ピピピ…ピピピ…ピピピ…
朝日が差し込む室内にそんな目覚ましの音が響き渡る。
「…う…う〜ん…むぅぅ〜…」
その音を止めようと小さな手がベットからはいでてきて必死に目覚ましを止めようと奮闘する。
ピピピ…ピピピ…ピピピ…
だが中々その音を鳴りやますことが出来ない。
「うにゅ〜……と…止まって。」
ピピ……
そんな声と共に放たれた静かな一撃が目覚ましにスイッチに当たりようやく静かな時が戻ってきた。
「はう〜…お弁当…作らないと…」
そう決心するとベットからもぞもぞと起きあがった少女はいつもの制服に身を包んでいく。
そして着替え終わると自分の日課でもある朝食作りとお弁当作りを始める。
彼女の名前は『野々村 小鳥』。
この春から風芽丘高校の二年生になった少女である。
幼い頃両親が離婚し父親に引き取られ現在は父親と二人暮し。
雑誌社に勤める多忙な父に代わりに野々村家の家事全般をこなしている。
基本的に朝遅く出勤時間がバラバラな父の朝食とお弁当…
そして幼馴染で無二の親友でもある『鷹城 唯子』のお弁当作りが彼女の毎日の日課になっているのだ。
そんな日課以外はきわめて普通の少女である。
「…ごちそうさまでした。」
いつもの様に一人の朝食を済ませその後片付けをし、
いつもの様に父親へのメモ書きと朝食を用意し…
「それじゃあ…行ってきます。」
そして…いつもの様に返事の戻ってくることのない挨拶と共に学校へと出かけて行く…
…普通に考えたらとても寂しい日常…
だが小鳥はその日常を別段どうするわけでもなく受け止めている。
確かに始めの頃は寂しくて泣きそうになる事もあった。
だが…小鳥がそんな事を考えるたびに二人の幼馴染が小鳥の側にいてくれた。
一人は『鷹城 唯子』…そしてもう一人は…
「おっ…小鳥。今日もちっこいな。」
「うん。そう言う真くんも今日も美人だよ。」
小柄な体格に整った顔立ち…小鳥が『真くん』と呼ぶ少年。
彼が小鳥のもう一人の幼馴染『相川 真一郎』なのだ。
「真くん。今日のジョギングどうだった?」
「それがよ…唯子の奴が俺の事散々振り回すもんだから大変だったぞ。」
「あぁ〜!しんいちろそんな事言うんだ。真一郎の方から一緒に走ろうって頼んできたくせに〜…」
そんな怒声をあげながら後ろから唯子が追いついてきた。
「あのなぁ…俺は久しぶりの運動だったんだからもうちょっと手加減をな…」
「唯子ちゃんと手加減したもん。いつもの半分の量にしてあげたもん。」
「…お前はいつもの半分で10キロも人を連れ回すのかよ…」
「むぅ…そんな事言うならもう一緒に走ってあげないからね。」
「もぅ…二人とも、そろそろ急がないと遅刻しちゃうよ。」
「もうそんな時間か?ま、この場は小鳥に免じて引き分けにしといてやろう。」
「うぅ〜…なんか引っかかる言い方だけどそう言う事にしとく…」
「あははは…」
そんな二人の幼馴染に囲まれ過ごして行く日常…
そんな毎日がずっと続いて行く…そう思っていた冬の1日だった…
誰にも負けない 小さなハート
「……と言う事でこの筆者が言いたい事は……」
そんな授業の内容が小鳥の耳を右から左へと抜けて行く。
先程から授業の内容が全くといって良いほど頭に入ってこないのだ。
と言うか、ここ数日こんな調子が続いているのだ。
そうと言うのも小鳥の中にある一つの悩みのせいだった。
その悩みと言うのが…
キーン…コーン…カーン…コーン…
「はい…それじゃ今日はここまで。今日やった所はテストに出るからな。」
そんなチャイムと共に授業は終わり昼休みになった。
「こっとりー。お昼食べにきたよ〜。」
「あ…うん、すぐ片付けちゃうね。」
今日は週に3日ある唯子とのお弁当の日なので二人分のお弁当が小鳥の机に並ぶ。
