『GIYAOHOOOOOO!!』
コントロールタワーの最上階…部屋中にコウヤの断末魔の叫びが響き渡る。
その光景に亮達…火者の面々はしばらく呆然としていた…
「か…勝った…のか?」
百瀬のそんな呟きを聞き自然と全員の顔が和らいでゆくのが分かった。
「鏡花さん、私達…勝ったんですよね?」
「そうみたいね。お疲れ、マナちゃん。」
「い…いえいえ、私なんか皆の足を引っ張ってばかりで…」
真言美と鏡花は手を取り合いながら喜び合い…
「嬢…ようやく終わったな。」
「うん…。マコト、お疲れ様。」
「ふっ…礼には及ばんさ。」
「いずみさ〜ん、お疲れ様。」
自然と笑みがこぼれる二人の元に百瀬が駆け寄ってきた。
「モモ君もお疲れ、ケガの方は大丈夫?」
「へへっ…あんなのケガのうちに入らないっすよ。」
百瀬はそう言い先程の戦闘で負傷した左肩をぶんぶんと振り回して見せると…
「あまり強がらない方が良いんじゃないのかい?」
不意に後ろからその左肩を握り締めながら星川が顔を見せた。
「いっ!!…あがっ…!!」
「ほらね。」
「わわっ…モモ君、大丈夫?」
「ほっ…星川…いつか殺す……」
そんな風に笑い合っている全員とは別に、亮は一人浮かない顔をしていた。
「ん…どうした羽村?ようやく全てが終わったんだ、もう少し明るくしていても…」
「いや…まだ全部が終わったわけじゃない…」
『えっ!?』
そんな亮の言葉に全員の視線が亮に集まった。
「コウヤは倒れた…だけど、それで全てが終わった訳じゃない。」
亮はそう言いながら護章を取り出し自らの武器へと変化させた。
「せっ…先輩?」
「この集光装置を壊さない限り、皆は夢を見続けているんだ。」
「…うん、そうだね。」
「いずみさん、こいつを一緒に破壊しよう。」
「そうだよね…皆を夢から覚ましてあげないといけないもんね。」
いずみは歩み出るとカイリを取り出しその手に強く握り締めた。
そして亮と二人、コウヤの屍を越え装置の前へと進む。
「…いくよ、いずみさん。」
「うん…。」
そして二人は己の武器を振り上げ…
「夜よ…。」
「終われ〜!!」
装置に向け思いきり振り下ろしたのだった…。
その瞬間、部屋に溢れていた月の光は消え、真月の蒼き光も薄れていった………
同時刻…コントロールタワー入り口前…
「真夜が…どうやら、彼らは上手くやってくれたみたいですね…。」
その光景を、サカキはじっと見つめていた……
蒼き月の夜明けに
蒼き夜がゆっくりと開けてゆく光景をサカキは一人ベンチに座りながら眺めていた。
「これで…良かったんですよね…これで…。」
誰かに呼びかけるわけではなく自分に言い聞かせるようにそう呟く。
頭ではそう理解していても心の奥底ではそう感じてない部分もある…
自分が待ち望んだはずの夜…しかしその夜明けを導いたのは他ならぬ自分だったからだ…
「私は…今まで何のために何人もの人を殺し…欺いてきたのだろうか…何の為に…」
いまさら綺麗事を言うには血塗られ過ぎた自分の手。
今まで多くの人を殺め欺いてきた自分も、火者に手を貸した自分も同じ自分…
「ふふふ…一体どっちが本当の私なんですかね…」
自分のそんな矛盾した行動が何だかおかしくてふと、笑みがこぼれる。
「ここにいたのか、サカキ…」
ふとそんな声を聞き、サカキが振りかえるとそこにはソウジが立っていた。
「ソウジ…無事だったんですね。」
「あぁ…どうやら、真夜は終わってしまったようだな。」
「えぇ、私達の負け…ですね。」
ソウジもまたサカキと同様に夜明けへと向かう空をじっと見つめた…
「サカキ。火者を私の元へ導いたのはお前だな?」
「…えぇ…その通りですよ…」
ソウジのそんな質問にサカキは正直に答える。
