第20章〜前編〜『聖戦…歴史の影の終着駅…』
「へへ…敵さんもどうやら今回は本気らしいな。」
「あぁ…掛け値無しの最後の戦いにするつもりなんだろうな。」
レミントン教会を見下ろせる丘…ロディ達はそこから教会の様子を眺めていた。
「これで…全てが終わるんだよね?」
「…違うよ、マリオス…ここから始まるんだ…」
「始まり……うん、そうだよね。」
「しかし…あの数…レミントンはやはり侮れぬでござるな。」
紫苑がそう呟いた通りレミントンにはまだ数百とも思える神殿騎士達が陣を張っていた。
「…あんな数…本当に突破できるの?」
「さぁな…あれが全部って訳でもないだろう…教会にも奴らは潜んでいるはずだ。」
「それと…あの魔人達もここにいるはずだ…」
そんなレイの呟きに一行に重い沈黙がのしかかってきた。
「でも…みんなで力を合わせれば…きっとできるはずです!」
「おうよ!嬢ちゃんの言うとおりだ。俺達はそうやって今まで何とかしてきたんだ…不可能じゃないはずだぜ!」
「そう…そうだよね、よし…行こう!!」
ロディのそんな声を合図に一行は丘を駆け下りレミントンへと向かって行くのだった…
「おらおら〜!邪魔だ!!」「はぁぁっ!!」
カイン、紫苑がみなの先頭となり敵を切り裂いてゆく…
「退いてくれよ!こんな事に…時間はかけてられないんだ!!」
それを援護しようとロディ達の魔法が突破口を開くがそれはすぐに閉じられてしまう。
「くっ…さすがに守りが堅いか…」
レミントンに着くなりそこはいきなりの大激戦となった。
何とか突破を試みようとするロディ達だったが数百という神殿騎士達の守りは半端なものではなかった。
「ロディ殿…このままでは…」
「はぁ…はぁ…う、うん…ここまできついとは思いもしなかったよ…」
「このままじゃ…教会に辿り着くことなんて…」
「いけ〜!奴らは疲れている、一気に畳み掛けるんだ!!」
そんな号令と共に神殿騎士達が再びロディ達へと突撃を開始しだす。
「くっ…どうする、ボウズ…このままじゃ息切れしちまうぜ。」
「ふみ〜、ロディちゃ〜ん!」
「……どうする……どうすれば…!?」
ロディがそう考え込んだ時、後方から大勢軍勢がロディ達に迫らんと押し寄せてきた。
「そんな…レミントンは後方にも兵を潜ませていたというの!?」
「違う……あれは…!!」
「行けー!ミロワ軍よ、これが最後の戦いぞ!!」
「お前等!ミロワに負けている場合ではないぞ!我がハバリアの力…存分に見せてやれ!!」
そう…後方から迫ってきていたのはミロワ・ハバリアの連合軍だったのだ。
彼らは着くや否や神殿騎士達と交戦に入った。
「ロディ!レイ!遅れて済まぬ!」
「部隊再編に手間取った…この借り戦いで返す!!」
「ランドゥ伯…ラグナ様…なぜ…?
「この戦いの首謀者はあの中なのだろう?
ならば我等とて黙ってお前達を見ているわけにはいかんさ。」
「その通りだ、さぁここは我らが引き受けたお前達は早く中に行け!!」
「…ありがとうございます…」
こうしてランドゥ、ラグナ両名の援護によりロディ達はようやくレミントンへと侵入を開始したのだった…
ランドゥ達の協力により教会内に侵入したロディ達だったが、
教会の中はうって変わって静まり返っており人がいる気配がなかった。
「静かね…誰もいないのかしら?」
「確かにおかしいね…罠…かな?」
「悩んでても仕方ないだろ。それよりあいつを追う事だけを考えようぜ。」
「そうだけど…ギザロフは何処へいったのかしら?」
「……僕は…あの地下室が怪しいと思うんだ。」
「そうですね…あそこ以外には身を隠せるような場所なんてここにはありませんし…」
「よし…行ってみよう。」
こうしてロディ達は怪しいと踏んだ書庫へと向かった。
書庫へと足を踏み入れるとそこは以前とは変わらぬ無人部屋…
ただ一つ以前と異なっていたのは、あの隠し扉が開いていることだった。
「…誘ってる…みたいだね。」
「上等じゃねぇか…なら無下に断ってやるわけにはいかねぇな。」
「うん……じゃ、行くよ。」
そんなロディの言葉と共にロディ達は再び隠し通路を進み始めた…
しばらく通路を進むと以前と同じ部屋にたどり着いた。
不気味な魔法陣が描かれ…異様なほどの魔気が漂う部屋に…
「…誰も…いないね…」
マリオスの呟いたとおり部屋の中には人影は見当たらず静かなものだった。
だが…その静寂が逆にかえって不気味と感じるほどだった。
「一体…ギザロフは何処に…?」
「ふふふ…私をお探しか?」
そんな声と共に目の前に突如として一人の男が現れた。
「お…お父様…」
「お前が…ギザロフか!」
「左様…出来損ないの人形であるお前がここまで私を苦しめた事に関しては素直に賞賛を送るぞ22号。」
「ふざけるな!…お前の企みもここまでだ…覚悟しろギザロフ!!」
ロディがそう叫ぶがギザロフは変わらず不気味な笑みを浮かべていた。
「…ここまで?…覚悟しろ?…それはお前達の方だろう?」
「なに…それはどう言う事だ!?」
「まもなく邪神ユグドラシア様が蘇られる…その時こそこの世界が終わるのだ…」
「邪神…ユグドラシア!?あ、あなたは…あの邪神を!!」
「さて…私は忙しい身でね…後は任せたぞ、ザルモゥ。」
そう言い残しギザロフは消え失せ入れ替わりに一人の男が現れた。
「ギザロフ様に変わり私がお相手しよう。」
「そんな…大司教ザルモゥ様…あなたまでお父様に…」
「くっ…みんな!こいつを倒しギザロフを追いかけるよ!!」
ロディ達は武器を構えザルモゥと対峙するのだった…
「くらえっ!アロー・ストラッシュ!!」
「甘いわっ!!」
『ゴォゥッ!!』
ロディの剣撃をザルモゥはたやすくかき消した。
「なにっ!!」
「我が力はギザロフ様より承りし力…この程度の技が通用すると思ったか!」
お返しとばかりにザルモゥはいくつもの魔法弾を放ってきた!
