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『夏−花火』 今日は年に一度の花火大会。 もちろんのこと、雪国といえど夏はある。 ドーン!、、、パラパラパラ、、、 ドーン!、、、パラパラパラ、、、 街中に花火の炸裂音が鳴り響く。 「祐一君、花火始まっちゃったよ!早くぅ!」 「わかってるよ」 ちょうど水瀬家の玄関を出たところだった。 あゆは祐一の手を引っ張って走り出そうとした。 「お、おい、待てって」 「早く出ようって言ったのに、、、」 「だからって引っ張るな」 ドーン!、、、ドーン!、、、 開始早々、まだ少し明るい空にたくさんの花火が舞っている。 「早く出たって皆考える事は同じなんだからいい場所なんて確保できないって」 「それでも〜、、、」 「近くても遠くても大して変わらないって、それに遠い方が良く見えるんじゃないか?」 「そうかもしれないけど、でも、たくさん見たいよ」 「2、3発で終わるわけじゃないんだから、ゆっくり行ったって平気だろ」 「うぐぅ〜〜」 「なんか不満そうだな」 「そんなことないもん」 「機嫌直せって、夜店で何か買ってやるから、な?」 「、、、本当?」 「ああ、本当だ」 「本当に本当?」 「本当に本当だ、疑り深い奴だな」 「じゃあね、、、タイ焼きがいい!」 「絶対、夏の夜店にタイ焼き屋はないぞ」 「えっ!うそ!?」 「本当だ、生まれて二十歳越えて今まで一回も見た事なんてない」 「今年からあるかもしれないよ」 「そりゃないだろ」 「それはわからないよ」 「断じてない、にジュース一本」 「じゃあ、ボクはあるに一本」 「絶対な」 「うん、約束だよ」 ドーン!、、、ドーン!、、、打ち上がる花火。 二人は花火大会会場へと向かった。 そして、会場にて、、、 「なぜだ?なぜある、、、」 祐一は目の前にある物を見て愕然とした。 「去年までは確かになかったはずだ、、、だからといって、いきなりあるものなのか?」 「やったぁ!祐一君、ボクの勝ちだね、ジュース、ジュース♪」 「普通、こんな所にタイ焼き屋なんて存在しないだろ?」 しかも、営業しているのは冬場に毎度お世話になってるタイ焼き屋のオヤジだった。 あゆはタイ焼きを発見できた勢いで、オヤジの店へ飛んで行った、、、もちろん、祐一の手を掴んで。 「おーじーさん!」 「おぉ、あゆちゃん!いらっしゃい!久しぶりだね」 「ホントに!今年はどうしてお店出してるの?」 「いやぁ、いくらあゆちゃんでもそれだけはおしえられねぇなあ」 『隠すほどのことか?』 祐一は心の中でつっこんだ。 「えぇ〜〜何それ?まぁ、いいや、おじさんタイ焼き頂戴!」 「毎度!いくつだい?」 『二十歳です』 と、祐一はくだらないボケを頭の中で展開していた。 「う〜んとねぇ、、、10個!」 「10個だね、毎度〜」 「って、あゆ10個も食えるのか!?」 「それくらい余裕だよ!」 「いくら何でも10個は無理だろ?晩飯食ってるんだぜ」 食事を済ませて出てきたのだった。 「祐一君」 あゆの顔が真面目になった。 「な、なんだ?」 「祐一君の大好きな食べ物が食べられなくなったらどうする?」 「、、、食べられるうちにたくさん食う」 「それが今なんだよ!」 「、、、」 「ここで逃したら次はいつかなんてわからないんだよ?」 「でも、タイ焼きなら秋子さんが作ってくれるじゃないか?」 「あ、、、そういえば、、、」 「別に今食わなくったっていいだろ」 「うぐぅ〜、忘れてた〜」 「そういう事だ、、、オヤジ、タイ焼きはキャンセルだ」 「待って!、、、せめて、5個!」 「あゆ、、、」 真剣な眼差しのあゆ。 半分呆れ気味の祐一。 「はぁ、、、じゃあ3個にしとけ、、、」 「うん!おじさん、タイ焼き3個!!」 「はいよ、あゆちゃん大変だな」 「何が?」 「彼氏が厳しくて」 「そうなんだよ、おまけに意地悪で大変だよ〜」 「あゆ行くぞ!」 祐一はあゆの代わりにタイ焼きを受け取り、歩き出した。 「あ、待ってよ、それじゃあ、おじさんまたね」 「おう、またおいで」 「祐一君待ってよ〜」 「ほら」 祐一はあゆにタイ焼きの袋をわたした。 