「えへへ…そんじゃ、いっただきま〜す。」
「いただきます。」
そして二人がお弁当を食べ始めた頃、小鳥の悩みの種が姿を見せたのだった。
「よっ、今日も襲撃にきたぜ。」
「あ〜しんいちろ。唯子のお弁当はあげないからね!」
「ふ…そこだー!」
唯子が自分のお弁当を手で隠そうとした矢先、真一郎の手はお弁当のおかずを抜き取っていた。
「あぁ〜…唯子のニンジン〜…」
「わははは…まだまだガードが甘いな、唯子。」
「ことり〜…しんいちろが唯子のニンジン取った〜」
「………」
「小鳥?…もしっもーし…こーとーりー。」
「…ふぇっ?な、なに…どうしたの?」
「…どうかしたの、小鳥?何かボーっとしてたけど…」
「えっ?…えっと…そ、そう…くしゃみが出そうだったんだけど…出なかっただけ…」
「そうなの?小鳥…風邪…ひいたの?」
「そ…そうかも…大したことはないと思うけど…」
「そうか、あんま無理するんじゃないぞ小鳥。風邪は引き始めが肝心だからな。」
「う…うん。気を付ける…」
小鳥がそう答えると再びお弁当タイムの空気に戻った。
先程はうまくごまかせたがどうも悩んでいるのが顔に出てしまっているようだった。
そう…小鳥の悩みの種と言うのは他でもない、真一郎の事なのだ。
最近…何だか真一郎の様子がおかしいのだ。
それと言うのも今回のようなお弁当タイムにやって来るのはとても珍しい事だった。
以前は月に1回来るか来ないかだったのだが、最近は毎日やってくるのだ。
それだけではないく、毎日の様に放課後一緒に下校しようと誘ってくるし、
授業の合間の小休憩の時に唯子や唯子と同じクラスの『御剣 いずみ』と話してたりするのだ。
以前ならあまり取らなかった真一郎のそんな行動が小鳥は何となく気になっていたのだった…
1日の授業が終わり放課後…小鳥はこの間借りた本を返しに図書室に赴いた。
「あっ…野々村先輩。先輩も試験勉強ですか?」
そんな矢先小鳥の前にやって来た一つ下の少女…『綺堂 さくら』。
彼女とは以前裏庭で猫と戯れている時に知り合い、それからこうして何度か話をする仲になったのだ。
「うぅん、私は前借りてた本を返しにきただけなの。」
「…そうですか…それ…恋愛物の小説ですよね?…野々村先輩はこういう話が好きなんですか?」
「う〜ん…わりと…かな?さくらちゃんはどんな本を良く読むの?」
「そうですね…私はあまりこだわらない方ですね。」
「おっ…小鳥、こんな所にいたのか?」
自分の一つ下とは思えないほど雰囲気の違ったさくらと話していると後ろから真一郎が顔を見せた。
「あっ、真く…じゃなくて、相川くん。」
いつもとは違った呼び方で真一郎を呼ぶ小鳥…
彼女は自分とよほど親しい人間の前でしか真一郎の事を『真くん』とは呼ばない。
もし他人がそれを聞いて二人の仲を誤解されては真一郎に迷惑が掛かるとの小鳥なりの気配りなのだ。
「小鳥、試験も近い事だし一緒に勉強でも…って、綺堂さん?」
「あっ…この前はご迷惑をかけました、相川先輩。」
そんな挨拶を交わす二人…その二人をぽかんとした様子で小鳥は見つめていた。
「相川くん…さくらちゃんと知りあいだったの?」
「んっ…あぁ、この前廊下で…ちょっとな。」
「貧血で倒れた私を相川先輩が保健室に運んでくださったんです。」
「そうなんだ…」
小鳥は『真くんなら迷わずそういう行動を取るよね…』と感心すると同時に、
誰にでも優しい真一郎の行動に胸の奥がちくりと痛むのを感じた。
(そう…だよね。真くん優しいもんね…私にも…唯子にも…他の皆にも…ちょっと妬けちゃう…
って、私…何考えてるんだろう…真くんにとっては私はただの幼馴染でしかないんだから…)