「ちぃっ!」「きゃっ!!」
「このままじゃ…みんな!一気に叩くよ!!」
防戦一方になっていたロディ達は魔法の切れ目を狙い一斉に反撃に出る…が、
「愚かな…女神ラーナよ!わが身を守れ!!」
ザルモゥがそう叫び手に持った杖を掲げると白き壁が彼を包みロディ達を弾き返した!
「な…何なんだこれ…?」
「あ…あれは…ラーナ神器の一つ女神の錫杖…あれには全てを弾く魔法障壁を張る力があるの…」
「ラーナ…神器…それがあいつの手に!?」
「その通り…この神器と私の力には死角なし!消えるがいい、俗物ども!!」
ここぞとばかりにザルモゥの執拗なまでの攻撃がロディ達を襲う。
「くっ…どうにかして反撃を…!」
「で、でも…神器の力が…」
「………あれは私が何とかするわ…ロディ、反撃して!」
「だ…だけどマリオス…」
「お願い!私を信じて!!」
「…分かった…信じるよ、マリオスを。」
「あの障壁は私が何とかするから皆はその間、私の援護をお願い。」
「うん…僕とレイ、それから紫苑はザルモゥに反撃!他の皆はマリオスの防御をお願い!」
「承知!」「まかせな!あいつの攻撃なんざ、全て弾き落としてやるぜ!」
「行くよ!レイ、紫苑!!」
その一声で三人はザルモゥの元へと駆け始める。
「ふん…この魔法弾…避けられるはずがないだろう!!」
するとザルモゥも負けじと先程までの倍近くの数の魔法弾を放って来た…しかし、
「おらおらおらー!!」「甘い…」「無駄な事を…」
カイン達がその全てを弾き落とす!
「ザルモゥー!!」
「く…め、女神ラーナよ!!」
攻撃を弾かれ防御に備えたザルモゥだったが…
「…女神の力よ…我が名はマリオス…女神の血を引きし者…我に従い力よ…退け!!」
マリオスがそう命じるとたちまちに魔法障壁が消え失せてゆく。
「なっ!なんだと!!」
「今だっ!くらえライトニング・バスター!!」
「皆斬流…月下骨砕打!!」
「これで…クロス・ブレイク!!」
「…そ…そん…な…」
刹那、ロディ達の攻撃の直撃はザルモゥを捉えザルモゥは霧散していった…
「これが…魔人に身を委ねた者の行く末でござるか…」
「…みたいだね…肉体すらも失うなんて…考えたくはないけどね。」
霧となり消えていったザルモゥを見つめそう呟く中、ルフィミアが彼の持っていた女神の錫杖へと手を伸ばそうとしていた。
「ルフィミア…何を?」
「この杖の力は…私達の助けになりますから…」
「そ、そうかもしれないけど…」
「危険よ、ルフィミア。あいつが持っていたと言う事は…
おそらく闇に身を委ねた者でも扱えるように闇の支配を施しているはず…それを人間が持つなんて…」
「……だけど…今の私では皆の力になれない…カインさんのように力があるわけでもない…
紫苑さんみたいに剣を扱えない…マリオスのように強力な魔力を持っているわけでもない…」
「ルフィミア…」
「だから……だから、私にはこの力が必要なの!」
ルフィミアはそう叫ぶと女神の錫杖を握り締めた。
『ゴォァッ!!』
瞬間、ルフィミアの体を黒い魔力が包み込んだ。
「ルフィミア!!」
ロディ達がそれを助けようと歩み寄った時、その黒き波動は一瞬にして消え去り暖かな風に変わった。
「…ル…ルフィミア?な、何ともないのかい?」
「…えぇ…大丈夫です。少し…びっくりしたけど…」
「マリオス、これは一体どう言う事なんだい?」
「…わからない…けど…ルフィミアと神器が共感し闇の支配を消し去ったとしか…」
「つまり…ルフィミアを主として向かえたということかい?」
「多分…そうだと思う…」
「難しく考えんなよ、それにその神器はあの爺よりも嬢ちゃんが持ってたほうがさまになるってもんだぜ。」
「確かに…『女神の錫杖』をあんな年寄りが持ってるなんて筋違いよね…」
システィのそんな発言に一同が少しふき出してしまう。
「…と、それよりも早くギザロフを追わないと…」
「そう言えばそうだった…でも…あいつはいきなり消えちゃった訳だし…どうやって…」
「…取り敢えずこの部屋を徹底的に探そう。何か手掛かりがあるかもしれない。」
「そうだね…」
そう考えたロディ達はその部屋を徹底的に探し始めるのだった…
ロディ達はギザロフの足取りを掴む為に部屋の中を探し回ったが…
その手掛かりは一向に掴めなかった。