「やったぁ、ありがとう」 「ホント、タイ焼き食ってるあゆって幸せそうだよな」 「ボク幸せ〜♪」 「今までにいったい何回そのセリフ聞いたかな」 「わからないよ〜、おいし〜よ〜♪」 「それより花火は見なくていいのか?」 「あ、そうだった」 ドーン!、、、ドーン! あゆは空を見ながら、タイ焼きを食べ、歩くという芸当をしている。 ちなみに一切前を見ていない。 ドーン!、、、ドーン! 「あゆ、たまには前見ないと転ぶぞ」 「うん、、って、わぁっ!?」 ガッ、、、ドン! 「見事に転んだな」 「うぅ、見てないで助けて」 「よいしょっと、、、」 祐一はあゆが起き上がるのを手伝った。 「うぐぅ、痛いよ〜」 「あーあ、浴衣よごれてるぞ」 「本当だ、ショック〜、、、」 「それでもタイ焼きは死守したのか、、、」 「もちろんだよ!」 「それはいいんだが、、、この状況すごく恥ずかしいぞ」 まわりを見ると何人かの人が笑っている。 「うぐぅ」 「い、行くぞ!」 「うん、、、」 祐一はあゆをつれてそそくさとその場を退散した。 気がついたら、いつもの公園に来ていた。 「はぁ、あゆ頼むから子供みたいに転ばないでくれ」 「うぐぅ、ごめんなさい」 「ベンチが空いてるからあそこでみるか」 「うん」 そして二人はベンチに腰をおろした。 ドーン!、、、パラパラパラ、、、ドーン!、、、パラパラパラ、、、 しばらくの間、二人は花火に見入った。 赤い花火、青い花火、黄色い花火、緑の花火、紫の花火、とその他様々、色んな花火を堪能した。 「きれいだね、、、」 「ああ、、、」 ドーン!、、、ドーン!、、、 、、、 一時休憩に入ったのか、花火が止んだ。 「、、、」 「、、、」 特に話す事が見つからないのか、お互いに黙ったまま時間が過ぎた。 『なんだこの間は?』 祐一はこのままの状態がたえられなくなった。 「あゆ、、、」 ドーン!ドーン!ドーン!、、、 ちょうどいいタイミングで花火があがった。 同時にこけそうになる祐一だった。 あゆの方はというと、ぽー、っと花火に見とれていた。 ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!、、、 花火も終わりに近付いたようで、たくさん上がっている。 そして、大きめの花火が上がったと思ったら、それが最後の花火のようだった。 「終わったみたいだな」 「そうだね」 「ここからでも充分見えたな」 「ホントだね」 「帰るか、、、」 「うん」 そして、二人静かなまま家路についた。 その途中、、、 「そーいや、タイ焼き食べ切ってないな」 「あ、そーだね、、、へへ、忘れてた」 あゆはタイ焼きの袋を掴んだままだった。 あゆは残りのタイ焼きを取り出すとそれを半分にした。 「はい、祐一君」 「ん、いいのか?」 「もちろんだよ」 「じゃあ、遠慮なく、、、」 タイ焼きを受け取り、そのあと祐一はさり気なくあゆの手を握った。 「ハハ、冷めちゃってるね」 あゆは一口かじって言った。 「でも、食えなくはないな」 「うん、おいしいね」 「あゆでも食べる事を忘れるんだな、しかもタイ焼き」 「ボクそこまで食い意地はってないよ」 「そうかぁ?」 「祐一君失礼だよ、それに花火がきれいだったからだよ」 「見入ってたしな」 「ホント、きれいだったよ」 「去年はこんな感動しなかったよな、、、確か」 「うん、去年は名雪さんが途中で眠っちゃったんだよ」 「それどころじゃなかったしな」 去年はしっかり場所取りをしたんだが、花火終了時間が9時で名雪的には充分お眠の時間だったのだ。 祐一は結局最後までいずに、名雪を担いで帰った記憶が蘇ってきたのを感じた。 その教訓を生かして今年は名雪達とは別行動をとったのだった。 「まぁ、たまには感動してもいいだろ」 「なんか祐一君らしからぬ発言だね」 「俺も大人だからな」 「充分子供っぽいけどね」 「うるさい」 そうこう話しているうちに水瀬家が見えてきた。 「来年も楽しみだね」 「そうだな」 祐一は繋いでる手に少し力を込めると、あゆもそれに答えてくれた。 見上げた夜空に夏の星達が輝いていた。 作者のコメント 今回はバランスよくボケとシリアスが混じったと思います。出来事体は悪いと思うけど、、、(んなこと言う必要無いやん!!←一人ツッコミ では、また次回の作品で。 感想のメール、BBSの書き込みお願いします。 |