、

 

「みんな…みんなは手を出さないで…僕が決着をつけるから。」

 

「で、でも…レイ!」

 

心配そうな表情でレイを諭そうとしたシスティをジェントが止めた。

 

「負けたところで骨は拾わんぞ。」

 

「……ありがとう。」

 

そう呟きレイも剣を抜き構えた。

 

「レイ…お前もほとほとに馬鹿な奴だな。」

 

「そうかもね…さぁ、決着をつけるよ!」

 

互いに一足踏み込んで一撃を繰り出す!

 

同時に甲高い金属音が部屋中に響き渡った。

 

「くっ…腕を上げたな…レイ!」

 

「…君こそね…リカルド。」

 

二人とも一歩も譲らず、激しい剣撃が何度もぶつかり合う。

 

「くらえっ、エルウインド!」『ゴォゥッ!!』

 

「くぅっ!!」

 

不意に放たれたリカルドの呪文がレイを襲う!

 

体制を崩しながらもこらえたレイだったが、目の前にはリカルドの一撃が襲い掛かろうとしていた。

 

「もらった!!」

 

「……甘いよ、スラム・スラッシュ!!」

 

勝利を確信していたリカルドは避ける事を考えていなかったために、その一撃をまともに喰らう事になってしまった。

 

「ぐぅっ!…やるな…」

 

「僕は…負けられない…僕を信じて待っていてくれる人がいる限り…負けるわけにはいかない!」

 

「やはりお前には一筋縄で行かないか…ならば…」

 

そう言うとリカルドはファラクスを上段に構えた。

 

「??…リカルド…何を…」

 

「レイ…さらばだ……」

 

リカルドはそのままの構えを崩さず向かう。

 

「何を考えていようと…僕は負けない!」

 

レイも負けじと立ち向かってゆくが…

 

「終わりだ…ライアット・ヴァイス!!」

 

「!?」

 

上段の構えより目にも止まらぬ速さで振り下ろされた強烈な一撃がレイを襲った。

 

瞬時に剣で庇うように受け止め直撃を免れたレイだったがあまりの強力さに激しく吹き飛ばされた。

 

「レイーー!!」

 

「とどめだ…」

 

追い討ちとばかりに一気に攻め立ててくるリカルド。

 

「ま…まだだ……まだ…負けていない!!」

 

レイはふらつきながらも剣を再び力強く握り締める。

 

そして向かってくるリカルドへと向かって行く。

 

「くらえ…ライアット・ヴァイス!!」

 

「レナス兄さん…僕に力を…!スラッシュ・レイブ!!」

 

全てを砕くかのような強烈な一撃…かたやそれを弾き返すような息もつかせないほどの連撃…

 

その二つが激しくぶつかり合い交差しあった…

 

 

「レイ……ありが…とう…」

 

長き沈黙の後、リカルドがそんな言葉を残し地面に崩れた。

 

「リカルド!!」

 

それを聞いたレイは即座に駆けよりリカルドを抱き起こした。

 

「リカルド…どうして…こんな事に…」

 

「…いいんだレイ…俺は…こうなる事を望んでいたのだから…」

 

「望んでいた?」

 

「貧しかった自分…俺はいつも力を欲していた…お前が羨ましかった…俺の欲しい物全てを持っているお前が…

 

 だから決めたのだ…成り上がってやると……例えお前を蹴落とすことになってもだ…」

 

「リカルド…」

 

「…だがどうだ…上り詰めた俺のむなしさは…何かが足りない…

 

 そう思い更に色々なものを手に入れようとした…だが…俺の渇きは収まらなかった…」

 

「………」

 

「皮肉なものさ…今になってそれに気づくとはな…

 

 俺は…お前に追いつきたかったんだ…お前と…共に歩みたかっただけなんだ…」

 

「そんな…そんな事をしなくても…僕達は…」

 

「レイ…俺を止めてくれて…ありがとう…最後にお前と出会えて…俺は…」

 

「何を言ってるんだよ…僕達は…親友じゃないか。」

 

弱々しく差し出されたリカルドの手を力強く握り返しながらレイはそう応えた。

 

「ありが…う…レ…イ…」

 

そうか細く呟いたリカルドの手から力が抜け静かに目を閉じた…

 

「リカルド…」

 

そんなリカルドをレイは玉座へと座らせシスティ達の方に振り返った。

 

「さぁ、行こう。ロディ達と合流しないと。」

 

「レイ…だけど…」

 

「…いいんだ…まだ戦いは終わってない…リカルド達のためにも…この戦いを終わらせる!」

 

「あぁ…これ以上、無駄な血を流す事をさせない為にもな。」

 

こうしてレイ達は王の間を後にしロディ達が待つパーシルへと向かい始めたのだった。

 