「う〜ん…何もないね…」
「やっぱり…さっきのあれは転移呪文だったのかな…」
そうロディ達は深くため息をつく。
「…そう言えば…ずっと気になっていたんだけど、邪神ユグドラシアって何なんだい?」
ふと、ロディがレイにそう尋ねる。
「邪神…ユグドラシアかい?…そうだね…ロディは知らないかもね…教えてあげるよ。」
そう答えたレイは言葉を思い出しながら語り始める…
「この世界は三人の神が創ったっていう事は知ってるよね?」
「うん…」
「その神って言うのが、万物の創造神『ギルティア』……
全ての生命達の母『ラーナ』……そして…死を司る神『ユグドラシア』……
その三人だって言われているんだ。」
「死を司る神が…ユグドラシア…でもそれがどうして邪神って…」
「はるか昔…まだこのグランディアに国が存在していなかった時代…
突如として異形の魔物たちが現れ人間を襲い始めた…それを裏で操っていたのがユグドラシアなんだ。
身を守る術を持たぬ人間達が神にすがると…ユグドラシアの凶行を見かねたラーナが人々の前へと降臨し力を与えたんだ。
その時人間達に与えた力というのがラーナの12神器だと言われてる。」
「12神器に…そんな事が…」
「12の神器と女神の助力を得た人間達は瞬く間に魔物達を追いやり邪神ユグドラシアを次元の彼方に封印したんだ。」
「そうなんだ……あれ?12神器って言ったら…」
「あぁ…僕の神剣ジャストブリード、カインの神槍クライブ、ルフィミアの女神の錫杖、マリオスの魔槍ディバインランス、
紫苑の漸鉄・夢夜叉、夕華の魔刀・神風、ジェントの月影の腕輪、セアラの炎刃牙、システィの双対剣フォースソード…
この9つが僕らの手にあるね。」
「その他の3つは…?」
「残りの神器は、リカルドが持ってた神剣ファラクス、それに破壊剣ミストグランツァと神剣エルスレイド。
その内のミストグランツァはユグドラシアとの戦いの中で失われたらしいんだ。」
「という事は…残る神器のエルスレイドは…」
「…行方が知れないんだ…その力は全てを切り裂くといわれその強大さゆえに大陸のどこかに封印されたらしいけど…」
「みんな!ちょ、ちょっとこっちに来て!」
そこまで語り終えた時、不意にマリオスがそう叫んだ。
「ど、どうしたんだいマリオス?」
マリオスに呼ばれ向かった所は床に描かれた魔法陣の中心だった。
「…ここから…微かになんだけどギザロフの魔力を感じたの…
この魔力をたどっていったら彼を追えるかもしれないの。」
「…かもしれないって…?」
「…ほんとに微かな物だからはっきりと断定できないし…それに…
行く時はこれを追えば着くけど…帰る時が…」
「…こっちに…戻って来れないかもしれないんだね?」
ロディのそんな呟きにマリオスは静かに頷いた。
「だ…だから…その…」
「マリオス…何を迷ってるんだい?」
「えっ…」
「そうだぜ嬢ちゃん。ここにいる奴はそんな後の事なんか考えちゃいねぇよ。
今俺達がしなきゃいけない事はあいつを追ってぶちのめすことだろ?」
「そうだよマリオス。僕達はどうしても行かなきゃいけないんだ。
あの人のしようとしている事はやってはならない暴挙…それを止めにいかなきゃ。」
「当然だな…途中下車したんじゃ寝覚めが悪いぜ。」
「うんうん。こう言っちゃなんだけどさ…
それが神器に選ばれた私達の使命だっていう風にも考えられるしね。」
マリオスの不安は全員のそんな言葉に吹き飛ばされてしまった。
「マリオス…僕達は何をしたらいいんだい?」
「…うん…それじゃ、みんな手を繋いで一つの輪になって。」
そう言われ全員が順々に手を繋いでいく。
「これでいいかい?」
「うん。それで心を落ち着かせて…何も考えず心を無にするの…静かに無事に辿り着けるように祈って…」
「………」
全員が静かに目を閉じ祈りに入ると、マリオスもそれに続いた。
「…お母さん……私に…力を貸して…かの場所に私達を導いて…」
そして…ギザロフの魔力を追い転移したのだった…
数瞬後、ロディ達の目の前に異様な光景が広がっていた。
どんよりと黒い闇に包まれた空…枯れ果て力無く立っている木々…
そして…眼前に広がる廃墟と呼ぶにふさわしい街並み…
「こ……ここは…?」
「…死都…ゴルファダ……」
