第7話:『昼下がり、、、』

あゆのバイト先に祐一が潜入!あゆの反応は?意外な展開の第7話!!




6月半ばの平日、雪国のこの街でも日に日に暑さを増す毎日である。

時刻は2時過ぎ、、、お昼休みのサラリーマン、OL等は姿を消し、 いつもの商店街にも喧騒から落ち着きが戻っていた。

そんな中、落ち着きをなくした一人の青年がいた。

「ここか、、、」

祐一はとある定食屋の前にいた。

「名前もあってる、、、行くか、、、だが、、、」

どうしたものか、、、いざ入ろうとすると躊躇して、その定食屋の前を行ったり来た りしてしまう。

なぜ祐一がこんな所にいるのかというと、あゆが秋子さんの紹介でバイトをしているのだ。

バイトを始めてから一ヶ月、そろそろ様子を見にいってもいいだろうと思い来たのだ。

もちろんあゆには内緒で、行くと言うと断固拒否されてしまうからだ。

「よし!、、、入るぞ」

恥ずかしい気持ちを抑え、祐一は扉を開けた。

ガラガラガラ

引き戸特有の音が響く、祐一が中に入るとほぼ同時に「いらっしゃいませ」と聞こえ てきた。

パッと中を見回すと、四人がけのテーブルが三つと、カウンターが配置されているシ ンプルな作りをしていた。

テキトーにイスに座り、お品書きを眺めながら店員が来るのを待った。

三十秒ほどして、水を入れたコップを持って一人の少女がやってきた。

そして笑顔で、

「いらっしゃいま、、、」

パリーーン、、、

コップが床に落ちて割れた。

少女の笑顔が一瞬で凍りつく、、、

「いらっしゃいました、オススメはなんですか?」

「ゆ、ゆ、ゆ、、、」

「ゆ?まさか、この暑い日に湯豆腐を食えと?」

「、、、ゆ、祐一君!なんでここにいるのーー!?」

「俺は定食屋でご飯を食べる者だから、、、」

「うぐぅ、、、それパクリだよ、、、じゃなくて!何でいるの?来ちゃダメだっていっ たのに、、、」

「そろそろあゆのバイト姿も板についたんじゃないかと思ってな、しかし、だめだぞ あゆ、コップを落とすなんてダメダメだ、いうなれば、金魚を海水で飼う位ダメダメ だ」

「だって、お客さんが祐一君なんだもん、びっくりするよ」

「まぁ、そんな日もあるってことだ、遅かれ早かれ経験することだ」

「確かに言うだけで止められる祐一君じゃないもんね」

「その納得のされ方は気に入らんが、、、そんなことはいいから注文だ、カレーを頼 む」

「カレーですね」

「あゆの顔で大盛りにならないか?」

「ボクが作ればいいけど、今は注文受けだから」

「じゃあ、あゆが行って作ってきてくれ」

「それは無理だよ、シフトがあるんだから」

「そうなのか、、、残念だ」

「今度、ね」

「また、来ていいんだな?」

「うぐぅ、、やっぱり家で、、、」

「明日頼む」

「うぐぅ、、、断っても聞いてくれないよね」

「店員さん、早くしてくれないかな?」

「うぐぅ」

あゆが「卑怯だよ」と目で訴えてきたが、俺は「客だからな」と目で答えた。

しぶしぶ戻ったあゆは厨房の前で

「カレーお願いしまーす」

と、言い奥に戻って行った。

「なんだかんだで、しっかり働いてるんだな」

俺は関心してカレーを待つことにした。

今度はおばさんがパタパタとかけてきた、ほうきとちりとりを持っている。

先ほどあゆが落として割ってしまったコップを片付けに来た。

おばさんはさっさと手際よく片付け、祐一に話し掛けてきた。

「あなたが、ユウイチ君?」

「?はい、そうですけど、、、」

おばさんは少し笑って、

「あゆちゃんの彼氏なんだって?あんな可愛い子滅多にいないから大事にしなさいよ」

「はぁ、、、頑張ります、、、」

祐一は曖昧に答えた。

おばさんはさらに不敵な笑みを浮かべて厨房の方へ去って行った。

「、、、そういえば、秋子さんの紹介だったな、、、だから、色々事情が割れてるん だな」

ぶつぶつ文句、不平を言っていると、カレーを持ったあゆが出てきた。

その後ろで厨房からおじさんがひょっこり顔を出した。

「おう、兄ちゃん、あゆちゃんの彼氏だって?大盛りにしてやったぞ!」

「お、おじさん!祐一君はそんなんじゃなくもなくて、、、」

あゆは慌てふためいて、抗議する。

どっと、室内に笑い声が響き渡る、その中おじさんの声は一際響いていた。