「…ところで、野々村先輩と相川先輩はどういうお知り合いなんですか?」
「あぁ、こいつともう一人…唯子っていうのがいるんだけど、古くからの付き合いでさ…幼馴染って奴だよ。」
「へぇ…いいですね、そういう友達がいるのって。」
「まぁね…って、あんまここで話してると図書室の人達から睨まれそうだな。」
「そうですね…すいません、なんか引き止めちゃったみたいで…私、そろそろ帰りますね。」
「そう?それじゃあ俺達も帰るか。」
「……あ…う、うん。そうだね…」
「…?どうかしたのか、小鳥?さっきからなんか様子がおかしいけど…」
「えっ?…な、なんでもないから…」
「…お前、やっぱ風邪引いたんじゃないか?お昼んときも調子悪そうだったし…」
「そうなんですか?それじゃあ、野々村先輩早く帰って早めに治した方が良いですよ。」
「う…うん…そうする…」
「それじゃ…私帰りますね。野々村先輩、お大事に。」
「うん…ゴメンね、気を使わせちゃって。」
「綺堂さんも気を付けて帰ってね。この前噂の痴漢が捕まったけど他にもいるかもしれないから。」
「はい…それじゃ、失礼します。」
二人に一礼しさくらは図書室を後にした。
「そんじゃ、俺達も帰ろうか。小鳥の体調もあんま良くなさそうだし。」
「うん…ゴメンね真くん。」
「気にすんな。お前は俺の大事ないじめ相手の一人だからな。」
そう言いながら屈託のない笑顔を見せる真一郎…小鳥はそんな真一郎の笑顔が好きでもあり嫌いでもあった
何故ならその笑顔は小鳥だけではなく他の誰にでも向けられる笑顔だと小鳥は知っていたからだった…
自分の中にあるこのモヤモヤが一体何か分らず、あれから数日した今でも小鳥の悩みは晴れぬままだった。
(…私…一体どうしちゃたんだろう…まるでいつもの私じゃないみたい…)
「あら…野々村さん、こんにちは。」
そんな考え事をしていると唯子の先輩で護身道部の主将『千堂 瞳』が声を掛けてきた。
「あっ、千堂さん。」
「…?どうかしたの、何かちょっと表情が暗いけど…?」
「そう?…そうだ、丁度良かったら野々村さん、少し私に付き合ってくれない?」
「え…?別に構いませんけど…何をするんですか?」
「あのね、今からピアノを弾きに行こうと思うんだけど…少し付き合ってくれないかな?」
「ピアノ…ですか。別に構いませんけど…」
「ホント?それじゃ行きましょうか、ごめんね…一人で音楽室に行くのって何だか寂しいのよね。」
瞳にそう言われ小鳥は一緒に音楽室へと足を運んだ…
音楽室につくと瞳は手馴れた手つきでピアノの鍵を開けその前に腰を掛けた。
「それじゃあ…僭越ながら弾かせてもらうね。」
瞳のそんな言葉に拍手を送り小鳥は瞳の演奏に耳を貸した。
瞳が弾き始めた曲…それは小鳥もよく耳にした事がある曲だった。
昼下がりの音楽室に流れる優しい旋律…
そんな旋律を聞いていると自然と自分の体も曲にのり動いてしまう。
そして気が付くと小鳥は瞳の隣に立ち歌声を口ずさんでいた。
そんな小鳥に気が付いたのか自然と瞳も一緒に唄っていた。
……そして唄い終わった時小さな拍手をしながら真一郎がやって来た。
「あわわ…相川くん、いつからそこに?」
「いや…結構前からいたんだけど…何だか声かけられなくてな。あっ、千堂さんこんにちは。」
「相川くん、遠慮せず声掛けてくれれば良かったのに。」
そんな談笑交わす二人に小鳥は再び心の奥底が痛むのを感じた。
「あ…相川くんは千堂さんとはどういう関係なの?」
「へっ…?いや…どうって…たまに唯子の道場に行って話をする仲かな?」
「そうね…そんな感じね。それじゃあ野々村さんとはどういう関係なの?」
そんないつもの質問…そして答えもいつもと同じ…はずだった