「どうしますか、あなたが私を裁いてくれるのですか?」
「……いや…私にはお前を裁く権利など微塵も無いからな…」
「ソウジ?」
「例えお前が奴等を導いたのだとしても、私も…いずみに刃を下ろす事が出来なかった…
そして…いずみの傍らにいた青年に私の業を断ち切ってもらう事を望んでいたのだからな…」
「そうですか…あなたもそう感じたのですか…」
そんな言葉を交わす二人の視線は再び空へと向けられる。
この夜が明ければ消えてしまう自分達…しかし二人の顔には後悔の色は全く無かった。
むしろこれで良かったのだ…という安堵の色が見られるほどだった。
「…サカキ…冥土への土産に一つ教えてくれないか…」
「…何でしょうか?」
「お前は…なぜ、光狩へと身を落としたのだ?」
「…あなたの口からそんな言葉が出てくるとは、思いもよりませんでしたね。」
「ふっ…自分の最後を前にして私も少しおかしくなっているのだよ…」
「そうかもしれませんね。分かりました…
それでは少し私の昔話に付き合ってもらうとしましょうか…」
そう言いソウジを自分の隣に座らせ、サカキは自分の滅多に語らない過去を語り始めた…
昔…私がまだ人間だった頃…私には婚約者がいました。
彼女の名前は、『由紀』。
彼女は例えるならば、温かい太陽のような女性でした。
いつもその温かい笑顔で、私の不安や心配事などを包み込んでくれました。
そんな彼女は、私の唯一の心の支えであり…私も彼女にとっての心の支えでいたのです。
そう…あの事件が起きた日もそうでした……
「今日行ってみた会場…素敵だったよね。」
「あぁ…そうだね。」
その日は二人で結婚式の会場となる式場の見学に行っていました。
お互いの両親に結婚の承諾を貰っていた私達は、
今月末に控えた結婚式の為に準備を重ねているところでした。
あの時…私はそんな幸せな自分達が少し怖くもありました…
こんなにも幸せな思いをしていても良いのだろうか…とね…
「〜でね…って、ねぇ…私の話聞いてる?」
「えっ…?ごっ…ごめん、ちょっと考え事してて…。」
「もぉ〜、最近そういうのが多くなったぞ〜?」
「すまない…」
「えっ…そんな謝らなくても良いよ。」
「…ごめんな。それで何の話だったんだい?」
「だからね、さっき言いたかったことは…」
しかし、そんな心配事をするたびに由紀はその事さえも暖かく包み込んでくれました。
この先…10年、20年先…彼女と共に歩いて行きたい…そう願っていました…
その日の夜…あの電話を取るまでは……
「もしもし、サカキですが?」
「…あぁ…サカキ君か?わたしだ…」
電話の相手は由紀の父親でした。
由紀の父親から電話がかかってくること自体はそんなに不思議な事ではありませんでした。
しかし…その後ろで聞こえる母親の声に妙な胸騒ぎを覚えました…
「サカキ君…由紀が…由紀が…」
そんな嗚咽交じりに語る言葉に私は唖然としました。
「由紀が…死んだ……」
その会話を終えると同時に私は由紀が運ばれた病院へと走りました…
そして…私が病院のベットで見た由紀は…私の知らない由紀でした…
体中傷跡だらけで何も喋らなくなった由紀…
もう私に話し掛けてくれる事もなければ、微笑んでもくれない…
由紀は…私と別れた後、公園で数人の男達にいたぶられ、
中々帰宅しないと心配して探しに出た父親に発見されたそうです…
犯人の男達は以外に簡単に捕まり裁判にかけられる事になりました。
私もその席に同席させてもらったのですが、そこで下された国の法は…
「…以上の者達は、5年の服役とし…」
5年の服役?…由紀をいたぶり、命まで奪ったと言うのにその程度の罪で許されると言うのか?