 

一方…パーシルのロディ達は…

 

「くっ!!」「これで…バスター・ライト。」

 

意外な苦戦を強いられていた。

 

人間の数はライナール同様に少なかったのだが、それ以上に厄介なのがギザロフが呼び出した魔物達だった。

 

「敵が…多いな…あまり時間はかけられないのに…」

 

「夕華は…まだでござろうか…」

 

『……ドゴォゥッッ!!』

 

紫苑がそう呟いた瞬間、城全体が激しく揺れた。

 

「なっ!?これは…」

 

「安心して…私が仕掛けた爆薬だから…」

 

不意にロディ達の目の前に夕華が降り立った。

 

「夕華さん、おかえりなさい。」

 

「ただ今マリオス。それより…ようやく居場所が分かったわ。」

 

「本当かい?よし夕華、案内してくれないかい。」

 

「…えぇ、分かったわ。」

 

そう頷いた夕華を先頭にロディ達は未だ爆発の為揺れ動く城内を走り始めた…

 

 

…「セリシア…どうやら奴等がこの城に入り込んだようだな?」

 

「えぇ…そうですね。」

 

「ふん……お前があの時仕留めておけばこんな事にはならなかったんではないのか?」

 

「そうかもしれませんね…」

 

「……まぁいい…どの道パーシルは終わりだ。ワシは教会に行く…後は好きにしろ。」

 

「えぇ…そうさせてもらうわ。」

 

そう言うとギザロフは一人部屋を出て行った。

 

一人残されたセリシアはじっとその部屋を見回していた。

 

「お前が……お前がっ!!ギガ・ボルト!!」

 

突如怒りをあらわにしたセリシアが放った雷の嵐はあたりの物を薙ぎ払い幾つもの火種があがる。

 

そして数秒と立たないうちに辺りは炎に包まれてしまった。

 

「………」

 

それを見届けたセリシアは一人静かに部屋を後にしたのだった…

 

 

そのころ…城内を走り回っていたロディ達は一つの大きな扉の前にいた。

 

「夕華…ここなんだね。」

 

「えぇ…ここにパウルがいたはず…」

 

「はい、間違いありませんよ。ここは王の間ですから。」

 

ルフィミアの言葉で確信を持ったロディ達が扉に手をかけたその時!

 

「…ぐわぁっ〜!!」

 

突然そんな声が扉の向こうから聞こえた。

 

「い…今の声は…?」

 

「部屋の中で…何が起こったの?」

 

「分からない…けど…嫌な予感がする…紫苑、扉を破るよ!」

 

「承知!」

 

『ドガァッ!!』

 

ロディと紫苑が勢い良く壊した扉の先…

 

そこには血を流し絶命しきったパウルと、

 

その返り血であろう物がついたままの剣を握り締め立ち尽くしていたセリシアの姿があった…

 

「ロディ…来てしまったのね…」

 

セリシアが平然としたままの声でそう尋ねてきた。

 

「お姉ちゃん……パウル王は…」

 

「えぇ…見ての通り…もう動かない…ただの肉塊になったわ。」

 

「セシリア将軍。これ以上の戦いは無意味です。…投降して下さい。」

 

「…投降…?それはできないわ…私はパーシルの将軍だもの…そんな事は出来ない…」

 

ルフィミアの言葉にもやはり平然とした態度で拒絶の意思を見せた。

 

「お姉ちゃん…どうしても戦うというの?」

 

「そうよ…だって私はパーシル…あなたはミロワの人間なのだから。」

 

「だけど…」

 

「将軍。お父様…いえ、ギザロフはどこにいるのです。」

 

「ここにはいないわ…教会に行くと言ってはいたけど…」

 

「教会…?レミントンにでござるか。」

 

「それなら急がないと…」

 

「でも行かせはしない…私が許しはしないから…」

 

セリシアはそう言いロディ達の方に向き直ると愛用の一対の剣を握り締めた。

 

「おねえ…ちゃん…」

 

「さぁ…これで終わりにしましょう…ロディ。」

 

「だ、だけど…僕とお姉ちゃんが戦う理由なんてどこにも…」

 

「あるわ……私の…過去との因縁を断つ為にも…あなたを殺さなければならない。」

 

「過去との…因縁?」

 

「そうよ…あなたという存在が私を縛り続けている…だからこそ…私はあなたを殺さなければいけないの!

