5月19日・・・晴れ

 

 今日、誰かから悪質な苛めを受けた。

 

 と言っても大体犯人の目星はついている…グロリアと、光代だろう。

 

 私の目が悪いところにつけこみ顔を洗っている時に眼鏡を隠された。

 

 低俗な人間は考えが浅はかで困る…。

 

 もう少しその無い知恵を振り絞り、頭脳的に事を進めて欲しいものだ。

 

 …まぁいい…あいつ等への復讐はそのうち実行するとしよう。

 

 そんな事よりも今日は私の人生の中で最も素晴らしい出会いをしてしまいました。

 

 下衆の罠にはめられてしまった私にさっそうと現れた運命の人…。

 

 名前は…相羽 カイトさん。

 

 眼鏡を探していた私に優しい言葉と共に眼鏡を渡してくれた人。

 

 今でも目をつぶるとその時の彼の顔が脳裏に浮かぶ…

 

 「おい、大丈夫か?」酷く心配そうな声と共にぼんやりと浮かんだ人影…

 

 カイトさんの顔を見ようとして顔を近づけたときに見えた優しそうな眼差し…

 

 初めは「何で男の人が女子トイレにいるのだろう?」…とか、

 

 「何でおばあちゃんの名前を知ってるんだろうか?」…とか思ったんだけど、

 

 眼鏡を掛け直して彼の顔を見た途端にそんな疑問を吹き飛ばしてしまうくらい運命的なものを感じた。

 

 もう…彼のあの笑顔がまぶたに焼き付いて離れない…。

 

 私…私は…カイトさんを…カイトさんを………

 

必 ず モ ノ に し て み せ ま す! 

 

眼鏡っ娘と呼ばれていたお婆ちゃんの名にかけて!!

「ふぅ…」

 

滑らせていたペンを止めたセレスの口から軽くため息がもれてしまう。

 

それもそのはず、日記にも書いた通りセレスのまぶたにはカイトの顔が焼きついており、

 

日記を書いていても心ここにあらず、といった感じなのだ。

 

「カイトさん…まだ起きてるかな…?」

 

そうつぶやきながら窓から男子寮の方を眺めてみたが、

 

男子寮に明かりは全く灯っておらず、しんとしていた。

 

「私も…そろそろ寝ようかな。」

 

そう言い先ほどまで使っていたペンをペン立てに収め、

 

日記帳を本棚に納めようとして、セレスはふと思い留まった。

 

「この日記帳を枕に挟んだら…カイトさんに夢でも会えるかな?」

 

そんな事を考えたセレスは、しばらく考え込んだ結果…枕の下に日記帳を忍ばせることにした。

 

「どうか夢の中でもう一度カイトさんと会わせてください…。そしてあわよくば、カイトさんの身も心も私に下さい…。」

 

そんな無茶な願いを枕の下に忍ばせた日記帳に祈りかけ、再び窓の向こうの男子寮に目をやった。

 

「カイトさん…おやすみなさい…」

 

セレスはもう眠りについているカイトに向かいそう語り掛けると、自分もベットに身を沈めた。

 

そしてカイトが自分の夢に出てくることを願いながらまどろみの中に落ちていった…。

 

 

セレスうぉーず〜奮闘記〜

 

 

 

翌日…その日最後の授業を受けながらセレスはその日の行動計画をねっていた。

 

(う〜ん…まずはカイトさんを探し出して昨日をお礼をすることで謙虚さをアピールでしょ…

 

天然ぶりと、ちょっとドジで可愛いところは昨日見せてるし…あと私の武器となる要素は…)

 

セレスは思考錯誤しながら良い案を出すために必死で考え込んだ。

 

(そうだ!私の最大武器の『眼鏡』と『胸』があるじゃないの。これよ…これだけあればカイトさんはきっと私のものになるに違いないわ!!)