「ふざけるな!!由紀の命を奪っておいてその程度の罪で許されると言うのか!!」
私は必死の思いで抗議を繰り返したのですが、何度聞いても帰ってきた答えは一緒でした…
「彼等は未成年であるから日本の法ではこの結果となるのだよ。」
…結局、彼等はその判決どうりの罪で裁かれ服役へとつく事になりました…
そして同時に…その日から私は生きる事の意味を見失いました…
由紀がこの世を去り、生きる意味を無くした私はそれでもまだ…その世界に留まっていました。
魂が抜けてしまい、人という器のような存在ではありましたけどね…。
私は何度も由紀の後を追おうとしました。
けれど、その度に由紀の顔が脳裏に浮かんできては私の邪魔をしたのです。
無念のうちにこの世を去ってしまった由紀…。
そんな由紀の顔が浮かび私は命を断つ事ができなくなりました。
何より…私は…弱かったのです…。
肉体的にも…精神的にも…弱かったのです。
…そんな空虚な毎日を過ごしていくうちに、自分という存在がわからなくなってきたのです…。
そして…この世界を私は憎みました。
『こんな…偽りに満ちた世界など……いっそ消えてしまえばいい……』
「そうだ。この世界は総て、偽りの存在なんだ。」
私がそう強く思った瞬間…そんな声がしたかと思うと、空が青く染まり一人の男が姿を見せました。
…それが初めて体験した凍夜であり、コウヤとの出会いでした。
「初めまして…かな、サカキ君。」
「…あなたは?」
「…我が名はコウヤ…夜を呼ぶ者だ。」
「夜を…呼ぶ者?」
「そうさ…この世に真の夜を呼ぶのさ…」
「真の…夜…」
「…この世界は、偽りに満ちているのさ…正しき事など何も無い…
だからこそ我等『光狩』は真なる夜を呼ぶのさ。」
「光狩…」
「サカキ…我が同士となれ…そうすれば、我はお前に力を与えよう。」
「同士?…力…?」
「そうだ…お前の望みを叶えるための力を与える…サカキ…お前の望みは何だ?」
「私の…望み……?私の望みは…自分のこの手で…間違いを裁くこと…
正しき事を貫くこと…それが、私の望み…」
「…ならばこの護章を手に取れ…そして我に身を委ねよ…。」
「これは…?」
「これが我等…光狩が持つ力の根源…そしてその証だ…」
「これが…光狩の力…?」
「さぁ、我の手を取れ…我に身を委ねるのだ…
そうすれば我は、お前に力を与えよう…お前の望む力を…」
その時の私に、迷いなど微塵たりとも無かった…
だからあの時…躊躇する事無く、コウヤから護章を受け取れた…
コウヤから護章を受け取った瞬間…不思議な感覚に包まれた。
心地よい脱力感…澄みきってゆく頭…
そして…私は人の器を捨て…光狩になった…
光狩となった私は、その力を自在に操るため多くの夜を呼びました…
そして…自分の正義に従い多くのものを裁きました。
それこそ、男女問わず…全てのものを…
最初のころは人を殺すことにためらいを感じていました…
『…本当にこれで良かったのか…?』と言う風にね…
だが、人を殺せば殺すほど段々とその考えは変っていき、
『今、私がこいつを殺した事で救われる人間がいるんだ…』そう自分に言い聞かせるようになりました。
そして…全ての準備が整ったあの日…
私は、自分の悲願を果たすことにしたのです…。
その日は月の綺麗な夜でした…。
私はあの事件が起きた公園に例の男達を呼び出しました。
そして男達はこれから起こるであろう未来に気付く事無くやってきました。
私は全ての男達の姿を確認した後、公園全体に凍夜を張り巡らせ男達の前に出てゆきました…
「なっ…何なんだよこの蒼い夜はよ!?」
「ようこそ…我が凍夜へ…」
「あっ…あんたは、あん時の裁判にいた奴。」
「本当だ…あんたがここに俺達を呼び出したのかよ?」
「そうだ。お前達を、私の手で裁くためにな。」
『パァーーン!』
その刹那…私は銃を抜き、まず一人目の頭を打ちぬいた。
「なっ!!…け、拳銃。本物かよ!?」
「ひ…人殺し!?」
残りの男二人はその事実に驚き戸惑うだけだった。
「だっ、誰か助けてくれよ!人殺しがいるんだ〜!!」
「助けてくれ〜!!」
「無駄だ…助けなど来やしない…お前達、最近この辺りで起きている怪事件は知っているだろう?」
「ひっ…か…怪事件?」
「そう…一夜明けると突如死体が現れる事件…一切の目撃証言がない事件だ。」
「きっ…聞いた事がある…!?じゃ、じゃあ…あの事件はあんたが?」
「そう…私がした事だ。…全ては今日、この日の為の準備だったのさ。」
その事実を知った二人は顔色を蒼白にし頭を地面につけ私に懇願してきました。
「おっ…お願いだ!もぅ…あんな事はしない!だから、殺さないでくれ!!」
「お、俺も。もうしないから…どうか命だけは…」
正直笑ってしまいましたよ。
自分たちの罪を棚に上げ、いまさら命護いをしてくるなんてね…だから、私は…一つの結論を出しました。
「ならば失せろ…ここから逃げる事が出来れば助けてやろう。」
それを聞いた瞬間、男達は一目散に公園を出ようとしましたが、
