第1章
〜森〜
総勢3000人の部下を引き連れたファルガラス王国の国王・ルイが、
今にも帝国軍に攻め込もうとしていた―。
「このままではマズイな・・・。」
「何をおっしゃいます!一気に攻め込みましょう!」
「それではみすみす相手の罠にはまりに行くようなものだ。」
「しかしこのままでは!」
王の軍は新月の夜、奇襲を図ろうと、森に待機していた。
しかし、帝国軍の首領・ジュラールは、ルイを待ち構えんばかりに
城に松明(タイマツ)を灯し、兵を潜ませていたのだ。
偵察に知らせを受けたルイは困り果てていた。
その折、一人の若者がルイ王の前に現れた。
「ヘイ。王様ァ。俺ッチが忍びこんで、かき乱してきてやるよ。」
「待て待てぇい!貴様、何者だか知らんが王の前であるぞ!」
「ウォン、下がっておれ。して、お前は誰だ?」
黒装束に身を包んだその若者は、王の白馬をゆっくり一周しながら答えた。
「俺ッチは・・・ただ忍者さ。」
「ッケ、怪しいもんだ。王、こいつはジュラールの手下に違いありません。」
「ふむ・・・そうかのう」
「おいおいおい、俺ッチをあのジュラール達と一緒にしないでくれよ。
助けてやろうって言ってんだぜ?」
「どうせそれも口からでまかせだ。我らの情報をジュラールに
報告するつもりだろう。その前に生かしては返さんぞ!」
「まぁ待てウォン!少し黙っていろ!」
「・・・。」
「私の部下が失礼したな。しかし忍の者、お主が我らの見方という
証拠はあるのか?」
「・・・ない。」
「・・・。わかった。早速行ってきて貰おう。」
「お、王!!」
「オーケー。じゃぁ俺ッチが花火を上げたら一気に突入してきてくれ。
まぁその前にやつらは壊滅状態かもな、ハッハッハ。」
黒装束の忍の者は、暗闇に消えていった。
「王!なぜあいつを行かせたのです!もし敵だったら・・・」
「眼だ。」
「え・・・?」
「あの眼を信じたのだよ」
半時ばかりたった頃だろうか。新月の暗がり一面が明るくなった。
花火があがったのである。
進軍の準備をしていたルイの軍は、待ってましたとばかりに突入していった。
「あいつの言ってた事は本当だったんですね。」
「私の目に狂いはなかっただろう。全軍進めー!!」
ルイの軍が城を包囲し、一斉に敵軍とあいまみえた。
驚くことに敵軍の数は当初の予想より大幅に少なかった。
「どういうことだ・・・。」
「まぁいいではないですか。いいに越したことはありませんよ。」
「しかし・・・これではまるでもぬけのカラだ」
王の予感は的中した。もうすでにジュラールの姿はそこにはなかった。
「これは一体・・・。」
黒装束の忍を見つけたルイは尋ねた。
「ジュラールは、、、ジュラールはどうした!」
「居なかったよ。俺ッチが来た時にはすでにいなかったみたいだ。
おそらくアンタが森で足踏みしてた時にズラかったんだろ。」
「く!!」
「じゃぁ俺ッチはもう行くよ。アデュオス、王様ァ。」
「待ってくれ、まだ名前を聞いてなかったな。是非教えてくれないか。」
「俺ッチかい?俺ッチは・・・ただの忍者さ。」
そう言うと忍はまた、森の暗闇に姿を消した・・・。
第1章
〜森〜
完