 

「くふ…くふふふ…」

 

そんな怪しい笑みと共にセレスは小さなガッツポーズを決めて見せる。

 

「ちょ…ちょっとセレス。私の話…聞いてる?」

 

スカウトの授業顧問でもあるロニィがそう尋ねたがもちろんセレスの耳にそんな言葉は聞こえてなどいない。

 

彼女の頭の中は今、『いかにしてカイトをモノにするか』しか入っていやしないのだ。

 

キ〜ン…コ〜ン…カ〜ン…コ〜ン…キ〜ン…コ〜ン…カ〜ン…コ〜ン…

 

「はい…じゃあ今日の授業はここまでよ〜。みんなおつかれ〜。」

 

そんなロニィの言葉が出るや否やセレスはすさまじい速さで教室を後にした。

 

(このスピードで行けばカイトさんが教室を出るところを待ち伏せられるはず…

 

カイトさんのクラスは分からないけど、私の勘がC組だと教えてくれている!!)

 

 

実際のところカイトのクラスはA組なのだがセレスは自分の女の勘を信じC組にその足を運んだ。

 

(ふふふ…さすが授業で鍛えたこの足…C組はまだ動いてないわ…)

 

そしてセレスが窓から中の様子を探ろうとした時、C組のドアが開き生徒達が帰宅しだした。

 

(動いた!!…よし…セレス、笑顔よ笑顔…第一印象は大事だからね。)

 

セレスはほのかに笑顔を浮かべながらこれからカイトと交わすであろう会話の流れを考え始めた。

 

(えっと…まずは昨日のお礼を言って、それからカイトさんの情報を少しずつ聞き出すでしょ…

 

それからさりげなく実習で組むパートナーがいないことをアピールして…これよ、完璧だわ!)

 

自分の中で考えをまとめあげた時彼女はふと気付いた。

 

(カイトさん…遅くない…?)

 

先ほどからかなりの数の生徒が教室から出たのだがカイトの姿は一向に見えてこない。

 

(おかしい…もう半数以上出たはず…なのに、なんで…もしかしたら、このクラスじゃなかったの?)

 

セレスはその謎を解明するためにC組から出てきた一人の女子生徒を捕まえた。

 

「あの…このクラスに、相羽 カイトさんって居ますか?」

 

「相羽君…?うぅん、そんな人はうちのクラスには居ないはずだけど…。」

 

(くぅっ…しまった、C組じゃなかった…それじゃあ…階下のD組だわ!!)

 

それだけ聞くとセレスは女性徒をほっぽりだし階下にあるD組に向かい猛ダッシュを開始した。

 

「えと…あの…何だったの?」

 

後に残された女生徒はただ呆然とするだけだった………

 

 

 

 

結局、セレスはD組から下級生まで全てのクラスを回ってみたがカイトを見つけることが出来なかった。

 

(まずいわね…この機会を逃してしまったら…私、ただの『ちょい役』になってしまう)

 

何とかしてそれだけは避けたいセレスは今後の修正プログラムを考え始めた。

 

(こうなったら男子寮でカイトさんが帰ってくるまで張り込むしか…

 

でも…男子寮って女子は入れないし…見つかると今後の計画に支障をきたす…

 

くっ…セレス、頑張れ!この灰色の脳細胞をフル活用させるのよ!!)

 

どこぞの名探偵みたいなことをつぶやきながら、セレスが考え込んでいると…

 

ピッピッピッ…ピッピッピッ…

 

「はっ…これは『セレス・レーダー』の感知音…と言う事はこの近くにカイトさんが居る!!」

 

説明しよう!!『セレス・レーダー』とはセレスのおさげに搭載しているレーダーのことで、

 

半径10メートルにカイトが近付けば反応してくれる優れものなのだ!!

 

また、レベルアップにより索敵範囲が広がるようにもなる。ただ、カイトにしか反応しない!!

 

「……この反応…と言う事は…中庭ね!!」

 

セレスレーダーの反応したポイントに急行していくセレス…そしてその先に見えた人影…

 

(間違い無い、カイトさんだ。よし…セレス落ちつくのよ…何度もシュミレートしたはずよ…

 

そう…ちょっと天然ぶりを見せながらも謙虚さをアピールよ…)

 

カイトに近付きチャンスをうかがいつつも、確実に距離をつめてゆくセレス。

 

(後5メートル…4…3…2……)

 

ちりん……

 

後もう少しでベストポジションと言うところで首に付けているチョーカーの鈴が静かに音を立ててしまった。

 