「なっ…何だよこれ!?何か壁みたいなのがあって出れない!?」
「当然ですよ…私の作った凍夜ですから。」
「だっ…騙したな!!」
「騙してなんかいませんよ。さぁ…絶望と恐怖に包まれたまま…死になさい。」
「ま、まっってく…」
その瞬間…二つの銃声が公園中に鳴り響き、蒼き夜が張れてゆきました…
私は悲願だった復讐を果たしたのですが、何故か心は晴れないままでした。
「どうだい、自分の望みをかなえた感想は?」
「コウヤ……分かりません、まだ…心が曇りかかっているような感触です。」
「そうだろうな…それは、この世界がまだ偽りに満ちているからさ。」
「まだ…偽りに…」
「サカキ、我が同士となれ。この世界に真なる夜を呼ぶために…。」
……そんなコウヤの言葉に導かれ、私は心の曇りを拭う為に真夜を呼ぼうとしたのです……
そんなサカキの語りをソウジは顔色一つ変えず聞き終えた。
「…私が光狩となった理由はそんな事からですよ。」
「そうか…そんな理由だったのか…」
「…えぇ…愛した人を守れず…
その復讐を果たすため光狩へと身を落とした…馬鹿な男の戯言…ですけどね。」
サカキは憂いを帯びた表情でそう呟く。
「いや…私も…似たようなものだからな…。」
そんなサカキの呟きにソウジもそう答える。
「…ミサト…さんでしたよね。」
「あぁ…」
「彼女は…どうされたのですか?」
「……帰るべき者の所に返した…」
「…彼等のところに…ですか?」
「あぁ…彼女は、今でも夢を見つづけているのだ。
私との思い出と言う夢の中で、私と過ごすはずだった夢をな…」
そう言うソウジの表情は、とても暗く感じた。
「…この夜が明け…彼女が目を覚ました時…
夢で出会っていた私がいると混乱してしまうからな…」
「だから…彼女を彼等へと返した…。」
「…あぁ…この夜が明けると光狩となった私も消えるだろう…そうなれば、彼女はまた悲しんでしまう。
私は…もうこれ以上、彼女の悲しむ姿を見たくないのだ。」
「…それは違いますね。」
「…何?」
「彼女を悲しませたくないのではなく…貴方自身が悲しみたくなかったのですよ。
だからこそ…貴方は自分から身を引き、彼女の中で自分を思い出にしたのですよ。」
「……そうだな…そうかもしれないな。」
自然と笑みがこぼれてしまう二人…その表情からは後悔の念は微塵も感じなかった。
「…さて…私はそろそろ行くことにしますよ。」
サカキはそう言うとベンチから立ち上がりグッと体を伸ばした。
「行く?…これ以上どこに行こうと言うんだ?」
「私がしなければいけない…最後の仕事ですよ。」
「…ミズキか?」
「……えぇ…彼女に伝言をしてくれと、頼まれていましてね。」
「そうか…」
「彼女は…私達とは住む世界が違いますからね。」
「…お前は…いつもミズキの事をそう気にかけているな。」
「…私は…もう、由紀のような不幸な人を作りたくないだけですよ。」
「…そうか、ならば止めはしない…彼女だけでも…救ってやれ。」
「ソウジ…あなたはどうするのです?」
「…私も、何処かさまよい自分が消えるべき場所を見つけるさ。」
「そうですか…では、どうか…良い夜明けを…」
「お前もな…」
二人はそう言い別れ、お互いの最後の仕事へと向かっていった……
「あっ…夜が…明けてく…」
ある町の一角…一人の少女はその光景をじっと眺めていた。
「…私達…負けたのかな?」
「ミズキ。」
そんな少女の問いかけに答えるためかの様にサカキがその姿を見せた。
「サカキさん…?」
「えぇ…お久しぶりですね。おっと、その姿の貴方と会うのは初めてでしたね。」
そう言うとサカキはじっと彼女の姿の見つめた。
「何?…どうかしたの?」
「いえ…貴方の姿…以前のイメージと、がらりと変わっているので…少し…」
「やっぱり…変だよね。」
「そんな事はありませんよ。今のあなたも、充分魅力的ですよ。」
サカキにそう言われ、ミズキの顔は自然と紅く染まってしまった。
「そっ…それより…サカキさん、夜が明けていくよ?」
「負けちゃったの?」
ミズキのそんな問いかけにサカキは言葉を捜してしまう。
「……そうですね、負けたのかもしれません。」
「…そっか……」
「けれど…そのおかげで、あなたにこの夜明けを贈る事が出来ましたよ。」
「えっ……。」
「いずれ…彼が訪ねてきます。」
「彼って…つばさが?」
「はい。…あなたに謝りたいと言ってましたよ。」
「………。」
そのサカキの言葉にミズキは黙り込んでしまった。
「どうしました?…彼に会いたくはないのですか?」
「…うぅん。会いたいよ、会いたいけど……」
「けど?」
「だめだよ…私のままじゃ、会えないもん…」
「ミズキ…」
「今の私じゃ…つばさとつり合わないよ…私のままじゃ……」
そう言うとミズキはうつむき自分の体を抱きしめ嘆き出してしまった。
「…ミズキ…あなたは本当にそれで良いのですか?」
「サカキ…さん?」
「いいですか。彼は勇気を出して、あなたの元に来るのですよ?