全員がそう疑問に思った時、マリオスがそう呟き漏らした。
「マリオス…?いま…なんて?」
「ここはユグドラシアとの最後の戦いの舞台となった街ゴルファダ…
神器を持った聖戦士達が決死の覚悟で奴へと挑み…そして…
ラーナの手によって街ごと封印された場所なの…」
「ま、街ごと!?」
「えぇ…この都市に進行してくるユグドラシアを都市の中で迎え撃ち、
何とかユグドラシアに致命傷を与えたものの損害も大きく聖戦士達も半分に減ってしまった…
倒す事が敵わぬと悟った聖戦士達が取った行動はユグドラシアの封印だった…
ラーナにその役を託しそして…聖戦士達を足止め役とし奴を封印したの…」
「で、でも…それがどうして街ごとに…」
「…それがユグドラシアの最後の抵抗でした…
自分の道ずれにと考えたのがこの街と…残った5人の聖戦士達だったの…
戦いが終わって…残ったのは一面の荒野と10個の神器だけだったわ…」
「そ…そんな事があったなんて…でも、何でマリオスがそんな事を?」
「私の…女神としての記憶が…そう教えてくれたの。」
「…くっくっく…予想はしていたがよもや本当にやってくるとは…愚かなり…」
「!?」
突如何者かの声がしたかと思うと目の前の地面が歪み一人の魔人が姿を見せた。
「お、お前はあの時ウィンディアに現れた…魔人ヴォルケス!!」
「クラウディアの出来損ないか…まだ生き長らえていたとはな…
だが、お前達をここから先に通す訳にはいかない…ユグドラシア様の復活は邪魔させはしない!!」
「くっ!!」
魔人を前にしロディ達も武器を抜き構えた。
「それにしても…お前がここまでやるとは思わなかったぞ出来損ない。
やはり…あの時始末しておくべきだったか…」
「…あの時?」
「知らなかったのか?お前の兄達を操りグレックを殺すように命じたのは他ならぬ私だったのさ。
それにしても…私の力をやったと言うのにしくじるとはな…あの二人も出来損ないだったか。」
「えっ…?」
そう言われ思い返してみる…
サイレスは魔人から力を授かったと言っていた…確か…その魔人の名は…
「お前が…お前が父さんや兄さんをっ!!」
「レイ…」
「さぁ来るがいい…ユグドラシア様の復活を止めさせはしない!!」
「くっ…みんな!こいつを倒して一刻も早く…」
「待ってくれ…ロディ。」
今にもロディが斬りかかろうとした時、レイがそう呼び止めた。
「ど、どうしたんだいレイ?」
「…僕らにはあまり時間が残されていない…ここは僕に任せて先に行ってくれないかい?」
「レイ…」
「お願いだ…こいつに時間をかけユグドラシアが蘇ったらどうしようもない…
それに…こいつは父さんと兄さんの……だから…」
「…分かった、ここは任せたよレイ。」
「…ありがとう、ロディ。」
「だけど約束だよ…必ず追いついてくるって。」
「もちろんさ。」
そんなレイの答えを聞き安心したロディは残りの全員と共に先へと進み始めた。
「…愚かな…お前一人で我に勝つつもりでいるのか?」
「そんな事…やってみれば分かるさ。」
そう言いレイが剣を抜き構えヴォルケスと対峙した時、
「レイ!私も…一緒に戦うわ!」
そう言いながら先に行ったはずのシスティが現れた。
「シ、システィ…どうして…」
「レイには色々お世話になったし…始めてあった時も私を助けてくれた…だから今度は私が助ける番だよ。」
システィはそう言うと自身も剣を構えヴォルケスと対峙する。
「…システィ……ありがとう…」
そんなシスティの行動にレイはそう呟き漏らすのだった…
レイ、システィの両名を残しロディ達は尚もゴルファダの廃墟を駆け抜けていた。
「ロディ…段々ユグドラシアの気配が大きくなってる…」
「大きくなっている?…あいつに近づいているって事かな?」
「それもあると思うのでござるが…復活が近づいているのでござろう…」
紫苑のその冷静な呟きに一同は沈黙する…
「……!!止まって!みんな!!」
突然のマリオスの叫びに全員の足が止まった。
「ど、どうしたんだいマリオス?」
「……何か……いる!」
「…ふはは…よくぞ気が付いたな。さすがはあのラーナの血を引きし者と言う事か。」
「!?この声…よもや!!」
そんな笑い声と共に目の前にまた新たな魔人が姿を見せた。
「我が名は魔人アルケオ…ユグドラシア様が命によりこの先に行かせる訳にはいかない。」