「んっ?」

 

その音に気付いたカイトが振り返って見るとそこには眼前まで近付いたセレスがいた。

 

「あっ…あのっ…そっ…その…」

 

あまりの予想外の展開にセレスは対応できず、上手く言葉が出てこなかった。

 

(まっ…まずい…何か喋らないと…えと、まず…えと…何を言うんだっけ…あぁ〜頭が回らない〜。)

 

「あれ…もしかしたらあんたは…昨日会ったセレスか?」

 

「えっ!?は…はい、あの…昨日をお礼をしようと思って…」

 

突然のカイトの言葉に戸惑ったセレスだがそのおかげでシュミレーションでしていた会話を思い出した。

 

「へぇ…お礼なんてよかったのに…でも、セレスって何組なんだ?」

 

「わ…私はB組ですよ。」

 

「俺はA組なんだけど…隣のクラスなのに…何でこんな時間まで俺を探していたんだ?」

 

(ぐぅ…そう言えばC、D組って行ったからA組のこと忘れてた〜。えと…どうやってごまかそう…?)

 

「もしかしたら、セレス…C組から探し始めなかった?それで、そのままD組に行っちゃったとか…。」

 

「ふぇっ…そっ…そう言えばそんな気も…」

 

「やっぱな…」

 

そう聞き嘲笑するカイトとは裏腹にセレスは突然のカイトの言葉に焦りつつ何とか本題に移ろうとした。

 

「…あの、カイトさん。こ…今年からダンジョン実習ですよね?良ければ…私と組んでくれませんか?」

 

「セレスと?…そう言えばセレスの技能ってなんなんだい?戦士って感じがしないし…」

 

「わっ…私はスカウトですよ。…魔法、苦手なんですよね…。」

 

「スカウト…いいね。スカウトと組んだ事無いから面白そうだし。土曜日はどこに行けば会えるかな?」

 

「そっ…そうですね〜…大抵は射撃場にいますから。」

 

「分かった。んじゃ、今度誘いに行くから。」

 

そう言い去っていくカイトの姿が見えなくなるとセレスは喜びを、ぐっとかみ締めながら帰宅しだした。

 

(くふふっ…少し誤差があったけど何とか全てのミッションをこなす事が出来たわね…

 

今の会話っぷりなら好感度+20は固いわね…くふふふっ……)

 

にやけ顔が止まらないセレスは次に実行すべくプランを練り始めていたのだった……。

 

 

 

 

翌朝…セレスはいつもより1時間も早起きをして台所に立っていた。

 

「カイトさんも寮暮らしなんだからお昼は学食のはず…そこにお弁当の差し入れ…これは好感度UP間違い無し…くふふ…もらったわ!!」

 

(まず…お昼休みに恥ずかしがりながら、カイトさんの教室を尋ねて…中庭でお弁当…

 

更に天然っぷりを見せながら、『はい、あ〜ん』…な〜んて……これよ!これなのよ!!)

 

こうして…セレスのお弁当差し入れ作戦『Love Lunch〜マジで恋する5秒前〜』は実行に移された…

 

そして…待ちに待った昼休憩…セレスは授業が終わると共に教室を駆け出しカイトのクラスへと足を運んだ。

 

(よ…よし…お弁当もばっちりだし、シュミレーションも記憶してるし…いざ…約束の地へ!!)

 

「あ…あの…このクラスに相羽カイトさんは…!?」

 

ドアを開けそう尋ねようとしたセレスの前に見えたもの…それは…、

 

「カイトくん☆」

 

「んっ…どうした、ミュウ?」」

 

「あのね………」

 

お目当てのカイトと話をしている一人の女子生徒だった。

 

その光景をまのあたりにし気まずくなってしまったセレスはドアの影に反射的に隠れてしまった。

 

(な…何なの、あの女狐は!?よりにもよって私のカイトさんに近づくなんて…でも、あの女狐…何処かで見たような…そうでないような…)

 

セレスはもう一度ドアの影からその様子を覗きつつ、その女子生徒を観察した。

 

(流れるようなロングヘアー…そして、ちょっとおっとりさをかもし出す口調…そして、何処か上品さをかもし出す雰囲気…くっ…敵ながら天晴れね)

