「はい、祐一君、これあげる!」

「?、、、なんだこれは?小型爆弾か?」

「、、、祐一君、今日は何の日だか知ってるでしょ?」

「今日は2月14日、、、あっ!?あれか?」

「そうそう、あれだよ!」

「バラレタリンデーだな!」

ガンッ!!

あゆが頭を壁にぶつけ倒れた。

そしてフラフラと起き上がる。

「うぐぅ、、、祐一君、いつからそんなギャグ言うようになったの?」

「うぐぅ、、、」

「真似しないでよぉ!」

「いや、質が悪いのはわかったがなんとかボケねばと、俺のDNAがうったえてきてな、つい」

「バレンタインデーだよ!!」

あゆが声を強めて言ってきた。

「だ、だからっ、わかってるって!、、、チョコだろ」

「そうだよ、しかもふつうのチョコじゃないよ、特別製だよ」

「ふーん、そりゃあ楽しみだ」

この3年間であゆの料理の腕はだいぶ進歩したと思う。

水瀬家に住んでることあって、俺達が受験勉強にいそしんでる中、あゆは秋子さんに料理を教えってもらっていたからだ。

はじめはあまりうまいとは言えなかったが、受験も追い込みになった時にはあゆの夜食が大いに役にたった。

実際、その頃には名雪の右腕くらいにはなってたと思う。

今じゃ、料理が趣味となったあゆの腕は、名雪くらい、いやそれ以上かもしれない。

「ほめすぎか、、、」

俺は心の中で呟き、チョコの包みをあけた。

そこには一口サイズのチョコが、、、

「あゆ、、、」

「なに、祐一君」

「これは、、、なぜチョコがここまで黒光りしているんだ、、、」

「それは特別製だからだよ」

黒いあめ玉のようにも見える。

「、、、かたそうだが、食えるのか?」

「大丈夫だよ」

あゆが嘘を言うはずがないと思ったので俺は一つ口に入れた、そして、、、ごりっ。

「、、、あゆ、、、、これは、、、なんだ?」

俺はあまりの歯の痛さにまともに喋れない。

そのとなりで、勝ち誇った顔のあゆ。

「それはね、、、碁石だよ」

「、、、」

俺は言葉を失うと同時に昔の記憶がフラッシュバックしてきた。

、、、、
、、、
、、

「えっとね。これ、あげる」

ずっと後ろ手に隠していた、赤いリボンでラッピングされた紙袋をすっと差し出す。

「人形の、お礼だよ」

「これなんだ?」

「クッキーだよ。ボクが焼いたクッキー」

しかし袋の中から透明なセロハンの袋に入って出てきたのは、一口大の黒くて丸い物体だった。

「、、、ごいし?」

「うぐぅ、、、クッキーだもん」

「黒いぞ」

「ちょっと焦げただけだもん。外側だけだよ、中はさくさくだもん。食べてみて」

あゆが何度も食べてと言うので、1枚だけ、祐一は自称クッキーをかじってみた。

ごりっ。

「どう?おいしい?」

「いまの音を聞いて真っ先にきくことが味か?」

「、、、もしかして、おいしくなかったの?」

「いや、だから、、、」

、、、、、
、、、、
、、、
、、

そんな、10年前の記憶が再び鮮明によみがえった。

まさか、本当に碁石を食わすとは完璧に予想外だった。

「あゆ、、、お前も変わったな、、、」

「祐一君の隣にいれば誰でも変わるよ、、、はい」

あゆが何処に隠していたのか包みをもう1つ出し、くれた。

「本当のチョコだよ、あとふだんのお礼」

「お前はふだんのお礼に碁石もくれるのか」

「碁石はふだんのいじわるのお礼だよ」

あゆのめずらしい反撃といつもの笑顔に俺はすっかり怒る気をなくした。

「うまいんだろうな?」

「もちろんだよ!」

「歯が痛い人でもか?」

「うぐぅ、いじわるだよ」

「いーや、お前の方がいじわるだ」

「うぐぅ」

「じゃあ、いただくかな」

包みを開けると、中にはシュガーパウダーがふりかけたチョコがあった、、、しかも大量に。

「この量は異常だと思うが、、、」

「そんなことは気にしないで、食べてみて」

「生チョコか?」

「そうだよ」

「んじゃ、いただきます、んぐっ、、、ん!」

一つ食べたその瞬間、俺は口の中に広がるコスモを感じた。

やわらかく、とろけるようなやさしい甘さが口いっぱいに広がり、シュガーパウダーとほんのりビターなチョコの味が至高のハーモニーを、、、ごたくはいいとして、甘党でない俺が食べてもおいしいチョコだった。

「どう?」

「ああ、うまい」

「ほんとう?」

「ああ、歯が痛い人でもおいしく食べれるチョコだ」

「だから、それは、、、うぐぅ」

あゆの頭をポンポンとたたいて言った。

「来月が楽しみだな」

「なんで?」

「ホワイトデーだからな、お返しできるからな」

「祐一君、、、もしかして、何か企んでない?」

「いーや、全然そんなことないぞ」

「あやしいよ、、、」

「3月が楽しみだ」

「祐一君、ふつうにね」

「前向きに善処しよう」

「うぐぅ、やっぱりふつうじゃない事考えてるでしょ?」

「楽しみだ、実に楽しみだ」

「祐一君、人の話しは聞くもんだよ」

、、、
、、

その日から3日間、あゆの作りすぎたチョコの処理活動に精を出した事は言うまでもない。



作者のコメント

おいっす!今回は短いっす。でも、これを前編でホワイトデーを後編とすればふつう だと思います。
それと、前回のシリアスにくらべ、今回は完璧にぼけぼけ街道まっしぐらって感じで す。
まぁ、作ってて面白いし、作りやすいからいいんだけど。
じゃあ、がんばって次の執筆に入ります。
では!
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