「アルケオ……ようやく…ようやく見つけたでござるよ!!」
アルケオの姿を見るや否や紫苑は刀を抜き構えた。
「紫苑…?」
「何だお前は?…よほどの無作法者のようだな…」
「ほざけ!…神でのお主の犯した罪…忘れたとは言わせぬぞ!!」
「神……?あぁ、あの弱小国か。俺を楽しませるには不十分だったが、準備運動ぐらいにはなったぞ。」
「貴様っ!!」
「まさか…こいつが紫苑が探してた…」
「そうでござる…この顔…こやつこそがわが仇敵!!」
「こいつが……宗孝様を!」
そう呟く夕華の手は自然と神風へと伸ばされていた。
「ロディ殿!こやつは拙者が引き受け申す。ロディ殿達は先へっ!!」
「紫苑…だけど…!」
「そんな勝手な考え…誰が許すと思ったか!」
「…くっ!!」『ガキィッ!!』
飛び掛ってきたアルケオの一撃を夕華が受け止める。
「私達なら大丈夫です…早くっ!」
「……分かった…紫苑!夕華!先に行ってるから!!」
そう言いながらロディ達はアルケオの脇を走り抜けてゆく。
「くっ…こしゃく…!?」
『ギンッ!!』
その後を追おうとしたアルケオだったが二人にそれを阻まれてしまった。
「何処を見ておる…お主の相手は拙者達でござるよ。」
「…いきがるな…人間がっ!」
「夕華…行くでござるよ。」「うん…紫苑。」
二人はロディ達を先に行かせる為にアルケオの前に立ちはだかるのだった…
ただひたすらと…だが立ち止まる事無く進むロディ達…
そんなロディ達の視界の先に神殿らしきものを見つけた。
「ロディ…感じる…あの神殿からユグドラシアの気配を…!」
「あそこに…奴が…」
ロディ達は一時立ち止まり神殿を見つめる…
異様なまでの魔気を放つその神殿はただ大きく姿を構え、まるでロディ達を歓迎しているかのようにも見えた。
「…よし…行こうか!」
「何処へ行こうって言うんだい?」「!?」
先へ進もうとしたロディ達の目の前の地面が揺れ動き中から魔人が姿を見せた。
「…お前は!!」
「おや…私の顔を覚えててくれたのかい?そう…魔人ザルエラ様さ。」
「ふん…手間が省けたぜ…まさかそっちから出てきてくれるとはな。」
そう言いながらジェントは剣を抜いた。
「おやおや…相変わらず血気盛んな子だね…」
「ほざくな…ロディ!こいつは俺が殺す…先へ行け。」
「ジェント…君までそんな…」
「勘違いするな…もともとそういう約束だっただろう。
俺はこいつを倒す為…その為にお前達と手を組んだんだろ?ならここでそれもお終いだろ?」
「……うん…そう…そうだったよね。」
「分かったらとっとと行け。足手まといだ。」
「…でもねジェント…これだけは約束してくれないかい…」
「…?何を…」
「生きて……必ず追いついてきてよ。」
「…あぁ…安心しろ俺はそう簡単に死なん。」
「…うん、その言葉…信じるよ。」
ジェントにそう笑顔で応えロディ達は先へと進み始める…
ジェント…そしてもう一人の人影を残し…
「…それで…お前は何のつもりだ?」
「ふみ?」
「お前も早く行け…邪魔だ。」
「でも…ジェントちゃん一人じゃ危ないです。」
「お前がいるほうが余計に戦いずらい…いいから早く行け。」
「でもでも、セアラはジェントちゃんの力になるって決めたんです…だから…」
かたくなに拒むジェントをセアラがすがるような目で見つめる…
「……ったく…勝手にしろ。」
「ほんとですか?やったです〜。セアラ、がんばるです〜!」
そう無邪気に喜ぶセアラを見てジェントも何だかそんな気分になってしまう。
「…ふ、ふん…うかれるな…行くぞ!」「はいです〜!」
ジェント達と別れて数分後…
ロディ達はようやく神殿へと足を踏み入れることが出来た。
「すごい魔気……この中にいるだけでどうにかなってしまいそうなぐらい…」
「確かにな…そんな気かどうかは分からないが…俺でも分かるぜ、この威圧感…」
そんなことを呟きながらも奥へと進むロディ達は少し開けたホールのような場所にたどり着いた。
そして…その先にはより一層強い威圧感を放つドアがあった。
「…あそこから感じる…あの先にギザロフが…?」
「さぁな…気になるなら…こいつに聞いてみようぜっ!」
言い放つと同時にカインは飛び上がり何もない空間を斬り付ける!