「小鳥は実は俺の彼女なんですよ。こいつ、可愛い奴でしょ?」
そう言うと真一郎は小鳥を後ろから抱きしめ髪に自分の頬を摺り寄せてきた。
「え…えぇぇっ!そ…そんな事ない…ちが…真くん!何言ってるの!?」
小鳥は自分が何を言ってるのかもあやふやに真一郎の腕の中でじたばたと暴れる。
「本当なの、相川くん?」
「いえ…本当は幼馴染って奴ですよ。こいつ、可愛いでしょ?」
「そうだったの?私はてっきり可愛いカップルさんだなって思ったのに…」
「そそそ…そんな事…」
「あ…そろそろ行かなきゃ…それじゃまたね、二人とも。」
そう言い笑顔を残し瞳は教室を後にしていった。
「し、真くん!何て事言うの!…あんな事言って千堂さんに誤解されてたらどうするつもりだったの!?」
「わ…悪い…ごめんな小鳥。俺…ちょっと調子に乗りすぎた…軽い気持ちで小鳥を傷付けて…本当にごめん」
「……もう絶対に…あんな事しないでね。あんな事してると、真くん…彼女さんできなくなっちゃうからね。」
「……約束する。軽い気持ちで絶対に小鳥を傷付けたりはしない。」
「…それなら…今日お買い物に付き合ってね。今日は特売日だから。」
「分かった、荷物持ちでも何でも付き合うよ。」
真一郎が真剣に謝ってくるので小鳥も自然といつもの表情に変わっていく。
ただ…口では怒っていたものの気持ちはそんなに悪いものではなかったのだった…
試験も終わり終業式からの帰り道、小鳥は唯子に誘われ一緒に帰路についた。
「ねぇ小鳥?最近…元気ないけど、何か悩み事でもあるの?」
そう…唯子が今日小鳥を誘ったのはこの言葉だった。
最近の小鳥の様子は本当におかしく、話しかけても上の空、
登校中に電信柱にぶつかる事多々あり、他にも…とにかく相当に重傷な様子だった。
そんな小鳥をみかねて唯子は小鳥の悩みの原因を聞き出そうと下校に誘ったのだ。
だが…今の二人の間には一言も言葉が交わされてないままだった。
「ねぇ…小鳥。そろそろ、唯子に教えてくんないかな?」
唯子にそう言われるが当の小鳥も一体自分が何を悩んでいるのかが良く分らない状況だから、
一体何をどう説明をして良いのか、それさえもはっきりと分からなかった。
「…もしかして…唯子の事で悩んでるの?」
心配そうに覗き込んでくる唯子…そんな唯子の悲しそうな表情に後押しされ小鳥は徐々に口を開いた。
「…私にも…良く分らないの…」
「小鳥にも分んない…?どうゆう事?」
「…あのね…今まではね真くんと…唯子といられたらそれで良かったの…
けどね…ちょっと前から…そんな気持ちが変わってきて…
真くんが…唯子や…他の女の事一緒にいると…胸の奥がちくちく痛むの。」
「……そっか…それじゃあ、小鳥も唯子と一緒だね。」
「唯子と…?どういう事?」
「小鳥ね…真一郎に恋してるんだよ。真一郎の事が好きなんだよ。」
「私が…真くんを……」
「そうだよ。だから他の女の子と真一郎がいるとそれに嫉妬しちゃってるんだよ。」
「……そう…なのかな…」
「…うん…だって…唯子も…同じ気持ちになることがあるもん…」
「もしかして…唯子も真くんを?」
「…好き…だったよ。今は違う人が好きだけどね。」
「えっ…どうして?唯子はてっきり真くんが好きだったと思って…私…少し真くんから離れていたのに…」
「唯子じゃ…ダメだったの…真一郎の中には小鳥がいたから…唯子じゃ勝てなかったの。」
「…真くんの中に…私が…」
「小鳥…気が付かなかったかもしれないけど…真一郎はいつでも小鳥のこと見てたんだよ。
昔から…真一郎は小鳥のこと守っていたんだよ…」
「真くんが…私を……」
「そうだよ。…だから小鳥…真一郎を……」
キキキキキキキキキキーーーーーッ!!!!