 

 さぁ、ロディ!剣を…剣を取りなさい!!」

 

そう言いセリシアは自身の剣をロディに向けたのだった。

 

「ロディ殿、挑発に乗ってはいけないでござるよ。」

 

「そうよ、あの人の強さは半端じゃないわ。私たちも一緒に…」

 

そんなマリオス達の言葉にロディは静かに首を横に振った。

 

「いいよ…僕一人で戦うから。」

 

「で、ですがロディ…」

 

「大丈夫だよ、ルフィミア。僕は……死なないから。」

 

ルフィミアの頭をそっと撫でそう呟き、ロディは剣を抜き歩み出た。

 

「ロディ…全力できなさい。…私は…あなたを殺すつもりでいくから。」

 

「…うん…持てる力の全てで……お姉ちゃんと戦うよ!」

 

「……あなたと……いえ…さぁ行くわよ!!」

 

そんな掛け声と共に…二人は互いに駆け出していた…

 

 

『ガキィッ!!』

 

「くっ…」「はぁっ!」

 

そんな鈍い金属音が何度も部屋中にこだまする。

 

セシリアの二刀流から繰り出される連続攻撃を受け流してゆくロディ…

 

二人とも全く譲ろうとせず互いにダメージが通ろうとしなかった。

 

「くらいなさい、ラプター・ファング!!」

 

「させない…アロー・ストラッシュ!!」

 

『ドォゥッッ!!』

 

二つの巨大な剣気がぶつかり相殺しあう。

 

「くっ…」「互角か…」

 

刹那、同時に飛び退き互いに詠唱に移る。

 

『バスター・ライト!!』

 

二人の声が重なりぶつかり合う魔力…そして瞬く間に霧散していった。

 

「やはり…相変わらず隙のない子ね、ロディ。」

 

「相変わらず?」

 

セリシアの不意の呟きにロディは首をかしげた。

 

「…全てを思い出した訳ではないのね…昔は私よりあなたの方が強かったのにね…」

 

「僕が…お姉ちゃんよりも?」

 

「だからこそ…だからこそ、私は…あなたを超えなければならないのよ!」

 

そんな叫びと共にセシリアが再びロディへと詰め寄ってくる!

 

「くっ…ブレイク・スラッシュ!!」

 

『ガキッッ!!』

 

向かってくるセリシアに対し一歩も退かず自らも一撃をぶつける。

 

「やるわね…でも、これはどうかしら?」

 

そう言いセリシアは少しばかり飛び退き二本の剣をゆらりと構えた。

 

「なにを…?」

 

「喰らいなさい…ジ・エンド・オブ・スレッド!!」

 

一瞬、セリシアが踏み込んだかと思うと次の瞬間には無数の剣撃がロディに襲い掛かっていた。

 

「う…うわぁぁっ!」

 

あまりの多さにどうする事も出来ず、ロディはその直撃を受け床へと倒れこんだ…

 

「さよなら……ロディ……さて、次はあなた達の番ね。」

 

冷たく言いながらセリシアはマリオス達の方に振り返った。

 

「くっ…」

 

それを迎え撃とうとマリオス達が構えようとした時、

 

「…ま…まだだ……まだ…終わりじゃない!」

 

ロディがふらつきながらも立ち上がってきた。

 

「…せっかく手加減をしたというのに…その行動が裏目に出たようね…」

 

そんな事を呟きながらもセリシアは再びロディの方へと向き直った。

 

「こうなったら手足の一本や二本…覚悟する事ね…

 

 どの道…あなたにこの技は見切れはしないのだから…」

 

そして今一度ロディに向かってくる…

 

「僕が…僕が……みんなを…守る!」

 

ロディもまたそんなセリシアに対抗すべく駆け出した。

 

「露と散れ……ジ・エンド・オブ・スレッド!!」

 

「負けない…負けられない…負けたくないぃ!くらえ、ジ・エンド・オブ・スレッド!!」

 

二人の剣撃が激しくぶつかり合う。

 

「くっ……そんな…剣一本で…この私と互角…」

 

「おぉっっ!負けられないんだ〜!!」

 

『パキィッ…』「え……」

 

刹那、セリシアの剣に亀裂が走り…そして…宙を舞い…

 

『ズササササ!!』

 

防ぐ術を失ったセリシアはその直撃を受けたのだった…

 

 

「くっ……かはっ…私の…負けなの…」

 

セリシアは膝を突き…そして静かに床へと倒れこんだ。

 

「お姉ちゃん!!」

 

そんなセリシアの元にロディは急いで駆け寄りセリシアを抱き起こす。

 

「…驚いたわロディ……あの技をあなたに使われるなんてね…」

 

「そんな……お姉ちゃんの動きを見たら…体が勝手に動いてたから…」

 

「当然よ…この技はあなたが使っていたものなんだから…それを私が見様見真似で使ってただけなの…」

 

「そう…だったの?…ごめんね…そこまでは思い出してないんだ。」

 

「………ごめんね……ロディ…」

 

「えっ?…何言ってるの、僕が…僕が全部悪いってゆうのに。」

 