あゆは、赤くなりうつむき、うぐぅ、とつぶやきながらやってきた。

「カレー、、、おまちどうさまです」

「おう、待った」

「ごゆっくりどうぞ」

「なぁ、いつもこんな感じなのか?」

「うん、、、でも今日はいつもよりからかわれてるかな、、、」

「そうか、、、」

「、、、でも、楽しいよ!みんな優しいし、だから大丈夫!」

あゆが笑顔で言った。

「あゆがそう言うんなら、大丈夫だな」

祐一はあゆの曇りのない笑顔を見て安心した。

そのあと、カレーを食べ終えた祐一は、おじさん、おばさんにからかわれながら店を あとにした。

あゆの方はというと、

「せっかく彼氏が来たんだから、遊んでかえりなさい」

と、なかば強引に帰らせられて、祐一と一緒に商店街を歩いていた。

「これからどうする?まだ3時すぎだぜ」

「どうしようか」

当初の目的を果たした今、はっきり言って次の予定がなかった。

「なにか面白いことでも落ちてないもんかな」

「普通は落ちてないよね」

「地味につっこむな!」

あゆにつっこまれたことにより祐一は恥ずかしくなり、あゆのほっぺたを、ぎゅー、 とひっぱった。

「いたいよー、、、祐一君ひどいよ、、、」

泣きそうな声であゆが言う。

「さて、どうするか?」

「うぐぅ、、、あっさり流してるよ」

「おっ、あれなんかどうだ?」

祐一は映画の看板を指差した。

「、、、あれって、ホラー、、、」

「大丈夫だ、昔あのシリーズは昔見ているから」

その映画は3年前にあゆに誘われて見に行った映画の続編だった。

しかも、なぜかロングヒットを飛ばし、今やっているのは第4弾だった。

「今でも人気あるってことは充分怖いってことじゃ、、、」

「気にするな、死にはしないから」

「それは大袈裟だけど、やなものはやだよ」

断固反対を主張するあゆ、しかしそんな簡単に負ける祐一ではなかった。

「しかたない、じゃあ、ジャンケンで決めよう」

「ジャンケンで?」

「そうジャンケンで」

あゆは不審そうに祐一を見ている。

「どうした?」

「祐一君、いつも自分が100%勝てることでしか勝負しないのに、ジャンケンだから、 意外だなぁと思って」

「はっはっはっは、あゆは心配性だな、俺はそんな卑怯な男じゃないだろ?さぁ、ジャ ンケンだ」

そういうと俺は拳を握って臨戦体制に入った、あゆもそれにつられて拳を握る。

「いくぞ!、、最初!カラッ!」

最初はグー、、、のはずだったが、祐一が出したのはパー、そして、あゆは案の定グー 、、、

「はっはっはっは、どうやら俺の勝ちのようだな、あゆ」

「、、、」

あゆは終止無言で固まっていた。

「やけに素直だと思ったら、そういうことだったんだね、、、」

あゆは、はー、とため息を吐いた。

「勝負は勝負だ、男には負けられない勝負ってやつがあるんだ」

「、、、」

あゆはくるりと方向を変えて歩き出した。

「お、おい、あゆ、どうしたんだよ?」

祐一はあゆの意外な反応に驚きつつあゆを追いかけた。

「もしもーし、あゆさーん、聞いてますかー?」

「、、、」

あゆは振り向こうともしないで、黙々と歩き続ける。

「反応ナシ、ですか、、、」

無言のまま時が過ぎ、気がつけば商店街を抜け、公園に来ていた。

祐一は半分諦めかけていた、すると突然あゆは足を止め、振り返った。

まだ、顔には笑顔がなかった。

「祐一君ってさぁ、、、ボクのこと、いつもからかってるよね、、、」

「え、、、ん、まぁ、うん、、、そうだな、、、」

「それってさ、結構辛いんだよね、、、」

あゆはまた後ろを向き、続ける、

「ボクをからかって、ボクを怒らせて、、、それでもボクは祐一君を許しちゃって、

また祐一君がからかって、、、その繰り返し、、、」

「あゆ、、、」

あゆはまた振り返った。

「最近、全然祐一君ボクに優しいことしてくれてないよね、、、毎日からかうくせに、 、、」

「、、、」

「祐一君のことは好きだけど、なんか、、、疲れちゃった、、、」

あゆの顔は笑顔だった、が、悲しい笑顔だった。

「ボク、もう、、、ダメみたい」

言い終わるとあゆは走り出した。

夏の夕焼けが公園に染み渡っていた。

「、、、くそっ」

祐一はあゆを追いかけた。

「あゆ、、、」

男の祐一と、女のあゆとではおいかっけっこは話にならなかった。