 

『女の直感』で彼女を『敵』と認識したセレスは更に観察し続けた…。

 

(う〜ん…何処で見たんだっけ?え…と…新聞じゃないし…すれ違いざま…違うわね…

 

う〜ん…そうよ、廊下のポスターよ。…えっと…たしかポスターの内容は……)

 

そこまで思い出してセレスはハッと息を飲み込んだ。

 

(お…思い出した…確かあの人…ミューゼル=クラスマイン。

 

王国主催の高校生詠唱コンクール神術部門・王国2位…『鬼才の癒し姫・ミューゼル』…)

 

改めてその姿を目の当りにし、セレスは少々気分が沈んでしまった。

 

(まっ…まさか…彼女もカイトさんを狙ってると言うの!?

 

くっ…作戦2日目にして超強力ライバルの出現ね…ふふっ…でもね、

 

障害は高ければ高くなるほど燃えてくるのよ!…相手にとって不足はないわ!!)

 

ミューゼルに対してそんなライバル心を燃やしながらふと自分の持っているお弁当に気がついた。

 

(そうよ、今の私にはこいつがあるじゃないの。これがあればあの女狐にも遅れは取らないわ…いざ!!)

 

「あの…カイトさん…私と…」

 

「カイト君、そろそろ学食もすいてきてると思うから、一緒に行こう。」

 

『がたんっ!!』

 

意気込みカイトの元に行こうとした矢先そんな言葉を聞き、セレスは再びドアの影に身を隠した。

 

(おっ…おのれ女狐〜!私のカイトさんを〜!!…でも大丈夫…カイトさんなら断ってくれるはず!)

 

「そうだな…んじゃ、飯を食いに行きますか。」

 

『がこ〜ん!』

 

セレスは拍子抜けしたあまりドアに思いっきり頭を打ち付けてしまった。

 

「な…何?今の音?」

 

「誰かドアにでも突っ込んだのかな?」

 

(まっ…まずい…こんな所で醜態をさらす訳には…)

 

セレスは痛む後頭部を押さえながらその場を逃げ出した。

 

(くっ…憶えとくのね、ミューゼル=クラスマイン。

 

ここは戦略的撤退をするけど、カイトさんは渡さない!あれは…いいものなのよ!)

 

そんな負け台詞と共に去って行くセレスがいたことを当のカイトが知る由も無かった……

 

 

 

 

お弁当大作戦『L・L』が失敗してしまい、セレスは一人屋上でお弁当を片付けていた。

 

(くぅぅ…まさかあのミューゼルがライバルになるなんて、相手がやばすぎるわね…

 

何しろ学年一の秀才ロイド=グランツをはじめ多くの男子からの強い人気を得ている女だし…

 

それに、本人未公認のファンクラブまであるって噂だし……)

 

はぁぁ…とつい大きなため息がこぼれてしまうセレス。

 

それもそのはず、あのミューゼルを敵に回すと言う事は全男子生徒を敵に回すと言う事と同じだからだ。

 

(何にせよもう少しミューゼルに関する情報を集めないといけないわね…)

 

ピッピッピッ…ピッピッピッ…

 

その時不意にセレス・レーダーが反応を示した。

 

(えぇっ、カイトさんが近付いてるの!?まっ…まずい、こんな姿を見られるわけには!!)

 

セレスは慌ててお弁当箱を片付けようとしたが焦りがあってか中々思うようにいかない。

 

(くっ…こうなったら物陰に隠れて一時的にやり過ごすしかない!)

 

そう考えたセレスはお弁当箱を抱えたまま物陰に身を潜めた。

 

そうこうしていると屋上のドアが開きカイトが姿を見せた。

 

「ふぅ〜…いい日差しだな。食休みにはもってこいの天気だ。」

 

そう言いカイトはベンチに腰掛け日光浴としゃれこみだした。

 

(はぁ〜…やっぱりカイトさん…素敵だわ〜…間違いない、あの人は私の運命の人よ!!)

 

そんな事を考えながらカイトの姿を眺めていてセレスはふと思いついた。

 

(あれっ…?良く考えたらこれって逆に、チャンスなんじゃないかな?