ロディのそんな言葉にセリシアは首を横に振った。

 

「違う…違うの……私は…あの時…あなたを守れなかった…」

 

「あの時?…あの時って、パーシルを抜けようとした雨の日の事?」

 

「うぅん………5年前…あなたが私の前から…いなくなった日の事…」

 

そう言うとセリシアはぽつぽつと語りだした。

 

 

「五年前のあの日…ギザロフが突然として私達の前にやって来たの…

 

 用件は簡単…私にギザロフが作らんとしている戦争人形の実験台になれというものだった。

 

 私がその考えに拒否して見せると、あいつは予め人質にしていたあなたを私に突きつけてきたの…

 

 ロディの命には代えられず私が奴に屈しようとした時…あなたの力が目覚めてしまった…

 

 『お姉ちゃんを離せ!!』

 

 そう言いながら自分を捕らえていた二人の兵士を瞬時に消し飛ばしギザロフへと向かっていたのだけど…

 

 あいつはそれを察知し今度は私を盾にしあなたにこう告げたわ…

 

 『姉を殺されたくなければ、お前が代わりになればいい。』

 

 あなたはその条件を受け入れ、私の絶対の安全を約束させギザロフについて行く事を決めた…

 

 私がロディを助けようとした時だって…あなたは…

 

 『大丈夫だよ、お姉ちゃん。』

 

 そう…笑顔で私に言い……私の前に…二度と戻ってこなかった……」

 

…語り終えるセリシアの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた…

 

 

「だから…わた…し…私は…」

 

「…大丈夫…お姉ちゃん大丈夫だよ、僕はここにいるんだから。」

 

涙ながらに謝ろうとするセリシアの手を握り締めロディはそう優しく告げた。

 

「ロディ…私のことまだ…そう呼んでくれるのね…」

 

「当たり前だよ。お姉ちゃんはお姉ちゃん…それは変わらないんだから。」

 

「…ねぇ…ロディ……また……あの花畑に行きましょう…」

 

「ギアの街の?…そうだね、また行きたいよ。」

 

「またお姉ちゃんに…花冠作って…あなた…あれを作るの上手なんだから…」

 

「うん…そんなのいくらでも作ってあげるよ。」

 

「……ねぇ……ロ…ディ……だい…好きよ…」

 

ロディの手の中で失われていくセリシアの温もり…開かない瞳…

 

そして…力なく崩れてゆくセリシア…

 

「ね…ねぇ…お姉ちゃん…どうしたの?

 

 お姉ちゃん…目を開けてよ…ねぇ!」

 

涙を流しながら何度もセリシアの体を揺さぶり呼びかける。

 

「嫌だ…嫌だよ!僕を置いて行かないでよ!!

 

 花畑に行くんでしょ!僕と一緒に…花冠なんかいくつでも作ってあげるよ…だから……目を…開けてよ…」

 

だが…セリシアがロディの呼びかけに応えることはなかった…

 

「ねぇ…お姉ちゃーん!!」

 

ロディはセリシアの体を抱えながら何度も…何度もそう嘆き続けた…

 

そんなロディを見るに耐えられなくなったマリオス達は静かに王宮を後にしたのだった…

 

 

ロディを残し、マリオス達はレイ達との合流地点であるパーシルの城門前にいた。

 

「ねぇルフィミア…私さ…この前行った時には道覚える暇なんかなくてさ…

 

 あなたなら分かるわよね、レミントン教会がどっちにあるのか。」

 

「…お父様を…追うのですね。」

 

「うん…すべてを…終わらせる為にも…」

 

『ブォゥッ!!』

 

そう呟いたとき、飛竜に乗ったレイ達がマリオス達の前に降り立った。

 

「みんな、ライナールの方は終わったけど…そっちは?」

 

「まっ、嬢ちゃん達がここにいるって事はこっちも終わったんだろうが…ボウズは?」

 

「…ロディは…」

 

マリオスは中であった事全てをレイ達に話した…

 

「……そぅ…それなら…今はそっとしておいた方がいいかもね…」

 

「えぇ…だから私達だけでレミントンに…」

 

「待って!!…僕も…行くよ。」

 

言いかけた時、後ろから追いついて来たロディがそう叫んだ。

 

「ロディ……だけど。」

 

「大丈夫…もう泣くだけ泣いた…それに…お姉ちゃんの敵討ち…って訳じゃないけど…

 

 ギザロフの行動…黙って見てる訳にはいかないから。」

 

「…そうだよね…僕達は…仲間だもんね。」

 

「うん……さぁ、行こう!レミントンに!!」

 

 

 

ロディ達は飛竜に跨り決戦の地、レミントンへと向かう。

 

この歴史に終止符を打つ為に……

 

 

to be continued〜

  

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