祐一はすぐに追い付き、あゆの腕をつかんでそのまま抱きしめた。

「俺は、、、俺はあゆが好きだからな!絶対に放さない!あゆが嫌でも絶対放さない! 、、、だから」

祐一は深く後悔した、今までの無神経さを。

どのくらい時がたっただろうか、、、しばらく沈黙が続いた。

「あゆ、、、」

あゆに答えて欲しかった、いつものように笑って欲しかった。

すると、あゆはこらえていた笑いを一気に吐き出した。

「はははははははーーー」

祐一は何がなんだかわからない様子だった。

「ゆ、祐一君、ひ、必死になって、、、はは」

あゆはまだ笑いが止まらないでいた。

「ボクって、演技派?祐一君完璧に騙されてたよね?ははは」

楽しんでるあゆと、徐々に立ち直っていった。

「あゆさん、どういうことでしょうか?」

祐一はこめかみのあたりをひくひくさせながら怒りをおさえて言った。

「はは、たまには、祐一君をからかってみようかなって思ってて、さっきピッタシの 状況だったからやってみたの、祐一君するどいからばれちゃうかと思ったよ」

あゆはまだ笑っていた、自分の身の危険も知らずに、、、

「あゆ〜〜、覚悟はいいよな〜〜?」

「えっ、って、、、え〜〜〜〜!?」

やっと事体の状況に気づいて、あゆは逃げ出そうとしたが気づけば、ここのまわりは 木々に囲まれていて、自分の後ろにも木があった。

むちゃくちゃに走っていたので、普通の道から外れて広場から遠ざかっていたのだっ た。

「祐一く〜ん、、、ボクってお茶目さん?、、、」

「ああ、俺を本気で怒らすぐらい、な」

「祐一君、落ち着こう!ボクはこのくらいのことされても、ぜーんぜん怒らないよ!」

「残念だな、それはあゆだ、俺は俺だ!か〜く〜ご〜」

「きゃっ」

祐一の手があゆの肩をつかむ、あゆはびくつき小さくなる。

「おとなしく目を閉じろ」

「な、なんで?」

「あまりにも悲惨な事体になるからだ、それに今のお前に拒否権はない!」

ふっふっふ、と笑みを浮かべる祐一。

「うぐぅ、、、怖いよ〜」

「大人しく映画見ておけばよかったものを、、、」

「うぐぅ〜〜〜」

「さぁ、目を閉じろ!さぁ、さぁ!」

あゆは観念して目を閉じた、祐一はすかさずあゆにキスをした。

その瞬間あゆは目を開き祐一から離れた。

しかし、離れた瞬間後ろにあった木に思いっきりぶつかった。

「うぐぅ〜、いたい〜」

「なぜ、離れる?」

「びっくりしたからだよ、まさかキスしてくるなんて思わなかったもん、、、」

あゆはぶつけた所をさすりながら言った。

祐一はあゆを抱き寄せて、ぶつけた所を優しく撫でてやった。

「ごめんな、、、」

「なにが?」

「なにがって、、、いつもからかって」

「祐一君でも反省するんだ」

「うるさい、、、ホントに悪いと思ったんだ、、、その、俺って無神経だから、、、 あゆ、傷付いてたんだなって思って、、、」

「やっぱり祐一君は優しいね」

「ごめんな」

「いいよ、ボクもやり過ぎたと思うし、、、それに、、、」

少しの沈黙、

「祐一君のこと好きだから、、、」

「あゆ、、、」

「えへへ、さっき祐一君も言ってくれたもんね」

「ああ、あゆが好きだ」

「何か素直だね」

「俺はいつでも素直だ」

「いじわるでひねくれてるんじゃなくて?」

「ああ、素直なん、だ!」

いい終わりと同時にあゆのほっぺをつまむ。

「いたい〜、ひねくれてるよ〜」

「それは断じて違う、素直なんだ」

「屁理屈だよ〜」

「そもそも、あゆが生意気なんだ、あゆのくせに」

「祐一君、開き直ってるよ〜」

「うるさい、生意気なやつにはこうだ」

祐一はもう一度あゆにキスをした。

最初は強引だったが、すぐにあゆも祐一を受け入れた。


二人のまわりに夏を感じさせる風が吹いていた。



作者のコメント

バイトネタを前に出してしまっていたので、とりあえず書きました。
話し続けないといけないんで。先はまだまだ長いですけど、、、
なんだかんだ言って、結局テスト一週間前なのにSS書いちゃいました。
意志は弱いもんですな〜、てゆ〜かキャラに対する愛がすごいのか?
少々、発言がヤバ目になってきたのでこの辺で、、、
感想のメール、BBSに書き込みお願いします。 

うらやましい職場だにゃ(笑)人間関係もうらやましすぎだぁchacha