それなのに…あなたはその彼の気持ちを無駄にしてもいいというのですか?」
「あっ……」
「ミズキ…夢は…もう終わったんです。どうか逃げずに彼を迎えて上げてください。」
「…そう…そうだよね?逃げてちゃ…何も出来ないんだよね?」
「えぇ…そうですよ。だから、あなたももう少し自信を持ってください。」
「うん…私、もう一度つばさに会ってみる。本当の自分を見てもらうよ。」
「そうしてあげてください。…私が言えるのはここまでです、私もそろそろ行く事にします。」
「サカキさん…何処に行くの?」
「…私の帰るべきところです。」
「また…会えるんだよね?」
「………」
「ね?」
「…ミズキ…お元気で。」
そう言いサカキはミズキの元を去っていった。
自分の…最後に消える場所を求めて……。
ミズキと別れたサカキが向かった場所…
そこは、桜水台公園だった。
そして一人静かにベンチに腰を下ろした。
「…初めて彼を見たのは…この公園でしたね。」
初めて彼を見た時…何故ミズキはあの男に惹かれたのか…不思議だった。
…しかし、彼と話している時のミズキは…
普段、私達に見せていた作った笑顔ではなく、自然な笑顔を見せていた…。
その時、思い知った事実…それは、
『ワタシデハ…ホントノミズキハ、ミルコトガデキナイ…』
だからこそ私は…ミズキの本当の笑顔を守りたかった…。
だからこそ私は…彼女の望みを叶える為に夜を呼んだ…。
そして…彼女を救うために…夜を終わらせた…。
「ふぅ…結局、私は何をしてきたのでしょうか?」
誰に答えを求めるわけでもない独り言…
言葉に出してみてもそれは…自分の言い訳にしかならない言葉…
「…由紀…あなたは、こんな私を許してくれますか?」
そう天に仰いだ時…東の空から太陽が上がってくるのが分かった。
「…夜の…終わりですか…」
太陽が昇ってくるにつれて、自分の存在が希薄になって行くのが分かる。
そして実感する…自分の最後の時を…
次第に体は光の粒子となり陽光にきらめき消えてゆく…
サカキが自分の最後を悟り、目を閉じようとした時…
「サカキさん…迎えに来ましたよ。」
そんな声が響き、目の前の光が人を形どっていった。
「由紀!?…何故、あなたが…。」
「言ったでしょ…あなたを迎えに来たのよ。」
「…そうですか…私の行く先は…やはり、地獄でしょうか…」
「いいえ…そんな事はさせないわ…」
そんな私の問いかけに由紀はあの時と変わらない笑顔でそう答えた。
「あなたにはこれから…私を待たせた時間分、取り戻させるんだからね。」
「由紀…私を、許してくれるのですか?」
「…えぇ。さぁ…私と一緒に行きましょう。」
そう言い差し出される由紀の手を、私はためらいもせず手に取った。
自分が世界から消えてゆく感覚…それに恐怖することはもう無かった…
これは死に際に見ている夢か現(うつつ)かもしれない…
だが、今の自分の傍には由紀がいる…それだけで充分だった。
そして…止まっていた時の歯車は再び時を刻み始め…朝が訪れる…
その朝日と共に消えた男がいたことを誰一人……知る事も無く…
〜 F I N 〜