 

そうよ!よく言うじゃない、『最大のチャンスは、最悪のタイミングでやってくる』って。)

 

そう結論を導き出したセレスは、瞬間的な速さでお弁当箱を片付けた。

 

(よし…あくまでも偶然を装いつつ自然な感じで話しかけるのよ……いくわよ、セレス!)

 

そう意気込みカイトに近付こうとした時…けたたましい轟音と共に何者かが屋上に接近してきた。

 

「見付けたわよ!この、バカイト!!」

 

そんな叫びと共に屋上にやってきたのはツインテールの少女だった。

 

「んっ…?何か用か、コレット?」

 

「何か用か…じゃ、ないわよ!!!」

 

(なっ…何なのあのちび狸は!?…それにしても…今日って厄日なのかな?)

 

そんな二人の言い争いに出るに出れなくなったセレスはじっと様子をうかがっていた。

 

「まったく…騒がしい奴だな…昼休みぐらい大人しくしてろ。」

 

「えぇ、そうね…私だってねこれさえ無かったら大人しくしてたわよ。」

 

そう言いコレットは1枚の紙切れをカイトの前に差し出した。

 

「げぇっ!お、お前…何でそれを!?」

 

「ミュウが教えてくれたのよ、背中にこんなものが張ってあるってね。」

 

その紙には『私は転校早々窓に風穴を開けました』と書かれていた。

 

「内容からしてこれを張った人間はあんた以外には有り得ないのよ!」

 

「ま…待て、話せば分かる。そ…そのな、何と言うか…この前の仕返しだとかそんな事は一切考えていないぞ。」

 

「へぇ〜…この前の仕返しのつもりだったんだ。…ふ〜ん……」

 

そう呟きながらコレットは愛用のステッキを握り締めた。

 

「コっ、コレット。待ってくれ、これには深い事情が…」

 

「問答無用よ!!フレイム・アロー!!」

 

『ごぉぅ!!』

 

至近距離でコレットが放ったフレイム・アローをカイトは巧みにかわした。

 

「うぉっと……悪いな、コレット。俺はこんな所で死にたくないんでな、あばよ!」

 

「あっ!!こら、待ちなさ〜い!!」

 

校舎へと逃げ込むカイトを追いかけるようにコレットも校舎へと戻っていった…。

 

一人屋上に残されたセレスは何も出来ず始業のチャイムが鳴り響くまで呆然とする事しか出来ずにいた……。

 

 

 

その日の放課後…セレスは一人教室で物思いにふけていた。

 

(…一筋縄ではいかないと思っていたけどこんなにも障害が多いなんて思いもしなかったわ…

 

さすがに私一人では厳しいかもしれないわね…誰か協力者が欲しいとこだわ……)

 

そう考えたセレスは自分の知りうる人間の中で相応しい人がいるかどうか考え出した。

 

(う〜ん…よく考えたら、私って知り合い少ないのよね〜…グロリアに光代…後は……!)

 

その矢先一人の人物の名前が頭の中に浮かび上がった。

 

(そうよ!あの人ならこういう話に協力してくれるじゃないの。)

 

そう思い立ったセレスはその人物に協力を求めるため教室を後にした……。

 

そして…セレスが向かった場所…部屋のプレートには『盗賊技術準備室』と書かれていた。

 

「あの、失礼します。…ロニィ先生おられますか?」

 

「はい、は〜い☆どちらさま…って、セレスじゃないの…どうしたの?」

 

そんな軽い口調で出迎えてくれたのは言わずと知れたスカウト技術顧問ロニィ先生だった。

 

素性の知れない先生で学校の七不思議にも数えられる人物でもある。

 

「じつは…少し相談がありまして……」

 

「相談?…まっ、そんな所で立ち話もなんだし奥で話を聞きましょうか。」

 

そう言いロニィに連れられ教室の奥にある休憩スペースで二人は向かい合わせに腰をかけた。

 

「それで、セレスちゃんの悩みっていうのは何なのかしら?」

 

「じつは…その〜ですね…」

 

セレスは少々戸惑いながらもカイトとの出会いから現在の状況まで、事細かに話した…

 

