「香穂子?」 彼女との会話が途切れた事に不思議に思った柚木は ふと彼女の方へと視線を向けた。 するとすうすうと寝息をかすかに漏らしながら ソファの上で眠っている彼女の姿が目に入った。 「静かだなと思っていたら眠ってしまったのか。もう少しで年を越すというのに…。」 柚木はソファから腰を上げ、彼女の元に歩み寄る。 クッションに無防備にもたれている彼女。 柚木が自分の前に歩み寄っている気配すら気づかず、規則正しい寝息をたてている。 柚木はそんな彼女の元へ跪いた。 そしてさらりと彼女の髪の毛に触れ、もう一度声をかけてみる。 「香穂子。もうすぐ年を越すぞ。」 しかし、やはり彼女からの返事は無い。 すっかり深い眠りに落ちてしまっているようだった。 「まったく、『一緒に年を越したい』って言ったのはお前じゃないのかな?」 やれやれといった柚木だが、その囁く声はとても優しく そして彼女を見つめるその瞳もとても柔らかい。 「ま、お前の寝顔と年を越せるのも、いいけどな。」 柚木はそっと彼女の頭を引き寄せた。 暫くするとあたりから年明けの挨拶が飛び交うのが柚木の耳に入ってきた。 どうやら、年が明けたようだ。 柚木はその気配を感じつつ彼女の耳元に自らの顔を埋めた。 そして… あけましておめでとう 早く目を覚ませよ そうしたらお前の耳元で囁いてやる 俺の魂はお前と共にあると…。 柚木は心の中でそうつぶやくとそっと彼女にキスをした。 〜fin〜 |