するとその空間は歪み始め徐々に何かを形どり始めた。
「我が気配よくぞ見破った…我魔人ヒュポグリフ…我が名にかけこの先には進ませんぞ。」
ヒュポグリフはそう言うとロディ達の前に静かに立ちはだかった。
「ボウズ!こいつは俺が引き受ける。お前は嬢ちゃん達を連れて先に行け!」
カインも奴と対峙するように槍を構えそう言い放つ。
「カイン…」
「そんな顔すんな…安心しろ、コイツ如き俺一人で十分。…必ず追いつくからよ…先に行け!」
「……行こう。マリオス、ルフィミア。」
ロディは小さく礼をし先へと進みだす。
二人もそれに続き駆け出すが…
「カインさん…私も一緒に…」
ルフィミアが心配そうな表情で言いかけるがカインによって阻まれる。
「心配ねぇよ。…嬢ちゃんは何があってもボウズの傍に居てやってくれ…
あいつは一人で無茶しすぎる…ちゃんと支えてやってくれ。」
「……分かりました…でも…うぅん、また…後で。」
「おぅよ!」
カインを諭すつもりが逆に諭されてしまいルフィミアも二人に追いつく為に駆け始めた。
「…愚かな…全員でかかってくれば我に勝てたかもしれぬというのに…一人無駄に命を散らすか…」
「…無駄なんかじゃないさ…お前は…俺がぶっ潰す!!」
…カインがヒュポグリフと対峙した頃…レイ達は…
「はぁっ!!」
レイが思い切り踏み込みヴォルケスを斬り付ける!
「ぬんっ!」『ギッ!!』
しかしその一撃をヴォルケスは自身の爪で受け止めた。
「くっ…」「むぅ…」
「レイ!そのままで…アストラル・ソード!!」『ヒュゴッ!!』
そんな二人に向かい風を切りながらシスティの飛翔剣が放たれる。
「ぐぅっ!!」
それは的を外すことなく狙い通りにヴォルケスにヒットした。
「今だっ!スラムスラッシュ!!」『ドゥッ!』
その隙を逃さずレイの追い討ちがヴォルケスへと決まった。
「これで…」
「くくく…中々やるな…さすがはラーナ神器に選ばれただけはあるな…」
しかしヴォルケスはその一撃を受けても尚平然と立っていた。
「こいつ…強くなっている…」
「当然だ…魔人として超越した力を持った私達が…みすみす人間如きに遅れをとるはずが無いだろう?」
「やっぱり一筋縄じゃ行かないか…だけど負ける訳には!」
「…システィ…ごめんね、僕の敵討ちなんかに付き合わせちゃって…ほんと感謝の言葉も浮かばないよ。」
「…そんな…私は特に何も…」
「そんな事無いよ。…いつか…お返ししなくっちゃね。」
「…そ、それならさ…この戦いが終わったら…私の我が侭…聞いてくれないかな?」
「我が侭?…僕でよかったらいくらでも聞いてあげるけど…」
「ほんとに?よ〜し…私…がんばっちゃうよ。」
そう言いながらシスティは前に歩み出た。
「どうした…命乞いでもするか?」
「誰がそんな事…」
そう答えながらシスティはフォースソードを廻し始めた。
「あんたに特別に見せてあげるよ…我がウィンディア飛翔剣の極意を…」
「なに…?」
システィの剣の回転が進むにつれ回りの空気が揺れ始め急激に温度が下がり始める。
「受けろ…これがウィンディア最高奥義!シルバー・ブリザード!!」
やがてそれは凍える吹雪となりヴォルケスへと放たれた。
「こ、こんな事がっ!!」
「竜騎士の技は時には天候すらも揺るがすわ…凍り付けばこの世に砕けぬものはなし…これで、終わりよ!!」
システィはそのタイミングを計りヴォルケスへと向かう…が。
「…図に…乗るなっ!!」『ドスッ!!』
視界ゼロの世界でヴォルケスの拳はシスティを捉えた。
「なっ…あぐっ!」
続け様にシスティの首を掴み持ち上げる。
「人間…面白い物を見せてもらったな…お返しに俺の特別も見せてやろう。」
今度はヴォルケスの周囲の空気が揺れ始め急激に温度が上がってゆく。
「な…にを…」
「これが俺の力…ヴォルケニック・ゲイザーだ!!」
『ドォォゥゥッッ!!』
そう叫ぶと同時にヴォルケスの周囲から炎の嵐が巻き起こりシスティを包み込んだ!