「…と言う訳でして…カイトさんを何とかモノにしたいのですが…

 

邪魔者が予想外に強力でして…何とか先生に何か良い知恵を教えてもらえればと思いまして…」

 

「ふ〜ん…ここの所あなたの様子がおかしかったのにはそんな理由があったのね〜…」

 

「ほっ、本当にすみませんでした。授業に集中しようにも…

 

頭の中にカイトさんの顔が浮かんできて…それどころではなくなってしまうんです。」

 

「ふふふ…別に構わないわよ。恋は盲目とも言うくらいだし…

 

私としてはセレスがそういうことに目覚めてくれて嬉しいくらいだから…ねっ☆」

 

ロニィ先生はそう言い笑顔でセレスを励ましてあげた。

 

「でも…話を聞く限りでは中々に手強い相手みたいね。」

 

「そうなんですよ…何かいい方法ありませんか、先生?」

 

「まかして☆悩める子羊のセレスちゃんに、とっておきの方法を教えてあげるわよ。」

 

そう言うとロニィ先生は部屋の奥にある愛用の秘密道具箱をあさりにいった。

 

「この方法はね、私が学生時代に使った方法なんだけどね、

 

こいつの成功率はなんと、驚きの100%という素晴らしい作戦なのよ。」

 

「せっ…先生もこういうことで悩んだんですか?」

 

「そうよ。私も昔は……あっ、あったわよ〜…うん…これ、これ。なつかしいわね〜…」

 

そう言いロニィ先生が持ってきたものは…一本の金属バットだった。

 

「せ…先生…これをどう使うんですか?」

 

「これでね、相手を後ろから殴りつけ気絶させて、密室に連れこむの。

 

後は、自分の好きにして既成事実を作る…名づけて『恋の一撃必殺』…どう?シンプルな作戦でしょ。」

 

「なるほど…そんな簡単なことでいいんですか?」

 

「そうよ、この作戦なら向こうは何も反論できないんだから。絶対成功するわよ☆」

 

「絶対に……分かりました。私…頑張ってきます!」

 

そう言うとセレスはそのバットを握り締めロニィに一礼すると教室を後にした。

 

「…ふふっ…若いって…いい事よね。頑張ってねセレス、応援してるわよ。」

 

そう言うとロニィ先生は先ほどだした道具箱を再び部屋の奥に片付け始めた…

 

だが、セレスは気付いていなかった……

 

その作戦は…『犯罪』だということを……

 

 

 

ロニィより必勝の作戦を伝授してもらったセレスはカイトの姿を探し校舎をうろついていた…

 

放課後の校舎で、一人金属バットを持ってうろつく一人の女子生徒…異様な光景ではある。

 

まぁ…世の中には夜の校舎、一人剣を振り回す人だっているのだからよしとしよう。

 

「う〜ん…さすがに帰っちゃたよね…うぅん、諦めちゃ駄目よセレス!

 

 思い立ったが吉日。その日に出来る事はその日のうちにしないと…。」

 

セレスは自分にそう言い聞かせ再び校舎を歩き始めた。

 

「でも…これだけ歩いてもセレス・レーダーには反応ないし……

 

仕方ないわね…あまり使いたくなかったけど、使うしかないか…セレス・イヤーを!!」

 

再び説明しよう!!

 

『セレス・イヤー』とは、エルフである自分の聴力を利用し人の足音を識別し人を区別する技である。

 

言うまでもないがもちろん対カイト専用技である。(消費TP15)

 

セレスは耳をすませ校舎中でしている足音を聞き始めた…

 

(………この足音はベネット先生ね……このほとんど無音なやつはロニィ先生……

 

っ…この足音!間違いなくカイトさん!えと…東階段からだから…その先の中庭道がベストポジション!)

