|
―――と、云う訳で、俺はメイドロボを一体買う事にした。なかなか高くて手につかず、地道にちまちまと溜めこみ、苦節4年漸く購入出来た。 その4年間は長く遠く・・・・・・そして・・・辛かった。 どうしても、メイド衣装付属版のが欲しかったので、それを買いに久々に大きな街に繰り出していた。電気街に行けば、種類が断然に豊富だ。だから、ちょっとばかし電車賃の事には目を瞑る。 現在で、来栖川エレクトロニクス社から出ているメイドロボの種類は、半端ではない数にまで達している。HMX-12のようにドジだったり、その正反対のHMX-13の様に真面目だったり、お話が上手いロボだっている。まさにメイドロボのコンセプト「より人間に近く」をモットーにしているだけはある。 ふと顔を横に向けると、ウィンドウに色んな種類のメイドロボが目を閉じて並んでいた。その容姿は様々で購入者の心をぐっと掴むものもあった。値札を見ると、どれも同じようなものなのだが、普通のサラリーマンでも少し値が張る。 俺は様々なメイドロボに目を通してきた。所々で、店の店員などにどの種類が人気なのかを訊いてみたりもした。 「んー、今人気のメイドロボねぇ・・・・・・・・HMXシリーズかなぁ。やっぱ、12と13が結構人気あったりするよ。12は愛嬌があって良い・・・とか、13は時々見せる笑顔が良いんだ、って人もいるしね。うん。好みは人それぞれだと思うよ。僕的には、このMNX系が好きかな。このシリーズはどれもサテライトシステムサービスが使えてね。HMX−13並に使えるんだ」 俺は、手を顎に当てて、「むぅ」と唸った。 ぶっちゃけて言うと、どれも選びがたい。HMXシリーズは店員の言う通り人気があり、結構その姿を街などで見かけてきた。 ・・・・・・なんだったら、人と違うものにしてみようか。 「これと同じ性能で―――あまり人気の無いメイドロボってありますか?」 俺は、HMXシリーズのメイドロボを指差しながら言った。やはり、人とは違うものが良い。同じものばかりじゃ詰まらないしな。 すると、店員は「少々お待ちを」と言って、店の奥へと消えていった。 心の奥で少し、ワクワクしながら待った。なんてったって、メイドロボ・・・・・。パートナーなのだから。やっぱり、可愛いのがいいよなぁ・・・・・・あ、ドジっ娘ってのもいいかもしれない・・・・・・あ、HMX-13っぽいのもいいかもな。 そんな事を考えていると、店員が資料のようなものを持ってきて、俺の所へ戻ってきた。 パラパラと資料―――いや、売上表らしきものをめくりながら目を通す。 「あ・・・・・あったあった。お客さんこれなんかどうでしょう? 『DSA−98』なんて。容姿はマニアも唸らせるほど可愛いのですが、いかんせん売れ行きがイマイチなのです。性格上もあまり問題はないそうで・・・・・・・」 店員はそう言うと、こちらにその売上表を渡してくる。その資料には、そのメイドロボの全身が載っており、他にはスペック・特徴・価格などが載っていた。ただの情報誌だった。どうやら売上表と勘違いしていたらしい。 メイドロボの写真を見てみると、確かに可愛い。一部の人は、「HMXシリーズより良い」と評価しそうな程だ。 見た目は、HMX-12のように幼く見えた。全体的にぱっとで意見を言うと、HMX-12に近いものがあった。髪型はポニーテルで天真爛漫なイメージがあった。目は閉じて静かにしているが、性格が外見上で何となくわかる。 俺は迷わずにそれを購入した。持ち帰りが不便なので、輸送サービスを利用した。余計に金がかさんだが、辛うじて帰りの電車代だけは残った。 電車に揺られながら、自宅へと帰った。 家(正しくはマンションだが)に着くと、リビングへと向かう。リビングの電気のスイッチを押すと、光がパッと付き、暗闇に包まれていた部屋がたちまち明るくなる。 ふと、腹が空いた事に気付き、腹の虫が今にも鳴きそうな腹を押さえながら台所へと向かった。台所、と言っても俺は料理なんて一つも出来ない。なので、作るとしたらレトルトのカレーや牛丼などばっかだ。あとは、湯を沸かす時に使うぐらいだ。だから、メチャクチャ綺麗だ。 食パンが切れている事に気付き、冷蔵庫を開けようとし、取っ手に手を掛けた瞬間、間延びした玄関のチャイムが鳴る。 「はぁい、どちら様ですかー」 俺は聞こえているかどうか分からない玄関の前の人物に訊いてみる。玄関の前に行くと、俺は丸い向こう側が見える窓を覗いてみた。歪曲している世界に、帽子をかぶった男が立っていた。 「すいませーん、お届物なんですけど、サインお願いします」 俺は、掛けていた鍵をガチャリと外し、玄関のドアを開ける。 「サインお願いします」 そう言って、用紙とボールペンをこちらに差し出してくる。それを受け取り、適当にサインをする。その時、ちらりと配達人の横を見てみると、腰よりやや高い箱が立っていた。もしかすると、あの店で買ったメイドロボなのかもしれない。考えながら、用紙とボールペンを返す。 「では、失礼しました」 それだけ言うと、配達人は去って行った。俺は、箱を運ぼうとしてフッと持ち上げてみる。・・・・・・・かなりの重さだ。 あの人がこの階までどうやって運んだか気になりながらもヨタヨタとリビングへと運んでいく。途中で、何度かぶつかりそうになった。 「はぁっ・・・・・・・漸くここまで運べたなぁ」 一人呟くと、さっそく箱を開封してみる。すると、やはり予想通りメイドロボ『DSA−98』型だった。俺は心の中で鼻歌を歌いながら、箱を片っ端から破いた。 『DSA−98』は静かに目を閉じて直立していた。何か神秘的なものを感じながら、一緒についてきた取り扱い説明書を読んだ。真っ先に目次を開き、「STEP1・起動のさせ方」のページを開いた。 俺は文字を読む、という行為が面倒くさいので解説図を頼りに操作を行った。起動スイッチが入るとキュイーン、と音がして、目の前にあった『DSA−98』がゆっくりとその閉じていた瞼を開いた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 メイドロボは辺りをきょろきょろと見回した。説明書によると、この行動は『周囲の状況、風景、地形などを把握している最中』らしい。だから、リビングの風景を確認しているのだ。顔を正面に戻すと、口を閉じたまま声を出す。 「チェック完了。メインモードに切り替えますが、宜しいですか?」 「あ・・・ああ」 キュイーン、と再度音がする。説明書によると、これからがメイドロボ本来のシステムに移行するらしいが。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 きょろりと、メイドロボの黒目が動いて俺を見る。 「あんたがー、わしのご主人様でばったい?」 俺は無言で、メイドロボの電源を切った。 後書き いくら外見が可愛くても、愛嬌が良くても、変な喋り方のメイドロボなんていらないや(笑 あははははは、死ぬほど笑えました。ありがとうございます!Chacha |