「くっ……あっ…あぁっ!!」
その凄まじいまでの炎の嵐はシスティが巻き起こした吹雪などいとも簡単に消し飛ばしてしまった…
「ふん…さすがは竜騎士の防具か…多少の炎では燃え尽きないと聞いていたが…俺の炎でも燃え尽きないとはな。」
にたりと笑うヴォルケスとは対照にシスティはぐったりとうなだれていた。
「つまらん……ほらよ。」『ブンッ!』
「システィ!!」
ヴォルケスが乱雑に投げ出したシスティをレイは何とか受け止める。
「うっ…あぅ…」
受け止めたシスティの体はあちこちに火傷が見えなんとも痛々しいものだった。
「システィ…」
「レ…イ…ごめん…ね。わたし…レイの力になるって…言ったのに…足で…まとい…だったね。」
心配そうに覗き込むレイにシスティがそう小さく謝罪する。
「…そんな事…そんな事ないよ…待っててすぐかたをつけて治して上げるから…」
レイはそう言いながら手近な岩場にシスティを寄り掛からせるとヴォルケスへをにらみ返した。
「ヴォルケス…お前だけは…生かしてはおけない…初めて誰かを殺したいって言う感情を憶えたよ…」
「ほざけ…貴様如きに俺が倒せると思ってるのか?」
「あぁ…出来れば…これだけは使いたくは無かったよ…でも…今再び…これを使わせてもらう…」
そう呟くレイの手に魔力が渦巻きだす。
「魔法…?そんな物で俺を倒せると…」
「魔法…ね…そんな生易しいものじゃないさ…これは…」
次第にレイの魔力が目に見えるほどの奔流となり吹き荒れだす。
「天よ…地よ…我願う…集いその力…全てを砕かん…」
「こ…この呪文……ま、まさかっ!?」
「女神ラーナの名において!!」
そう詠唱を終えたレイ目はは脅えるヴォルケスを捉え…そして…
「アルティミット・バースト!!」
発動と同時に白き一筋の光がヴォルケスへと向けられたと同時に凄まじいまでの閃光爆発が巻き起こった。
「ぐ…ぐぉぉぉぉっっ!!」
その凄まじいまでの爆発はヴォルケスの周囲にあったありとあらゆる物すらも消し飛ばしてしまった。
そして…爆発が収まった時には膝をつき息を吐くヴォルケスの姿があった。
「はぁ…はぁ…ば、ばかな…この呪文は…神々の…!?」
だが…その間にレイは次の行動をとっていた…
「神剣ジャスト・ブリードよ…僕に応えろ!ライトニング・バスター!!」
「ばか…な…ぁ。」
その言葉を最後にヴォルケスは霧となり散っていったのだった…
「レ…レイ…いつっ。」
「システィ、無茶しないで…君の方が遥かに重傷なんだから。今治して上げるからね。」
そう駆け寄るとレイはシスティに回復呪文を掛けはじめた。
「システィ…ありがと。おかげで父さんと兄さん達の敵がとれたよ。」
「そ、そんな…わたしは…大した事なんかしてないよ…足手まといになってばかりで…今だって…」
システィが痛みで動かない手を悔しそうに見つめながらそう答えた。
「そんな事無いさ、システィが居たからこそ僕はあいつに勝てたんだ…
君が居たおかげであの呪文を使う決心がついたんだから。」
「そう言えば…あの呪文って…わたし聞いた事無かったんだけど…」
「それはそうだと思うよ。あの呪文…子供の頃に見た聖典に記されていた神々の呪文だからね。」
「神々の…呪文?」
「…子供の頃の好奇心でさ…必死に練習して使ってみた事があるんだ。」
「…どう…なったの?」
「……そこにあった森…そして川の形すらも変えてしまうほどの呪文だった…
それ以来二度と使うまいと封印していたんだけどね…システィが危ないって思ったら…自分を抑えられなくなったんだ。」
「レイ…」
「でも…正直かなり怖かった…またあの時のような事になったら自分はおろかシスティすらも犠牲にするとこだったんだから…
本当に良かった…システィを守りたいって思ったから正しく使えたのかな?」
「レ…レイ……わたし…わた…」
「さて…これでもう良いと思うけど…システィ、まだ痛いとことかある?」
「えっ?…あ…うん…大丈夫…みたい…」
システィがレイに寄り掛かろうとした瞬間レイにそう言われシスティは自分の体を動かしてみた。
結果特に痛みも感じられず普段と変わらぬ様子だった。
「良かった…それじゃあ、早くロディ達に追いつかなきゃね。」
「あ……う、うん。」
何だか呆気にとられた表情をするシスティを疑問に思いながらも二人はロディ達に追いつく為に走り始めたのだった…
その頃…魔人アルケオと対峙した紫苑達は…
「でやっ!」「ふん…」
もう何度目かも分からない紫苑とアルケオのぶつかり合い…
対峙し始めてからずっとこれを繰り返していたのだった。
「無駄だ!」『ドゴッ!』
「ぐぁ…」
「紫苑!!」
アルケオに弾かれた紫苑に夕華が歩み寄る。
「こやつ…強い…こうまでも力に差があったとは…不覚…」
「どうした…もう終わりか?」
アルケオは余裕の表情を浮かべながら二人を見つめる。
「紫苑…やっぱり二人で一度に仕掛けた方が…」
「それは出来ぬ…こやつを…正面から破ってこそ…宗孝殿の無念を晴らせるもの…拙者は…諦めぬでござる。」