唯子がそこまで話した時向こうの通路から物凄いスピードで車が走ってくるのが分かった。
「えっ…?」「あっ……」
二人はあまりの事態に驚き体は動かず立ち尽くすばかりだったが…
「唯子っ!!小鳥は任せろ!!!」
刹那、真一郎が飛び出しそう叫んでいた。
「う…うんっ!」
唯子は思いっきり地面を蹴りその場から飛び退き真一郎は小鳥を抱え飛ぶ。
「真くん!!」
小鳥が真一郎の名を叫んだ瞬間…自分自身にも強烈な衝撃が走った。
そして…真一郎の温もりに包まれながら自分の視界が真っ白になって行くのを感じた…
夢…夢を見ているような感覚だった…
…目の前にいたのは幼い頃の自分…そして真一郎と唯子…
小鳥に悲しい事があればずっと側に居てくれて…嬉しい事があれば一緒に笑ってくれる…
小鳥はそんな真一郎がずっと大好きだった…
でも…いつからだろう…素直になれなくなったのは…
真一郎…そして唯子が一緒にいる時に1歩距離を置き始めたのは…
そんな事を考えてると二人が自分を置いて何処かに行こうとしていた。
嫌だった…一人になる事も嫌だったけど、それ以上に唯子に真一郎を取られるのが嫌だった。
「嫌ッ!…唯子…真くんを取らないで!…私は真くんの事が…」
夢に向かいそう叫んだ時、再び視界は真っ白になっていった…
目を開けた時…目の前には自分の顔を心配そうに覗きこむ唯子の顔が見えた。
「…唯子…ここは…?」
「あっ…小鳥!良かった…気が付いたんだね?」
小鳥があたりを見渡すとそこは見た事がない真っ白な壁をした空間…
「唯子…私…どうなったの?」
「小鳥ね、真一郎に抱えられて車に撥ねられたんだよ。…小鳥の方は怪我はなかったけど…真一郎の方が…」
「…そうだ…真くん、真くんはどうなったの!?」
「幸い、骨や脳に異常はなかったけど…3週間ぐらい入院しなくちゃいけなくなっちゃったの。」
「そんな…真くんが…私をかばったせいで…」
「小鳥…真一郎の所…行こうか?」
そんな唯子の提案に静かに頷き小鳥は自分が寝かされていたベットから降りると唯子の案内に付いていった。
小鳥が寝ていた病室の隣の病室…そこに真一郎は寝かされていた。
全身の至る所に包帯を巻かれ、何とも痛々しい姿で真一郎はそこにいた。
「真くん…真くん!!」
そんな叫びをあげながら小鳥は真一郎に抱きつく。
「ごめんね…私なんかのせいで…真くんがこんな事に…ごめんね…ごめんね。」
そう泣き叫ぶ小鳥の頭にそっと…真一郎の手が添えられてきた。
「ばぁか…そんな事なんか気にしてんじゃないの…」
そう言いながら真一郎は小鳥の頭を優しく撫で続ける。
「し…真くん!」「しんいちろ、気が付いたの!?」
「あぁ…唯子…色々迷惑掛けたみたいだな。」
「う…うぅん。唯子、先生呼んでくるね。」
そう言うと唯子は静かな病院内をけたたましい騒音と共に駆け出していった。
「あいつ…ここが病院だって分ってないんじゃないか?」
「真くん…ごめんね。…私がとろくさかったから…真くんにこんな怪我させちゃって…」
「気にするな。俺にとっては小鳥に怪我がないってだけで充分だ。」
「でも…でも、わたし…あっ…」
一向に泣き止まない小鳥を見かね真一郎は小鳥を強引に自分の元に抱き寄せた。
「…俺はな…小鳥のことが好きだ。だから何がなんでも助けたかった…小鳥を失うのが嫌だったんだ…」
「し、真くん…」
「俺がずっと小鳥を守ってやる。いつでも側にいる…俺は…小鳥の事が大好きだから。」
初めて気が付いた…真一郎は自分の事を守ってくれた…真一郎の気持ちをはぐらかしていたのは自分…
そして…自分の気持ちにもずっと嘘をついてきた…だけど、今なら…自分に素直になれそうだった…
幼い頃から自分の中にあった『小さなハート』の『誰よりも強い気持ちを』
「…私も…真くんの事が大好き…だよ…」
〜to be continued by Triangle Heart〜