 

そうと分かるや否やセレスはカイトの先回りをするため中庭へと急いだ。

 

(よし…ここならカイトさんからは死角になるはず…後はカイトさんが来るまで待てばいいわ。)

 

手ごろな物陰に隠れセレスは息を殺しじっとカイトがやってくるのを待ち続けた…。

 

数分後…廊下の角からこちらに向かってくるカイトの姿が見えた。

 

(来た!…よし…あと10メートル…9,8,7…5)

 

セレスが作戦実行のためにバットを握り締めた時…

 

「おい、そこで何をしている?」

 

「ひぃ!?」

 

突然、何者かに声をかけられてセレスは驚きながらも後ろを振り返った。

 

「がはははは。このくらいで驚いていたら立派な冒険者にはなれんぞ。」

 

セレスに声をかけた人物とは体育教師のティオ先生だった。

 

「あっ…あの…そのですね…」

 

「ん〜、どうした?それにそのバットは…?」

 

「えと…このバットはですね…その…」

 

ティオが不信の眼差しでセレスを見つめてきたがごまかしの言葉が上手く出てこない。

 

「おぉ!そういうことか、分かったぞ。」

 

「ふぇっ!?」

 

そう言うとティオ先生は突然豪快に笑いながらセレスの肩を叩きだした。

 

「水臭いぞ。そうならそうと、はっきり言ってくれればいいだろう?」

 

「えっ?」

 

「いや…全部言わなくても先生は分かっているぞ。さぁ、そうと分かれば早速行くぞ!」

 

そう言いながらティオ先生はセレスの手を引っ張りながら歩き始めた。

 

「せっ…先生どこに行くんですか?」

 

「どこって…グランドに行って野球をするに決まってるじゃないか。」

 

「や…野球?」

 

「大丈夫だ、この時間ならまだ野球部もいるし、先生も一緒にやってやるから。」

 

「ちっ…違っ…わたし…わたしは〜!!カイトさんに〜…

 

そんな叫び虚しくティオにグランドへ連れ去られて行くセレスの姿があった事をカイトが知る由もなかった…

 

「あらら…ダメね〜セレスちゃんったら…」

 

そして…その光景を楽しそうに見ているロニィの姿があったことも…

 

 

 

 

その夜…くたくたになりながら寮に帰ったセレスは机に座り日記を書いていた。

 

『5月21日・・・曇りのち晴れ

 

 今日は取りあえずいろいろなことがあった。

 

 朝…早起きをして用意したお弁当作戦『L・L』は一匹の女狐のせいで失敗に終わった。

 

 女狐の名はミューゼル=クラスマイン…校内の話題の的でもあるあのミューゼルだ。

 

 まったく厄介なライバルが現れた…取りあえず今後はかなりの警戒が必要になる。

 

 昼休みにも一度チャンスが訪れたのだが、ここでも邪魔者が現れた。

 

 私の前に現れた一匹のハーフエルフの子狸…たしか、コレットとか言っていた。

 

 この子狸…あろう事かカイトさんに向かい魔法を放つという信じがたい暴挙にでたのだ。

 

 本来ならば私の弓矢でその頭を射抜いていたのだが、あいにく手元に無かった為見逃してやった。

 

 しかし…かなり苦手なタイプなのであまり係わり合いになりたくない。

 

 放課後、私一人の知恵では限界があるためロニィ先生に知恵を借りに行くと、

 

 成功率100%という凄い作戦を教えてもらい実行に移したのだけど、

 

 後1歩というところでティオ先生に阻止されてしまったあげく、

 

 先生の勘違いで野球部の部活に混ざりに行くことになってしまった。

 

 その後チーム分けをして紅白戦をした。

 

 私の成績は…5打数・2安打、ヒットが2本に盗塁数が4でその日の盗塁王に輝いた。

 

 今日は結果として二つの作戦が失敗したけど、私は絶対諦めません。

 

 いつか…いつか…私は必ず…

 

カ イ ト さ ん の 全 て を 手 に 入 れ て 見 せ る!!』

 

「ふぅ…」

 

セレスは軽くため息をつきながらペンを止め日記帳を静かに閉じた。

 

(それにしても…今日はほんとに疲れた…

 

もう日記もつけたし、今日のところは寝てしまおう…)

 

そう考えたセレスは今日も枕の下に日記帳を忍ばせ男子寮の方をじっと眺めた…

 

「カイトさん…どんな障害が待ち受けようとも私は絶対諦めません…

 

 いつか…私は必ずあなたを私ナシでは生きられない体にしてみせますからね☆」

 

 

 

続くかも…

 

後書き↓

 

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