紫苑はそう言いながら再び立ち上がった。
「そうか…ならば一思いに消してやろう…くらえっ、デッドリーウェッジ!!」『グォゥッッ!!』
アルケオのそんな言葉と共に凄まじい衝撃波が放ってきた。
「くっ…天命衝霊破!!」『ドォゥッ!!』
それに対抗し紫苑も衝撃波を放った…が、二つがぶつかった次の瞬間には紫苑はアルケオの衝撃波の直撃を受けていた。
「なっ…!?」
「紫苑!!」
それに吹き飛ばされ紫苑は後方にあった建物へと叩きつけられたのだった…
「な…拙者の技が…通じぬ…とは…」
「どうした?私を討ち取るのではなかったのか?」
「くっ…な、なにを…」
紫苑は何とか起き上がろうと試みるが体の自由が利かず立ち上がる事が出来なかった。
「立つ事も出来ないのか…ならば、今楽にしてやる…」
そう言いながら先程放ったように両手を振り上げ…
「無念…」
その様子に諦めた紫苑が全身の力を抜き待ち構えたが一向にそれは放たれなかった。
「なっ…体が…動かん…!!」
「十六夜流…影縛り…」
アルケオの後ろから夕華がそう呟きながら近づいてきた。
「ごめんね…紫苑…でも…私の目の前であなたを殺させはしない!!」
「夕華…」
「貴様…こしゃくな…!!」
「アルケオ…宗孝殿の敵…とらせて貰うわ…受けよ、十六夜流…月影の太刀!!」
「魔人を…なめるなぁっ!!」『ドゴォゥッッ!!』
夕華が斬りかかろうとした時、アルケオは力任せに呪縛を断ち切ったと同時に夕華を殴り飛ばした。
そんなアルケオの行動を予測できるはずも無く夕華は弾け飛ばされ紫苑とは逆方向にある建物へと叩きつけられた。
「小賢しい…貴様から消してやろう…」
そう呟きアルケオがゆっくりと夕華へと歩み寄ってくる。
だが…夕華はそんなアルケオに対し一矢報いるどころか体を動かすことすらままならなかった。
「くっ…!」
夕華はその瞬間自分の不甲斐なさを悔やんだ。
自分はこれほどまでに弱い存在だったのかと…
「苦やしむことは無い…こうなる事は初めから分かっていた事なのだからな。」
そう告げたアルケオの手が夕華へと向けられた時、
「まだ…まだ終わっておらぬでござるよ…」
紫苑がそう呼び止めた。
「ほぅ…まだ私と戦う勇気があったのか。」
アルケオはそう言いながらシオンの方に向き直った。
「拙者はどうやらこだわりすぎていた様でござるな…拙者一人でお主を倒すという事に…
これは戦…過程がどうであろうと勝たなければならないと言う事を…」
「ふん…ならばどうする?二人同時にかかって来てみるか?」
「いや…拙者一人で十分でござる…もう一人の拙者一人で…」
「もう一人の…貴様だと?おもしろい、やってみるがいい。」
「…後悔…なさるなよ…」
そう呟き紫苑は静かに刀を構えた…
「漸鉄よ…今永き眠りより目覚め…我に応えよ、夢夜叉!」
その言葉と共に紫苑の刀が蒼白い光を帯び始めた。
「臨…兵…闘…者…界…陣…烈…在…前!」
『ゴォォゥッッ!!』
凄まじい突風…そして、先程までとはうって変わった冷たい空気…
そんな中…紫苑の目は燃え盛る炎のように赤く、髪は銀色へと変貌していた。
「暫くぶりだな…外の世界は…」
紫苑が自分の体を見つめながらそう呟く。
「あ…あいつは…」
「それがお前の本当の姿か…おもしろい。」
「本当の姿…?そうでもあり、そうではないな…」
冷たく笑い紫苑は刀を構えた。
「ふふ…それで、私には勝てるのか?」
「無論だ、貴様など…物の数にも入らんよ。」
「なっ!?…その自信……いま打ち砕いてくれるわっ!!」
そう叫び紫苑へと向かっていったアルケオの拳は何もない空を切った。
「なっ…」
「終わりだ…」
そしてアルケオが驚く間も無くシオンは一太刀でアルケオの体を真っ二つに斬り裂いていた。
「ふん…つまらん相手だった…」
そう言い刀を納めた瞬間、紫苑は元の姿へと戻っていた。
「し…紫苑…よね?」
「…夕華…大丈夫でござったか?」
振り返った紫苑はもういつもの紫苑そのものだった。
「紫苑!!」
夕華は痛む体を無視して紫苑の胸に飛び込んだ。
そして涙を流しながら何度も紫苑の名を呼び続けた。
「夕華…心配を掛けてすまなかったでござる…」
「ばか…ばか紫苑…いつもいつもそうやって…勝手な事ばかりして…ばかぁ…」
そう繰り返す夕華を紫苑はそっと撫で下ろし優しく包んだ。
「夕華…そろそろ先に行かねば…ロディ殿に…追いつかなければ…」
「えっ!?し、紫苑…そんなの…紫苑の体…傷だらけなのよ!?」
「し…しかし…このままここで体の回復を待っても…」
「大丈夫だよ、紫苑。僕が治してあげるから。」
そう言いながらレイとシスティが追いついて来た。
「レイ…システィ…無事だったのね。」
「もちろんだよ。さぁ早く傷を治してロディ達に追いつこう。」
「…レイ殿…かたじけない…」
紫苑の言葉にレイは静かに頷き傷の手当てを始めた。
二人には分かっていたのだった…戦いはまだ終わっていないと言う事が…
〜後編に続く〜